●支配【しはい】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
支配
しはい
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デジタル大辞泉
し‐はい【支配】
1 ある地域や組織に勢力・権力を及ぼして、自分の意のままに動かせる状態に置くこと。「異民族の
2 ある要因が人や物事に影響を及ぼして、その考えや行動を束縛すること。「先入観に
3 仕事を配分したり、監督・指揮したりして、部下に仕事をさせること。
「宇治の大臣(おとど)、成佐が弟子どもに―して、一日に三尺の地蔵菩薩の像を図絵し」〈著聞集・一三〉
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世界大百科事典 第2版
しはい【支配 domination】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
支配
しはい
dominance
社会関係のなかで、Aという個人あるいは集団が、Bという個人あるいは集団に対して、継続的に優位な立場から、強制力を用いたBの行動に対する制約あるいはBの自発的承認によって、自己に有利な価値の配分を確保しうる従属関係をいう。ここで、価値の配分権をめぐる関係であることが重要な点である。すなわち、従属関係の態様はさまざまであり、主人と奴隷の間の極端に高度な支配関係から、教師と生徒の関係のような従属関係でありながらも支配関係とはいいがたいものまである。前者の関係においては、主人と奴隷の利害はまっこうから対立する。一方、後者においても、義務を課したり、制裁を加えることがあるが、それは利害対立に起因するものではない。教師と生徒の間には、生徒の成績向上あるいは人間的完成という目標が存在し、その目標追求のために両者の積極的合意によって、支配とは異なる従属の関係が形成されている。企業の利益の追求という共通の目標を有するようにみえる企業社会においても、利益の配分をめぐる対立が生じているので、支配関係が存在しているといえる。この場合の価値は、私的領域のものであるが、支配というとき、包括的社会における社会的価値をめぐる人間関係のみをさしていることもしばしばである。
包括的社会における支配的立場をめぐって展開される社会現象が政治であり、支配関係の変動こそが政治史である。国内であると国家間であるとを問わず、戦争は支配的地位を求める争いであり、それが、政治の歴史は戦争の歴史であるといわれるゆえんである。
[大谷博愛]
デモクラシーにおける支配
いかなる政治形態においても支配者と被支配者の分化は必然的現象である。しばしば、「支配者なきデモクラシー」といわれることがあるが、これは神話にすぎない。理念上、デモクラシーは支配者と被支配者を同一化するものである。しかし、現実のデモクラシーにおいては、選挙が支配関係の変化を左右し、法律による種々の制約が加わるだけで、厳然と支配関係は存在している。例外は、社会の全構成員が参加して自発的意見が交わされ、全員が納得のうえでその社会の問題が処理される場合である。それは、直接民主制が物理的に可能なほど小規模で、決定的な利害対立が存在しないほど同質的な社会に限られる。社会の規模が大きくなり、内部における利害対立が複雑化してくると、社会の秩序と安定のために、支配者と被支配者の分化が不可避的なものとなる。
デモクラシーにおける従属関係を支配関係とは区別して、指導‐被指導の関係ととらえる考え方もある。前者は一方通行に近い関係であるが、後者は両面通行であるという点に着目するのである。しかし、これは程度の差にすぎず、絶対王制における君主にしろ同様に臣民の反応を考慮に入れなければならない。デモクラシーにおいては支配者に対する被支配者からの制約要素が多く、その機構が複雑化しているが、依然として、その制約を超えた支配が存在している。デモクラシーにおいても社会的価値の配分が政治における主要問題であり、それに関与する人々が権力追求に従事する現実が存在する以上、支配関係が政治の重要な部分であることを否定できない。
[大谷博愛]
支配関係の安定化
支配者は自己に有利な政治決定を行いうる立場にたっているため、現行の支配関係を安定化させる努力を払う。内的混乱の回避と外的侵入に対する備えによって現状の支配関係に対する脅威を除去しなければならないが、過度の治安維持努力は支配者と被支配者の間に緊張関係を生み出す要因ともなり、その結果として対外的な防衛の面でも脆弱(ぜいじゃく)性を露呈することになる。
支配関係の安定は、大きな不満をもっていない被支配者にとっても望まれることである。そこで、支配者は、調和的に価値を配分して社会における不満をできるだけ抑え、現状に対する社会の支持を獲得することが必要である。さらに、現状維持にとっては、価値配分の調節だけではなく、現状の支配関係を被支配者の心に内面化させ、無条件の支配それ自体に対する自発的服従を調達することが効率的である。それは支配関係の正しさ、すなわち支配の正当性を社会に植え付けることである。
[大谷博愛]
支配の正当性
正当性とは、支配関係の根拠を倫理的、道徳的に正当化することであり、いかなる政治的支配もそのための論理を社会に対して準備する。ウェーバーはこの正当性について、「伝統的」「カリスマ的」「合法的」という三つの理念型を提示した。伝統的正当性とは、不変性が価値判断の根拠となって慣習や伝統が神聖視され、支配の秩序も伝統にのっとっているがゆえに正当性をもつことである。カリスマ的正当性は、支配者個人の超自然的資質が根拠となるものであり、合法的正当性は、支配関係が合理的で予測可能な一般的ルール(法)に基づいて成立しているがゆえに正当性をもつことである。
[大谷博愛]
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精選版 日本国語大辞典
し‐はい【支配】


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