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教授学習【きょうじゅがくしゅう】

最新 心理学事典

きょうじゅがくしゅう
教授学習
learning and instruction
教育心理学の一分野で,学習に関する基礎理論を学校教育での教科の指導法の改善に応用することをめざす。1950年代以降急速に発展した。教授学習の分野で提唱・実践されている教授法は,連合理論,認知理論,社会的構成主義など学習の基礎理論に依拠している。

【連合理論と教授学習】 1910年代から1950年代にかけて発展した行動主義の理論は,一般に連合理論associationismとよばれている。行動主義では,学習の基本的単位は条件づけによって形成される刺激と反応の連合にほかならず,人間が行なう高度な学習も,分析すれば刺激と反応の連合(S-R 連合)という要素に還元できると仮定しているからである。したがって連合理論に基づく学習理論である連合学習理論associative learning theoryでは,人間の高度で複雑な学習をいくつかの要素に分割し,それらの要素をやさしいものから難しいものへと段階的に配列し,学習を漸進的に積み上げていくのが最も効果的な教授法だと考えるのである。

 このような考え方を最も端的に示しているのが,スキナーSkinner,B.F.(1958)によって提唱されたプログラム学習である。また,第2言語(外国語)の代表的な学習指導法の一つであるオーディオリンガル法audio-lingual methodも,プログラム学習と類似の原理に基づいている。すなわちオーディオリンガル法は,聞き取りや文型の口頭練習によって「聞く」および「話す」能力の育成をめざす教授法であり,プログラム学習と同様に,単純な文型から複雑な文型へと段階的に配列された教材を用いて反復練習がなされる。

【認知理論と教授学習】 認知理論cognitive theoryは,ゲシュタルト心理学を源流とし,認知心理学に継承されることによって発展した理論であり,次の四つの点で前述の連合理論とは対照的な学習理論といえる。

 ⑴連合理論では条件づけによって形成される刺激と反応の連合が学習の基本的単位であり,人間が行なう高度な学習も,この刺激と反応の連合という要素に分析できると考える。これに対し認知理論では,学習の本質は要素の積み重ねではなく,問題の全体的な構造を把握することだと考える。⑵連合理論では適切な反応がなされるという行動の側面,すなわち「できること」を重視する。これに対し,認知理論では,問題の構造を洞察するといった認知の側面,すなわち「わかること」を重視する。⑶連合理論では学習は一歩一歩段階を追って漸進的に成立すると考える。これに対し認知理論では,学習は一瞬のひらめきによって一挙に成立すると考える。⑷連合理論では,刺激と反応の連合を形成することが学習であり,この連合の形成には賞罰による外的な強化が重要な役割を果たすと考える。したがって,こうした連合理論のもとでは,教育とは「賞や罰によって児童生徒の外発的動機づけを高め,児童生徒を学習活動へと導くこと」という教育観が生まれることになる。これに対し認知理論では,問題の全体的構造を把握したり,問題解決の方法を発見するなどの認知的活動こそが学習の本質であると考える。したがって,認知理論のもとでは,教育とは「児童生徒の知的好奇心や達成動機などの内発的動機づけを高め,児童生徒が自ら主体的に学習活動に取り組むことを支援すること」という教育観が生まれることになる。

 なお,認知理論に基づく教授法としては,ブルーナーBruner,J.S.(1961)の発見学習やオーズベルAusbel,D.P.(1963)の有意味受容学習などを挙げることができる。

【社会的構成主義と教授学習】 連合理論にしても認知理論にしても,学習は基本的には主体の内部で生起する個人的事象だとみなす。これに対し社会的構成主義social constructionismでは,人間は社会的存在であるという前提に立ち,学習は他者との相互作用の中で成立する社会的事象だとみなす。この社会的構成主義の系譜に属する研究者としては,ビゴツキーVigotsky.L.S.,ワーチWertsch,J.V.,レイブLave,J.とウェンガーWenger,E.などを挙げることができる。たとえばレイブとウェンガー(1991)が観察したアフリカのバイ族の仕立屋の事例では,新参者は最初「ボタン付け」からスタートするが,やがて「縫い合わせ」,「裁断」と段階的に重要な仕事を割り当てられ,しだいに一人前の仕立屋になるために必要な知識・技術を習得していく。そのためレイブとウェンガーは,本来の意味での学習とは人がなんらかの文化的共同体の実践活動に参加し,新参者から古参者へと成長していく過程であるととらえ,この過程を正統的周辺参加legitimate peripheral participationと名づけた。そして,この正統的周辺参加には次のような特徴があることを明らかにした。

 ⑴徒弟制度の中での学習では,直接的に「教える」という行為がなされることはあまりない。学習は文化的共同体の実践に参加することを通じて,半ば潜在的になされる。つまり,学習のカリキュラムは,共同体の実践への参加という状況に埋め込まれた潜在的カリキュラムである。

 ⑵徒弟制度の中での学習過程は,単なる知識・技能の習得過程ではなく,共同体の成員として「一人前になる」ための自己形成過程でもある。つまり,学習=職業的自己形成過程という式が成立している。

 ⑶学習者と教育者の間に明確な区別はなく,新参者もやがては古参者になる。つまり,新参者が古参者になる職業的自己形成の過程は,同時に共同体の再生産(世代交代)の過程でもある。

 また,コリンズCollins,A.ら(1989)は,徒弟制度の中での学習過程は次の4段階からなることを明らかにした。すなわち,①親方が模範を示し,徒弟(学習者)はそれを観察学習するモデリングの段階,②親方が手取り足取り教えるコーチングの段階,③親方が支援しながら徒弟(学習者)に独力でやらせる足場かけ(scaffolding)の段階,④親方の支援をしだいに少なくして徒弟を最終的に自立させるフェーディングの段階の4段階である。なお,この認知的徒弟制cognitive apprenticeshipモデルは,徒弟制度の中での学習過程を分析する視点としての有効性だけでなく,たとえば互恵的教授法やCSCL(computer supported collaborative learning)などに部分的に取り入れられ,学校教育における教授法としての有効性が実践・検討されている。

【教授法の類型】 教授学習の分野でこれまでに提案されている教授法instructional methodsは,次の二つの次元によって類型化することができる。第1の次元は,「行動的成果重視」または「認知的成果重視」の次元である。すなわち,学習の成果として,「できなかったことができるようになること」を重視する立場と「わからなかったことがわかるようになること」を重視する立場の対比である。一方,第2の次元は「指導中心」または「支援中心」の軸である。すなわち,授業において教師が果たすべき役割として,学習者の学習活動を「指導すること」を重視する立場と,学習者の学習活動を見守り「支援すること」を重視する立場の対比である。これら二つの軸を組み合わせると,主要な学習指導法を次の4類型に分けることができる。すなわち,第1の類型は「行動的成果重視・指導型」で,プログラム学習やオーディオリンガル法はこの類型に分類できる。また,有意味受容学習は第2の類型である「認知的成果重視・指導型」に,発見学習は第3の類型である「認知的成果重視・支援型」に分類できる。そして,認知的徒弟制モデルや互恵的学習,CSCLなどの交流型学習は,第4の類型である「行動的成果重視・支援型」に分類できる。 →外国語教育 →交流型学習 →発見学習 →プログラム学習 →有意味受容学習 →連合学習理論
〔森 敏昭〕

出典:最新 心理学事典
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