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幽玄【ゆうげん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

幽玄
ゆうげん
芸術論用語で,美的理念の一つ。本来中国の典籍に見出される語で,原義は老荘思想や仏教の教義などが深遠でうかがい知ることができないことを意味した。『古今和歌集』真名序や『本朝続文粋』など日本の文学作品でも,神秘的で深い意味があるらしいが明確にはとらえられないという意に用いている例がある。壬生忠岑 (みぶのただみね) の『和歌体十種』をはじめ,歌論書や歌合判詞などでは,縹渺たる雰囲気をもっている作品,神仙的な優艶な気分の漂う作品,面影を彷彿させる作品などの評語としてこの語を用いている。特に藤原俊成はしばしばこの語を用い,すぐれた美として尊重した。また,鴨長明は『無名抄』で多くの例を引いてこれを説明し,言外に漂う余情であるとした。藤原定家の『定家十体』にも「玄様」があるが,定家は「幽玄」よりもむしろ「有心 (うしん) 」を最高の美的理念と考えていた。定家の子為家の時代には,その対立者藤原光俊 (真観) が「幽玄」を優艶に近い概念としてとらえている。室町時代の歌僧正徹 (しょうてつ) が考えていた「幽玄」,能楽論において世阿弥が唱えた「幽玄」も,やさしい美しさ,女性的なたおやかな美であった。このように,時代により,また人や作品によりやや幅があるが,中世の美的理念の代表であり,また最も日本的な美の一つである。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

ゆう‐げん〔イウ‐〕【幽玄】
[名・形動]《「幽」はかすか、「玄」は奥深い道理の意》
物事の趣が奥深くはかりしれないこと。また、そのさま。「幽玄の美」「幽玄な(の)世界」
趣きが深く、高尚で優美なこと。また、そのさま。
「詩歌に巧みに、糸竹に妙なるは―の道、君臣これを重くす」〈徒然・一二二〉
気品があり、優雅なこと。また、そのさま。
「内裏の御ことは―にてやさやさとのみ思ひならへる人の云なるべし」〈愚管抄・四〉
中古の「もののあはれ」を受け継ぐ、中世の文学・芸能の美的理念の一。言葉に表れない、深くほのかな余情の美をいう。
㋐和歌では、言外に感じられる王朝的な上品で優しくもの柔らかな情趣をいう。
㋑連歌では、艶でほのかな、言葉に表されない感覚的な境地をさしていう。後に、ものさびた閑寂な余情をもいうようになった。
㋒能楽では、初め美しく柔和な風情をさしていったが、後、静寂で枯淡な風情をもいうようになった。

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

ゆうげん【幽玄】
中世芸術の基本理念の一つ。本来は,深遠微妙な性命的神秘性を意味する漢語で,中国の老荘・仏教思想や詩論の用語。日本では,仏典などの用例以外,《古今集》真名序に〈興入幽玄〉とあるのが文学的用例としての初出。以後,〈此体,詞雖凡流,義入幽玄〉(《忠岑十体》高情体),〈義以通幽玄之境〉(《中宮亮顕輔歌合》基俊判),〈余情幽玄体〉(《作文大体》)など,しだいに余情美への傾斜を示す用例を経て,中世初頭,藤原俊成が歌合判詞類に14例用いるにおよび,重要な歌学用語となった。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

ゆうげん【幽玄】
名 ・形動 [文] ナリ 
奥深い味わいのあること。深い余情のあること。また、そのさま。 -な調べ 何処からともなく-な、微妙な奏楽の響きが洩れて来た/少年 潤一郎
奥深くはかり知ることのできない・こと(さま)。 自己の意思を通して-なる自然の真意義を捕捉することができるのである/善の研究 幾多郎 事神異に関あずかり、或は興-に入る/古今 真名序
優雅なこと。上品でやさしいこと。また、そのさま。 内裏の御事は-にてやさやさとのみ思ひならへる人の云なるべし/愚管 4
中世文学・中世芸能における美的理念の一。余情を伴う感動。
俊成の歌論では、静寂で奥深く神秘的な感動・情趣。
正徹の歌論、世阿弥の能楽論では、優雅・妖艶な情趣。
為家の歌論、心敬の連歌論、禅竹の能楽論では、枯淡にして心の深い境地。ひえさびた美。
[派生] -さ

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

幽玄
ゆうげん
幽玄の語の用例は中国の後漢(ごかん)にさかのぼるが、注目されるのは以後の漢訳仏典の用法で、隋(ずい)の智(ちぎ)ぎはこの語を「微妙難測(みみょうにしてはかりがたし)」(金剛般若経疏(こんごうはんにゃきょうそ))、唐の法蔵は「甚深(じんじん)」(華厳経(けごんぎょう)探玄記)と解説している。いずれも、仏法の深遠でたやすくは理解できない意味であるが、日本でも平安末期までの用法は仏典に限らず、およそこの原義を離れない。歌論の場合、上古の歌の神秘な趣(おもむき)を「興幽玄に入る」と評した『古今(こきん)集』序や、優れた歌体である「高情体」の属性を「義幽玄に入る」と規定した壬生忠岑(みぶのただみね)の『和歌体十種(わかのていじっしゅ)』はもとより、種々の映像や情調を重層させる特異な手法を幽玄とよんだ藤原俊成(しゅんぜい)(1114―1204)の用法も、またこの手法を追究して「詞(ことば)に表れぬ余情(よせい)、姿に見えぬ景気(けいき)(けはひ)」を求めた初期の藤原定家(ていか)(1162―1241)らの歌体が「幽玄の体」(無名抄(むみょうしょう))とよばれたのも、すべてこの原義から説明できる。したがって幽玄はまだ審美論としては現れず、それが優美・典雅などの意味で理解されるようになるのは鎌倉期も後半である。
 二条為世(ためよ)(1251―1338)が「世俗凡卑」に対して「花麗幽玄」(延慶両卿訴陳状(えんきょうりょうきょうそちんじょう))といい、定家偽書の『三五記(さんごき)』が十体(歌体を10種に分類したもの)の一つである「幽玄体」を「やさしく物柔らかなる筋」と規定したなどがそれである。「優(いう)」「やさし」は早くから歌の本質とされていたもので、これを取り込むことによって、幽玄は歌の審美的理想として定位される。南北朝以後の幽玄説はこのうえにたって、さらに華麗さを強める方向に進んだ。正徹(しょうてつ)(1381―1459)は定家偽書ばかりでなく、直接に定家の初期の主張であった「余情妖艶(ようえん)」(近代秀歌)に学んで中世においてもっとも華麗な幽玄に到達し、連歌論でも二条良基(よしもと)(1320―88)は、俊成の幽玄を標榜(ひょうぼう)しながらとくに「花香(はなが)」(十問最秘抄)ある幽玄を説いている。また世阿弥(ぜあみ)(1363―1443)の能楽論も、幽玄を「美しく柔和なる体」(花鏡)と規定する一方「花」を力説しているが、やがて「花」を越えて「冷え」へと進む。この方向を徹底させたのが心敬(しんけい)(1406―75)の連歌論で、正徹を継承しながら幽玄の本質である「やさし」さを「心の艶(えん)」の方向に追究して「冷え痩(や)せ」た美に到達した。これは、幽玄を仏教的な心地修行の基礎のうえに置くことによって得られた成果でもあるが、しかし作者の心のあり方に向けたその厳しい内省は、実は俊成・定家以来、幽玄論の根本にあった「有心(うしん)」の問題にほかならず、心敬の幽玄はまた有心についてもっとも深く思索したものとして注目される。[田中 裕]
『藤平春男著『新古今歌風の形成』(1969・明治書院) ▽田中裕著『中世文学論研究』(1969・塙書房)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

ゆう‐げん イウ‥【幽玄】
〘名〙 (形動) (「幽」は、かすか・ほのか、また、奥深い意。「玄」は、深遠な道理の意。物事の奥にひそんでいる、容易に知り難い微妙で神秘的な境地をさしていう)
① 物事のおもむきが深く、人知でははかり知ることができないこと。奥深く深遠ではかり知れないこと。また、そのさま。古く中国では、幽冥の国をさし、のちには老子・荘子などが説いた哲理や仏教のさとりの境地が深遠、微妙であることをさしていった。
※古今(905‐914)真名序「至難波津之什献天皇、富緒川之篇報太子、或事関神異、或興入幽玄」 〔後漢書‐何皇后紀〕 〔臨済録〕
② ほのかではっきりしないこと。よくわからないこと。未知であるさま。
※百練抄‐治承四年(1180)九月二二日「承平天慶之例幽玄之間、今度就嘉承例行也」
③ あじわいが深いこと。情趣に富んで、おもむきがあること。また、そのさま。
※吾妻鏡‐文治二年(1186)四月八日「寄外之風情、謝中之露胆尤可幽玄
④ 上品でやさしいこと。優雅でやさしく、上品な美しさを備えていること。また、そのさま。
※愚管抄(1220)四「内裏の御ことは幽玄にてやさやさとのみ思ひならへる人の云なるべし」
⑤ 奥深く静かであること。また、そのさま。閑静。
※古事談(1212‐15頃)三「松風すごく響て砌に苔深し。幽玄の所也」
⑥ 日本の文学論・歌論の理念の一つ。①の深遠ではかり知れない意を転用したもので、特に、中古から中世にかけて、詩歌や連歌などの表現に求められた美的理念を表わす語。「もののあわれ」の理念を発展させたもので、はじめは、詩歌の余情のあり方の一つとして考えられ、世俗をはなれた神秘的な奥深さを言外に感じさせるような静寂な美しさをさしたものと思われる。その後、一つの芸術理念として、また、和歌の批評用語として種々の解釈を生み、優艷を基調とした、情趣の象徴的な美しさを意味したり、「艷」や「優美」「あわれ」などの種々の美を調和させた美しさをさすと考えられたりした。また、艷を去った、静寂で枯淡な美しさをさすとする考えもあり、能楽などを経て、江戸時代の芭蕉の理念である「さび」へと展開していった。
※忠岑十体(11C初頃か)「此体、詞雖凡流義入幽玄、諸歌之為上科也」

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