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急性糸球体腎炎【キュウセイシキュウタイジンエン】

デジタル大辞泉

きゅうせい‐しきゅうたいじんえん〔キフセイシキウタイジンエン〕【急性糸球体腎炎】
むくみ・乏尿高血圧血尿蛋白尿などの症状を急に発症する糸球体腎炎扁桃炎(へんとうえん)などの感染症に続いて起こることが多い。急性腎炎症候群

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

急性糸球体腎炎
 急性の腎糸球体の炎症で,水腫,体重増,タンパク質尿,血尿などが特徴.

出典:朝倉書店
Copyright (C) 2009 Asakura Publishing Co., Ltd. All rights reserved.
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世界大百科事典 第2版

きゅうせいしきゅうたいじんえん【急性糸球体腎炎】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

内科学 第10版

急性糸球体腎炎(原発性糸球体疾患)
定義・概念
 急性腎炎症候群(acute nephritic syndrome)は急激に発症する顕微鏡的あるいは肉眼的血尿,蛋白尿,高血圧,糸球体濾過量の低下,Na・水の貯留を特徴とする. 急性腎炎症候群の代表的疾患が急性糸球体腎炎である.急性糸球体腎炎の典型例はA群β溶連菌の先行感染後,潜伏期を経て血尿,浮腫,高血圧を3主徴とし発症する.病理学的には管内増殖性糸球体腎炎を呈する.小児・流行例の多くは2~6カ月で治癒に至るが,成人散発例では比較的予後不良である.
疫学
 急性糸球体腎炎の疫学はこの10~20年で著しく変化した.過去には急性糸球体腎炎の大部分はA群β溶連菌(M型12,1,24など)による扁桃炎もしくは皮膚感染症を原因として発症し,acute poststreptococcal glomerulonephritis(APSGN)という病名が使われていた.好発年齢は溶連菌の初感染を受ける4~12歳であった.最近,先進国では衛生環境の改善や抗菌薬の進歩により小児急性糸球体腎炎や流行性急性糸球体腎炎は激減している.一方,成人の散発例は増加しており,好発年齢も高齢化している.2:1で男性の頻度が高く,アルコール中毒,糖尿病,悪性腫瘍などの易感染性宿主(compromised host)に併発することが多い.感染の起炎菌も溶連菌以外のブドウ球菌,Gram陰性桿菌によるものの相対的頻度が高くなっており,肺炎球菌,ヘルペス,サイトメガロウイルス,Epstein-Barr(EB)ウイルスなどのウイルス,リケッチア,真菌,原虫の感染によるものもみられ,APSGNではなくacute postinfectious glomerulonephritis(APIGN)という病名が使われるようになった.現在,感染巣としては上気道炎,皮膚感染症,肺炎,心内膜炎が多い.糖尿病ではブドウ球菌による皮膚感染症後に多くAPIGNが糖尿病性腎症に合併することもある.
成因
 古典的には溶連菌感染後急性糸球体腎炎は腎炎惹起抗原が感染局所より血中に入り,この抗原に対して患者が産生する抗体が流血中あるいは糸球体(in situ)で免疫複合体を形成し,糸球体に沈着,補体を活性化し糸球体病変を形成すると考えられてきた.最近では腎炎惹起抗原の非免疫学的機序による糸球体沈着,プラスミン活性持続による直接的な糸球体病変形成も考えられている(図11-3-2).腎炎惹起抗原としては菌体内抗原のnephritis-associated plasmin receptor(NAPlr)と菌体外抗原のstreptococcal pyrogenic exotoxin B (SPEB)などが報告されている.NAPlr,SPEBは急性糸球体腎炎の早期に糸球体沈着がみられ,回復期の血清中にみられ,両者とも直接的に補体のalternative pathwayを活性化するとされている.
臨床症状
 先行感染後10~14日の潜伏期を経て発症する.血尿,浮腫,高血圧,乏尿,蛋白尿があり,ネフローゼ,急性腎不全,慢性腎不全を伴うこともある.血尿は必発所見で肉眼的血尿は1/3の症例にみられる.乏尿は浮腫より2~3日前に認められる.浮腫は一般的には軽く顔面,特に顔瞼にみられることが多い.浮腫の成因はGFRの低下によるNa・水の貯留であり,心拡大,胸水,肺うっ血などの溢水状態のみられる症例もある.高血圧は1/2の症例にみられる.既存高血圧のある成人例では増悪がみられる.経過は小児では潜伏期(10~14日),乏尿期(数日),利尿期(数日~1週),回復期(1~2カ月),治癒期(2~3カ月)の経過をたどるものがほとんどであり,蛋白尿は血尿より早く消失する.成人例では蛋白尿,血尿,腎機能低下が遷延することが多い.
検査
成績
1)尿検査:
血尿は100%に,蛋白尿もほとんどの症例でみられるが軽度のことが多く,ネフローゼを呈するのは10%以下である.沈渣では変形赤血球,白血球,赤血球円柱,白血球円柱,顆粒円柱などがみられる.
2)腎機能検査:
糸球体濾過量(GFR)は減少する.血清クレアチニン,BUNの上昇がある.
3)血清学的検査:
溶連菌感染後急性腎炎ではantistreptolysin-O(ASO)が陽性であることが多く,感染後数日で上昇し1~2年で正常化する.antistrepto kinase(ASK)の陽性率は50%未満である.一過性の血清補体価(CH50)の低下は感染を生じた菌にかかわらずほぼ全例で認められ,6~8週以内に正常化する.C3の減少がもっとも著しく,C1q,C4の低下は軽度であり,alternative pathwayを介した補体活性化機序が考えられている.流血中免疫複合体(circulating immune complex:CIC)は急性期には60~80%の症例で陽性である.
病理所見
1)光顕所見:
びまん性全節性の管内増殖性糸球体腎炎(endocapillary glomerulonephritis)の像を呈する.管内増殖は毛細血管内増殖と同義語である.糸球体の腫大,富核(糸球体毛細血管係蹄内の多数の単球,好中球の浸潤),内皮細胞の増殖・肥大,毛細血管腔の狭小化がある(図11-3-3A,B).メサンギウム細胞も増加し,特に回復期には著しい.半月体形成のみられることもある.尿細管,間質には著変がないことが多いが,ときに糸球体周囲に細胞浸潤を認める.
2)蛍光抗体所見:
C3(ときにIgG)の顆粒状沈着が急性期には糸球体係蹄壁および一部メサンギウムにみられ,回復期にはメサンギウムのみにみられる.Sorgerらは沈着様式により①starry sky型(係蹄壁の星を散りばめたような細顆粒状沈着;図11-3-3C),②garland型(係蹄壁の強い帯状の粗大顆粒状沈着),③mesa­ngium型(メサンギウムの顆粒状沈着)に分けた.starry sky型は急性期にみられ,garland型は予後不良の傾向があり,mesangium型は回復期にみられる.
3)糸球体電顕所見:
急性期では瘤状の上皮下沈着物(hump)がみられるが(図11-3-3D),発症後約6週で消褪する.humpが著しく多数で,密に存在するものはatypical humpとよばれ予後不良の徴候である.
診断
 表11-3-3の急性糸球体腎炎の診断根拠による.
治療
1)一般療法:
対症療法が主体である.腎血流量保持のため1~2カ月間安静し,食事療法を行う.全病期,高エネルギー(約35 kcal/kg/日)食とし,乏尿期,利尿期は蛋白 (0.5 g/kg/日)と食塩(0〜3 g/kg/日)を制限し,回復期,治癒期は蛋白(1.0 g/kg/日)と食塩(3〜5 g/kg/日)の制限をゆるめる.
2)薬物療法:
病初期にはペニシリン,セフェム系などの抗生剤を感染の持続・再燃防止のため用いる事もある.乏尿・浮腫・高血圧が著しいときは利尿薬,降圧薬を用いる.腎不全が高度であれば透析を行う.副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬は半月体形成を伴う特殊例以外,原則的には用いない.
予後
 小児,流行例ではほぼ全例完全治癒に至る.成人散発例での治癒率は28~64%であり,持続性腎機能低下が27~53%,末期腎不全が4~17%,死亡が4~11%と報告されている.高齢者,糖尿病,compromised host,男性,血清クレアチニン高値が予後不良の危険因子である.[水入苑生]

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

急性糸球体腎炎
きゅうせいしきゅうたいじんえん
Acute glomerulonephritis
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 腎臓の本態は糸球体とそれに続く尿細管(にょうさいかん)です(図2)。糸球体は球状の毛細血管のかたまりで、流れ込んできた血液を濾過します。その濾液(原尿)が細長い尿細管に入り、必要なものは再吸収されて血液に戻り、残りを尿として排泄することで血液を正常化しています。

 急性糸球体腎炎は、何らかの感染症が原因で、糸球体に炎症を起こした状態です。感染が治癒すると腎炎も治ります。

 血液を濾過する糸球体は、いわば網目の細かいざるのようなものです。ここに炎症が生じると網目が目詰まりし、血液の濾過ができなくなり、尿の産生が減少(乏尿(ぼうにょう))します。すると、体内に水分や塩分が過剰になるため血圧が高くなり、浮腫(ふしゅ)(むくみ)が出現します。老廃物も排泄されないため、体内に蓄積します。それを反映して、血液中の尿素窒素やクレアチニンが次第に高くなります。この状態が腎不全(じんふぜん)です。

 また、傷ついた糸球体から、普通は尿に出ないはずの蛋白や赤血球・白血球がもれ出て、蛋白尿や血尿になります。

原因は何か

 咽頭炎(いんとうえん)扁桃炎(へんとうえん)といった上気道炎や皮膚化膿症を起こすA群β(ベータ)溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因の90%以上を占め、これを溶連菌感染後急性糸球体腎炎といいます。その他にも、いろいろな細菌、真菌、ウイルスが原因になりますが、むしろまれです。

 溶連菌の感染が起こると、生体は防御するための免疫反応として、溶連菌成分に対する抗体を産生します。その抗体と溶連菌成分が結合した複合物(抗原抗体複合物)が、血流にのって腎の糸球体に運ばれて網目にひっかかり、炎症が引き起こされます。そこでは、もう1つの免疫成分である補体(ほたい)が活性化され、炎症にさらに火がつきます。その結果、糸球体の目詰まりや破壊が生じて、急性糸球体腎炎になります。

 溶連菌の初感染を起こす4~12歳の小児に多い疾患です。以前は頻度の高い腎炎で、集団発生もありました。しかし、衛生環境がよくなり、溶連菌感染に対して早期に抗生剤が投与されるため、最近では非常に減少し軽症化しています。

症状の現れ方

 多くは咽頭炎扁桃炎などの上気道炎から、1~2週間(平均10日)の潜伏期をおいて、突然に血尿・蛋白尿、乏尿、浮腫、高血圧などの症状で発症します。目で見てわかる血尿(肉眼的血尿)は30%ですが、検査でわかる血尿は全例にみられます。むくみは顔面、とくにまぶたのむくみに起床時に気づくことがよくあります。血圧は高血圧(収縮期血圧140㎜Hg、拡張期血圧90㎜Hg)に達しなくても、ほとんどが通常の血圧より上昇します。極期(症状のピーク)を過ぎて再び尿が出始めると、これらの症状は急速に改善します。

検査と診断

 溶連菌の感染があり、2週間の潜伏期の後に血尿が出現し、さらに、補体の低下が認められれば急性糸球体腎炎と診断してほぼ間違いありません。(詳細はコラム)

治療の方法

 自然に軽快する疾患ですので、治療は症状の軽減と合併症の予防、腎臓の保護が基本です。保温と安静を守り、腎臓に流れる血流を減らさないようにします。次に食事療法ですが、塩分と蛋白質は腎臓に負担をかけるので制限します。制限の程度は、腎障害の程度によります。水分も過剰でむくんでいますので、1日の水分量を尿量+800ml(汗や呼吸で排泄される水分)以下にします。摂取量より排泄量が多くなるようバランスをとらないと、改善しないからです。尿が極端に少ない場合は、カリウム含有量の多い生野菜、果物、芋類も制限が必要になります。利尿薬で尿量の確保に努めますが、反応が悪いと一時的に血液透析(けつえきとうせき)が必要になることもあります。

 腎炎の発症時に溶連菌の残存は少ないのですが、残っていた場合に経過を悪くする可能性と、他の人への感染予防の目的で抗生剤を投与します。高血圧に対しては各種の降圧薬が用いられます。

 一般に、1~2週間で回復に向かうと尿量が増加し、症状は急速に改善します。小児の予後は極めて良好で、ほとんどが治癒します。成人では30~50%に、何らかの異常が遷延(せんえん)する(長引く)といわれています。その場合は、慎重な経過観察が必要です。女性の場合、完全に治癒しても1年間は妊娠を避けたほうがよいとされています。

病気に気づいたらどうする

 自覚症状として多いものは、血尿、むくみ、血圧上昇、尿量減少などです。これらは他の経過のよくない腎炎や膠原病(こうげんびょう)腫瘍性(しゅようせい)疾患、遺伝性の疾患、心臓の疾患などさまざまな病気で起こります。異常に気づいた場合は、小児科もしくは内科を受診してください。

鈴木 重伸

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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