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急性呼吸窮迫症候群【きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん】

知恵蔵mini

急性呼吸窮迫症候群
臨床的に重症の状態の患者に突然起こる呼吸不全の一種。の間質や肺胞腔に水分と細胞浸潤が起こり、血液中に酸素を取り込むことが損なわれ、呼吸不全となる。敗血症が代表的で、重症肺炎粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)、多発外傷急性膵炎術後輸血などに続き、急速に発症してくる死亡率が高い合併症である。症状としては、呼吸不全のための(ひん)呼吸、呼吸困難、チアノーゼ頻脈などが見られる。2012年12月5日、歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが食道がんの手術後、肺炎に罹患したのが原因で、同症候群を発症、直接の死因となり、にわかにこの疾患への注目が高まった。
(2012-12-6)

出典:朝日新聞出版
(C)Asahi Shimbun Publications Inc
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日本大百科全書(ニッポニカ)

急性呼吸窮迫症候群
きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん
acute respiratory distress syndrome

重篤な急性肺障害(ALI:acute lung injury)。略称ARDS。肺に基礎疾患がないにもかかわらず、敗血症、全身の外傷、肺以外の臓器の手術などによる外科的侵襲、出血性・細菌性ショック、ウイルス性肺炎や他臓器の感染症、誤嚥(ごえん)性肺炎、薬物中毒などの後に急性の呼吸困難を発症し、胸部X線写真で肺に浸潤影がみられ、動脈血液中の酸素分圧が低下して低酸素血症となる病態のうち、左心不全ではないものを急性肺障害と定義し、その重症例をARDSと分類する。肺胞組織だけでなく全身臓器にも損傷が及び、死に至ることも多い。1967年にペティThomas L. Petty(1932―2009)とアシュボーDavid G. Ashbaughにより報告された概念で、成人呼吸窮迫症候群adult respiratory distress syndromeとよばれていたが、未成年にも発症するため現在の名称になった。新生児に生じるものは特発性呼吸窮迫症候群(IRDS:idiopathic respiratory distress syndrome)とよぶ。治療としては、通常の酸素投与だけでは十分でないことが多く、呼気終末陽圧(PEEP:positive end expiratory pressure)をはじめとする人工呼吸管理と、気道分泌物抑制および気管支閉塞予防の目的で多価酵素阻害薬やβ2(ベータツー)刺激薬(気管支拡張剤)などの薬物療法も用いられているが、有効な根本的治療法は確立されていない。

[編集部]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
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六訂版 家庭医学大全科

急性呼吸窮迫症候群
きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん
Acute respiratory distress syndrome
(呼吸器の病気)

どんな病気か

 しばしばARDSと略されます。低酸素の程度が軽いものを急性肺損傷といいます。

 さまざまな原因に続発する急性の肺の損傷です。肺の間質(かんしつ)肺胞腔(はいほうくう)(空気を入れる袋状のところ)に水分と細胞浸潤(しんじゅん)がみられ、酸素化(血液中に酸素を取り込むこと)が損なわれます。その本体は、血管内皮細胞が損なわれて血管の透過性が進み、その結果もたらされる急性肺水腫(はいすいしゅ)で、極めて予後が悪い状態です。心不全が原因のうっ血が原因の肺水腫とは異なります。

 また、低出生体重児にみられる特発性呼吸窮迫症候群は、肺表面活性物質(肺サーファクタント)の不足によるため、ARDSとは病態が異なります。

原因は何か

 原因としてはショック、とくに敗血症(はいけつしょう)(菌が血中に入った状態)がその代表です。そのほか、重症肺炎粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)多発外傷急性膵炎(すいえん)、術後、輸血などに続いて急速に発症してくる予後のよくない合併症です。

 ARDSでは腎不全、心不全、肝不全を合併することが多く、ある刺激に対して生体が示す過度の全身的炎症から多臓器不全が引き起こされますが、その部分症とも考えられます。マクロファージからの組織壊死(えし)因子と好中球(こうちゅうきゅう)からのエラスターゼの産生が、病態の進行に大きく関わります。

症状の現れ方

 呼吸不全のため(ひん)呼吸、呼吸困難、チアノーゼ、頻脈などがみられます。

検査と診断

 胸部X線像で両側の肺に急速に浸潤影が認められ、通常の酸素投与では低酸素血症は改善しない場合で、うっ血性心不全の存在が否定できれば診断されます。

治療の方法

 原因となった基礎疾患の治療を行いつつ、呼吸管理導入の時期を逃さないように注意します。近年、肺の保護的人工呼吸管理法が行われるようになり、生存率が改善しました。これは1回の換気量を低めに設定し、動脈血二酸化炭素分圧を80Torr程度にまで上昇してもよいとする方法です。

 薬物療法では、抗エラスターゼ製剤も試みられています。

千田 金吾

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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