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水痘・帯状疱疹ウイルス

内科学 第10版

水痘・帯状疱疹ウイルス(ウイルス感染症)
(2) 水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)
概念
 水痘帯状疱疹ウイルスは,初感染で水痘(みずぼうそう)を発症する.ウイルスは治癒後も潜伏して持続感染し,それがさまざまな誘因によって再活性化することで発症したのが帯状疱疹である.
病因
 水痘・帯状疱疹ウイルスは,単純ヘルペスウイルスと同じヘルペスウイルスα亜科に属し,遺伝子的にも近隣ウイルスといえる.初感染として発症する水痘は,感染力が強く,結核や麻疹と同じように空気感染する.帯状疱疹は,潜伏感染したウイルスが再活性化して再発(回帰発症)したものであり,通常は局所に限局した病変となる.しかし,高度の免疫不全がある場合などには,再発でも播種性の帯状疱疹となることがあり,この場合には限局した帯状疱疹よりも感染力も強くなる.
疫学
 水痘は感染力が強く,不顕性感染で終わることも少ない.その多くが10歳までに感染し,成人での抗体保有率は90~95%以上となる.1年のなかでは,冬から春に多くなる傾向がみられる.
 一方,潜伏感染からの回帰発症である帯状疱疹は,加齢によって発症しやすくなるため,若年者よりも高齢者に多くみられる.さまざまな誘因によって起こるため,季節性はなく1年を通じて発症する.
病態生理
 予防接種や感染の既往による十分な免疫をもたない感受性者では,ウイルスが気道の粘膜などから侵入しウイルス血症を引き起こす.その後,ウイルスは全身に散布されて,皮膚に特徴的な水痘の皮疹を発症する.水痘が治癒しても,ウイルスが脊髄知覚神経節に侵入することで,潜伏感染が持続する.そして,加齢や免疫不全などによる細胞性免疫の低下でウイルスが再活性化される.ウイルスは遠心性に潜伏神経節から神経線維を介して皮膚へ運ばれ,その神経支配領域に帯状疱疹を発症する.
臨床症状
1)水痘(varicella):
ウイルスに感染してから10~21日程度の潜伏期間の後,全身倦怠感,発熱,発疹などで発症する.皮疹は丘疹,水疱,膿疱,痂皮へとすすむが,これら種々の段階の皮疹が同時に存在し,咽頭や頭部にも認められる.
 小児期のウイルス感染症として代表的な流行ウイルス感染症の1つであり,多くの健康小児にとっては比較的良好な経過をとる疾患である.しかし,脳症や脊髄炎,あるいは視神経炎などの多彩な神経合併症をもち,後遺症を残すような重症例も存在する.また,HIV感染症,白血病,臓器移植患者など,細胞性免疫が低下している場合の水痘では,経過の遷延や重症化が起こりやすくなることが知られている.母親が水痘に罹患した場合には,出生児に,白内障,低体重,精神発達遅延などの先天性水痘症候群を起こすことがある.
2)帯状疱疹(zoster):
帯状疱疹は,神経節に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって起こる.このため,片側性の支配神経領域に一致した範囲に皮疹が出現する(図4-4-1).皮疹は水痘と同様に,丘疹,水疱,膿疱,痂皮へとすすみ,発症した神経領域の疼痛を伴うことが多い.特に高齢者では,帯状疱疹後神経痛として,激しい神経痛が治癒後も数年以上にわたり持続することもある.
 また,顔面神経の膝神経節病変では,外耳道の疼痛と水疱に,顔面神経麻痺も伴うことがあり,Ramsay-Hunt症候群とよばれている.著明な細胞性免疫低下のある患者での発症では,ときに支配神経領域以外へも進展し,播種性帯状疱疹となることもある.
診断
 水痘と帯状疱疹は,特徴的な皮疹や臨床像から本疾患を疑うことは難しくはない.皮膚擦過スメアや水疱内容液などの病巣部からのウイルス分離,免疫組織化学的染色,PCR法によるウイルスDNAの検出などによって確定診断される.血清では,特異IgM抗体の上昇やペア血清による抗体陽転での診断が可能である.
合併症
 水痘の合併症は多彩であり,肺炎,脳炎などの神経系合併症,肝炎,血小板減少性紫斑病,急性糸球体腎炎,関節炎,心筋炎,心囊炎,膵炎,精巣炎などを起こす.また母体の感染によって,出生児に眼異常,低出生体重児,中枢神経系異常などの先天性水痘症候群を起こす可能性がある.
治療・予防
 水痘・帯状疱疹に効果のある抗ウイルス薬として,アシクロビルやバラシクロビルが使用される.また,弱毒生ワクチンがあり予防接種も行われている.免疫グロブリン投与が,水痘暴露時の発病の回避や軽症化のために投与されることがある.海外では,細胞性免疫が低下した高齢者を中心に帯状疱疹のワクチンが実用化されており,わが国においても一部の医療機関で行われている.
 水痘は空気感染するため,水疱が痂皮化するまでの間は空気感染予防策をとる必要がある.片側性の神経支配領域に限局した帯状疱疹においては,水痘のような感染力はなく接触感染予防策をとればよい.しかし,細胞性免疫不全患者に生じる播種型の帯状疱疹では,臨床像や感染力が水痘に近くなるため,空気感染予防策をとるのが基本となる.[今村顕史]
■文献
Steiner I, Kennedy PGE, et al: The neurotropic herpas viruses: herpes simplex and varicella-zoster. Lancet Neurol, 6: 1015-1028, 2007.

出典:内科学 第10版
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それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

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