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性の分化【せいのぶんか】

日本大百科全書(ニッポニカ)

性の分化
せいのぶんか

生物は生殖を通して種族を維持し、有性生殖に伴って遺伝子の組換えを行い、進化してきた。しかし、生物の変遷を歴史のうえから大きくとらえると、簡単な無性的増殖から複雑な有性的増殖へと変化して種々の有性生殖法が行われるようになったとみられる。これが「性の分化」である。ここでは、その分化の諸相について考えてみる。

[寺川博典]

性の分化の始まりと進化

太古の海中に誕生した単細胞の原始生物は、長い間、無性的に栄養分裂を行って増殖した。しかし、やがて周囲の水中に、吸収して利用できる窒素源、リン酸源などが欠乏すると、接合要素形成分裂を行い、それまでの単細胞の栄養体とは形態的には同じであるが、生理的には違いのある単細胞体を生じて接合するようになった。この形態的に同型の単細胞体の接合はもっとも原始的な有性生殖法であり、性の分化の始まりであった。

 ところで、単細胞体の原始生物群は、栄養法のうえで三方向に進化した。吸収という働きを維持する菌類的方向と、吸収に光合成という働きが加わった植物的方向、および吸収に消化という働きが加わった消化吸収を行う動物的方向である。さらに、それぞれの栄養法をより効果的にするように体制が進化して、多核体や多細胞体となり、三つの基本系統群ができ、それぞれの体制を土台にして生殖法が発展していく。そして、その間に、性の分化には二つの面が現れてくる。その一は、二つの接合要素の間に形態的な差を生じた「雌雄性の分化」である。その二は、形態的な差のある場合、あるいはない場合でも、二者間で接合がおこるかどうかという、働きのうえでの「和合性の分化」である。

[寺川博典]

雌雄性の分化

前述の同型単細胞体接合には三つの意味がある。その一は接合した単細胞体は配偶子(鞭毛(べんもう)のある動配偶子)としての働き、その二は動配偶子を生じない配偶子嚢(のう)としての働き、その三は体細胞としての働きをもったということである。これらは、その後の体制の進化に伴って三方向に進化することとなる。いずれにしても、この同型接合要素にまず、行動上の差が生じ、さらに形態上の差ができて雌雄性が分化していったといえる。雌雄性の分化には、雌雄同体と雌雄異体のものがあるが、雌になるか雄になるかの決定は、生理的状態や外部環境条件による場合(表現型的雌雄性決定)と、特定の遺伝子による場合(遺伝子型的雌雄性決定)のあることが知られている。

 以下、接合の形態分化と、雌雄性決定について述べる。(1)配偶子接合の形態分化 まず動配偶子が異型となり、大きいほうの雌に雄の核が入る。この場合栄養体が単細胞であれば、全体が配偶子を生ずる配偶子嚢となり(全実性)、多核体や多細胞体であれば、その一部分が配偶子嚢となる(分実性)。この配偶子嚢もやがて同型から異型へと進んでいく。次に現れる進化は、雌配偶子が鞭毛のない卵となり、小さい精子と接合する形式である。菌類のツボカビ類、および動植物類はこの進化コースをたどったものである。(2)配偶子嚢接合の形態分化 動配偶子を生じない配偶子嚢となって接合するという方向に進化したのは卵菌類である。その形式は、全実性から分実性、同型配偶子嚢から異型配偶子嚢まである。一ないし数個の卵を含む生卵器に多核を含む造精器が接触し、これから細い授精管が伸びて卵まで達し、これを通って精核が卵に入るという配偶子嚢接合は、配偶子接合の退化型といわれてきたが、両者は別の進化をたどったものである。生卵器内の卵は、精核を受け入れる準備として雄の刺激によって形成されたものである。(3)体細胞接合の形態分化 この形式は、接合する単細胞体が栄養体の性質を維持して成長するという方向に進化したもので、菌類一般にみられる。多細胞体になっても体細胞が接合し、接合部の形態分化がおこらずに、和合性が発達している場合が多い。しかし接合菌類、子嚢菌類、およびサビキン類では、接合部が膨らんだり、異型になるものがある。これも(2)と同様に、配偶子接合退化型と考えるのは適当ではない。(4)表現型的雌雄性決定 単相で雌雄同体の藻類や同型胞子を生ずるシダ類前葉体などの雌雄性は、遺伝的に均一であって、両性への潜在能力をもっている。また、複相生物(胞子体のみの生活環をもつ生物)のなかには、同じ遺伝子型の細胞で性決定が行われて1個体に両性が現れるものがある。少数の後生動物、複相の藻類、異型胞子を生ずるシダ類胞子体その他の多くの植物は、雌雄同体である。これらの生物では、自家受精すると遺伝子組換えが妨げられるため、それを制御する仕組みがみられる。たとえば、植物における異型蕊(ずい)や、雌雄異熟がこの例である。また、カタツムリが一つの生殖巣に精子を生じたのちに卵を生じ、クロダイは稚魚は雄で、成魚になると雌になるのもこのためである。また、環形動物のボネリムシ幼生は、単独で成長すると大きい雌になるが、雄が雌の吻(ふん)について寄生すると小さい雄となる。(5)遺伝子型的雌雄性決定 単相生物では、一般に相同染色体上に雌雄性発現のためのF因子とM因子があり、減数分裂のときに分離して、個体は雌または雄になる。たとえば、コケ類では、大きいX染色体が入ると雌、小さいY染色体が入ると雄になるが、これらの性染色体に性発現遺伝子があると考えられている。複相の雌雄異体生物では、接合時に性が決まり、雌対雄が一対一となる。減数分裂によって精子に二型を生ずるもの(XY型かXO型)では、精子によって性が決まり、卵に二型を生ずるもの(ZW型かZO型)では卵によって性が決まる。

[寺川博典]

和合性の分化

植物のタネツケバナやタバコには自家受精を妨げる遺伝的仕組みがあり、不和合因子S1S2をもつ花柱はS1花粉およびS2花粉とは和合性がない。真核菌類では和合性が著しく分化していて、さまざまな場合のあることが知られている。

[寺川博典]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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