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気分障害【キブンショウガイ】

デジタル大辞泉

きぶん‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【気分障害】
躁病鬱病(うつびょう)躁鬱病(そううつびょう)など、気分変調が持続することによって、苦痛を感じ、日常生活に支障が生じる精神疾患総称感情障害

出典:小学館
監修:松村明
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朝日新聞掲載「キーワード」

気分障害
気分や意欲が著しく変化することで、不眠食欲不振など身体や生活に影響を及ぼしている状態。主にうつ病と、気分の上下の激しい躁うつの二つがある。
(2010-08-19 朝日新聞 朝刊 三重全県 1地方)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

精選版 日本国語大辞典

きぶん‐しょうがい ‥シャウガイ【気分障害】
〘名〙 (mood disorders の訳語) 世界保健機関が定めた、従来の躁鬱(そううつ)病に対しての呼称。

出典:精選版 日本国語大辞典
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最新 心理学事典

きぶんしょうがい
気分障害
mood disorder
気分障害とは,精神障害の一つであり,感情が正常に機能しなくなった状態を指し,うつ状態や躁状態が現われるのが特徴である。2000年の『精神障害の診断と統計の手引き』第4版の修正版(DSM-Ⅳ-TR)では,気分障害は,うつ状態だけが現われるうつ病性障害depressive disorder(うつ病)と,躁状態のみ,または躁状態とうつ状態の両方が現われる双極性障害bipolar disorderなどに大別されている。うつ病性障害と双極性障害では,うつ状態が現れた際の病相は似ているが,出現頻度などの違いから異なる疾患と考えられている。たとえば,うつ病性障害の下位分類の一つであり,気分障害の中でも最も有病率が高いことで知られる大うつ病性障害major depressive disorderは,10人に1人程度が経験し,女性が男性の2倍程度多いのに対して,双極性障害は,100人に1人程度が経験し,性差はないといわれている。また,双極性障害は大うつ病性障害よりも初発年齢が低いことや,遺伝的影響が強いことも指摘されている。

 DSM-Ⅳ-TRでは,うつ状態の症状として,抑うつ気分(悲しい,寂しい,ゆううつ,気分が晴れない),興味・喜びの喪失(仕事や勉強のみならず,趣味などすべてにわたり興味がなくなる),食欲の異常(食欲不振に伴う体重減少。逆に,食欲過剰に伴う体重増加の場合もある),睡眠の異常(寝つきが悪い,眠りが浅い,朝早く目覚めるなど。逆に,睡眠が極端に長くなる場合もある),焦燥または制止(イライラして落ち着かない,頭の中の働きや身体の動作が遅くなる),易疲労性や気力の減退(ほとんど活動をしていなくても,疲れたり,全身の重さを感じたりする。何をするのも面倒になる),無価値観や罪責感(自分の生きる価値が無いように感じる,何かにつけて自分自身を責める)思考力や集中力の減退や決断困難(考えが先に進まず,集中できないため,考えがまとまらない。ささいなことでも判断できない),自殺念慮(死について,時には具体的な方法なども含めて,繰り返し考える)が示されている。

 一方,躁状態の症状としては,気分の高揚(気分が極端に高揚する,怒りっぽい),自尊心の肥大(自分に特別な能力があるように感じる),睡眠欲求の減少(寝なくても平気である),多弁(よくしゃべる,早口),観念奔逸(アイデアが次々に湧き起こる),注意散漫(気が散りやすく,集中力に欠ける),目標志向性の活動の増加,焦燥(仕事や勉強や人づきあいなどの活動が増加する,じっとしていられない),快楽的活動への熱中(買いあさり,性的に分別のない行動,意味のない投資などが増加する)が示されている。

 さらにDSM-Ⅳ-TRでは,このようなうつ状態の症状と躁状態の症状それぞれの発現度合いや持続期間などを基に,大うつ病エピソード,躁病エピソード,混合性エピソード,軽躁病エピソードの4種類が定義され,それらの存否により,うつ病性障害と双極性障害それぞれの下位分類が行なわれている。

 うつ病性障害の中では,躁病,混合性,また軽躁病エピソードの既往がなく,大うつ病エピソードの基準を満たすものを大うつ病性障害とよび,前述のうつ状態の症状のうちの五つ以上の症状(ただし,その五つ以上の症状の中には「抑うつ気分」または「興味・喜びの喪失」が含まれている必要がある)が,2週間以上にわたりほぼ毎日続く場合が該当する。さらに,うつ病性障害の中でも軽症で慢性的なもの(2年以上)を気分変調性障害dysthymic disorderとよぶ。

 一方,双極性障害の中では,躁病エピソードまたは混合性エピソードの存在を中核とするものを双極Ⅰ型障害,軽躁病エピソードと大うつ病エピソードの両方の存在を中核とするものを双極Ⅱ型障害,軽躁状態と軽うつ状態の循環的な発現が慢性的なもの(2年以上)を気分循環性障害とよぶ。

【うつ病の理論と治療法】 うつ病性障害(以下,うつ病)に関する代表的な心理学の理論を三つ挙げる。

 まず精神分析の理論によれば,うつ病は,対象の喪失による悲嘆を強く意識し自分を責めている状態であり,その要因として,幼少期の体験,具体的には口唇期への固着から生じた他者に対する過度の依存が重視される。この場合,おとなになってから,愛する人を喪失したときの無意識的な同一視が生じやすく,愛する人に対して向けられるはずの「自分は見捨てられた」という怒りが,自分へと向かうため,自分を責めることになり,このことがうつ病の原因となる。したがって介入では,クライエントに愛する人への怒りが抑圧されていることを気づかせ,クライエント自身に向けられている怒りを発散させることがめざされる。

 次に認知療法の理論によれば,うつ病患者においては,児童期青年期における喪失や拒絶や批判などの経験を通して形成された否定的なスキーマ(世界を否定的に見る傾向)が機能しやすく,しかもそのスキーマは彼らに特徴的な「認知の歪み(たとえば,一つの事実を見ただけで世の中すべてがそうなっていると考えてしまう傾向)」によっていっそう堅固なものとなっている。それゆえ,彼らはつねに,物事はうまくいかず自分は無能である,という結論に陥りやすく,このことがうつ病の原因となる。したがって介入では,クライエントに認知の歪みを気づかせ,クライエントの考え方を肯定的な方向へ変えていくことがめざされる。なお近年の実証研究では,認知療法,あるいは認知療法の技法と行動療法の技法を組み合わせた認知行動療法が,うつ病に対して他の心理療法と比較しても同等ないしそれ以上の介入効果を有することが報告されている。

 第三に対人関係療法の理論によれば,うつ病の患者に特徴的な対人行動(極端にゆっくりとした語り口,アイコンタクトの欠如,安心を強く求める態度など)が他者からの拒絶を引き出してしまっており,このような対人行動は,うつ病の結果であると同時にうつ病の原因ともなっている。したがって介入では,クライエントに対人関係に問題があることを気づかせ,過去よりも現在の生活に焦点を当てながら,コミュニケーションの改善などについて話し合うことが行なわれる。なお一般に,うつ病への介入では,クライエントの回復具合に応じて,極力休養を取らせる,がんばれという励ましはしない,重大な決定は延期させる,自殺しないよう気をつけるなどの配慮が必要になるといわれている。

 生物学の理論では,神経化学の分野における,セロトニンなどの神経伝達物質がうつ病に関係しているという説がよく知られている。最近は,ストレス反応にかかわるホルモンの働きの異常がうつ病に関係しているという説なども唱えられている。治療としては,薬物療法(抗うつ薬など)が中心である。抗うつ薬には,三環系抗うつ薬,四環系抗うつ薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などがある。開発された順に,第一世代(三環系),第二世代(三環系,四環系など),第三世代(SSRI),第四世代(SNRI)と分類されることもある。これらの薬の抗うつ効果には大きな違いはないものの,SSRIやSNRIは,三環系抗うつ薬よりも副作用が少ないことが知られている。また,抗うつ薬の効果発現には投与開始後1~2週間を要するといわれている。なお,重症のうつ病に対しては,電気痙攣療法(患者の脳に電流を流す方法)が用いられることもある。

【双極性障害の理論と治療法】 心理学の理論では,双極性障害のうつ状態については,うつ病の理論がかなりの範囲で適用可能と考えられている。また,躁状態については,通常であれば心理的に衰弱してしまうはずのクライエントを,そうならないように防衛する機能も果たしていると理解されている(たとえば「ある男性クライエントは,躁状態になると自分が偉大な事業家であると思い込んだ。現実の彼は起業するたびに倒産に追い込まれていたが,躁状態のおかげで失敗続きの現実に直面せずにすんでいた」という事例が該当する)。双極性障害への心理学的介入としては,クライエントの気分の変動に伴って生じる不適切な思考や対人行動に焦点を当てることや,クライエントとその家族に対して,生活環境の整備や服薬の習慣化を促すための教育を施すことが有効であるといわれている。

 一方,生物学の理論では,一卵性双生児を対象とした研究などから,双極性障害には遺伝的基盤が関与すると考えられている。治療としては,薬物療法(気分安定薬など)が中心となっている。 →精神分析療法 →認知行動療法
〔森田 慎一郎〕

出典:最新 心理学事典
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