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梅毒【ばいどく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

梅毒
ばいどく
syphilis; lues
最も代表的な性病。梅毒トレポネーマ (トレポネーマ・パリダム) 感染による全身性疾患で経過,症状により4期に大別される。ほかに特殊なものとして先天梅毒 (胎盤内感染) がある。 (1) 第1期梅毒 感染後3週間前後の潜伏期を経て始る。まず外陰部に初期硬結が,次いで1~2週間後に鼠径リンパ節腫脹 (無痛性黄痃,よこね) が現れる。これらの病変は約3週間後に自然消失し,第2の潜伏期に入る。 (2) 第2期梅毒 感染後3ヵ月頃から全身に対側性にバラ疹,丘疹,紅斑膿疱などが反復して出没する。表在性の多発性リンパ節腫脹も現れる。これらの病変もやがて消失し,第3の潜伏期に移行する。第2期梅毒では,梅毒性脱毛症,掌蹠病変,肛門周囲および外陰部の扁平コンジロームがきわめて特徴的な所見を呈する。梅毒疹では多数の梅毒トレポネーマが証明される。 (3) 第3期梅毒 感染後3年で始る。皮膚および粘膜に非対側性に大小種々の結節性病変,硬結性病変が生じ,やがて中央部に噴火口状の潰瘍を形成する。 (4) 第4期梅毒または変性梅毒 大動脈炎,これに基づく大動脈瘤,心内膜炎などの心血管系病変,脳膜炎脊髄癆進行麻痺などの神経系病変が高度で,予後不良である。ほかに骨,筋肉,肝臓,睾丸,内耳,網膜などにも病変が生じる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

梅毒
梅毒トレポネーマという病原菌が原因の感染症。性的な接触などにより粘膜や皮膚の小さな傷から病原菌が侵入して発症する。性器と性器だけではなく、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口(オーラルセックス)でも感染する。
梅毒は、感染後の期間によって発症場所や症状が異なる。感染初期(感染後約3週間)には、陰部や肛門、くちびる、口の内側など感染した部位にしこりや潰瘍ができたり、太ももの付け根(鼠径部)のリンパ節が腫れたりなどの症状が出ることがある。感染後数カ月すると、血流により病原菌が全身に運ばれ、皮膚や粘膜などに赤い発疹などができることがある。この発疹は、バラの花に似ていることから「バラ疹」と呼ばれる。これらの症状は、治療しなくても治ってしまうことが多い。その後、数年から数十年にわたり症状がない時期が続く。そのため感染に気付くのが遅れ、診断・治療に結び付かないがことがある。
感染後治療せずに長期間経過し、この症状がない時期を過ぎると、皮膚や筋肉、骨などにゴム腫と呼ばれる柔らかいゴムのようなしこりができたり、心臓や血管、脳、その他の臓器が侵されたりすることがある。場合によっては死に至ることもある。
治療にはペニシリン系抗菌薬が有効である。日本では一般的に抗菌薬を内服し、神経梅毒の場合は、点滴で治療する。治療によって症状が治まったとしても、医師から治療終了が宣言されるまでは確実に治療を続けることが重要である。また、互いにうつしあうことを避けるためにも、性的パートナーも一緒に検査・治療を行うことも大切である。
梅毒の患者数は、日本では1967年に約1万1000人が報告されて以来、減少傾向にあった。しかし、近年、その報告数が増加している。国立感染症研究所の発表によれば、2010年には621例だった報告数は毎年増加し、17年は5829例と、10年の9.4倍にも増えている。
感染経路として、男性の同性間性的接触が増加している一方、男女共に異性間性的接触の報告数も増加している。また、母から子供へ胎盤を通して感染する先天梅毒の増加も懸念されている。
梅毒は、不特定多数との性的接触がリスクを高めるとされる。性的接触の際には、コンドームを適切に使用することがリスク低減に役立つが、コンドームを使用していても100%感染を予防できるとは限らない。また、梅毒は一度罹患して治ったとしても、終生免疫は得られない。つまり、再感染する可能性があることを念頭に、予防を考える必要がある。
感染を疑う症状があった場合は、早期に医師の診察・治療を受けることが重要である。
(星野美穂 フリーライター/2018年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

朝日新聞掲載「キーワード」

梅毒
梅毒トレポネーマという細菌が原因で起きる感染症で、主に性行為で感染する。感染して3週間ほど後に陰部などにしこりができ、数カ月後に全身に発疹が出る。一時的に症状が治まるため、患者が気づかないうちに感染が広がりやすいのが特徴。早期治療をすれば完治するが、放置すると心臓や脳が侵され、重症化するケースもある。妊婦が感染すると、流産死産になったり、生まれた子どもの目や耳などに障害が出たりすることもある。
(2018-04-12 朝日新聞 朝刊 岡山全県・1地方)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

ばい‐どく【梅毒/×黴毒】
代表的な性病。病原体トレポネマ‐パリズムで、主に性行為により感染し、母親から胎児に感染することもある。約3週間の潜伏期を経て発病し、陰部にしこり・潰瘍(かいよう)ができる(第1期)。3か月ほどたつと全身の皮膚に紅斑や膿疱(のうほう)が出たり消えたりし(第2期)、3年目ごろになると臓器・筋肉・骨などに結節やゴム腫を生じ、崩れて瘢痕(はんこん)となる(第3期)。10年目ごろには脳などの神経系や心臓・血管系も冒され、進行麻痺や脊髄癆(せきずいろう)がみられる(第4期)。シフィリス瘡毒(そうどく)。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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家庭医学館

ばいどく【梅毒 Syphilis, Lues】
[どんな病気か]
 トレポネーマパリダという細菌の感染でおこる病気です。治療しないで放置すると、十数年かけて徐々に進行し、全身の臓器がおかされます。
 梅毒にかかっている人との性行為によって、皮膚や粘膜(ねんまく)の小さな傷からトレポネーマが侵入して感染します。
 梅毒にかかっている人の血液を輸血(ゆけつ)されて感染したり(輸血梅毒)、医療従事者が、梅毒にかかっている人の血液に誤って触れて感染したり、トレポネーマを含む体液のついた衣類、食器、カミソリなどに触れて感染することもありますが、これはまれです。
 また、梅毒にかかっている女性が妊娠(にんしん)すると、おなかの赤ちゃんに先天梅毒(せんてんばいどく)(コラム「先天梅毒」)がおこります。
[症状]
 梅毒は、症状が現われたり、消えたりしながら、長期間かけて進行する病気で、経過は、第1期~第4期に分けられています(図「梅毒の経過」)。
●第1期(感染後3か月まで)
 トレポネーマが感染しても、約3週間は症状が現われずに経過します(第1潜伏期)。
 感染後3週間たつと、トレポネーマが侵入した部分(おもに陰部、ときにくちびる・乳房・手指など)に直径数mmのかたいしこり(初期硬結(こうけつ))が1個でき、ついで、付近のリンパ節(せつ)(初期硬結が陰部にできれば鼠径(そけい)リンパ節(せつ)、乳房にできれば腋下(えきか)リンパ節(せつ))がかたく腫(は)れますが、痛みはありません(無痛性横痃(おうげん))。
 初期硬結は表面がただれて潰瘍(かいよう)になり、硬性下疳(こうせいげかん)という状態になります。このただれた面にはトリポネーマが多数存在し、触れた人に感染します。
 以上の病変は、治療をしなくても数週間以内に自然に治り、第2潜伏期に入りますが、この間にトリポネーマは血流にのって全身に広がります。
●第2期(感染後3か月~3年まで)
 感染後3か月たつと、全身に広がったトレポネーマのため、微熱、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)、後頭部の虫くい状の脱毛(だつもう)などが生じ、全身のリンパ節が腫れ、発疹(ほっしん)(梅毒疹(ばいどくしん))が現われます。
 梅毒疹は、最初は小指の先ほどの大きさで、淡紅色をした斑(はん)が全身にまばらに現われます。これを梅毒性バラ疹(しん)といい、治療しなくても数か月で消え、第2潜伏期に入ります。
 数か月すると、皮膚から盛り上がったぶつぶつ(梅毒性丘疹(きゅうしん))が出たり、膿(うみ)をもったぶつぶつ(梅毒性膿疱(のうほう))が出たりといったぐあいに、どちらかの発疹が3~6か月の間隔で出没をくり返します。
 そして、約3年の間には、発疹は小型のものから大型のものに変化し、全身にちらばって出ていたものが、からだの一部だけにかぎって現われるようになります。
 また、肛門(こうもん)の周囲、陰唇(いんしん)、乳房の下などの皮膚が湿気をおびる部位に梅毒性丘疹ができると、平らに盛り上がってかたく、表面がふやけた結節になります(扁平(へんぺい)コンジローマ)。
 口腔(こうくう)の粘膜に大豆(だいず)ほどの大きさの乳白色のややかたい斑(はん)(乳白斑(にゅうはくはん))ができたり、咽頭(いんとう)の扁桃(へんとう)のあたりに潰瘍(梅毒性アンギーナ)ができたりします。これらの梅毒疹は、どれもかゆみも痛みもなく、出る部位も人によって一定ではありません。
 梅毒疹には、スピロヘータが多数いて、他人が触れると感染します。
 第2期で、発疹の現われていない時期を第2期潜伏梅毒といいます。
●第3期(感染後3年から10年まで)
 感染後、この時期まで適切な治療を受けずにいると、結節性梅毒(けっせつせいばいどく)やゴム腫(しゅ)が現われてきます。
 これは、顔、鼻、くちびる、舌、骨、筋肉、内臓などの一部分に、かたいしこりや腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)ができ、周囲の組織を破壊するもので、治ると瘢痕(はんこん)になり、顔にできるとみにくい容貌(ようぼう)になります。
●第4期(感染後10年以上)
 トレポネーマに脳や脊髄(せきずい)がおかされ、しだいに性格が変化して認知症状態になる進行まひ(脳梅毒(のうばいどく))、手足がしびれて起立や歩行障害がおこる脊髄癆(せきずいろう)になります。また、心臓や血管系統もおかされ、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)や大動脈炎もおこります。
[検査と診断]
 感染を受ける機会があったかどうか、これまでにどんな症状があって、現在どんな症状があるかが診断するうえで重要です。正直に報告してください。
 診断の決め手となるのは、病変からトレポネーマが検出されることと、梅毒血清反応(ばいどくけっせいはんのう)(コラム「梅毒血清反応」)が陽性になることです。
[治療]
 ペニシリン系とセフェム系の抗生物質が有効です。
 ペニシリン過敏症ではなく、早期梅毒(第2期梅毒まで)であれば、ペニシリン注射を10~20日間、または内服を30日間続けます。
 晩期梅毒(第3期梅毒以降)の場合は、梅毒血清反応の成績を参考にして、この治療を反復します。
 なお、晩期梅毒になると、十分に治療をして、完治したはずなのに、梅毒血清反応が陰性にならないことがあります(コラム「梅毒血清反応」)。

出典:小学館
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

世界大百科事典 第2版

ばいどく【梅毒 syphilis】
梅毒トレポネマ(ニコルス株トレポネマ・パリズムTreponema pallidum)を病原体とし,慢性の経過をたどり,循環器系ないし中枢神経系まで侵される性病。出生後に感染したものを後天性梅毒,胎児が子宮内で感染したものを先天性梅毒という。 性病は,近代の細菌学の発達によって,それぞれの病原菌が確定されるまでは,正確な区別がなされていなかった。梅毒が他の性病と区別されるようになったのは,1905年にF.R.シャウディンとホフマンErich Hoffmann(1868‐1959)により梅毒トレポネマが発見されて以後のことである(はじめスピロヘータ・パリダと命名,のちにトレポネマ・パリズムと改称)。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

知恵蔵mini

梅毒
性感染症(性病)の一つ。細菌の一種「梅毒トレポネーマ」に感染することで発症する。初期には目だった症状は見られず、放置して3カ月以上経つと全身各所に小さなバラの花のような発疹(バラ疹(ばらしん))がみられるようになる。さらに数年経つと全身の皮膚・筋肉・骨などへの腫瘍(ゴム腫)の発生やその壊死、複数の臓器での病変などが生じて死に至る場合もある。治療には抗菌薬を用い、ほとんど無症状のまま進行することもあるため、なるべく早くから治療を行うことが必要。特に妊婦の場合、胎盤を通して胎児に伝染し(先天梅毒)、死産・奇形などが起こる可能性があり、日本など多くの国で妊娠初期の梅毒検査が義務づけられている。日本での感染者は1967年の1万1000人を最高とし減少傾向だが、近年は2012年875人、13年1228人、14年1671人と増加してきている。
(2015-4-10)

出典:朝日新聞出版
(C)Asahi Shimbun Publications Inc
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日本大百科全書(ニッポニカ)

梅毒
ばいどく
syphilislues
梅毒トレポネーマTreponema pallidumを病原体とする性病の一種で、古くから西インド諸島に地方病として存在していた疾患。15世紀末にヨーロッパで大流行した。これはコロンブスの一行が西インド諸島からスペインに戻ったのと時を同じくしてまずスペインに流行し、1495年フランスのシャルル8世がナポリに進駐したとき、ナポリで大流行が発生して数年のうちにヨーロッパ全土に拡大した。梅毒の処女地であった当時のヨーロッパでは現在よりもはるかに急性症状を呈したものとみられ、他の流行病(疫病)と同様にみなされ恐れられた。フランス側では、スペイン人が頻繁に出入りしていたナポリにはすでに梅毒が流行していて、そこへフランスの大軍が進駐したために大流行したといい、これをナポリ病とよんだ。一方、ナポリ側では、フランス軍がヨーロッパ各地からの傭兵(ようへい)で編成されていたことから、すでに梅毒に感染していたスペイン人が含まれていたために大流行したといい、フランス病とよんで反発した。この反目を鎮めたのは、イタリアの医師で詩人でもあったフラカストロである。彼は1530年、ギリシアの美青年羊飼いシフィリスの伝記詩として『Syphilis sive Morbus Gallicus』(シフィリスないしフランス病)と題するラテン語の詩をつくり、病気の症候と水銀療法を示唆する内容を盛り込んだ。これが全ヨーロッパで読まれて、一般に梅毒はシフィリスとよばれるようになり、現在に至っている。
 梅毒は第1期、第2期、第3期および変性梅毒(第4期)に大別されている。[岡本昭二]

第1期梅毒

感染してから3か月までをいう。おもに性交による感染機会後、ほぼ3週ごろ外陰部に大豆の大きさに盛り上がった硬いしこりができ(初期硬結)、表面が潰瘍(かいよう)となる(硬性下疳(げかん))が、自覚症状はない。まもなく鼠径(そけい)リンパ節が硬く腫(は)れるが、痛みはない(無痛性横痃(おうげん))。[岡本昭二]

第2期梅毒

感染後3か月から3年までをいう。第2期早期にみられる梅毒性バラ疹(しん)は体幹を中心に爪(つめ)の大きさの淡紅色斑点(はんてん)が多発する。バラ疹より3週間ほど遅れてできる丘疹性梅毒疹は大豆の大きさの赤い隆起で、全身の皮膚に多発するが、特殊型として手のひらや足の底に隆起となる梅毒性乾癬(かんせん)や、陰股(いんこ)部、肛門(こうもん)周囲の表面に湿潤性の扁平(へんぺい)隆起となる扁平コンジローム(扁平コンジローマ)がある。さらに3週間ほど遅れて膿疱(のうほう)性梅毒疹ができるが、それぞれの発疹は数日から数週間で消え、バラ疹、丘疹、膿疱の段階が反復されて約3年間続くわけである。膿疱性梅毒疹は全身状態が不良で抵抗力が低下した場合に出やすい。そのほか、梅毒性脱毛症や皮膚の色素が増減する色素性梅毒および梅毒性白斑がある。さらに、口腔(こうくう)粘膜が乳白色となる粘膜斑がある。[岡本昭二]

第3期梅毒

感染後3年から10年までをいう。結節性梅毒は皮膚または皮下に結節ができるが、続いて潰瘍化して瘢痕(はんこん)を残しながら進行する。ゴム腫(しゅ)(ゴム腫性梅毒)では皮膚にゴムのような硬さをもつしこりが発生し、深い潰瘍となり、筋肉や骨のような深部組織に及ぶようになる。[岡本昭二]

変性梅毒(第4期梅毒)

感染後10年以降に発生する。中枢神経系梅毒として、種々の精神神経症状を示す進行麻痺(まひ)や、おもに脊髄(せきずい)後索が侵される脊髄癆(ろう)がある。心血管系梅毒としては大動脈弁閉鎖不全、大動脈炎、大動脈瘤(りゅう)が発生しやすい。[岡本昭二]

妊婦梅毒

妊婦が梅毒にかかっていることをいう。妊娠後半期に胎児が早死産したり、生まれても先天梅毒児となる。[岡本昭二]

先天梅毒

胎児が母体の子宮内で感染したもので、出生前後に種々の梅毒症状が出る。[岡本昭二]

診断

梅毒トレポネーマの証明は第1期・第2期梅毒の病巣の分泌物より行う。感染後4週以降には梅毒血清反応が陽性となる。反応の種類には、ガラス板法、RPR法のほか、TPHAやFTA‐ABSなどがある。[岡本昭二]

治療

どの症期の梅毒でもペニシリン療法が有効である。注射でも内服でも治療効果はよい。ペニシリンが使用できないときには、エリスロマイシンその他の抗生物質による治療が行われる。[岡本昭二]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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内科学 第10版

梅毒(スピロヘータ感染症)
概念
 粘膜の接触を伴う性行為により感染者の保有している病原体のトレポネーマが侵入し,その後長期にわたって全身にさまざまな症状を起こす感染症である.妊婦から経胎盤的に胎児に感染した場合は先天梅毒とよばれる.
分類
 おもに性行為で感染する後天梅毒と,母体から胎児へ感染する先天梅毒に分けられる.さらに,後天梅毒はその進行により4期に分類されている.このうち第Ⅰ期と第Ⅱ期,そして第Ⅱ期終了後の無症候期である潜伏梅毒を含めて早期梅毒といい,第Ⅲ期と第Ⅳ期を後期梅毒とよんでいる.
病因
 病原体は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)というスピロヘータである.後天梅毒においては,感染者が菌を排出している時期に,性行為などにより粘膜を介して感染が成立する.先天梅毒では,感染した妊婦の胎盤を通じて胎児に感染することで発症する.
疫学
 1940年代には日本でも年間2万~3万人の届け出があった.近年は減少傾向であったが,男性同性愛者の間で増加してきており,HIV感染症との合併例も多くなっている.
病態生理
 性行為などにより侵入したトレポネーマにより,初期は侵入部位の皮膚粘膜病変を生じる.これが自然消退した後,トレポネーマが血行性に全身に広がり皮膚・粘膜疹などを起こす.そして,さらに長期経過すると,脳神経や心血管系の臓器障害を呈するようになる.
臨床症状
1)後天梅毒:
平均3週間の潜伏期があり,典型例では以下のような臨床経過をとる.
 a)第Ⅰ期梅毒:病原体の侵入部位に初期硬結を生じる.やがてこの硬結の中心が自潰し無痛性の硬性下疳となる.男性の亀頭部冠状溝,女性の大小陰唇を好発部位とし,鼠径部の所属リンパ節が腫脹したものを無痛性横痃という.これらのI期病変は通常2~3週で自然消退しいったん無症状となる.
 b)第Ⅱ期梅毒:3~12週に血行性に全身に広がり,皮膚や粘膜の発疹が出現,さらに臓器梅毒の症状を呈する時期である.バラ疹,丘疹,粘膜疹,発熱,リンパ節腫脹,扁平コンジローマ,梅毒性脱毛,髄膜炎などをきたす.丘疹は暗紅色で,手掌や足底にも出現することが特徴的である(図4-8-1).これらの皮膚や粘膜の病変は治療をしなくても自然消退する.
 c)第Ⅲ期梅毒:感染後3年以上を経過し,ゴム腫とよばれる潰瘍を伴いやすい結節を生じる.
 d)第Ⅳ期梅毒:感染後10年以上経過して,大動脈炎,大動脈瘤,進行麻痺,脊髄癆など,心臓血管系と中枢神経系の合併症を発症する.
2)先天梅毒:
 a)早期先天梅毒:出産後~数年以内に骨軟骨症,貧血,肝脾腫,神経梅毒症状を発症する.
 b)晩期先天梅毒:学童期に発症するものでHutch­inson 3徴候(Hutchinson歯,角膜実質炎,内耳性難聴)が重要である.
診断
 病原体の検出は,病巣部からの検体を暗視野顕微鏡あるいはパーカインキによる染色によって観察する.梅毒血清反応はカルジオリピンを抗原とするSTS法(ガラス板法,RPR,VDRL),およびトレポネーマを抗原とするTPHA法あるいはFTS-ABS法によって行う.STS法の陽性例には生物学的偽陽性(biological false positive:BFP)が存在するため,TPHA法あるいはFTS-ABS法でこれを除外する必要がある.
合併症
 近年,HIV感染症の合併例も増加している.HIV感染症に併発した場合には,梅毒反応の定量値が低値となることもある.また,通常よりも早期に神経梅毒を発症する例なども報告されている.
経過・予後
 早期に治療すれば予後は良好であるが,神経梅毒などの進行例では,治療後も症状が不可逆的となってしまうことが多い.
 トレポネーマ抗体は治癒後も高値のままとなるため,治療効果はSTS法の定量による抗体価の低下で判定する.しかし,十分な治療を行っても,抗体価が低下には長期間を必要とするため,6カ月以上経過した後の抗体価で判断する.
治療・予防
 ペニシリンが治療の第一選択である.わが国においては経口ペニシリン薬を,第Ⅰ期では2~3週間,第Ⅱ期では4~8週間の投与がすすめられている.神経梅毒に対してはベンジルペニシリンカリウムを2週間点滴静注する.ペニシリンアレルギーがある場合には,内服薬ではマクロライド系やテトラサイクリン系が,点滴薬としてはセフトリアキソンが選択される.治療の開始後数時間でJarisch-Herxheimer現象とよばれる,トレポネーマの急速な破壊に伴う発熱などの一過性の症状が起こることがある.性感染症の予防のためには,不特定多数との性的接触を避け,性交渉の際にはコンドームを使用することが望ましい.[今村顕史]
■文献
CDC:Sexually transmitted disease treatment guidelines. MMR, 55: 22-31, 2006.
日本性感染症学会:性感染症 診断・治療ガイドライン2008 「梅毒」.日本性感染症学会誌, 19: 46-48, 2008.

出典:内科学 第10版
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それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

六訂版 家庭医学大全科

梅毒
ばいどく
Syphilis
(感染症)

どんな感染症か

 梅毒は梅毒トレポネーマという細菌による慢性の全身性感染症で、症状のある顕性(けんせい)梅毒と症状のない潜伏(せんぷく)梅毒に分けられます。感染力のある初めの2年を早期梅毒(1期梅毒、2期梅毒)、それ以降の感染力がなくなる時期を晩期梅毒と呼びます。近年は入院や手術などの時の血液検査で偶然発見される潜伏梅毒がほとんどです。

症状の現れ方

①1期梅毒

 感染後3週ころに初期硬結(こうけつ)(しこり)が生じ、そののち軟性下疳(なんせいげかん)と呼ばれる潰瘍を形成します。男性では亀頭(きとう)包皮内板(ほうひないばん)、女性では小陰唇(しょういんしん)陰唇後連(いんしんこうれん)、子宮頸部(けいぶ)に多く発生します。リンパ節の腫脹(しゅちょう)(はれ)を起こすこともありますが、これらの病変は数週間で自然になくなります。

②2期梅毒

 感染後3カ月ころから、全身に梅毒性バラ疹、丘疹(きゅうしん)などが発生します。これらの症状は数週から数カ月でなくなります。

検査と診断

 症状のある顕性梅毒は症状が現れている部位からトレポネーマを検出することで診断が確定します。しかし、実際には潜伏梅毒がほとんどなので、梅毒血清反応検査が不可欠となります。

 梅毒血清反応検査はリン脂質を抗原とするSTSと、菌体そのものあるいは菌体成分を抗原とするトレポネーマ抗原系のFTA­ABS(蛍光(けいこう)トレポネーマ抗体吸着)法、TPHA(間接赤血球凝集反応)法などがあります。これらの検査を組み合わせて定性検査を行い、陽性の場合は定量検査を行います。

 定性検査の結果の解釈を表5に示します。治癒後も抗体は陽性となるので、抗体陽性者を治っていないと誤って解釈しないことが重要です。

治療の方法

 梅毒ではペニシリン薬がよく効きます。治療期間は早期梅毒で4週間、晩期梅毒で8週間程度です。この場合、治療の目的はトレポネーマを死滅させることで、重要なのは梅毒血清反応を陰性にすることではないということです。

病気に気づいたらどうする

 早期梅毒の症状がある場合は、早急に医療機関を受診して検査を受ける必要があります。また、セクシャルパートナーが早期梅毒患者であった場合は、感染初期は血清反応が陰性なので、3~4週間後に再検査する必要があります。

國島 康晴, 塚本 泰司

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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