●新産業都市【シンサンギョウトシ】
デジタル大辞泉
しん‐さんぎょうとし〔‐サンゲフトシ〕【新産業都市】
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世界大百科事典 第2版
しんさんぎょうとし【新産業都市】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
新産業都市
しんさんぎょうとし
新産業都市建設促進法(昭和37年法律117号)によって、地域開発、工業開発の対象として指定された都市をいう。当初その指定は13区域であったが、その後、秋田湾、中海(なかうみ)の2区域が追加され、1980年代以降は15区域となっている。道央(北海道)、八戸(はちのへ)(青森県)、秋田湾、仙台湾(宮城県)、常磐(じょうばん)・郡山(こおりやま)(福島県)、新潟、松本・諏訪(すわ)(長野県)、富山・高岡(富山県)、岡山県南、中海(鳥取・島根県)、徳島、東予(愛媛県)、大分、日向(ひゅうが)・延岡(のべおか)(宮崎県)、不知火(しらぬひ)・有明(ありあけ)・大牟田(おおむた)(福岡・熊本県)がそれである。
最初、この新産業都市指定の要件としては次のことが指摘されていた。
(1)1000ヘクタール以上の工業用地と300ヘクタール以上の住宅団地、および必要量の工業用水。
(2)計画目標年次に人口20万、工業出荷額3000億円の線が達成可能であること。
(3)工業誘致計画進行の可能性と幹線交通施設の整備計画があること。
新産業都市計画は、同じ年の全国総合開発計画(全総)に示されている「工業の地方分散」を推し進めようとしたものである。その限りでは、既成の工業地帯に過度に集中・集積した工場を、計画的に全国規模で分散し、再編することによって、工業を軸とした諸開発を整序するものであった。確かに、前述した要件が厳しく査定され、指定された都市で諸開発が全面的、計画的になされていたならば、開発秩序は保たれたかもしれない。しかし現実には、諸省庁、自治体などの思惑が入り乱れ、妥協の結果が、最終的には15の指定都市として示されたのである。そして、太平洋ベルト地帯を軸とする拠点工業開発の強力な流れに巻き込まれ、それに利用されることになる。
新産業都市をめぐる問題としては次のことが留意されてよいだろう。新産業都市のなかでも、とりわけ活発に工業開発が進められ、工場立地が盛んになされたのは、太平洋ベルト地帯に位置している地域であって、日本海沿岸地域、あるいはベルト地帯から遠く離れた地域では、開発はあまり進められなかった。したがって、工業生産の伸びも、人口の伸びも、新産業都市全体でみると、全国平均よりもむしろ低い水準を示すことになる。ところで、開発がとくに急速であった新産業都市、たとえば水島地区を抱えている岡山県南をみると、そこでは確かに工業生産の伸びは著しかったが、均衡のとれた社会開発は、ついに実現されなかった。一方では新しく公害が生み出され、他方では地元税収入が地域社会とそこの住民に十分還元されることなく、生活環境の整備が大幅に立ち後れることとなった。
さらに新しく立地した新産業、大企業は、かならずしも地元の産業と経済とを調和ある発展に導きはしなかった。こうして新産業都市は、太平洋ベルト地帯における拠点工業開発に「つまみ食い」されたといってよいだろう。1960年代の高度成長は、新産業都市全体に、その「後始末」を押し付けながら、一部の新産業都市をその主要舞台の一つとして利用し、その後の日本経済を新しい段階に引き上げたのである。
しかし、1990年代に入ってみると、次のような事態が明らかとなった。北海道苫小牧(とまこまい)東部開発(全総の一つ)にみられたように、大規模工業開発は失敗した。一方、IT(情報技術)関連産業の展開は、重厚長大産業とは違った工場立地を可能としたので、新産業都市の枠にとらわれない産業開発が可能となった。こうして、地域格差の是正、大都市の過大化防止、都市の地方分散といった新産業都市の基本方向は、有名無実に近いものとなった。
[元島邦夫]
『島崎稔・安原茂編『重化学工業都市の構造分析』(1987・東京大学出版会)』▽『鈴木茂著『産業文化都市の創造――地方工業都市の内発型発展』(1998・大明堂)』
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精選版 日本国語大辞典
しん‐さんぎょうとし ‥サンゲフトシ【新産業都市】
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