●普遍論争【ふへんろんそう】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
普遍論争
ふへんろんそう
controversy of universals
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デジタル大辞泉
ふへん‐ろんそう〔‐ロンサウ〕【普遍論争】
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世界大百科事典 第2版
ふへんろんそう【普遍論争 Universalienstreit[ドイツ]】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
普遍論争
ふへんろんそう
Universalienstreit ドイツ語
ヨーロッパの中世哲学において、「普遍」universaliaをめぐり展開された存在論的・論理学的論争。普遍の問題はすでにプラトン、アリストテレスにおいても論じられたが、ポルフィリオスがアリストテレスの『カテゴリー論』の序文(エイサゴーゲー)で、〔1〕類や種は実在するのか、あるいは単に空虚な表象像にすぎないのか、〔2〕もしそれらが実在するとしたら、それらは物体的か、あるいは非物体的か、〔3〕それらは感覚的事物から切り離されているのか、それともそのうちに存在を有するのか、という三つの問いを出し、ローマの哲学者ボエティウスがその注釈において問題の解決を試みて以来、ヨーロッパ中世とくに11世紀から12世紀にかけて、普遍に関するさまざまの存在論的・論理学的見解が現れ、論議が交わされた。
この問題に対する最初の解答は「極端な実念論」とよばれるものである。それによれば、類や種という普遍は、精神のなかに存在するのと同じ仕方で、精神の外にある対象のなかに実在する。たとえば「人間」は、精神によって考えられたのと同じ仕方で一つの共通な実体として精神の外に実在し、したがって同一の種に属する個々の人間はこの実体を分有するか、あるいはこの実体に偶有が加わったものとなる。オーセルのレミギウス、カンブレのオドー、シャンポーのギヨームなどがこの立場をとった。
これに対して、普遍は「名称」にすぎず、実在するのは個物だけであるとする説を唯名論とよぶ。ロスケリヌスは、普遍は「音声の気息」flatus vocisにすぎないと主張したと伝えられている。このように普遍を「もの」resに帰するか「名称」nomenに帰するかによって実念論realismと唯名論nominalismが区分される。なお、普遍を概念であるとする説を概念論conceptualismとよぶ。12世紀のアベラルドゥスは、ロスケリヌスとギヨームを批判して独自の説をたてた。彼は「普遍は多について述語されるにふさわしいが、個物はそうでない」というアリストテレスの定義から出発し、普遍の問題を普遍的名称の命題における述語機能という観点から考察、普遍的名称の表意作用significatioの分析を通して、普遍はものでも音声でもなく「ことば」sermoであるとした。
アベラルドゥス以後実念論は、シャルトル学派やサン・ビクトル学派において穏健な方向をとった。ソールズベリーのヨハネスによれば、類や種はものではなく、精神がものの類似性を比較し抽象することによって、普遍的概念として統一した、ものの形相である。したがって普遍は、精神によって構成されたものであり、精神の外に実在しないが、精神による構成が抽象である限り、普遍は客観的基礎を有している。
トマス・アクィナスやドゥンス・スコトゥスも実念論の立場を保持したが、唯名論を発展させたのは14世紀のオッカムである。彼によれば普遍は個別的対象を表示する名辞あるいは記号である。実在するものは個物のみであり、普遍は個物ではないから、いかなる意味でも実在しない。普遍は論理学的身分のみをもつ述語あるいは意味なのである。
普遍に関するさまざまの論議は、中世の論理学・存在論の形成と精緻(せいち)な展開にあずかって大きな力があった。
[宮内久光]
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精選版 日本国語大辞典
ふへん‐ろんそう ‥ロンサウ【普遍論争】
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旺文社世界史事典 三訂版
普遍論争
ふへんろんそう
Universalienstreit
初め実在論が優勢。これに対し,普遍は名目にすぎず,個物が実在するという唯名論(名目論)が現れ,トマス=アクィナスは「普遍は個物の中に実在する」として両者を調停。
出典:旺文社世界史事典 三訂版
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