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抵抗権【ていこうけん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

抵抗権
ていこうけん
right of resistance; droit de résistance; Widerstandrecht
国家権力の不法な行使に対し,反抗する権利革命権が非合法的・暴力的手段までも是認するのに対し,あくまでも合法性の枠内で,個人の良心のみをよりどころに抵抗する場合 (具体的には徴兵拒否など) は「市民的不服従 civil disobedience」と呼ばれる。抵抗権はこの両者を包摂する概念といえる。抵抗権の思想的淵源は古代にまでさかのぼることができるが,注目すべきは 16世紀後半以降のモナルコマキ (暴君放伐論) にみられる宗教的根拠づけをもった抵抗権の主張である。さらに近代市民革命期になると,J.ロックの思想によって自然権としての革命権が主張され,この思想はアメリカ独立宣言およびフランス人権宣言に具体化されることになった。しかし革命とは憲法の基本原理までも変更することであるから,現代国家において革命権が実定法的に規定されることはありえず,この権利を正当化するためには,実定法の上位にある自然法を想定するか,あるいはもはや法によって守られる「権利」を主張せず,あくまで個人個人の良心によりどころを求める以外にはないという理論的難点がある。その意味で,抵抗権の憲法理論上の位置づけについては学説が分れている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

ていこう‐けん〔テイカウ‐〕【抵抗権】
不当な国家権力の行使に対して抵抗しうる国民の権利。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

ていこうけん【抵抗権 Widerstandsrecht[ドイツ]】
抵抗権の厳密な定義については定説はないが,公権力ないしその行使に対して国民各個人ないしその集団が抵抗する権利が,ひろく抵抗権または反抗権と呼ばれる。その思想は古代ギリシアの暴君暗殺論にまでさかのぼる。その後,原始キリスト教における兵役拒否の実践や中世ゲルマン国家および封建国家における抵抗権思想等々へと展開するが,その思想的淵源は一様ではない。またカロリング国家契約(シュトラスブルクの盟約。842年)以来,この権利が文書の形式で確認される例も少なくない。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

抵抗権
ていこうけん
right of resistance

国家や政府などの公権力に抵抗する個人や集団の権利。反抗権ともいう。今日、抵抗権を憲法上、明文の規定としているものには、ボン基本法やラント(州)憲法であるヘッセン・ベルリン憲法などがあるが、抵抗権の意義は、人権保障や自由の確立、民主的政治制度の整備を求める思想原理という点にある。

[田中 浩]

市民革命前の抵抗権思想

抵抗権思想は古くはギリシア・ローマの時代、中世封建社会においてもみられたが、歴史上もっとも有名なものは、マグナ・カルタ第61条の次の文言である。「この25人のバロン(大貴族)は、全国の人々とともに、あらゆる可能な手段によって、すなわち、城、土地、財産の差押え、……その他可能な手段によって、彼らの(適当と)判断するとおりに改められるまで、朕に苛責(かしゃく)と弾圧とを加うべきものとする」。この条文は、国王に対する貴族の抵抗権を認めたものと考えられる。その後、イギリスでは、議会制度が整備されるなかで、国王・貴族・庶民の諸身分が議会の場で平穏に国政について討議する方式が定着したため、17世紀に入って国王と議会の対立が激化し、宗教闘争が顕在化するまでは抵抗権思想は一時期影を潜めた。これに対し、抵抗権思想は、宗教改革後の16世紀後半の大陸諸国家において華々しく展開された。それは、とくに、カトリック君主対プロテスタント臣民、プロテスタント君主対カトリック臣民との間で展開され、異教徒の君主は殺してもかまわない、といういわゆる「暴君放伐」の思想として登場した。なかでもオマンの『フランコ・ガリア』(1573)やランゲとモルネイの共著といわれる匿名の『暴君に対する反抗の権利』(1579)にみられる抵抗権思想は、フランスのユグノー(新教徒)をはじめ、広くヨーロッパ諸国の宗教闘争や政治闘争に巨大な影響を与えた。

[田中 浩]

近代的抵抗権思想の登場

カルビニズムは抵抗権思想の聖典といわれるが、カルバン自身は、市民個人の抵抗権は容認せず、君主の悪政については、君主より一段低い官職者や身分議会が君主に忠告できると述べるにとどまり、この考え方は位階制を重視する中世的抵抗権観念の伝統に属するものといえよう。

 近代的抵抗権思想はホッブズに始まる。彼は、もしも主権者が臣下に死を命じた場合には、あらゆる可能な手段によって逃亡してもよい、と述べ、また主権者が戦場に行くことを命じた場合には、主義・主張の理由からであれ、生命を失う恐怖感からであれ、臣下はなんらかの手段を講じて免れることもよしとする個人的抵抗権の思想を提起している。このような考え方は、今日の「死刑廃止論」の主張、「良心的徴兵拒否」の思想の先駆的形態として注目されよう。ここでの抵抗権思想は、人命の尊重を最高の価値を有するものとして位置づけているのである。封建社会においては、身分制秩序の維持が最優先され、佐倉惣五郎(そうごろう)の例にもみられるように、農民が幕府中枢部に直訴することは体制破壊者として、その理由のいかんを問わず死罪に処せられたのである。この点でホッブズの抵抗権観念は個人的抵抗権を認めたきわめて近代的な性格をもつものといえよう。また、もしも全国民がそれぞれ抵抗権を行使したとしたら、それは革命行動につながるから、ホッブズの抵抗権思想はロックの革命権思想の原型ともいえる。

 近代抵抗権思想史上もっとも有名なものはロックのいわゆる革命権の思想であろう。しかし、この革命権は、後のマルクスやエンゲルスのような体制変革を目ざして組織的に行う目的意識的な革命の戦略・戦術を駆使した運動を内容とするものではなく、抵抗権の行使が極限状況に達した形態とみるべきである。ロックは、政治に不満があるときには、まずはそれに耐えよと説き、不満が高じたときには、段階を追って上級機関に不満の救済・匡正(きょうせい)を申し出よ、と述べている。そして、全国民がもはや自分たちの生命が危機に瀕(ひん)していると認識した時点で初めて政府の交替、立法部の変更のために行動してもよいとし、それを革命権の行使とみなしているのである。当時のイギリスにおいては、いまだ後の解散制度のような平和的な行政部、立法部変更のルールは確立されていなかったから、ロックは、名誉革命は「天に訴える」(Appeal to the Heaven)やむをえざる行為であったとして、名誉革命を弁護し正当化しているのである。18世紀に入り、政党政治や議院内閣制の慣行が定着するなかで、「天に訴える」行為は、「国民に訴える」(Appeal to the Nation)行為という解散制度へと発展したのである。

 いずれにせよ、国家や政府の権力は国民の同意によって設定されるという民主主義的思想原理が確立された現代社会においては、憲法に明記されていようといまいと、抵抗権は自然権の行使として国民ひとりひとりに留保されているとみなされるべきであるし、抵抗権の極限状況は革命権の行使にまで行き着く性格をもつものであるといえよう。

[田中 浩]

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精選版 日本国語大辞典

ていこう‐けん テイカウ‥【抵抗権】
〘名〙 国家権力の不当な行使に対して抵抗することができるとされる人民の権利。

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