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手形(有価証券)【てがた】

日本大百科全書(ニッポニカ)

手形(有価証券)
てがた
bill 英語
billet フランス語
Wechsel ドイツ語

一定金額の支払いを約束または委託する有価証券。手形という語は古くは証書・証文をさしていたが、これは、証文などに固い約束を示すために手に墨をつけて手の形を押して相手に渡したことに由来するといわれる。現行のような手形制度は、中世にイタリアおよび地中海沿岸の諸都市で発達した両替商が発行した手形に始まるとされるが、日本でも鎌倉時代にはすでに、割符(さいふ)とよばれる為替(かわせ)手形の一種が使用されていた。

 現在の手形には、手形法上、約束手形と為替手形とがある。約束手形は、振出人が自ら支払人として、名宛(なあて)人である受取人に対して、一定金額を支払う約束をした手形である。当初の手形当事者は振出人と受取人である。この約束手形は、支払いの繰り延べ機能を有するため、金銭の支払いや貸借などに利用されている。一方、為替手形は、振出人が、名宛人である第三者に対して、一定金額を支払うよう委託した手形であり、名宛人(支払人)は引受けの署名をすることにより支払義務を負い、手形上の主たる義務者となる。為替手形における手形当事者は、振出人、受取人、名宛人(支払人)の三者である。現在では、為替手形は、国内取引上はほとんど使用されておらず、主として貿易代金の決済に使われているが、これはその代金取り立て機能を活用しているものである。為替手形の機能としては、このほか送金機能がある。

[太田和男]

法的特質

手形は、小切手とともに財産的権利を化体する証券であって、その権利の行使または移転がその証券によってなされることを要するから有価証券である。その手形上の記載文言は、金銭の支払いを目的とする債権に限られるので貨幣証券ともいわれる。このように手形は、信用証券としての機能を発揮して、円滑に流通することを要請されているため、手形がそうした効力を発揮するように、一定の手形要件の記載を厳しく要請されているので要式証券でもある。もし、この形式を欠くと手形は効力を生じない。手形上の権利・義務は、その原因である売買代金決済関係などとは別個に、手形が作成されて初めて発生するので、手形は設権証券であり、手形に署名した者の手形上の法律関係、責任は手形上の記載文言に従って判断、決定されることとなるので文言証券でもある。また、手形には、手形振出しの原因となった売買のための代金支払いとか借入れとか手形の原因関係については記載が許されず、一定の金額を支払うことについての単純な約束または委託だけを記載することになっており、法律上、いったん手形が流通した場合には、原因関係の有効、無効によって手形上の権利に影響がないので無因証券、抽象証券、不要因証券といわれる。手形はまた、指図式であればもちろんのこと、指図文句を記載しない場合でも、振出人が指図禁止の文字、または、これと同一の意義を有する文言を記載しない限りは、裏書によって譲渡できる指図証券である。しかも、手形は転々流通し、何人(なんぴと)が債権者であるか不明なので、手形の所持人が手形を呈示して履行の請求をすることにより、初めて手形上の権利を行使できることから呈示証券であるといわれる。手形の支払人は、手形と引き換えでなければ支払いを行う必要はないので、手形は受戻証券ともいわれる。

[太田和男]

手形の種類

手形は、法律上の性質はすべて同一であるが、その用途や機能面から種々名称が付されている。商業手形というのは、振出人と受取人との間に商行為があり、その商取引に基づいて振り出された手形のことであり、融通手形は、振出人の信用を単に受取人に利用させて、融資を受けさせることを目的に振り出される手形である。割引手形は、商取引に基づいて買取人が振り出した金額や支払時期が明確な複名手形を、銀行が手形金額から満期までの利息その他の費用すなわち割引料を差し引いて、販売業者つまり手形の受取人から買い取った手形である。貸付手形は、銀行が手形貸付に用いる手形であり、手形上の債務者が振出人だけなので通常、単名手形と称され、信用度は商業手形より低い。また、手形が貿易上使用される場合には、貿易手形といわれる。

 手形はまた、その期限により、一覧払手形、一覧後定期払手形、日付後定期払手形、確定日払手形に分類される。このうち一覧払手形においては、所持人は振出日付より1年以内に呈示しなければならず、手形債務者は、呈示がありしだいただちに支払いを行わなければならない。一覧後定期払手形、日付後定期払手形、確定日払手形においては、支払いをなすべき日およびこれに次ぐ二取引日以内に呈示しなければならない。支払いをなすべき日は満期日であるが、満期日が休日のときは、これに次ぐ取引日となる。

[太田和男]

手形の時効

手形上の権利の消滅時効については、手形上の債務者は相対的に重い責任を強いられるため、短期時効となっている。すなわち主たる債務者、つまり約束手形の振出人および為替手形の引受人に対する手形上の請求権は満期の日から3年、手形所持人の前者、つまり裏書人および為替手形の振出人に対する遡及(そきゅう)権は、拒絶証書の作成日または拒絶証書の作成免除のときは満期の日から1年、裏書人の他の裏書人および振出人に対する再遡及権は、手形の受け戻しをなした日または償還の訴えを受けた日から6か月である。

[太田和男]

『前田庸著『手形法・小切手法』(1999・有斐閣)』『井上俊雄著『手形・小切手の常識』(1997・日本経済新聞社)』『末永敏和著『手形法・小切手法――基礎と展開』第2版(2007・中央経済社)』『福瀧博之著『手形法概要』第2版(2007・法律文化社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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