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【て】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典


日本音楽用語。楽器を手で弾いたり,打鳴らしたりすることから,声の旋律 (節) や語りに対し,楽器の旋律をいう。さらに各種の楽器の演奏技法,それに伴う旋律型・リズム型について用いられる。歌と歌の間の間奏部分を特に「合の手」というが,それが発展し長くなったものを地歌では「手事」という。また声楽パートの作曲を「節付」というのに対し,楽器パートの作曲を「手付」といい,1曲における原旋律を「本手」というのに対し,合奏のためそれを装飾変奏したパートを「替手」という。三味線組歌では最古の七曲を「本手組」といい,その様式を脱して作られた曲群を「破手組」という。一般に,歌より器楽比重のある曲は「手のもの」「手もの」に分類され,「うたいもの」に対する。そのほか,能では打楽器の打拍とかけ声の一定の組合せ (リズム型) を「手組」という。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

しゅ【手】[漢字項目]
[音]シュ(呉) ス(呉) [訓]て た
学習漢字]1年
〈シュ〉
て。「握手義手挙手触手繊手双手徒手入手拍手落手
手でする。手ずから。「手記手芸手交手写手術
手わざ。腕前。「手段手腕悪手凡手魔手妙手
仕事や役割りをもつ人。「歌手国手射手助手選手敵手投手名手
〈て(で)〉「手柄手順手錠手配(てはい)相手勝手柏手(かしわで)後手(ごて)仕手素手(すで)把手(とって)深手(ふかで)山手若手
〈た〉「手綱
[難読]上手(じょうず)手弱女(たおやめ)手水(ちょうず)手斧(ちょうな)手数入(でずい)り下手(へた)御手洗(みたらし)右手(めて)左手(ゆんで)弓手(ゆんで)

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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た【手】
《「て(手)」の交替形》て。多く、他の語の上に付いて複合語をつくる。「枕」「折る」「なごころ」

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て【手】
[名]

㋐人体の左右の肩から出ている長い部分。肩から指先までをいう。俗に動物の前肢をいうこともある。「を高く上げる」「袖にを通す」「の長い猿」
㋑手首、手首から指先までや、手のひら・指などを漠然とさす。「に時計をはめる」「火鉢にをかざす」「でつまむ」
器具などの部分で、手で持つようにできているところ。取っ手・握りなど。「鍋の」「急須(きゅうす)の
植物の蔓(つる)をからませるための木や竹の棒。「竹をアサガオのにする」
1のように突出して動くもの。「火のが上がる」
実際に1のように作業や仕事を行うもの。
㋐労働力。人手。「が足りない」「女一つで子供を育て上げる」「男
㋑仕事をする能力。「に職をもつ」
人が1を使ってすること。また、人の行為を漠然という。
㋐仕事。作業。「裁縫のを休める」
㋑手数。手間。「のこんだ細工」「のかかる部下」
㋒他人に関与すること。「出し」
㋓武器を使って傷つけること。転じて、戦いなどで受けた傷。「負い」「深(ふかで)」

㋐文字を書く技法。筆法。転じて、書かれた文字。筆跡。書風。「人のをまねる」「紀貫之(きのつらゆき)の」「女の手紙」
㋑茶器などで、その手法になるもの。「三島(みしまで)の茶碗」
㋒能楽・舞踊などの所作。手振り。「指す引く
㋓音曲で、調子や拍子をとる手法。また、器楽の奏法。「合いの」「事」
㋔武芸などの技。「相撲の四十八

㋐勝負事などで、手中にあるもの。手持ちの札・駒など。手の内。「を明かす」「相手のを読む」
㋑囲碁・将棋などで、石や駒を打つこと。また、その打ち方。「堅いで攻める」「先
事を行うための手段・方法。「きたないを使う」「そのは食わない」「打つ
10
㋐所有すること。「人のに渡る」
㋑支配下。監督下。「ライバル会社のの者」「犯人のから人質を救う」
11
㋐ある方面や方角。また、その方面の場所。「行くをさえぎる」「山の」「上(かみ)
㋑ある方面に配置した軍隊。「寄せの軍勢」「先(さき)
12 ある種類に属する人や物。「そのの品は扱わない」「厚(あつで)の生地」
13 器物の左右に分かれた部分。
㋐几帳(きちょう)などの横木。
「几帳の―のさし出でたるにさはりて」〈・四九〉
㋑長旗のへりについている、竿(さお)につけるための緒(お)。
「互ひに旗の―を下ろして、東西に陣を張り」〈太平記・一五〉
㋒雁股(かりまた)の矢じりの左右に突き出た部分。
「―六寸、わたり六寸の大がりまた」〈保元・上〉
14 風采(ふうさい)。体裁。
「その跡から―のよき一連れ」〈浮・織留・四〉
15 江戸時代の雑税の一。山手野手川手など。
16
㋐その事物を機械などを用いないで作る意や、その人が自分自身でする意を表す。「料理」「打ち」「づくり」「弁当」
㋑その物が、持ち運びや取り扱いに容易な小型のものである意を表す。「斧(おの)」「帳」「箱」
㋒その動作をする人、また特に、そのことにすぐれた人の意を表す。「嫁のもらい」「語り」「やり
[接頭]形容詞・形容動詞に付いて、その意味を強めるのに用いる。「堅い」「ぬるい」「短」
[接尾]助数詞。
碁や将棋などの着手の回数を数えるのに用いる。「数先をよむ」
矢2筋を一組みとして数えるのに用いる。
「鷹の羽にてはいだりける的矢一―ぞさしそへたる」〈平家・四〉
相撲の番数を数えるのに用いる。
「相撲出でて五―、六―ばかりとりて」〈宇津保・俊蔭〉
舞の数を数えるのに用いる。
「一―舞うて東の方の賤しき奴ばらに見せん」〈義経記・八〉
[補説]作品名別項。→

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て【手】[作品名]
高村光太郎による彫刻作品。大正7年(1918)制作のブロンズ塑像(そぞう)。東京国立近代美術館所蔵。

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デジタル大辞泉プラス

錦鯉の飼育用語のひとつ。胸鰭をさす。「腕」「手鰭」などともいう。

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世界大百科事典 第2版

て【手】
手ということばには二つの意味がある。一つは広義用法であり,俗の呼び方でもあって,上肢全体を指す。もう一つは狭義の用法であり,解剖学用語でもあって,手首から先を指す。このことばは主にヒトについて用いられるが,他の動物に対してヒトになぞらえて使われることも多い。類人猿その他の高等霊長類にふつう〈手〉の語が当てられるのは,彼らがヒトに似た〈手〉で器用に物を取り扱うからである。またときには,食物を〈両手〉で持って食べるリスネズミなどにもこの語が応用される。

出典:株式会社平凡社
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て【手】
日本の技芸の用語。事を行うのに手を用いるところから,その方法や技術についていい,それぞれの技芸で単独または他の語と複合して術語的に用いられる。書道,音楽,舞踊遊戯(将棋双六など)等においてよく用いられるが,その概念には多少の異同がある。書道では筆法から転じて書かれたものそのものについてもいう。音楽,踊では,特定の技法から転じて,その型ないしその型による特定の部分ないし楽曲をもいう。 音楽では,ふし)が声楽面についていうのに対して,手は器楽面についていうことが多く,手付(てつけ)(器楽部分の作曲・編曲

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日本大百科全書(ニッポニカ)


解剖学では上肢を腕(うで)(上腕(じょうわん)と前腕(ぜんわん))と手とに区分し、手は手首から先をいう。俗に、手足などといって、大まかに下肢に対して上肢を「手」と表現することもある。手は、ほぼ四角形の扁平(へんぺい)な部分として手首の先に広がるが、屈曲させて凹面をつくる部分を手の掌面(しょうめん)(手掌、たなごころ)とよび、凸面側を手の背面(はいめん)(手背、手の甲)とよぶ。手の扁平部分の遠位縁からは、5本の指(五指)が出る。五指のうち、母指(ぼし)(第1指、親指(おやゆび))がもっとも太く、かつ短い。中指(ちゅうし)(第3指)がもっとも長く、以下環指(かんし)(第4指、薬指(くすりゆび))、示指(しし)(第2指、人差し指)、小指(しょうし)(第5指)の順に短くなる。各指の末端の背側部には、皮膚の表皮が角化してできる爪(つめ)が付着し、指の先端を保護している。手掌面の皮膚には、多数のしわや溝が縦横に走っている。このうち、横に走る太いしわは手掌や指を屈曲したときに生じ、運動皺襞(しゅうへき)(慣用では「うんどうすうへき」と読む)とよぶ。これらのしわは、手相学ではいろいろの意味をもつものとして取り扱われているが、科学的な根拠はない。手掌面には細い溝(皮膚小溝)と各小溝の間の高まり(皮膚小稜(しょうりょう))とが平行して走っている。その方向は、各個人に特有な紋様(掌紋)をつくっている。また、指の先端の紋様は指紋(触紋)とよばれ、これも各個人に特有な走行を示す。掌紋、指紋はともに個人識別に利用されている。指紋は胎生3か月から4か月に出現する。皮膚小稜の高いところには、汗腺(かんせん)の導管の開口部、すなわち汗口が配列している。

 手掌面を見ると、母指と小指の長軸に沿った部分、第2~第4指の基部、各指の末節中央部のそれぞれに、円形あるいは楕円(だえん)形をした広い皮膚隆起が認められる。これを、それぞれ手根小球(橈側(とうそく)は母指球、尺側(しゃくそく)は小指球という)、指間小球、指小球とよんでいる。また、これらを総称して触球とよぶが、この部分には神経終末が豊富に分布し、触覚が鋭敏である。手掌面には毛、脂腺がない。また、手掌面の皮膚にはメラニン色素がないため、他の皮膚部分よりも白くなる。手掌面の汗腺の数は1立方ミリメートル当り約2個であるが、手背では約1.5個、示指先端では3個ほどとされる。

[嶋井和世]

手の骨格と筋

手の構造の基礎となり、手の運動の支えとなる骨格(手骨(しゅこつ))は、約30個の骨からできている。手首(手根)の部分には8個の手根骨が配列する。手根骨は、前腕の長軸方向と直角に位置し、4個ずつがほぼ平行に並んで配列している。手根骨の遠位列と連結する骨が中手骨で、細長い5個の骨から構成される。中手骨は手掌の骨格となっている。各指の骨格となるのが指骨である。指骨は、母指が2個、他の指はそれぞれ3個からなっている。中手骨と直接連結する指骨を基節骨といい、順次先端に向かって中節骨、末節骨とよぶ。母指は基節骨と末節骨だけで、中節骨が欠ける。遠位列の手根骨と中手骨との関節(手根中手関節)や中手骨と基節骨との関節(中手指節関節)は、多軸的に動いて、手首や指の複雑な運動を可能としている。

 手の骨格を動かす筋肉は、ヒトではとくに発達しており、精緻(せいち)巧妙な手の運動の原動力となっている。このことは、霊長類、とりわけヒトにおいて、その進化に大きな役割を果たしてきた。手の運動をつかさどる筋肉(骨格筋)は、前腕と手掌とにあり、ともに横紋筋である。そして、手の筋肉はすべて手掌側にある。母指を思いきり反らして、母指を外転し、伸展させると、手背の母指側で手首から母指方向に向かって三角状のくぼみができる。これを「解剖学的嗅(か)ぎたばこ壺(つぼ)」とか「嗅ぎたばこ入れ」(タバチュール)という。これは、長母指伸筋と短母指伸筋の両腱(けん)に挟まれてできるくぼみである。このくぼみの底で、橈骨動脈の拍動を触れることができる。

[嶋井和世]

動物の手

脊椎(せきつい)動物の前肢末端部分をいう。物をつかむ機能をもっている霊長類について用いられる語であるが、他の動物に用いられる場合は、やや擬人化した意味でこの部分をよぶ。上腕・下腕部を除いた手首・手のひら・指からなり、それぞれ腕骨・掌骨・指骨を含み、複雑な筋肉が発達している。動物の種類によって手の解剖学的構造に多くの変化がみられる。たとえば、樹上生活を営むものでは手が発達し、指が長く、先端部を保護するつめが伸びている。コウモリでは第1指(親指)に鉤(かぎ)づめがあり、他の指は長く伸び、それらの間に飛膜が発達している。ウマでは第3指骨だけが非常に発達している。クジラやオットセイの手は、水中生活に適応して退化し、魚類のひれに似た形になっている。魚類のひれと哺乳(ほにゅう)類の手は相同器官である。

[川島誠一郎]

手の象徴的意味

手が宗教的観念と関連して象徴的意味をもつ現象は広くみられる。霊的存在への訴えとして手を伸ばす、打つ、指を特定の型に組む(密教の印相など)などの動作をとることが多い。妖術(ようじゅつ)師が手で触れ、指示し、凝視することにより生じる危害や凶眼から身を守る目的で指を組んで対抗する、などの慣行も広くみられる。何かを手に握って生まれた子供が特別な能力をもつとする文化も多い。岩の手形状のくぼみを役小角(えんのおづぬ)、弘法大師(こうぼうだいし)、諏訪(すわ)信仰、雷神、弁慶などと関係づけるなどの説話がある。

 人体の他の部分から切り離した手だけを描写して、特定の宗教的意味をもたせた最古の例は、エジプト新王国イクナートンの改革宗教で主神アトンを象徴した太陽光線先端の手であろう。ユダヤ・キリスト教では、紀元前2世紀の成立とされる『旧約聖書』「ダニエル書」5章の「運命を予告する手」をはじめとして、偶像的表現を避ける目的で手だけで最高神を表現する文化的伝統が形成された。ユダヤ・キリスト教美術史上の「神を表す手」は、アルサケス朝パルティアの宗教美術の影響を受けた3世紀のメソポタミア(ドゥラ・エウロポス遺跡)で確認され、中世キリスト教絵画に繰り返し用いられた。4~5世紀以降には按手礼(あんしゅれい)がキリスト教の秘蹟(ひせき)とされ、この文化的伝統での手の特別な意味が確立した。聖書の上に手を置いて誓約するキリスト教の慣行、指を伸ばした手形を建物、とくに戸口の上部につけて妖術的危害の侵入を防ぐなどのアジア・環地中海地域の風習はこの伝統と関連する。

 右手を神聖かつ有力で幸運な手とみなし、左手を劣位、不浄視する「右手の優越」現象は、手の象徴主義の重要テーマである。アジアの多くの地域では、排泄物(はいせつぶつ)処理に左手を用いる習慣とも結び付き、とくにこの原則を重視する。台湾の高砂(たかさご)族の右手(右肩)の優越はよく知られている。中世南インド(タミル地方)では、王国内の職業集団を都市手工業者を中心とする左手群と、農業経営者を中心とする右手群に二分する制度が発達し、祭礼時の2群の衝突事件と王権による事件調停の記録が古くからある。ただし、右手の武装を暗示する左手での握手の敵対性は右手の優越以外からも説明できる、などの問題もある。

[佐々木明]

『R・エルツ著、吉田禎吾他訳『右手の優越』(1980・垣内出版)』

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精選版 日本国語大辞典

しゅ【手】
〘名〙
① 腕から先の部分。て。
② 能楽で、舞の型のこと。て。
※花鏡(1424)舞声為根「以前の手(しゅ)智序破急の間に舞を添へたり」

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た【手】
〘語素〙 他の語と複合して用いられ、「手」の意を表わす。「たなごころ」「手火(たひ)」「手折(たお)る」「手向(たむけ)る」など。
※名語記(1275)二「手をつねに、たといへり、如何。これは、たちつてとの五音便宜により、いひかよはかさるれば也。竪通とたて申せる、これ也」

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て【手】
[1] 〘名〙
[一] 脊椎動物の前肢の末端部分の総称。腕骨(八個)、掌骨(五個)、指骨(五組一四個)からなる。各種の筋肉におおわれ、物をつかむために発達している。コウモリでは翼手を形成し、第一指に鉤爪があり、非常に長い。水生哺乳類のオットセイなども構造的には陸生の哺乳類と同じだが、退化して魚類の鰭(ひれ)のようになっている。
① 人体の上肢。躯幹(くかん)の上部で、肩から左右に分かれ出ている部分。肩の関節部分から指先までの部分。
※書紀(720)継体七年九月・歌謡「枕取り 端(つま)取りして 妹が堤(テ)を 我に枕(ま)かしめ 我が堤(テ)を 妹に枕かしめ」
※竹取(9C末‐10C初)「手に力もなくなりてなへかかりたる中に」
② かいな、うでと区別して、てくびから先の部分。その全体だけでなく、指、てのひらなど部分を漠然とさすこともある。
※万葉(8C後)一四・三四五九「稲つけば皹(かか)るあが手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ」
③ ヒト以外の動物の前肢を①②に準じていう。前足。また、植物のつるなどをもいう。「朝顔の手」
※平家(13C前)四「かしらは猿、むくろは狸、尾はくちなは、手足は虎の姿なり」
[二] 物の形状または機能を(一)に見立てていう。
① 器物の本体から分かれ出た部分で、そこをにぎり持ち、または物に掛けるようにしたもの。取手(とって)、引手、釣手など。「急須(きゅうす)の手」「手のついた鍋(なべ)
※枕(10C終)一二〇「半挿に手水入れて、てもなき盥(たらひ)などあり」
② 用具・施設などで、主要部を支える用をする部分。「帆の手」
※枕(10C終)四九「几帳のてのさし出でたるにさはりて」
③ (一)のように、器物の左右に分かれ出た部分。衣服の袖(そで)、鏑矢(かぶらや)の雁股(かりまた)の先の左右に分かれ出た部分など。
※金刀比羅本保元(1220頃か)上「上矢のかぶらは、〈略〉薙歯一寸、手六寸、わたり六寸の大がりまたねぢすへたり」
④ (一)のように伸び出し、また動く状態になったものの先の部分。「火の手」
※信長公記(1598)首「大ぼて山へ〈略〉攻のぼり御人数を上させられ水の手を御取り候て上下より攻られ」
[三] (一)を用いてさまざまな行為をすることに関していう。(一)だけを用いるのではない場合、また用いない場合にも代表あるいは象徴としていう。多く、特定の語と連なって慣用句として用いる。
① 事を行なうのに使用する(一)。そのためにはたらかす(一)。「手を出す」「手にかける」「手をはずす」「手が届く」「手がはいる」「手をとめる」「手につかない」
※灰燼(1911‐12)〈森鴎外〉一〇「これ丈の事は、どの通信社かの手で、諸新聞に載せられた」
② 仕事をする力。労力。また、仕事をする人。人手。「手があく」「手を貸す」「手が足らぬ」「手がかかる」「手を分かつ」「手がつまる」「手がすく」「手がやける」
※竹取(9C末‐10C初)「造麿が手に産ませたる子にてもあらず」
※仰臥漫録(1901‐02)〈正岡子規〉一「看病人の手もふやして一挙一動悉く傍より扶けてもらふて」
③ 仕事をしたり、物事をとりさばいたりする能力。「手に負えぬ」「手にあまる」
※源平盛衰記(14C前)三三「郎等宗俊も手の定り戦て」
※平凡(1907)〈二葉亭四迷〉五七「己は無学で働きがないから、己の手では到底(とて)も返せない」
④ 人とのかかわりあい、交渉、関係、縁。特に、男女関係にいう。「手をつける」「手を切る」
⑤ 刀や矢などの武器で傷つけること。また転じて、武器によって受けた傷。てきず。「手を負う」
※平家(13C前)四「うらかく矢五所、されども大事の手ならねば、ところどころに灸治して」
※米沢本沙石集(1283)二「手あまた負ながら、命はいまだ絶ざりけり」
[四] (一)で物を持つところから、所有することに関していう。
① 所有することになる者をさしていう。「手に入れる」「手にわたる」「手に落ちる」
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「ゲンジニ ツタワル チョウホウヲ カタキノ te(テ)ニ ワタサウカ」
※歌舞伎・蔦紅葉宇都谷峠(文彌殺し)(1856)三幕「お前様のお陰にて無事に我手にある百両」
② 勝負事で、配られたり取ったりして、自分が自由に使えるようになっているもの。手中にあるもの。手の内。手持ち。また特に、将棋の持駒(もちごま)、花ガルタ、トランプなどの持札。手札。「手が見える」
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)四「しゃうぎをさしていたるが〈略〉『サアしまった。時にお手はなんじゃいな』」
③ 従えて自分の支配、監督の下にある人々。また、特に中世、部将の配下、軍勢をいう。「手の者」「手下」「手人(てびと)
※平家(13C前)四「是は一とせ平治の合戦の時、故左馬頭義朝が手に候ひて」
[五] 事を行なうのに(一)を用いるところから、事を行なうための方法や技術に関していう。
① 事を行なうための技術。武芸などのわざ、術など。一定の型ができているわざ。
※源氏(1001‐14頃)帚木「たつた姫といはむにもつきなからず、たなばたのてにもおとるまじく、そのかたも具して」
※彼女と少年(1917)〈徳田秋声〉二「柔道の手を出していいんなら、どんな強い奴でも投げられるよ」
② 書の技術。字を書くわざ。字の書き方。筆法。書風。また転じて、書かれた文字。筆跡。手跡。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「かの御返とおもひて見るに、女のてなり」
※米沢本沙石集(1283)五末「妻が手にて、柱に歌を書けり」
③ 琴、笛、鼓など、音曲のわざ。奏法。また転じて、一定の曲、または調子、譜。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「この三人の人、ただ琴をのみひく、されば、そひゐて習ふに、ひとつの手のこさず習ひとりつ」
※山家集(12C後)中「人にも聞かせぬ和琴のて引きならしけるをききて」
④ 能、舞踊などでの、きまった舞い方。一定の所作。舞の型。
※古今著聞集(1254)一五「手におきては是を略せず、口伝はひかへたるよし申て、起請文におよばず」
※風姿花伝(1400‐02頃)一「舞をも手を定めて、大事にして稽古すべし」
⑤ 双六(すごろく)、囲碁、将棋、連珠などで、石あるいは駒を打つ、その一打ち一打ちをいう。また、その打ち方。特に、きまった型の打ち方。
※枕(10C終)一六一「人と物いふことを碁になして、近う語らひなどしつるをば、てゆるしてけり」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「ナンノちっと能(いい)手をさすと洒落らア」
⑥ 技芸のわざのすぐれている人。わざびと。上手(じょうず)。相撲のすぐれた取り手、たくみな書き手など。
※今昔(1120頃か)二三「哀れ、此が男にて有ましかば、合ふ敵无くて手なむどにてこそは有ましか」
⑦ 事を行なうための手段。てだて。また、事を行なう方法。やり方。また、人を思いのままにあやつるための手段。かけひきの手段。口実。「手が良い」「手が悪い」「手がない」「手に乗る」
※洒落本・通言総籬(1787)二「いささかな事を手にしてねるつもりの、みなきゃうげんにて」
※残夢(1939)〈井上友一郎〉八「切角好意で云ってくれるのを断わる手はないでしょ」
[六] ある方面や種類。
① ある方角、方面。また、その方面の場所。
※源平盛衰記(14C前)三六「山の手ゆゆしき大事の所に候」
② 各方面に分けられた、それぞれの軍勢をいう。手分けした一部隊。「手を分ける」
※太平記(14C後)三「南の手には五畿内五箇国の兵を被向」
③ 種類。
※万宝全書(1694)六「鳴海手〈織部焼〉 此手の茶入、古田織部重勝〈略〉国国へひろめ給ふと也」
※はやり唄(1902)〈小杉天外〉九「はい、此頃は初終(しょっちう)其の類(テ)を召上る様でございます」
[2] 〘語素〙 (下につく場合は連濁して「で」となることもある)
① 名詞、特に、行為または行為の結果できたものを意味する語について、その物事を機械などを用いず人間の手をもってなしたこと、また、自分の手でなしたことを表わす。「手織」「手料理」「手描(てがき)」「手打ち」など。
② 名詞、特に器具や身のまわりの品物を意味する語について、その物が、持ち運び、取扱いに適する小型のものであることを表わす。「手箱」「手槍(てやり)」「手文庫」「手帳」など。
③ 方角や場所を表わす語と熟し、その方向、方面にあるという意味を表わす。「左手」「右手」「上手(かみて)」「下手(しもて)」「面手(おもて)(=表)」「河手」「行手(ゆくて)」など。
④ ある所や人や物を基準にして、それと同じ種類に属していることを表わす。また、固有名詞などについて、稲、陶磁器、古銭、その他の品種、品質を表わす。「なかて」「おくて」「高麗手(こうらいで)」「金襴手(きんらんで)」「厚手」「薄手」「古手」など。
⑤ 動詞の連用形、または、それに相当する句について、その動作をする人、そのことに当たる人などの意を表わす。また転じて、特にそのことにすぐれた人、名手、上手などの意を表わすこともある。「織手」「話し手」「嫁のもらい手」など。
※信心録(ヒイデスの導師)(1592)三「シンラマンザウノ tamotaxerarete(タモタセラレテ)ニテ マシマス」
※歌舞伎・お染久松色読販(1813)序幕「折紙もござりますれば、好みてさへ有れば、弐百両には成ります代物」
⑥ その代わりとなるもの。代償。代価。代金。「酒手」など。
⑦ 中世・近世の入場税、利用税。「山手」「野手」「河手」など。
⑧ 材料の意を表わす。「枛手(つまで)
⑨ そのようになった所を表わす。地形。「井手(いで)」「池溝(うなて)」「隈手(くまで)」など。
⑩ 形容詞、形容動詞について、もてあつかいが…だ、手や身のこなしが…だ、などの意を添える。また転じて、下の語の意味を強める。「手痛い」「手ごわい」「手厚い」「手広い」「手短」「手丈夫」など。
[3] 〘接尾〙
① (甲矢(はや)と乙矢(おとや)と二本を持って的に向かう式法から) 矢二筋を一組として数える語。的矢、上差(うわざし)について用いる。
※平家(13C前)四「鷹の羽にてはいだりける的矢一手ぞさしそへたる」
② 囲碁、将棋、連珠などの着手の回数。石や駒を打つ数をかぞえるのに用いる。手数。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「どうするのだ。二三手過た事を仕直すぜへ」

出典:精選版 日本国語大辞典
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