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意識障害【いしきしょうがい】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

意識障害
いしきしょうがい
disturbance of consciousness
精神活動が一時的あるいは持続的に障害を受けること。意識混濁の程度には種々あり,軽度のものからに,明識不能 (困難) 状態,傾眠昏蒙昏睡などがある。嗜眠と傾はほとんど同義で,睡眠に陥ろうとする傾向が強いものをいう。昏睡は最も高度の意識障害で,強い刺激を与えても,まったく反応がない。意識が短時間だけ失われた状態は失神という。意識障害,特に昏睡の原因となる疾患は,尿毒症肝不全糖尿病低血糖脳腫瘍髄膜炎脳炎脳卒中,頭部外傷,てんかんなどいろいろある。早期に診断し,原因に応じた対策を講じなければならない。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

いしき‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【意識障害】
意識の明晰(めいせき)さ・充実度・活発さ・秩序などが損なわれた状態。その程度によって、傾眠昏蒙(こんもう)嗜眠(しみん)昏睡などの状態に分けられる。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

意識障害
 精神活動の障害の総称で,知覚,注意力,判断力,記憶力,認知力,思考力などについていう.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

いしきしょうがい【意識障害】

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

いしきしょうがい【意識障害】
意識の明るさ(覚醒かくせい度)が低下したり、思考・判断・記憶などの能力が損なわれた状態。昏睡・傾眠・譫妄せんもう・錯乱・朦朧もうろう状態などさまざまな段階に区分される。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

意識障害
いしきしょうがい
知覚、注意、思考、判断、記憶など一連の能力が均一に一過性ないし持続性に障害されたものをいう。意識とは、体験主体によってそれと自覚されうる外的および内的体験の全体をある特定の時点において可能ならしめ、これを組織化し秩序を与える精神生理学的機能として想定されるものである。このような意識が、〔1〕体験の明晰(めいせき)さ(意識の清明さ)、〔2〕体験の広がり(意識野)、〔3〕体験の秩序ある構造、のいずれにおいて損なわれるかに応じて、意識障害には通常、〔1〕意識混濁、〔2〕意識狭窄(きょうさく)、〔3〕意識変容、の3要因が区別される。意識障害においては実際には、この3要因がなんらかの程度に混在することが多いが、各要因が比較的純粋な形で顕在化することもある。
 意識混濁には、覚醒(かくせい)度または清明さの低下の量的程度に応じてさまざまな段階が区別される。たとえばドイツのハイマンH. Heimannは、以下の5段階をあげている。
(1)さまざまな精神的活動が困難で不活発となり、外界が疎遠感をもって体験され、感情の動きが鈍麻する昏蒙(こんもう)
(2)なんとか覚醒してはいるが眠たげな表情と態度が目だち、外界からの刺激に対する反応が緩慢となる傾眠
(3)放置すると入眠してしまうが、強い刺激によって覚醒させることが可能な昏眠
(4)外界からの刺激によっても覚醒させることのできない睡眠類似の状態がみられ、腱(けん)反射が低下する前昏睡
(5)外界からの刺激に対する運動反射のみならず、さまざまな反射が消失してしまう昏睡
 しかし、各段階の区別法と名称には、立場や学派によりかなりの異同があるので注意が必要である。たとえば、前述のドイツ語圏の分類とは異なり、フランス語圏では、(3)の昏眠を軽度昏睡、(4)の前昏睡を中度昏睡とよび、さらに(5)の昏睡を、深昏睡と、植物性神経機能まで喪失して人為的生存のみが可能な過度昏睡(脳死)に分けており、英語圏では(3)の昏眠を昏迷とよぶことがある。また、昏睡は原則として短時日のうちに回復するか、もしくは死に至るかの経過をとるが、ときに数週間、まれには数か月以上持続して重篤な認知症と区別困難な、開眼しているが反応のない状態に移行することがある。これを遷延昏睡といい、無動性緘黙(かんもく)(無言)症や失外套(がいとう)症状群などにみられる。
 意識狭窄は意識狭縮ともよばれ、意識の広がりの障害で、体験内容の特定の一部分しか意識されない状態をいう。激しい感情のとりこになっているときや、ヒステリー、催眠状態、一種のもうろう状態でみられる。心因性のものでは前述の意識混濁の要素がなく、したがって脳波を調べても変化がほとんどないのが特徴的である。意識の統合性が失われるようになると、意識変容に移行する。
 意識変容とは意識の混濁と興奮がいろいろに組み合わされたもので、ごく普通にみられる意識障害の型である。通常、譫妄(せんもう)、錯乱(アメンチア)、もうろう状態の3型が区別されるが、いずれも一見、覚醒しているかにみえながら十分に適応した行動がとれない状態として観察される。なお、譫妄とは、とくに多彩な幻覚体験が前景に出る状態で、夢幻症(フランス語圏での用語)ともよばれる。[濱中淑彦]
『H・エー著、大橋博司訳『意識1』(1969・みすず書房) ▽H・エー著、大橋博司訳『意識2』(1971・みすず書房) ▽山口成良著『意識障害(新臨床医学文庫264)』(1977・金原出版) ▽一瀬邦弘編『せん妄』(1998・ライフ・サイエンス) ▽Gordon Bryan Young, Allan H. Ropper, Charles Francis Bolton著、井上聖啓・有賀徹・堤晴彦監訳『昏睡と意識障害』(2001・メディカル・サイエンス・インターナショナル)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

いしき‐しょうがい ‥シャウガイ【意識障害】
〘名〙 一般に、覚醒水準の低下、病的な睡眠状態をいう。脳の原発性疾患のほか、他の部位の身体病のため二次的に脳が障害されてもおこる。軽い段階から、昏蒙、昏眠、昏睡とわけられる。昏睡状態では、外部からの刺激に全く反応を示さなくなる。幻覚や妄想を伴う場合もある。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

意識障害(症候学)
概念
 意識とは,覚醒した個が,自己(self)および自己と外界(surroundings)との関係を認識している状態,言いかえれば,いましていることが自分でわかっている状態をいう.唯物論の立場を取る医学において,意識の根源とは賦活された大脳皮質の活動と定義され,したがって,正常な意識を維持するためには,賦活される大脳皮質と,その賦活を維持する網様体賦活系(reticular activation system:RAS)の正常な活動とが不可欠とされる.睡眠(sleep)とは,大脳皮質覚醒機構が正常に働く脳で生理的に大脳皮質が情報学的な休止におかれた状態である.
 病的に,覚醒(arousal)がまったく得られなくなった状態を昏睡(coma),不快刺激に対する回避行動などの反応がみられる状態を昏迷(stupor),刺激により覚醒可能で大脳皮質機能も確認できるが,自分自身では覚醒状態を維持できない状態を傾眠傾向(drowsiness,somnolence)とよぶ.覚醒が維持され,大脳皮質機能も確認できるが,正常な認識力に欠けている状態を,錯乱状態(confusional state),網様体賦活系が正常に働いているにもかかわらず,大脳皮質による情報処理能力が認められない状態が慢性的に継続した場合を,植物状態(vegetative state)とよぶ.
病態生理
 意識障害は,意識の座である大脳皮質の機能が広範囲に侵された場合と,大脳皮質が正常でも,その賦活を維持するために必須である網様体賦活系の機能が障害された場合に起こる.前者は,代謝,薬物,感染など,大脳皮質の機能全体を同時に侵す非器質性疾患によることが多く,後者は,腫瘍,外傷,虚血など,脳幹障害,特に,中脳の機能障害を起こす器質性疾患による場合が多い.
鑑別診断
 意識障害,特に昏睡は,単なる症候ではなく,それ自体が臨床診断であることの認識が大切である.最も重要な鑑別診断は,閉じ込め症候群(locked-in syndrome)で,閉じ込め症候群を完全に否定できるまでは,昏睡の診断を下してはならない.意識障害の診断が確定した後,原因疾患の鑑別に着手する.【⇨15-3-1)】[中田 力]

出典:内科学 第10版
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意識障害(おもな神経症候)
概念
 意識の根源となる神経活動の機序は正確には理解されていない.日周期リズム(circadian rhythm)をつかさどる視床下部の神経機構と,その支配を受ける上行覚醒系(ascending arousal system)の詳細は徐々に明らかにされつつあるが,網様体賦活系の全体像を提示するには至っていない(図15-3-1A).また,意識を取る最小限度の全身麻酔では,大脳皮質ニューロンの興奮性も上行覚醒系ニューロンの活動もほとんど抑制されないことから,意識を生み出す脳活動には,いまだ正確には解明されていないもう1つの要素が必須であることも認識されている. 経験論を主体とする臨床実践においては,詳細な神経科学的記載よりも単純化したモデルの方が有益である場合が多い.意識障害の臨床も例外ではなく,賦活される大脳皮質とその賦活を維持する網様体賦活系を結ぶ一元的なモデルがわかりやすく,かつ,臨床的に適合性が高い.このモデルにおいては,大脳皮質をさまざまな「機能ユニット」の集合体,網様体賦活系を,中脳から中脳吻側にかけての網様体(reticular system)近辺に存在する「賦活装置」と理解し,両者を結ぶ「配線」としては特定の経路を定めない(図15-3-1B). 覚醒(arousal)がまったく得られなくなった状態を昏睡(coma),覚醒は得られないものの,不快刺激に対する回避行動などの反応がみられる状態を昏迷(stupor),刺激により覚醒可能で大脳皮質機能も確認できるが,自分自身では覚醒状態を維持できない状態を傾眠傾向(drowsiness,somnolence),とよぶ.脳死判定におけるあいまいさを払拭するために使われている用語が,深昏睡(deep coma)で,外的刺激に対してまったくの無反応であることを強調した用語である.覚醒が維持され大脳皮質機能も確認できるが,正常な認識力に欠けている状態を,錯乱状態(confusional state)とよぶ.これは,大脳皮質広範囲の非特異的機能障害であり,精神疾患,認知症などの高次機能障害の症例でも観察されるが,急速に進行する症例では,代謝異常,薬物,感染などに伴う意識障害の初期症状である場合が多い.興奮(agitation),妄想(delusion),幻覚(hallucination),錯覚(illusion)など,強い陽性所見を呈する急性錯乱状態は,譫妄(delirium)とよばれる.網様体賦活系は正常に働いており,睡眠状態と覚醒状態の違い(sleep-awake cycle)も認められるにもかかわらず,慢性的な大脳皮質機能不全があり,自己および自己と外界との関係に対する認識が欠如したままの状態が数週間以上継続したとき,植物状態(vegetative state)とよぶ.昏睡からの移行型が主体であるが,慢性変性疾患の末期,重症の発達障害などの症例でも認められる.
病態生理
 網様体賦活系モデル(図15-3-1B)によれば,昏睡とは大脳皮質の賦活障害であり,意識の座である大脳皮質の機能が広範囲に侵された場合か,網様体賦活系の機能が障害された場合に起こる.大脳皮質全体の機能不全から昏睡を起こしやすい疾患とは,大脳の表面全体に急速に病変が波及しやすい特徴をもつ疾患である.その代表は,くも膜下腔を介して病変の広がる細菌性髄膜炎やくも膜下出血,血流によって大脳全体にその効果が波及する代謝疾患や薬物中毒,そして,電気的にニューロンネットワーク全体に波及して大脳皮質機能不全を起こす痙攣疾患である. 網様体賦活系の機能不全から昏睡を起こしやすい疾患とは,脳幹,特に,中脳から間脳にかけての部位を侵す器質性疾患である.脳底動脈上端部付近から分岐する貫通枝の閉塞による脳幹梗塞,脳底動脈閉塞,高血圧性橋出血・小脳出血に伴う脳幹圧迫,などがその代表である.大脳皮質の器質性局所障害だけでは昏睡を起こさない.したがって,大脳の器質性疾患で昏睡に至っている症例では,mass effectによるテント切痕ヘルニア(tentorial herniation)を疑う必要がある(図15-3-2).急速に増殖する脳腫瘍,広域梗塞や外傷に伴う脳浮腫,大きな血腫などが,その代表である.
神経所見
 昏睡患者で獲得可能な神経所見は極端に限られ,脳幹機能の反射経路診察が中心となる.
1)不快刺激への反応:
ピンによる疼痛刺激(pinprick)および眼窩切痕部への指による強い圧迫刺激は,現在でも人道的な不快刺激(noxious stimuli)として認められている.ただし,感染症の予防処置として,ピンは使い捨てのもの(虫ピン,安全ピン,楊枝,など)を使用する必要がある.開眼,回避行動などがみられる場合は昏迷状態で,昏睡よりは覚醒障害が軽いと判断される.昏睡状態でみられる反射性の肢位(posturing)では,除皮質硬直(decorticate posturing)と除脳硬直(decerebrate posturing)とがある(図15-3-3).
2)瞳孔と対光反射:
虹彩(iris)は交感神経と副交感神経の二重支配を受ける(図15-3-4).交感神経の興奮が散瞳(mydriasis)を,副交感神経の興奮が縮瞳(miosis)をもたらす.最終的な瞳孔の大きさは,両者のバランス状態によって決定される.交感神経中枢性遠心路は,視床下部後方から出発し,脳幹被蓋を胸髄まで下り,第一,第二胸髄側角の節前神経に至る.この遠心路の障害は縮瞳をもたらす(いわゆる,中枢性Horner症候群).視床出血では片側性もしくは両側性の縮瞳が,橋出血では両側性にきわめて強い縮瞳(いわゆる,pinpoint pupil)がみられる.ともに,対光反射は保たれていることが原則である.副交感神経の節前神経核(Edinger-Westphal核)は動眼神経核内側に位置し,視神経からの信号を両側性に受け,対光反射経路を形成する(図15-3-4).したがって,副交感神経障害は,散瞳と対光反射の消失を同時にもたらす.卵円形で中心から偏位した瞳孔は,corectopiaとよばれ,副交感神経系の不完全機能障害の徴候とされ,中脳吻側障害,動眼神経障害(特に病初期)でみられる.
3)眼球運動と前庭動眼反射:
 水平注視中枢(horizontal gaze center)は,正中傍橋網様体(paramedian pontine reticular formation:PPRF)で,橋に位置する.PPRFから動眼神経核への遠心線維は,PPRFを出るとすぐに交差し,対側の内側縦束(medial longitudinal fasciculus:MLF)を上行する(図15-3-5).したがって,昏睡の症例において,水平方向の共同眼球運動が両側性に観察できれば,中脳から橋にかけての脳幹障害を除外できることになる. 昏睡患者で自発眼球運動がみられる場合は,ゆっくりと左右に振れる,水平性共同眼球運動である場合が多い(いわゆる,roving eye movement).この動きは,故意に真似をすることが不可能であることから昏睡の確定診断を与えると同時に,脳幹障害が存在しないことを保証する. 自発眼球運動が観察されない場合は,前庭動眼反射(vestibulo-ocular reflex:VOR)を惹起させることで,水平方向共同眼球運動の診察を行う.人形の目現象(doll’s eye phenomenon)は,頭部を水平方向に回転させることにより直接的に内リンパの動きを起こすことで,カロリックテスト(caloric test)は外耳に冷水,または温水を注入することで温度差による内リンパの動きを起こすことで,水平方向の前庭動眼反射を惹起する診察法である.前者は回転運動と反対の方向に,後者は患者の体位,冷水,温水の違いでさまざまだが,典型的な仰臥位で冷水の注入を行った場合は,注入側を注視する方向に眼球運動が起こる.前庭動眼反射経路は,厳密にいえば,随意水平方向共同眼球運動経路と同一であるわけではないが,随意運動が対側の前頭眼野からの命令によりPPRFの活動を促すと同様に,対側の前庭神経からの命令がPPRF活動を促すと考えると,わかりやすい(図15-3-5). 昏睡患者で固定された凝視がみられる場合がある.水平方向へのものは,共同偏視(conjugate deviation),垂直方向へのものは持続性注視(sustained gaze)とよばれる.共同偏視は左右のPPRF活動のバランスが崩れることから起こり,片側のPPRFそのものが破壊された場合は対側に向かっての,前頭眼野(frontal eye field)の障害にともなう対側PPRFの神経機能解離(diaschisis)による場合は,病側に向かっての注視が起こる. 持続性注視は心停止などによる大脳皮質の広範囲の障害が起こった場合にみられる現象である.上方への持続性注視(sustained upgaze)が最も多く,下眼瞼向き眼振(downbeat nystagmus)へと移行した場合は,皮質機能の回復を示唆する所見と見なすことができる.下方への持続注視は,植物状態への移行期にみられることが多い. 自発眼球運動ではあるが,両眼が,まるで落下するかのように下方に偏位し,ゆっくりと正中に戻り,また,下方偏位を繰り返す動きは,眼球浮き運動(ocular bobbing)とよばれ,両眼の動きが共同性でない(dysconjugation)場合も多く,脳幹の広範囲な器質障害を示唆する,予後不良の所見である.
鑑別診断
 昏睡は単なる症候ではなく,それ自体が臨床診断である.特に,意識障害が存在しないにもかかわらず,その反応の乏しさから,昏睡と誤診されやすい閉じ込め症候群(locked in syndrome)の鑑別は必須であり,その鑑別なしに昏睡の診断をつけてはならない.
1)閉じ込め症候群(locked-in syndrome):
橋底部(pontine base)の両側性障害は,言語を含む随意運動系遠心路を,すべて遮断してしまう結果を招く.中脳より上部の神経組織が正常に機能していることから,意識と大脳皮質活動は保たれ,延髄以下神経組織が正常に機能していることで自発呼吸も保たれる.内側毛帯(medial lemniscus)付近まで障害が及ぶと,体性感覚の一部に障害が起こり,水平注視中枢であるPPRFの障害から,水平眼球運動も障害され,両側性の顔面神経麻痺を呈するが,聴覚,疼痛覚の求心路は,さらに背側に位置するために保たれる.その結果,意識鮮明で,視覚,聴覚,疼痛覚は正常でありながら,意思表示の可能な随意運動系がほとんど活動せず,あたかも昏睡状態であるかのように錯覚されてしまう臨床状態を呈する.これが,閉じ込め症候群である.垂直注視中枢は中脳の内側縦束吻側介在核(rostral interstitial nucleus of medial longitudinal fasciculus:riMLF)で,中脳に存在するため,随意垂直眼球運動が残されている症例も多いが,PPRFの吻側のニューロン活動が随意垂直眼球運動にも必要であるため,垂直眼球運動すらも侵されており,意思表現のために残された随意運動機能は,眼瞼の開閉運動だけである症例も多い.
2)心因性無反応(psychogenic unresponsiveness):
心因性無反応は,基本的には除外診断により確定診断を受ける疾患群に属するが,多くの場合,臨床的に鑑別可能である.代謝性脳症などで頻発する,ゆっくりと左右に振れる水平性共同眼球運動(roving eye movement)は模倣不可能な神経所見であり,観察された場合は,昏睡の確定診断となる.冷水カロリックテストにおいて,故意的に眼球の動きを防止する努力がみられることが多く,冷水刺激の不快から覚醒する場合もある.刺激側への共同偏視ではなく,corrective saccadesを含む眼振(nystagmus)を認めた場合は,大脳皮質の活動の確認として ,心因性無反応の確定診断にいたる場合が多い.[中田 力]

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