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摂食障害【せっしょくしょうがい】

知恵蔵

摂食障害
拒食症(anorexia nervosa)と過食症(bulimia nervosa)があり、思春期青年期の女性に多い。拒食症者は食事のを非常に制限し、かなりやせた状態になっても体重が増えることを強く恐れる。栄養失調から生理が止まり、低体温低血圧などの身体症状が現れても本人の危機意識は乏しい。むしろ、やせ細った体形によって自分自身の価値を支えているところがある。体力は衰えるが、学業、スポーツなどに打ち込み、活動的であろうとする。過食症は、自然な空腹感よりも心理的な飢餓感背景にあり、食べ始めると止まらない。その一方で体重の増加を防ぐため、無理な嘔吐下剤の乱用が見られる。過食を恥ずかしく思い、うつ的で自己嫌悪感が強い。拒食と過食の両方の障害を繰り返したり、拒食から過食へ移行することも少なくない。治療には家族と専門家との連携が重要。
(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

朝日新聞掲載「キーワード」

摂食障害
極端に食事を制限したり、過食し吐くことを繰り返したりするなど食行動の異常を特徴とする精神疾患。自己評価の低さや対人関係の問題などが背景にあるとされ、患者の9割以上が女性といわれる。厚生労働省の2011年の調査では、摂食障害で医療機関を受診した患者は推計で1万2千人。未受診の人も多く、「氷山一角」(同省)とみられる。患者すべてではないが、自傷行為など衝動的な行動を伴うことがあり、万引きもその一つと専門家はみる。心の健康について解説する厚労省ウェブサイトでも問題行動のとして紹介されている。患者の不安などが食行動に表れる病気なので、治療には心理面のサポートが欠かせない。
(2015-02-26 朝日新聞 朝刊 1社会)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

せっしょく‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【摂食障害】
食物を取る量と回数に偏りが生じ、拒食症または過食症となる障害。二つの症状が交互に現れることもある。家族・学校職場などにおける人間関係ストレスから発症することが多い。青年期の女性に多く、また先進国に多い。治療は心理療法行動療法中心であり、補助的な薬物療法にも効果が認められている。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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家庭医学館

せっしょくしょうがい【摂食障害 Eating Disorder】
[どんな病気か]
 一般に拒食症(きょしょくしょう)といわれている神経性食欲不振症(しんけいせいしょくよくふしんしょう)、過食症(かしょくしょう)など、身体的な病気がないのに食事がとれなかったり、また逆に食欲のコントロールができずに食べすぎてしまう病気を総称して、摂食障害といいます。
 なにかショックなことがあって、食欲が一時的に落ちたり、逆にやけ食いをしてしまったりするのは多くの人にみられる現象ですが、摂食障害という場合は、単なる一過性の反応ではなく、かなり長い間、食事に関する問題が続き、しかも、体型や体重に対する強いこだわりがあるのが特徴です。
■神経性食欲不振症(拒食症)
 神経性食欲不振症では、節食や激しい運動などにより、適正な体重の15%以上のやせがみられ、月経も止まります。それだけやせても、もっとやせたいと思ったり、少しでも太ると自分は醜(みにく)いと思いつめるなど、体重しだいで自己評価が大きく左右されるので、毎日の生活が、体重の心配を中心に回るようになってしまいます。
 本人は十分食べているつもりでも、食事の内容が野菜などに偏(かたよ)っており、必要な栄養を満たしていないことがよくあります。食事量が少ないと腸の動きが悪く、便秘(べんぴ)になりやすいため、つねに腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)があり、ますます食事量が減ってしまいます。
 摂取する栄養が少ないと、貧血(ひんけつ)(酸素をからだの隅々に運ぶ赤血球(せっけっきゅう)が少ない状態となり疲れやすい)、白血球(はっけっきゅう)減少(感染しやすくなる)、低血圧、低体温などさまざまな弊害が出ます。手のひらが黄色くなったり、体毛が増えたり、頭髪が抜けることもあります。低体重が続くと、女性ホルモンがでにくくなり、若い女性でも閉経後の女性と同じようなホルモン環境になるので骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にもなりやすいといわれています。
■過食症
 過食症では、短時間の間に大量の食物を食べてしまいますが、これが単なるやけ食いとはちがうのは、背後に、拒食症と同じように、「やせていないと自分は醜い」という思い込みがあるため、過食の後、うつ状態におちいったり、体重を元に戻すために自分で嘔吐(おうと)したり、下剤(げざい)を必要以上に使ったりする点です。症状が重い時期には、毎日1日中、過食、嘔吐をくり返すといった状態になります。
 拒食症による栄養失調の状態が長く続いた後に、過食症になることもありますし、そうでないこともあります。過食だけでなく、アルコールを飲みすぎたり、その他の薬物乱用も同時にみられることもあります。
 過食症の人の体重は、嘔吐や下剤乱用の程度によりさまざまですが、かなり低体重になった場合は、拒食症と同様の合併症への注意が必要です。
 嘔吐や、下剤を大量に使っていつも下痢(げり)をおこしている場合は、胃液・腸液とともにカリウムが大量に失われ、低カリウム血症(「カリウムと代謝異常」の低カリウム血症)になります。心臓はカリウムの値に敏感で、不整脈などをおこしやすいので、注意が必要です。慢性的に嘔吐していると、歯のエナメル質が失われたり、唾液腺炎(だえきせんえん)になることもよくあります。
[治療]
 治療としては、精神面の治療とともに、からだの治療を行ないます。外来では、精神療法、家族療法などとともに、さまざまな検査をしたり、栄養士による栄養指導を行ないます。必要に応じて、婦人科や内科などとも連携をとりながら治療します。
 体重低下が著しい場合や、抑うつ感や希死念慮(きしねんりょ)(自殺願望)が強い場合は、入院治療をすることもあります。
 摂食障害は、食事に絡む症状なので、他の家族に対してもストレスをおこしやすい疾患です。それまでの家族関係が原因で発症することも多いのですが、毎食の食事のしかたで争っていては、家族関係の改善には時間がかかってしまいます。家庭内のストレスが非常に大きい場合は、やはり専門家に相談し、本人の課題と家族の課題をはっきりさせ、少しずつ解決していくほうがよいでしょう。

出典:小学館
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食の医学館

せっしょくしょうがい【摂食障害】

《どんな病気か?》


〈思春期の心理的葛藤が摂食障害というかたちで現れる〉
 摂食障害(せっしょくしょうがい)は、心理的な原因によって食行動に異常をきたす病態の総称で、ものが食べられなくなる「拒食症(きょしょくしょう)」(神経性食欲不振症)と、衝動的にムチャ食いする「過食症(かしょくしょう)」(神経性過食症)に大きくわかれます。
 拒食症の子どもは、ふとることに対して強い恐怖心があり、生命に危険なほどやせていても、「またふとるかもしれない」などという思い込みから食べることができません。
 過食症の子どもは、通常の食事量をはるかに超えて食べ続け、自分ではそれを制御できません。そして体重が増加しないよう、吐(は)いたり下剤を飲むなどの不適切な代償行為をくり返します。
 ともに十代の女性に多くみられ、思春期のさまざまな心理的葛藤(しんりてきかっとう)が摂食障害というかたちで現れると考えられています。
 摂食障害の子どもに、ただ食べることを強制しても問題は解決しません。心理的な原因になっている心配ごとや悩みを取り除くとともに、食事に対する恐怖心を、少しずつやわらげていくことが治療の課題になります。

《関連する食品》


 栄養面で問題が大きいのは拒食症の場合です。拒食症の子どもは、肉類は口にしないがサラダなら食べるというように、食べものに対して強いこだわりをもっており、やせるのに都合のいい食品をとろうとします。
〈拒食症はビタミンA、Eやカルシウム不足に注意を〉
○栄養成分としての働きから
 とくに成長期の場合、本来なら、たんぱく質をはじめ、各種ビタミン、ミネラルの補給が必要なのですが、まずは本人が食べたいもの、食べられるもので、可能なかぎり栄養を補給させます。
 注意したいのは、カルシウムや、体に脂肪分といっしょでないと吸収されにくいビタミンA、Eの不足です。カルシウムはコマツナ、ダイコンの葉、とうふ、ビタミンA(カロテン、レチノール)はレバーやウナギ、コマツナ、ニンジン、またビタミンEはウナギ、カボチャ、アボカドなどに含まれています。
〈過食症はカリウム補給がポイント〉
 過食症で下剤をひんぱんに使用している場合には、下痢(げり)により大量のカリウムが失われ、不整脈を起こしやすくなります。トマトやアボカド、バナナなどで補給してください。
 うつ状態をともなう場合、ビタミンB1(強化米、カレイ、ダイズ)や、ナイアシン(カツオ、サバ、鶏ささみ)は、精神安定に効果があります。

出典:小学館
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大辞林 第三版

せっしょくしょうがい【摂食障害】
食行動の異常の総称。神経性食欲不振症、拒食・過食・異食など。食行動異常。
口腔咽頭の悪性腫瘍の術後、脳血管障害、筋疾患など様々な原因で食事がうまくできなくなる状態。口に入れた食物が胃に到達するまでの過程で問題が生じる嚥下障害と同時に起こる。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

摂食障害
せっしょくしょうがい
eating disorder
心理的な要因から正常に食べることができなくなる病気。厚生労働省の指定する難病の一つで、正式には中枢性摂食異常症という。体重増加を恐れて食べない「拒食症」と、ストレスから食べることをやめられなくなる「過食症」が二大症状で、交互に症状が現れることもある。
 拒食症は標準体重の80%以下のやせ状態が3か月以上続き、低体温や冷えを始めさまざまな症状が出る。低栄養からホルモン異常、さらに女性の場合には無月経もみられる。過食症は大量の食べ物を短時間に衝動的に食べる発作が起き、食後は後悔や自責意識にとらわれる。いずれも患者の9割は女性で、10代、20代が多い。厚生労働省の調査では、医療機関を受診している患者は推計1万2000人であるが、潜在患者が少なくない。さまざまなストレスが原因になり、誤ったストレス解消方法で起きる病気であるが、実際の発病プロセスははっきりしない。
 治療はまず、現れる症状に対応しつつ、根本的には心理療法を行う。2013年(昭和25)10月、厚生労働省は新年度から、心療内科および精神科外来、救急体制のある総合病院10か所程度を、摂食障害の治療・研究の拠点病院「治療支援センター」として指定する方針を明らかにした。[田辺 功]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

せっしょく‐しょうがい ‥シャウガイ【摂食障害】
〘名〙 やせ願望と身体イメージの誤りをもつ食行動異常。拒食と高度のやせに陥る神経性無食欲症とむちゃ食いをくりかえす神経性大食症がある。若い女性に多い。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

摂食障害(心身症)
 摂食障害(表1-6-5)の主たる疾患として,神経性無食欲症(anorexia nervosa,表1-6-6)および神経性大食症(bulimia nervosa,表1-6-7)が存在し,診断基準として,米国精神医学会によるDSM-Ⅳ-TR(精神障害の診断と統計の手引き)が用いられることが多い.これらの疾患の病態は,「食欲」の問題ではなく,体型や体重に対する「認知の歪み」であり,通常,精神疾患に分類されるため,厳密には心身症ではない.
 しかし,特に,神経性無食欲症の場合,低体重・低栄養・脱水に伴い,さまざまな身体の異常所見・血液および尿検査の異常・生理学的検査の異常が認められ,心身症に準じて,心身両面からのアプローチが必要であり,心療内科で診療することが多い代表的な疾患である.また,低体重を伴わない神経性大食症であっても,排出行動による電解質異常などの血液検査の異常が認められ,身体面の管理も必要となる.さらに,特定不能の摂食障害に含まれる,むちゃ食い障害(binge eating disorder)では肥満症を合併することも多く,肥満症の併存疾患としても重要であるとともに,肥満症を呈した場合は心身症としての側面を兼ね備える.
 以下に,内科的治療を優先すべき場合も多い,神経性無食欲症の身体面の変化について記載する.神経性無食欲症はボディイメージの障害,強いやせ願望や肥満恐怖のため,不食や摂食制限,あるいは過食しては嘔吐するため,著しいやせとさまざまな身体症状,精神症状を生じる.神経性無食欲症のうち,不食や摂食制限のみで,むちゃ食いや排出行動を伴わないものを制限型(anorexia nervosa restricting type)という.またむちゃ食いや,嘔吐・下剤や利尿剤の乱用などの排出行動を伴うものをむちゃ食い/排出型(anorexia nervosa binge eating/purging type)とよぶ.低体重,低栄養による二次的な変化として,さまざまな身体所見,検査所見が認められ,場合によっては致死的となる(表1-6-8).
 治療に関しては,エビデンスレベルの高い治療法はいまだ存在せず,栄養を補う栄養療法と心理療法の一種である認知行動療法が用いられることが多い.
a.消化器系
 胃排出運動の遅延は神経性無食欲症患者においてよく認められる.食後の膨満感などの訴えとなり,さらに食事忌避の理由となっていることがあるため注意が必要である.過食嘔吐のある患者においては耳下腺腫脹を主とする唾液腺腫脹が認められることが多い.これは自己誘発性嘔吐による唾液腺分泌刺激が原因といわれており,唾液腺型アミラーゼの上昇を認める.
 その他,神経性無食欲症患者では,低栄養状態や高度の脱水の症例で肝酵素の上昇が認められるが,詳細な機序はいまだ不明である.多くは栄養状態や脱水の改善に伴い速やかに正常化する.また,再栄養の時期にも再栄養症候群(refeeding syndrome)として,一時的に肝酵素の上昇を認めることが多いが,経過観察のみで正常化する.
b.電解質
 低カリウム血症,低リン血症,低マグネシウム血症,低カルシウム血症などが認められることが多い.低カリウム血症は経口摂取量や体液量の減少,嘔吐,下剤,利尿剤の乱用が関係している.低リン血症は飢餓状態において,経静脈的あるいは経鼻胃管による栄養投与時に認められることが多く,やはり再栄養症候群において認められる.極度の低リン血症では,横紋筋融解症など致死的な合併症を生じる危険があり,注意深いモニタリングが必要である.
c.糖代謝
 低栄養による慢性的な低血糖は神経性無食欲症患者に多く認められる.さらに慢性低血糖であるため多くの患者では低血糖の自覚症状がない.そのため,突然意識障害(低血糖性昏睡)を生じ,死に至るケースも多いため十分な注意が必要である.
d.循環器系
 神経性無食欲症患者において,低栄養と脱水,電解質異常によりさまざまな循環器系の合併症を生じ,突然死が少なからず生じる.特に,電解質の異常を伴わない場合でもQT間隔が延長しているケースもあり,頻拍性の心室性不整脈の危険因子となる.また,神経性食欲不振症患者では心囊水貯留や極度の徐脈を認めることもある.
e.内分泌系
 神経性無食欲症患者では体脂肪減少に伴う続発性無月経などの内分泌系の異常所見が認められる.無月経と関連した所見としては性ホルモンの低下を認め,LH-RHに対するLH,FSHの反応不全も認められる.甲状腺に関しては神経性無食欲症患者においてeuthyroid sick syndromeが認められる.通常フリーT3は低下するが,甲状腺刺激ホルモンは正常であることが多く,lowT3症候群とよばれる.これは低栄養状態に反応してT4からT3への転換が減少し,代謝活性の低いリバースT3が優先的に産生されるためであり,低体重・低栄養への適応的な反応であるため,甲状腺ホルモンの投与を行ってはいけない.
f.代謝系
 神経性無食欲症においてはほかの飢餓状態とは異なり,高コレステロール血症を認める.これは胆汁酸の分泌の減少とコレステロール代謝の遅延に関連しているといわれている.
g.骨代謝系
 神経性無食欲症では,低体重,低カルシウム血症,また低エストロゲン血症など骨密度を低下させる要因が存在し,病的骨折を認めることもある.
h.血液系
 著しい飢餓状態では骨髄低形成を認めるとの報告があり,神経性無食欲症患者においては白血球の減少,正〜小球性の貧血がよく認められる.またまれではあるが血小板減少を認めることもある.
i.中枢神経系
 神経性無食欲症患者では,大脳の委縮や脳室の拡大が認められることがある.体重回復とともに改善することが多い.[吉内一浩・赤林 朗]
■文献
Engel GL: The need for a new medical model: a challenge for biomedicine. Science, 196: 129-136, 1977.
小牧 元, 久保千春,他編:心身症診断・治療ガイドライン2006, 協和企画,東京,
2006.日本心身医学会教育研修会編:心身医学の新しい指針.心身医学,31: 537-573, 1991.

出典:内科学 第10版
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最新 心理学事典

せっしょくしょうがい
摂食障害
eating disorder(英),troubles de l'alimentation(仏),Esssto¨rungen(独)
摂食障害は神経性無食欲症と神経性大食症に大別される。

【神経性無食欲症anorexia nervosa(AN)】 体重を減少させようとする意図的な行動,著しい体重減少・体重増加に対する恐怖,身体像の障害,無月経(月経が少なくとも連続して3回欠如)などによって特徴づけられる病態である。1994年の『精神障害の診断と統計の手引き』第4版(DSM-Ⅳ)では,むちゃ食い(普通より多くの食べ物を,制御不能の感覚で摂取すること)や,自己誘発性嘔吐,下剤乱用,利尿剤乱用などの排出行動が見られる「むちゃ食い/排出型」とそれらが見られない「制限型」に分けている。「制限型」の方が回復しがたいといわれている。体重増加を防ぐための不適切な代償行動として,先の排出行動以外に過剰な運動や絶食が見られる。

 圧倒的に若い女性が多く,大半は14~18歳に発症する。最近の欧米における有病率は0.12~0.37%といわれる。日本ではANの有病率は他のアジア諸国と比べて高いが,欧米と比較すると低いとされる。30歳以後の発症は遅発性といわれ,喪失体験,家庭生活の危機,身体疾患の罹患などを契機に発症することが多い。強迫的で完璧主義の性格が目立ち,性に対しては無関心ないしは拒絶的である。また窃盗を繰り返すこともある。しばしば周囲の人に大量の料理を振る舞ったり,大量の食べ物を隠していたり,食べ物を断片に切り刻んだりするなど,食に関する特異な行動が見られる。低栄養,体重減少,下剤乱用などのため身体面の診察・検査は重要である。低体温,下腿浮腫,脱毛,産毛,無月経,脱水,齲歯,徐脈,心電図変化,低血圧,低血糖,低カリウム血症,白血球減少症,肝機能障害,骨密度低下などに注意する。5年以上の経過で半数以上が回復または改善し,10~20%が慢性化するといわれている。死亡率(合併症,自殺,原因不明)は一般的に5~10%といわれており,神経性大食症より高い。標準体重の60%以下の低体重は死亡の転帰と関連していると報告されている。

【神経性大食症bulimia nervosa(BN)】 繰り返されるむちゃ食いと体重のコントロールに過度に没頭することが特徴の病態である。体重増加を防ぐための不適切な代償行動として排出行動や過剰な運動や絶食を繰り返す。DSM-Ⅳでは「排出型」と「非排出型」に分けている。体重はほとんどは標準範囲内か,やや肥満状態にある。最近の欧米における有病率は1%とされ,概してANより高い。発症は思春期後期である。ANとは異なり,性的には活発である。アルコール依存,窃盗,自己破壊的性行動,物質乱用,自傷行為などがしばしば見られ,過去に性的外傷などを経験していることもある。ANの強迫性に対して,BNは解離性の症状が見られることが多い。夜間にむちゃ食いをしてその記憶がないということもしばしば見られる。身体的には反復する嘔吐や下剤乱用のため,低カリウム血症,低マグネシウム血症,低ナトリウム血症などの電解質異常,高アミラーゼ血症,食道裂孔などに注意する。低カリウム血症は不整脈,筋力低下,麻痺性イレウスなどの原因となる。

【摂食障害の治療】 ANの患者は瘠せ願望と肥満恐怖が強いため,病気であることをなかなか認めようとしない。そのため病気の現実(認知の歪み,身体症状,異常所見,死の可能性など)について説明し,治療への動機づけをする必要がある。BNの患者は挫折し,絶望的になっていることが多いため,正しく病気について説明し,励ます必要がある。ともに認知行動療法が有効であるが,ANでは行動制限,BNでは課題を少しずつ無理のない範囲で達成することが中心となる。
〔柴山 雅俊〕

出典:最新 心理学事典
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六訂版 家庭医学大全科

摂食障害
せっしょくしょうがい
Eating disorders
(子どもの病気)

どんな病気か

 自分の体型や体重に対する異常な思い込みによって、食事量を極端に制限したり(神経性食思不振症(しんけいせいしょくしふしんしょう))、過食と食事制限あるいは自発的な嘔吐を繰り返したり(神経性大食症(しんけいせいたいしょくしょう))する状態です。神経性食思不振症では標準体重の85%以下の極端なやせがみられます。思春期以降にみられ、大部分が女性ですが、男性にもみられます。

原因は何か

 不明ですが、自分の体に対する異常なイメージをもち、体重が増えることを極端に恐れるようになります。ダイエットがきっかけになる場合もあります。性格や家族環境も発症に関係しているといわれています。家族性があることから、何らかの遺伝的素因が関与していると考えられます。

症状の現れ方

 神経性食思不振症では食べないこと(拒食(きょしょく))が主症状ですが、食事後隠れて吐いたり、下剤をのんで体重を減らすこともあります。体重が減り極端にやせても、体重が増えることを拒絶します。監視下で食事をさせた場合には、走ったり階段を昇降して運動量を増やしてやせようとします。

 食事に対する関心はむしろ増していることが多く、カロリーを気にしたり、他人の食事内容にまで関心を示したりします。

 神経性大食症では、過食とそれに続く食事制限や自己誘発嘔吐(じこゆうはつおうと)、下剤の使用などが繰り返して起こります。やせは見られず、体重は正常範囲内です。

治療の方法

 食思不振症では極端なやせや電解質(塩分)不足によって、脱水や低血糖、循環不全による肝腎機能不全などを起こすことがあり、まれですが死亡することもあります。脱水や低栄養状態を改善するために点滴で栄養や水分を補うとともに、心理・行動療法を行います。

 再発することが多く、長期間の治療が必要になるのが普通です。

 神経性大食症には心理療法や薬物療法が行われます。

榊原 洋一

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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摂食障害
せっしょくしょうがい
Eating disorder
(こころの病気)

どんな病気か

 食行動の異常に基づく原因不明の難治性の疾患です。一般的には、拒食症(きょしょくしょう)過食症(かしょくしょう)などとして知られています。

 あるきっかけ(ダイエットや受験、自信を失うような失敗)で拒食となり、やせが進行しても食事をとる量が増えず、ますますやせが進行していくケースと、拒食状態がある時点から突然大量の食べ物をとるようになって過食症へ移行する2種類のタイプが知られています。過食に移行するケースでは、自己誘発性嘔吐(じこゆうはつせいおうと)や下剤などの薬物乱用を伴う場合があります。

 やせていることが美しいとする文化的な背景のある地域に多くみられ、約95%が女性、それも思春期・青年期の女性に多いとされます。最近、低年齢化および高齢化しているといわれ、世界的にも大きな社会問題になっています。

 一般に慢性の経過をたどる場合が多く、症状は対人関係の問題や社会環境でのストレスに敏感に反応し、容易に再発することも知られています。米国の報告では、10年以上の経過で約60%が治る一方で、6~7%が死亡するといわれています。日本における最近の報告でも同様の成績が報告されており、思春期・青年期女性の疾患としては最も重症な疾患のひとつです。

原因は何か

 原因は今のところ不明で、遺伝子の研究や脳画像解析の研究を含め、世界的にさまざまな視点から解明が試みられています。

検査と診断

 米国の診断基準を表11に示しました。この診断基準では、摂食障害は神経性無食欲症(しんけいせいむしょくよくしょう)神経性大食症(しんけいせいたいしょくしょう)に分かれていますが、診断基準や病型分類は今後変わっていく可能性があります。

 診断上で重要なのは、肥満への恐怖や身体イメージの障害などです。病識(自分が病気であると認識していること)に乏しい人が多いので、時に合併するうつ症状やパーソナリティー障害とされて見逃されることも少なくありません。身体検査では、やせや過食嘔吐、薬物乱用などの影響で二次的なさまざまな身体障害を合併します。一方で、過食嘔吐のない制限型では、やせの程度のわりに血液検査などでは異常が現れず、一般診療科で見逃される一因ともなっています。

 生命予後に直接関係する検査の異常は、低血糖、低カリウム血症や低リン血症などです。

 精神疾患の合併、たとえば、境界性(きょうかいせい)パーソナリティー障害やアルコールなどの薬物依存(やくぶついぞん)うつ病などもみられます。

治療の方法

 疾患自体の効果的な治療方法は確立していないので、行動療法を中心にした心理療法が行われています。なかでも認知行動療法や対人関係療法の有効性がいわれていますが、やせや過食嘔吐などの部分症状に限られます。

 日本では支持的な心理療法を中心に、家族療法、行動制限療法、認知行動療法、再養育療法、力動的な心理療法などが多く用いられています。やせや過食嘔吐などによる身体合併症に対する身体医学療法や、対症的な向精神薬の併用なども、時期に応じて重要な治療になります。

病気に気づいたらどうする

 病気だと意識していない人も多く、治療を受けていない人が数多くいることが推定されています。摂食障害が疑われたら、精神科や心療内科で専門医を紹介してもらうとよいでしょう。病院に行きたがらない人も、何とか説得して連れて行くようにしてください。

石川 俊男

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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