●意志【いし】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
意志
いし
will
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デジタル大辞泉
い‐し【意志】
2 目的や計画を選択し、それを実現しようとする精神の働き。知識・感情に対立するものと考えられ、合わせて「知情意」という。「
3 哲学で、個人あるいは集団の行動を意識的に決定する能力。広義には、欲望も含まれる。倫理学的には、道徳的判断の主体あるいは原因となるものをいい、衝動と対立する。
[用法]意志・意思――「意志」は「意志を貫く」「意志の強い人」「意志薄弱」など、何かをしよう、したいという気持ちを表す場合に用いられる。哲学・心理学用語としては「意志」を用いることが多い。◇「意思」は、「双方の意思を汲(く)む」「家族の意思を尊重する」など、思い・考えの意味に重点を置いた場合に用いられる。法律用語としては「意思」を用いることが多い。◇「意志(意思)の疎通を欠く」「意志(意思)表示」などは、話し手の意識によって使い分けられることもある。
出典:小学館
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世界大百科事典 第2版
いし【意志 will】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
意志
いし
will 英語
volonté フランス語
Wille ドイツ語
価値の感情を伴う目的動機に促され、その目的の実現によって終わる一連の心的プロセスが、普通、「意志」とよばれている。一般に人間の行為は、これから遂行される行為によって実現されるはずの未来のできごと、つまり「目的動機」、および、この目的動機=企図そのものを決定づけた利害、関心、状況判断、性格、習慣等々の「理由動機」とによって説明される。「未来」先取り的な目的動機と「過去」の諸経験に根ざす理由動機とが互いに連結しつつ、行為とよばれるある統一的な連関を形成し、「意志」はその連関を貫通すると考えられている。
しかし、哲学思想史上「意志哲学」と称されるショーペンハウアーやニーチェの哲学によれば、根源の「意志」はいわゆる「動機」をも超えたところで威力を振るい、それゆえ「動機」によっては説明されえない。ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』(1819)によれば、動機は一定の時と場所と状況における意志の発動を説明し、その意味で「動機の法則」は行為に関する一種の根拠律ではあるが、しかしそれは「そもそも意志する」という始原の事実、いわゆる「生への意志」を理由づけ、説明するものではない。
根拠律(理由律)とは、すべて事物や事態がかくかくにあるについては、それに対する十分な根拠(理由)がなければならないというものであり、行為の場合の充足根拠律は、結局、「動機の法則」であるが、ショーペンハウアーによれば、「動機」は個々の経験から推究され、不完全な仕方で合成された人間の(経験的)性格との関係においては、その人間の行為について十分な根拠(理由)づけをなし、説明を与える。しかし、人間が「そもそも意志する」という始原的事実は、まったく根拠律の外にあり、一般に合理性を旨とする科学的認識、根拠律を手引きとする体系的認識をもってしては、主観にとっての客観であるにすぎない「表象」相互の関係(理由と帰結の関係)はとらえられても、表象の世界の根底にある「意志」の世界には届かないのである。
時間空間および因果によって構成される「表象」の根底には、「物自体」である「意志」が渦巻いているとするショーペンハウアー哲学の真髄は、知性の力によっても容易に脱しえない意志衝動の支配下に人間は置かれているという非合理主義的な洞察にあり、西洋哲学思想の主流の伝統=理性主義に反逆するこの洞察は、「力への意志」を説いたニーチェにも受け継がれている。
[山崎庸佑]
『ショーペンハウアー著、斎藤忍随他訳『意志と表象としての世界』(『ショーペンハウアー全集2~6』1972・白水社)』
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精選版 日本国語大辞典
い‐し【意志】
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最新 心理学事典
いし
意志
will,volition(英),volonte´(仏),Wille(独)
もう一つの理由は,歴史的に見て意志の概念が多義的であったことが挙げられる。また,心理学の分析的方法論によって,意志という曖昧な心の働きが多数の,操作可能な要素へと分解されてきたこととも関連しているだろう。哲学の歴史,また心理学の前史を見ると,意志は最も広義には欲望と同義であり,行動を引き起こす原因として考えられてきた。ジェームズJames,W.は『心理学Psychology:Briefer Course』(1892)の中で,「感覚的刺激によって生じる行為はいずれも有害物を避け有益なものを得ようとするものであって,反射から,本能と意志の両者からなる半反射を経て,意志の作用である随意的行動voluntary actに至るが,その間に明確な区切りはない」と述べている。反射reflex,動因drive,動機づけmotivation,欲求needなどの心理学用語はすべて行動の原因を説明する欲望的概念であるが,そこには脊髄における感覚神経と運動神経の結合から,自己実現self-actualizationの欲求に至るまでのさまざまな水準が含まれている。
歴史の中で人びとが考察の対象としてきた意志は,欲望的な側面に限定されていたわけではない。西周が『心理学』として翻訳したヘブンHaven,J.の著書『Mental philosophy』(1859)の中で,ヘブンは「手の意志的運動においてはまず目標物があり,次いで動機があり,第三に選択があり,最後に意志を実行に移せば,妨げがない限りまた身体の機能に損傷がない限り,手が動く」と述べている。現代の心理学の用語に直せば,意志とよばれうる日常の体験には,少なくとも誘因incentive,動機づけ,意思決定decision makingと遂行performanceという四つの過程がかかわっているといえるだろう。さらにこのほかにも,欲求の対象を獲得するうえで妨害が存在する場合にあきらめずに努力を続ける粘りperseveranceや,選択した欲求を保持しつつ行動を抑制する自制self-controlとよばれる過程も,意志に含めることができるだろう。つまり,現代の心理学において意志の研究が行なわれなくなったのは,日常生活の中で意志ということばが当てはまる心の働きに意義が失われたからではなく,心の働きを要素に分けて精密に探究しようとする心理学の努力の中で,多様な過程や現象を,意志という一つの概念で代表することができなくなったからであるということができるだろう。
しかし,意志の概念が心理学からまったく失われたというわけではない。臨床心理学の一部や,近年その重要性を増してきたポジティブ心理学positive psychologyにおいては,選択に関連して,自らの行動を自らの意志で選ぶことができるという自由意志free willの存在が広く認められていると考えてよい。自由意志は,歴史的に見るとアクイナスAquinas,T.によって,またデカルトDescartes,R.によって肯定されたが,スピノザSpinoza,B.によって,またヒュームHume,D.によって否定された。それでも自由な意志の存在を前提とする心理学が求められるのは,われわれが,自分自身を見る視点と他者を眺める視点とを使い分ける必要に迫られているからであろう。
前述したように,近年は意志という術語そのものも使われることが少なくなった。一方,法律用語として責任能力の所在を示す「意思」が導入されていたが,この語はしだいに一般に浸透し,意志と混用されるに至った。心理学界にもその流れが波及し,意志の使用頻度が減衰して,同様な混用が起こっている。そこで無用な混乱を避けるために,たとえば,意志は情動の抑制や制御によってより倫理的または社会的目標を選択し遂行する過程や機能を指し,willまたはvolitionに対応するものと規定する。これに対し,意思は認知的・計算論的情報処理によってより合理的・適応的目標を選択し遂行する過程や機能を指し,intentionに対応するものと規定する。今後の展開を図るためには,このような使い分けが望ましい。 →意思決定 →動機づけ →ポジティブ心理学 →欲求
〔宇津木 成介〕
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