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敗血症【はいけつしょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

敗血症
はいけつしょう
sepsis
いろいろな細菌感染症において,まず病巣が形成され,そこから病原菌が多量に血液の中に侵入して起る全身感染症をいうが,原発巣がどこにあるか明らかでないことが多い。類似の経過をたどって血中に細菌が侵入しても,全身症状を伴わない場合は区別して菌血症と呼ぶこともあるが,同義語と考えてもいい。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

はいけつ‐しょう〔‐シヤウ〕【敗血症】
化膿性(かのうせい)の病巣があって、そこから菌が血流中に繰り返し入り、その毒素により悪寒戦慄(せんりつ)・高熱などの中毒症状を示し、二次的に身体各所に転移性の膿瘍(のうよう)をつくる感染症。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

敗血症
 セプシスともいう.体に細菌感染巣があり,細菌が血液に出現して全身に広がる重い感染症.

出典:朝倉書店
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家庭医学館

はいけつしょう【敗血症 Sepsis】
[どんな病気か]
 からだのどこかに細菌による病気があって、ここから細菌が血液の流れの中に入って増殖(ぞうしょく)し、その生産した毒素によって中毒症状をおこしたり、細菌が血液の循環(じゅんかん)によって全身に広がり、二次的にいろいろな臓器に感染をおこす重い病気です。
[原因]
 血液には本来、細菌の増殖を阻止する力があり、健康な人では細菌が血液中で増殖することはありませんが、からだの抵抗力が弱っていると、細菌の増殖がおこります。
●敗血症の原因になる細菌
 いろいろありますが、多いのは、レンサ球菌(きゅうきん)、ブドウ球菌、大腸菌(だいちょうきん)、クレブシェラ、緑膿菌(りょくのうきん)、肺炎菌などです。
●初めの感染病巣
 皮膚化膿症(ひふかのうしょう)、膿瘍(のうよう)の切開、褥瘡(じょくそう)(とこずれ)、抜歯(ばっし)、扁桃炎(へんとうえん)、副鼻腔炎(ふくびくうえん)、中耳炎(ちゅうじえん)、肺疾患、肝・胆道(たんどう)疾患、腎盂腎炎(じんうじんえん)、膀胱(ぼうこう)の留置カテーテルなどによる尿路感染などです。
●かかりやすい人
 抗生物質が普及した近年は、あまり多い病気ではありませんが、お年寄り、妊婦、手術後まもない病人、慢性の消耗性疾患(がん、白血病(はっけつびょう)、糖尿病、肝硬変(かんこうへん)、脳卒中(のうそっちゅう)など)で衰弱している人、放射線治療・副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬・免疫抑制薬(めんえきよくせいやく)を長期に用いている人などが前述の感染症をおこすと、敗血症を続発しやすいのです。
[症状]
 細菌が血液中で増殖し、その毒素によって中毒をおこすと、高熱、寒け、震え、発汗などがおこり、重症の場合には、血圧降下、無尿、敗血症性ショック(細菌性ショック)をおこして、数時間で死亡することもあります。
 また、血液中の細菌が二次的にいろいろな臓器に定着して増殖を始めると、その臓器の障害症状が現われます。
 原発病巣が中耳炎や乳様突起炎(にゅうようとっきえん)で、原因菌が溶連菌(ようれんきん)や肺炎桿菌(かんきん)である場合は、髄膜炎(ずいまくえん)を併発し、激しい頭痛や意識障害がおこります。
 肺が障害されると、気管支肺炎や肺梗塞(はいこうそく)の症状(胸痛(きょうつう)、血(けっ)たん、せき、呼吸困難など)が現われ、心臓の障害では、心内膜炎(しんないまくえん)の症状(心雑音、心不全症状など)が現われます。また、重症の敗血症では皮膚や粘膜(ねんまく)の出血斑(しゅっけつはん)が現われますが、これは播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)(「播種性血管内凝固症候群(DIC)」)が合併したためです。その他、関節炎、脾腫(ひしゅ)、貧血(ひんけつ)、黄疸(おうだん)など、いずれも重い症状をおこします。
[治療]
 原因菌をさがし出し、薬剤感受性を調べ、適切な抗生物質や化学療法薬を用います。また、歯の治療、膿瘍の切開など、可能ならば敗血症のもとになった病巣の外科的処置をします。骨髄や関節、脳、肺、腎などに膿瘍をおこすと、慢性化して治療が長びきますから、十分な入院治療を受けることが必要です。
[予防]
 日常の心がけとして、それが簡単な化膿でも、できるだけ早く完全に治します。
 また、感染症の経過中に震えをともなった高熱が出たら、敗血症を疑い、すぐ医師の指示を受けることです。
 敗血症は人から人へ感染する危険はありません。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

はいけつしょう【敗血症 sepsis】
細菌などが血液中に侵入して起こる全身感染症をいい,菌血症bacteremiaとほぼ同義に扱われる。まれに火傷外傷などによる原発的感染(一次感染)もあるが,多くはすでに体内にある感染巣から病原微生物が血液中に流出することによって起こる。原因となる疾患としては,癤(せつ)などの皮膚疾患,扁桃炎,中耳炎,肺炎,虫垂炎,腎盂(じんう)腎炎など,多数の感染性炎症がある。病原微生物には,ブドウ球菌,連鎖球菌,肺炎双球菌,大腸菌などのグラム陽性菌が多いが,近年はプロテウス菌やクレブシエラ,大腸菌などのグラム陰性菌,さらには真菌によるものなども増加している。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

敗血症
はいけつしょう

組織や臓器に細菌感染巣(敗血巣)を生じ、そこから持続的あるいは間欠的に細菌が血液中に流れ出し、菌血症をおこす重症全身性感染症で、血液培養によって細菌や真菌が証明され、しかも発熱、悪寒、頻脈、低血圧またはショックなどの臨床症状および白血球の好中球増多などの検査所見がみられる。誘因として抜歯、内視鏡や心臓カテーテルなどの処置、静脈切開など診療各科の手術や手技一般が考えられるほか、局所感染巣の存在や免疫能の低下した患者などもあげられる。原因菌として、最近はグラム陰性桿菌(かんきん)が増加傾向にある。

 定型的臨床症状としては悪寒戦慄(せんりつ)、発汗、発熱、疲労感があり、重症例では血圧下降、乏尿、無尿、敗血症性ショックに陥る。基礎疾患の治療にステロイド剤、サリチル酸、非ステロイド系抗炎症剤を用いている場合には発熱しないことがある。ときに皮疹(ひしん)をみることもある。出血斑(はん)が出現したときは、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群の合併が考えられる。治療としては、原因菌が明らかな場合は、原因菌の抗生剤感受性にあわせて十分量の抗生剤を投与する。原因菌が不明の場合は、広域感受性をもつペニシリン剤、セファロスポリン剤にアミノグリコシド剤を併用する。敗血症性ショックに対しては、抗生剤の投与とともにドーパミンなどの昇圧剤、輸液、副腎(ふくじん)皮質ホルモンを用いる。予後は基礎疾患の重症度に左右される。悪性腫瘍(しゅよう)や白血病などのある患者や高齢者では予後は悪い。また、グラム陰性桿菌による敗血症の予後は、グラム陽性球菌のそれに比較してよくない。敗血症性ショックを合併したものは、非合併例に比較して予後は悪い。

[松本慶蔵・山本真志]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

はいけつ‐しょう ‥シャウ【敗血症】
〘名〙 体内に化膿性病巣があり、ここから細菌が持続的または断続的に血中に流入し、全身性症状、殊に高熱、頭痛、脾腫などを呈する疾患。起炎菌としては大腸菌、ブドウ状球菌、連鎖状球菌など、原発巣としては産褥子宮、膿瘍、中耳炎、胆嚢炎、腎盂炎など。膿毒症。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

敗血症(臓器別感染症)
定義・概念
 敗血症は感染症による全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)と定義される.全身性炎症反応症候群とは,重篤な侵襲(熱傷,外傷,急性膵炎など)に対する生体の急性反応による病態であり,①体温38℃をこえる発熱あるいは体温36℃未満の低体温,②脈拍数90/分をこえる頻脈,③呼吸数20/分をこえるか,PaCO2 32 Torr未満となる頻呼吸・過換気,④末梢血白血球数が4000/μL未満か12000/μLをこえるか幼若好中球が白血球分画で10%をこえる場合の4つの症状のなかで2つ以上を認めれば診断してよい.敗血症に伴って血流低下による急性臓器不全が認められる場合を重症敗血症(severe sepsis)という.敗血症性ショック(septic shock)とは輸液管理に抵抗性の低血圧を伴う重症敗血症をいう.低血圧とは収縮期血圧90 mmHg未満あるいはベースラインから40 mmHgをこえる血圧の低下によって定義される.発熱と血圧低下が併存するだけでは敗血症性ショックの診断の根拠とならない.
原因・病因
 敗血症を疑う症例では,病歴聴取,身体所見,一般検査所見から肺炎,腎盂腎炎,蜂巣炎,手術創部感染症などの原発感染巣の検索を進める.Gram陰性桿菌や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による菌血症は致死的となる可能性が高く,臨床的に敗血症を疑う症例では迅速かつ的確に診断を進める必要がある.抗癌薬投与による全身的化学療法に伴う好中球数減少時の発熱は死亡率が特に高く注意が必要である.特に医療関連感染症と市中感染症の区別,最近の服薬歴,最近の手術や処置の内容,そして基礎疾患が重要である.背景に弁膜症があれば鑑別診断として心内膜炎が上位を占めることになり,何らかの腸管疾患や胆道系疾患があれば腹腔内感染症を考える.嫌気性菌を含む複数菌の菌血症が認められれば腹腔内感染症を強く疑うことになるが,女性の場合はさらに婦人科領域の骨盤腔内感染症を考えておく.脾摘後の症例では肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)や髄膜炎菌(Neisseria meningitidis),インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の菌血症のリスクが高くなる.海産物の生食ではVibrio vulnificusを考慮すべきである.わが国ではサルモネラ(Salmonella)感染症が増加している.
臨床症状・診断
 敗血症に伴う臨床症状は悪寒・発熱,筋痛,頻脈,頻呼吸があり,身体所見では,髄膜炎菌菌血症や播種性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症に特徴的な皮疹の存在や心内膜炎を示唆する爪下出血などの皮膚所見,腹部所見では直腸や骨盤腔内にも注意すべきである.創傷部位があれば慎重に評価する必要がある.胸部聴診所見も重要であるが,呼吸器症状を認めない場合にも胸部X線所見は評価しておくのがよい.一般検査では血算,白血球分画,尿定性と尿沈渣,胸部X線,痰Gram染色を含む認められるすべての滲出液のGram染色などが重要であるが,最も重要なのは血液培養検査であり,必ず2セット以上の血液培養検体を採取する.カテーテル関連血流感染症を疑う場合,カテーテルからの採血は偽陽性も少なくないため,少なくとも1検体は末梢静脈から採取すべきである.中心静脈カテーテルが留置されている症例に発熱を認めた場合,必ずしもカテーテルを抜去する必要はないが,刺入部位に感染徴候が明らかであったり敗血症を疑うような場合,または血液培養が陽性となった場合にはカテーテルを抜去して培養検査に提出すべきである.その後の抗菌薬の投与を考慮すると肝腎機能の評価も必須である.敗血症性ショックを疑う症例では,特にいっそう迅速な方針決定が必要となる.発熱と血圧低下が併存する場合には細菌性心膜炎,縦隔炎,低酸素血症を伴う重症肺炎,などの鑑別診断があがるが,黄色ブドウ球菌やA群連鎖球菌(GAS)によるトキシックショック,非感染症ではアナフィラキシーショックなども考慮する.
治療
 敗血症の原発巣が明らかな場合,積極的な膿瘍のドレナージや壊死組織の外科的除去(デブリドマン),中心静脈カテーテルなどの除去可能な医療器具の抜去など,局所コントロールが重要である.一方,原発感染巣が不明な敗血症の症例は慎重な経過観察が最も重要である.ほとんどの場合で輸液管理による容量負荷を施行すべきであり,低酸素血症やアシドーシスの補正,昇圧薬投与などの補助療法が重要である.血糖値は速効性インスリンを用いてでも150 mg/dL以下に保つことが求められる.根本的な治療には抗菌療法の選択が重要であるが,原則として殺菌的な抗菌薬の静注投与を選択する.最近ではカルバペネム系や第4世代セフェムの登場により単剤治療の可能性も広がっている.全身的大量ステロイド投与の有用性は確立されていないが,相対的副腎不全となっている症例では副腎皮質ホルモンの投与が必要である.抗エンドトキシン・モノクローナル抗体やIL-1受容体拮抗物質の臨床効果は評価が定まっておらず,抗TNF抗体の投与には否定的な意見が多い.
予防
 脾摘出後あるいは無脾症,鎌状赤血球症などの重篤な脾機能不全の患者に対しては肺炎球菌23価ワクチンの接種が推奨される.
 血管内留置カテーテルに関連した感染症を予防するためのガイドラインは数多く公表されている.中心静脈カテーテルの管理においてもやはり最も重要なのは適応の見極めであり,栄養管理が必要な場合もまずは可能なかぎり経腸栄養を優先して検討すべきである.血管内に投与する薬液,特に高カロリー輸液は可能なかぎり薬剤部で無菌環境のもとに調整されるべきである.また,中心静脈カテーテル挿入時には滅菌手袋,袖つき滅菌ガウン,マスクと帽子,および大きな清潔覆布を使用したマキシマルバリアプリコーションが推奨されている.なお,末梢静脈カテーテルの管理においては静脈炎の合併を予防することが重要であり,抗血栓性材質のカテーテルを選択すべきであり,上肢の静脈に挿入するのがよい.末梢静脈カテーテルの留置は96時間を上限とするのが適当であり,輸液ラインもカテーテルの刺し替え時に交換するのがよい.[森澤雄司]
■文献
Dellinger RP, Carlet JM, et al: Surviving Sepsis Campaign guidelines for management of severe sepsis and septic shock. Crit Care Med, 32: 858-873, 2004.
Mermel LA, Farr BM, et al: Guidelines for the management of intravascular catheter-related infections. Clin Infect Dis, 32: 1249-1272, 2001.武澤 純,井上善文,他:カテーテル関連血流感染対策ガイドライン,第2版.平成14年度厚生労働科学研究費(医薬安全総合研究事業)院内感染を防止するための医療器具及び院内感染環境の管理及び運用に関する研究,2003.

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

敗血症
はいけつしょう
Sepsis
(子どもの病気)

どんな病気か

 種々の侵襲(しんしゅう)に対して、炎症を引き起こす化学物質(炎症性サイトカイン)が生体内で連鎖的に放出されることにより全身性の炎症反応が生じることがあります。近年、このような状態を全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ぶようになりました。敗血症とは、細菌をはじめとする種々の病原体による感染により起きたSIRSと捉えられています。

原因は何か(なりやすい人)

 健康な人がいきなり敗血症になることはありません。人間は、常に細菌などの病原微生物の攻撃を受けていますが、免疫のはたらきで、その侵入を防いでいます。たとえば、抜歯のあとには血中に高い頻度で細菌が侵入しますが、細菌は白血球に貪食(どんしょく)されるため、健康な人では一過性の現象で何ら症状はみられません。このように、血液中に細菌が検出されても無症状の場合を、菌血症(きんけつしょう)と呼びます。生後3カ月から3歳までの高熱のある小児では、菌血症の状態が一時的に生じている(潜在性菌血症)リスクが数%あるとされています。

 しかし、毒力の強い細菌の感染が起こり、十分な治療がなされなかった場合や免疫力の低下した状態などでは、細菌が持続的に血液中に侵入し、敗血症が起こります。敗血症を起こすリスクの高い病態を表22に、血液から細菌が検出されることが多い疾患とその主な原因菌を表23に示しました。

症状とその進行(図51)

 原発の感染病巣の症状に加え、病原体の全身的な侵入に対し、生体の反応として、①発熱(38℃を超える)あるいは低体温(36℃未満)、②頻脈(ひんみゃく)(90回/分以上)、③多呼吸(20回/分以上)、④白血球数増多(12000/μℓ以上)あるいは減少(4000/μℓ未満)がみられ、このうちの2つ以上を満たす場合が全身性炎症反応症候群と定義されています。カッコ内は成人の基準値で、小児では深部体温が38.5℃を超える、あるいは36.0℃未満、脈拍、呼吸数、白血球数は年齢により正常値が異なることを考慮して判定します。

 治療の効果が十分でないと、重症敗血症、敗血症性ショック、さらには多臓器不全(たぞうきふぜん)症候群に進み、死に至ることがあります。

検査と診断

 最も重要な検査は、血液からの病原体の検出です。原疾患の病巣からの細菌培養や、各種のカテーテルの先端の培養結果も参考にします。白血球増加(時に減少)、CRP陽性、赤沈亢進などが認められ、血中にエンドトキシン(細菌毒素の一種)が検出されることもあります。

治療の方法

 原因病原体に効果のある薬剤(抗菌薬・抗真菌薬など)を強力に投与し、原疾患に対する治療と併行して、循環・呼吸動態を安定させるために補液、電解質補正、昇圧薬投与、酸素投与、人工呼吸が行われます。血漿(けっしょう)交換、交換輸血が行われる場合もあります。栄養状態の改善も重要です。

 敗血症性ショックの死亡率は、原疾患、基礎疾患の有無、年齢、栄養状態により異なりますが、40~60%とされ、多臓器不全症候群に進むと、さらに死亡率が高くなります。

小口 学

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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敗血症
はいけつしょう
Sepsis
(お年寄りの病気)

 体内局所の化膿巣(かのうそう)から間欠的(かんけつてき)または持続的に大量の細菌が血液中に流入して、全身の諸臓器に転移性の感染病巣を形成するもので、細菌感染症のなかで最も重篤な病態です。多発性の感染により全身に過度の炎症反応が起こる、全身性炎症反応症候群(SIRS)が本症の主要症状です(コラム)。

 原因菌は感染巣の部位により異なっていますが、臨床的には同じような経過をたどります。高齢者では、菌の侵入は、尿路感染症に由来するものが約30%と最も高頻度で、そのほか、中心静脈栄養(IVH)のための静脈内留置カテーテル、胆道感染症、呼吸器感染症、褥瘡(じょくそう)感染症などに由来するものが多くみられます。

症状の現れ方と診断

 全身症状としては前述のSIRSによる、悪寒戦慄(おかんせんりつ)を伴う高熱、(ひん)呼吸、血圧低下などがみられます。高齢者では意識障害や食欲不振などが前面に出ることもしばしばあります。

 診断は、原病巣および転移巣の証明、血液培養による菌検出、さらに血液検査では、白血球数、血小板数の急激な増加または減少、CRP高値、赤血球沈降速度(赤沈)の亢進、γ(ガンマ)­グロブリンの増加などから行います。

治療の方法

 発症初期より、原因菌に対して殺菌力のある抗生剤の経静脈投与が治療の基本となります。全身管理として適切な輸液を行って電解質異常を改善し、また、ビタミン剤、強心薬、肝庇護薬などを適宜投与します。

 ショック、播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群(DIC)の合併例では、早期から輸液、昇圧薬、抗凝固薬のヘパリン製剤、アンチトロンビンⅢ製剤(アンスロビンP)や蛋白分解酵素阻害薬のメシル酸ガベキサート(エフオーワイ)などの単独または併用投与をします。

 また感染巣の外科的処置として、膿瘍(のうよう)形成があれば切開排膿やドレナージ(排液)を行います。

経過と予後

 基礎疾患の重篤度、原因菌、栄養状態、合併症の有無などが予後に大きく影響します。高齢者では一般に予後は不良で、とくにDICやショックを合併すると致命率が高くなります。

高崎 優

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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敗血症
はいけつしょう
Sepsis
(感染症)

どんな感染症か

 敗血症とは、肺炎腎盂腎炎(じんうじんえん)など生体のある部分で感染症を起こしている場所から血液中に病原体が入り込み、重篤な全身症状を引き起こす症候群です。

 背景として悪性腫瘍、血液疾患、糖尿病、肝・腎疾患、膠原病(こうげんびょう)といった基礎疾患がある場合、あるいは未熟児、高齢者、手術後といった状態である場合が多いとされています。

 抗がん薬投与や放射線治療を受けて白血球数が低下している人、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて、感染に対する防御能が低下している人も、敗血症を起こしやすいので注意が必要です。

 血液中に病原体が入り込む原因の感染巣としては、腎盂腎炎といった尿路感染症、肺炎などの呼吸器感染症のほか、胆嚢炎(たんのうえん)胆管炎腹膜炎褥瘡(じょくそう)感染などがあります。

 また、血管内カテーテルを留置している場所の汚染から体内に病原微生物が侵入する、カテーテル関連敗血症も近年増加しています。

症状の現れ方

 悪感・戦慄(ふるえ)を伴う発熱が最も主要な兆候ですが、重症の場合には逆に低体温になることもあります。心拍数や呼吸数の増加もみられ、血圧低下、意識障害を起こしショック状態となる場合もあります(敗血症性ショック)。

 また、重要臓器が障害されると呼吸不全腎不全・肝不全といった、いわゆる多臓器障害症候群(MODS)を併発することもあります。糖尿病がある人や高齢者は自覚症状が乏しいこともあるので注意が必要です。

検査と診断

 検査では白血球数の増加やCRP上昇などの一般的な炎症反応の増加が認められます。白血球数は逆に低下することもあります。そのほか、障害を受けた臓器によって、肝機能障害や腎機能障害も認められます。血液の凝固能が低下している場合もあり、この時は播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)を併発していると考えられます。

 発熱時の血液培養による原因菌の検索も重要です。

治療の方法

 強力な抗菌薬投与とともに、さまざまな支持療法が不可欠です。昇圧剤、補液、酸素投与などのほか、呼吸不全・肝不全・腎不全に対しては人工呼吸管理、持続的血液濾過透析(ろかとうせき)血漿(けっしょう)交換などが必要になる場合もあります。

 DICを併発した場合には、蛋白分解酵素阻害薬やヘパリンを使用します。短期間の副腎皮質ホルモン薬が併用されることもあります。

 近年ではグラム陰性桿菌(かんきん)による敗血症において重要な役割を担うエンドトキシン(細菌毒)を吸着する方法など、新しい治療法が試みられています。

 敗血症は近年の抗菌薬の進歩によって治療成績が改善しましたが、治療が遅れたり合併症の程度によっては、致命的となる重篤な疾患であることに変わりありません。

 早期の診断と適切な抗菌薬の使用、各種合併症に対する支持療法が重要です。

加藤 哲朗, 柴 孝也

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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