●工芸【こうげい】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
工芸
こうげい
arts and crafts
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デジタル大辞泉
こう‐げい【工芸】
2 実用性と美的価値とを兼ね備えた工作物を作ること。また、その作品。一般に陶芸・漆芸・染織など小規模なものをいい、建築は含まない。「伝統
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世界大百科事典 第2版
こうげい【工芸】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
工芸
こうげい
人間の日常生活において使用される道具類のうち、その材料・技巧・意匠によって美的効果を備えた物品、およびその製作の総称。もともと生活用具としての実用性を備えたもので、その点、彫刻や絵画と異なり、建築とともに応用芸術の一つとみなされる。工芸は材料によって多くの種類に分けられ、陶磁、金工、漆工(しっこう)、木工、竹工、ガラス、染織などの諸部門に分類される。
工芸の工の字は象形文字で、握りのついた「のみ」、あるいは鍛冶(かじ)をするとき使用する台座を表したものといわれ、そこから手先や道具を使って物をつくることを意味し、さらに物をつくるのが上手であることをいうようになった。さらにそのような職人や細工をさすこととなり、技能、修練を積んで得た特殊な技を意味する芸の字とともに、巧みに物をつくること、巧みにつくられた物を工芸とよぶようになった。
この工芸の概念が実際に確立されるのは19世紀中葉以降のことで、主として個人作家による手工芸(ハンドクラフト)が工芸品として扱われてきた。しかし、機械の発達とともに、工芸品も一品製作から量産へと移行し、一定の規格のもとに生産される工芸へと大きな変貌(へんぼう)を遂げた。だが一方では、今日なお手工芸は尊重され、伝統工芸の名のもとに機械工芸と区別して扱われている。また古くから絵画・彫刻と密接に連関しており、とくに装飾意匠の面でこの二つは重要な役割を果たしてきている。
[永井信一]
近代工芸の特質
工芸は美と用を兼ね備えたものといわれるが、美の規準は人によってさまざまで、時代や社会あるいは民族性によって変わってくる。しかしつねに生活用具として使いやすく、見た目に美的快感を与えるということは工芸に一貫して与えられた特性で、手工芸であれ、機械工芸であれ、つくる側からいえばこのバランスを無視することはできない。
産業革命以後、それまでいわゆる手作りであったものが、機械の発達によって短時間で同一製品を多量につくりだされるようになった結果、生活用具の生産方法が切り換えられた。そしてそれに即した美の問題が重要視され、インダストリアル・デザインとか、インダストリアル・アートの名のもとに新しい工芸運動がおこり、近代の工芸に新しい分野を開拓した。工芸は熟練した手の技術を中心に知性と心とが結合したものであり、インダストリアル・デザインは知性を中心に心と技術とが結合したものといわれる。
[永井信一]
民芸と伝統工芸
工芸の機械生産化への動きに対して、昔のままの手製の工芸製作こそ工芸の本当のあり方だとする考え方が現代社会の一部で強く唱えられており、その代表的なものが民芸と伝統工芸である。民芸とは民衆工芸とか民俗的工芸を意味することが多いが、民衆の生活と深く結び付いて発達してきたものを、現代社会のなかに生かし、人間の血の通った工芸をつくりだそうとするものであり、これを主張するいわゆる民芸運動は、日本のみならず東洋や欧米諸国でも盛んである。日本では機械生産化が進展する反面、民芸愛好熱が近年しだいに増加している。そして過去の貴族階級の愛玩(あいがん)の道具であった美術工芸を排し、庶民が日常的に使用したものこそ健全な真の工芸であるとする考えが、民芸運動の根底にある。しかし、昔の生産手段でつくったものが現代の大衆生活の経済性に適合するものかどうか問題があり、民芸の作家の作品であっても、床の間の芸術として庶民の手の届かないものになりかねない一面もある。
また伝統工芸は、過去の貴族社会の需要のために発達した伝統的な技術を現代に生かそうとするものである。しかしこれとても、需要の激減、現代生活の変革、工芸生産の機械化・合理化などにより、伝統を引き継ぎ、熟練した技術を身につけた者がきわめて限られた存在となり、技術そのものも退化する傾向にある現在、高度の工芸技術は実用から離れ、鑑賞を目的とする美術工芸へと向かっている。
[永井信一]
現代生活と工芸
機械化が発達し、人間生活が機械に支配されがちな現代社会では、絵画・彫刻と同様に、工芸もまた人間味を取り戻し、潤いある生活を営む役目を果たしている。機械で量産されたものが画一性、機能性、合理性を備えているのに対し、手仕事によりつくられたものは、その技術が幼稚であっても、自由で個性的で人間的な温かみがあるといえる。また技術が優れていれば、見る者の心を打ち、感動を与える。たとえ古いものでも、時代を超えて、現代のわれわれの生活のなかに溶け込める。工芸とはそのようなものである。
手作業を離れて機械生産を考案し、人間は労働から解放されたが、いままた物をつくる楽しみを労働のなかにみいだし、手製品の美と魅力を機械生産のなかに生かそうとする動きが近年盛んになってきている。今日、日本でみられる「クラフト」の語はそうした中間的な工芸分野をさしている。
[永井信一]
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精選版 日本国語大辞典
こう‐げい【工芸】
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