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水産物流通【すいさんぶつりゅうつう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

水産物流通
すいさんぶつりゅうつう

生鮮魚貝類は、一般に生産の季節変動性が大きいこと、腐敗性が強いこと、さまざまな漁業規模や漁具、漁法の存在により魚種、鮮度、品質が実に多様で選別・規格化も困難であること、などの商品特性を有している。また、水揚高の規模のまちまちな産地漁港が全国各地に分布しており、消費地への輸送経路は多岐にわたる。そして、生鮮魚貝類は流通の過程で低次や高次ならびに食用・非食用の各種の加工が行われる。このような事情から、水産物の流通は、一般にきわめて複雑で多岐的な様相を呈する。

[廣吉勝治]

伝統的な流通ルート

水産物流通の担い手としては、生鮮魚貝類特有の商品特性や漁業生産者の小規模零細性を背景として、長い間、前近代的な問屋商人に依存しなければならない歴史があった。しかし、明治末から大正期にかけての都市消費地の発達と漁業生産の発展に促され、産地漁港や交通条件、水揚げ施設などが順次整備され、水産物の流通機構は、しだいに問屋商人の集合市場や、問屋商人との抗争に打ち勝った生産者団体による共同販売所へと移行した。他方、都市消費地では江戸時代から問屋御用をつとめる特権的商人の集合市場が発達してしだいに形を整え、今日の卸売市場形成の前身となった。こうして、産地漁港においても都市消費地においても、卸売市場が水産物流通を代表する近代的機構として発展するところとなったのである。

 産地市場は、漁業生産と消費地市場との結節点として重要な機能を果たしており、漁港に水揚げされた漁獲物の一次的な価格形成を行うとともに、出荷、保蔵、食品加工、非食用加工などの利用配分を迅速、かつ確実に行う。消費地市場は、産地市場から出荷されてきた生鮮品をはじめ冷凍品や加工品などを、小売店および外食店、料理店、病院、学校、給食施設などの大口需要者に売りつなぎ、最終的な卸売価格を形成する役割を果たす。このように産地と消費地における2段階の卸売市場経路となっている点が水産物流通の特徴である。

 とくに産地市場の存在は、漁業生産と水産物の商品特性を反映してユニークである。産地市場卸売人は、かつての問屋商人の系譜を引く卸売会社である場合もあるが、一般的にはかつての漁業者の共同販売所の系譜を引く生産者団体(漁業協同組合など)である場合が多い。また、産地仲卸人(仲買人)は、漁獲物をそのまま即日消費地市場へ売りつなぐ生鮮出荷業者、冷蔵業者、各種の加工業者、小売業者など多様な構成となっており、さまざまな機能を兼ね備えている。

[廣吉勝治]

新しい流通ルート

しかし、1960年代以降の経済発展のなかで、水産物の流通機構に大きな変化が生じている。すなわち、従来のような産地市場→消費地市場といった2段階の卸売市場中心の流通が崩れつつあり、卸売市場以外の流通経路の形成を含む多岐的、多元的な水産物流通が展開している。しかも、流通の担い手として、大手の商社や水産会社あるいは場外問屋や他産業資本などが新規に水産物流通への参入を強めているのである。この要因は次のようなものである。

(1)漁業生産規模の大型化と漁場の遠隔化によって、生産資本の大型化と水揚げ・出荷の大量化が図られたこと
(2)冷凍・加工技術の発達・普及によって、水産物の主要な取扱い形態が生鮮品から保管と出荷調整可能な冷凍・加工品へと移行し、規格・定型品的な水産物の取扱いが台頭したこと
(3)巨大な人口集中都市の形成と都市的生活様式の普及によって、スーパーマーケットなどの量販店や各種の外食店などが増加し、規格・定型品の大量流通・販売が可能となったこと
(4)魚価の高値安定化といった事態に対応して水産物の輸入が急増し、いまや国内消費にとっても水産物輸入は無視できなくなっていること
 かくして、今日では、消費地市場においては、冷凍・加工品が水産物取扱量の60~70%を占め、また、水産物輸入量は国内水産物消費量の約60%を占め、水産物の自給率低下の問題が注目されている。エビ、マグロ、サケ、マス、イカ、タコおよび魚卵類をはじめとする輸入品などの主要な水産物の流通は、基本的に卸売市場以外の資本が担う市場外流通となっており、既存の卸売市場流通に多大な影響を及ぼしつつある。このような状況のなか、多様化した需要と流通形態に対応すべく、1999年(平成11)委託販売原則、せり、入札販売原則などの規則を緩和する方向で卸売市場法が改正された。

 こうした水産物流通の構造的変化とその社会問題化に対しては、たとえば生産者と消費者による産地直結という試みも個々にはあるが、従来の卸売市場の再編成という抜本的な公共政策の実施が期待されている。なお、すべての水産物は流通の各段階において、食品衛生法に基づいた安全性の確保と監視が行われ、さらに1999年のJAS法(農林物資の規格及び品質表示の適正化に関する法律)の改正に伴い、すべての生鮮食糧品について原産地表示を行うことなどが義務づけられた。

[廣吉勝治]

『魚の消費を考える会編『現代サカナ事情』(1997・新日本出版社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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