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治安維持法【ちあんいじほう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

治安維持法
ちあんいじほう
大正 14年法律 46号。大日本帝国憲法体制下で,思想運動大衆運動弾圧の中心にすえられた法律。 1924年6月に成立した加藤高明内閣 (→護憲三派内閣 ) は,大正デモクラシーの要望に譲歩して 25年3月に普通選挙法を成立させたが,これに対する枢密院工作として治安維持法を同時に成立させた。 22年に審議未了となった過激社会運動取締法案や,23年の関東大震災時に緊急勅令として公布された治安維持令などを集成して,「国体変革シ,及ビ私有財産制度否認セントスル」結社や運動を禁止するため違反者に懲役 10年以下の実刑を科した。さらに 28年の田中義一内閣は緊急勅令で法改正を行い,「国体変革」の罪には死刑をも適用することにした。さらに 41年には予防拘禁制の導入などの改正があり,最初7条だった治安維持法は 65条にもなった。この法の最初の適用は,25年 12月~26年4月の学連 (全日本学生社会科学連合会) 事件だが,第2次世界大戦後の 45年 10月に GHQ指令で廃止されるまで,社会主義運動や労働運動はもちろん,思想,学問,言論,表現など一切の自由への過酷な弾圧の法的根拠として,処断者は数万人にも及んだ。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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朝日新聞掲載「キーワード」

治安維持法
1925年制定敗戦までの20年間、思想や大衆運動を弾圧した。当初共産・無政府主義者を対象にしたが、改定を重ねるなどし、戦争を唱える人や自由主義者、宗教家らに適用を拡大した。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟によると、当局発表で約7万人が送検され、作家の小林多喜二ら拷問死した約90人を含め、少なくとも400人強が獄死した。
(2019-08-30 朝日新聞 朝刊 神戸・1地方)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

ちあん‐いじほう〔‐ヰヂハフ〕【治安維持法】
国体の変革と私有財産制度の否認を目的とする結社や行動を処罰するために定められた法律。大正14年(1925)制定、昭和16年(1941)全面的に改正。共産主義活動を抑圧するなど、思想弾圧の手段として濫用された。同20年廃止。

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

ちあんいじほう【治安維持法】
1925年4月22日公布の思想・結社取締法。
[成立過程]
 第1次世界大戦中の日本資本主義の発展により労働者,農民,都市中間層の解放を求める動きが大きくなり,また大戦後ヨーロッパの巨大な民主主義的潮流が日本に一気に流入したため,社会運動は1919年以後急速に発展した。〈世界改造〉を求めるこの新しい運動と植民地・勢力圏での民権解放運動の発展に深刻な危機感をいだいた日本の伝統的支配層は新しい治安体制を模索し,19年朝鮮に〈政治ニ関スル犯罪処罰ノ件〉を公布し,20年には思想弾圧のため森戸事件を起こした。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

ちあんいじほう【治安維持法】
国体の変革、私有財産制度の否定を目的とする結社の組織者と参加者を処罰する内容の法律。1925年(大正14)制定。当初の目的は、普通選挙法と日ソ国交樹立に対応して共産主義者の活動を取り締まることにあったが、次第に反政府・反国策的な思想や言論の自由の抑圧の手段として利用された。45年廃止。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

治安維持法
ちあんいじほう
第一次世界大戦後に高揚した社会運動、とりわけ日本共産党を中心とする革命運動の鎮圧を標榜(ひょうぼう)して1925年(大正14)に制定された法律。その後1928年(昭和3)の改正を経て、共産党員のみならず、その支持者さらには労働組合・農民組合の活動、プロレタリア文化運動の参加者にまで適用されるようになった。日本共産党指導部の壊滅した1935年以降、同法は宗教団体や学術研究サークルなどにまでその牙(きば)を向け、ファシズムへ向けて国民を思想統制する武器として「活躍」した。同法は1941年いっそう権力にとって都合のよいように改正されたが、敗戦直後の1945年(昭和20)10月15日GHQ(連合国最高司令官総司令部)の指令に基づいて廃止された。同法により検挙され、また起訴された者の数がどれほどになるかは、いろいろな統計によってかなりの食い違いがある。さらに統計から漏れた検挙者の数も相当多数に上ると推測される。そういう限定をつけたうえで、司法省の調査によるものをみると、1943年の4月までで同法により検挙された者は6万7223名、起訴された者は6024名に上っている。これが一つの目安となろう。同法の軌跡は、成立期(1925~1928年)、本格的発動期(1928~1935年)、拡張期(1935~1941年)、拡散期(1941~1945年)の四つに区分することができる。[渡辺 治]

成立期

社会運動取締りのための新しい治安立法の最初の試みは、1922年(大正11)第45議会に提出された過激社会運動取締法案であった。同法案の流産後、政府は緊急勅令で再度同法の制定をねらったが実現するに至らず、1923年関東大震災に乗じて、いわゆる治安維持令を緊急勅令の形で出すにとどまった。しかしこれは取締り当局の満足のいくものではなく、かくして治安維持法案が1925年の第50議会に提出されることになった。若干の修正を受けただけで成立した同法は、その第1条で「国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的」として結社を組織したり、それに加入した者に10年以下の懲役・禁錮刑を科している。ほかに同法は、国体変革等の目的実行のための協議(2条)、目的実行の煽動(せんどう)(3条)、目的達成のための犯罪の煽動(4条)、目的達成のための利益供与(5条)などの処罰を規定している。同法の最初の発動は、1926年(大正15)京都大学の学生を主体とした全日本学生社会科学連合会関係者に対してなされた(学連事件)。しかし、この発動は権力が同法発動の主たる対象としていた日本共産党とはさしあたり関係のない対象に向けられていること、また学連に対しては同法2条の実行協議罪が発動されていること(後年同法の発動はほとんど1条に限られる)などの点で、後の本格的発動とは様相を異にしていた。いわば小手調べの段階であった。[渡辺 治]

本格的発動期

同法の本格的発動は、1928年(昭和3)3月15日、日本共産党関係者に対する全国一斉検挙(三・一五事件)であった。その後も共産党関係者に対する一斉検挙はたび重ねて行われていく。一方、政府は三・一五事件を宣伝して「共産党の陰謀」を印象づけながら、同法改正案を第55議会に提出した。それが不成立に終わると、政府は緊急勅令という形で改正を強行した。この1928年改正では、(1)国体変革を目的とした結社の組織者、指導者に対して最高刑に死刑が導入され、(2)結社のメンバーでなくとも、結社の「目的遂行ノ為(ため)ニスル行為」をなした場合には同法で処罰する旨の規定(いわゆる目的遂行罪)が加えられた。(1)は運動参加者への威嚇という効果をねらったものであるが、とくに(2)の改正が果たした役割は大きかった。目的遂行罪により同法は適用の対象を一挙に拡大し、労働組合の活動、文化運動、果ては弁護士の治安維持法被告のための活動までもが、日本共産党の「目的遂行ノ為ニスル行為」であるという理由で処罰されるに至った。こうした適用対象の飛躍的拡大に伴って、当局は運動参加者に対し、この重罰の威嚇や拷問、長期の拘禁などによって転向を強要した。たび重なる弾圧と、転向強要によって、社会運動は急速に衰退し、1935年には日本共産党指導部も壊滅して、治安維持法はそれが標榜していた目的を達することになった。[渡辺 治]

拡張・拡散期

しかし治安維持法は、天皇制のファシズム化に伴い新しい役割を受け持つこととなる。それを象徴したのが1935年末、大本(おおもと)教への同法の発動に始まる一連の宗教団体弾圧であった。天皇制の「国体」神話を認めない宗教が、この法によって抹殺され、国民のイデオロギー統制が進む。また、それまで処罰の対象とならなかった唯物論研究会のような研究活動や、非共産党系の労農グループにまで同法の牙は向けられていった。こうした治安維持法の濫用(らんよう)を法的に追認し、さらにいっそう広い対象に発動できるようにするために、1941年同法は大改正される。すなわち改正法は第1章で、「国体変革」結社に対する刑をさらに引き上げ、その「支援結社」「準備結社」あげくのはてには結社といえない「集団」の活動をも取り締まると規定してその対象を拡大した。また宗教団体を処罰するために「国体否定」(変革まではいかずともよい)結社処罰罪が新設された。さらに第2章では弁護人の制限、控訴の否定など同法に特別な刑事手続が新設され、第3章では非転向者を引き続き拘禁する予防拘禁制が導入された。こうして同法は、もはや権力の行使を規制するという意味での法とはいえない代物となったのである。[渡辺 治]
『奥平康弘著『治安維持法小史』(1977・筑摩書房)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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治安維持法
ちあんいじほう
  大正一四年四月二二日公布
第一条〔1〕国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮(きんこ)ニ処ス
〔2〕前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二条 前条第一項ノ目的ヲ以(もっ)テ其(そ)ノ目的タル事項ノ実行ニ関シ協議ヲ為(な)シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第三条 第一条第一項ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項ノ実行ヲ煽動(せんどう)シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第四条 第一条第一項ノ目的ヲ以テ騒擾(そうじょう)、暴行其ノ他生命、身体又ハ財産ニ害ヲ加フヘキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第五条 第一条第一項及前三条ノ罪ヲ犯サシムルコトヲ目的トシテ金品其ノ他ノ財産上ノ利益ヲ供与シ又ハ其ノ申込若(もしく)ハ約束ヲ為シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス情ヲ知リテ供与ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ為シタル者亦(また)同シ
第六条 前五条ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除ス
第七条 本法ハ何人ヲ問ハス本法施行区域外ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス
   附則
大正十二年勅令第四百三号(治安維持ノ為ニスル罰則)ハ之ヲ廃止ス
【治安維持法中改正ノ件】
  昭和三年六月二九日公布
治安維持法中左ノ通改正ス
第一条〔1〕国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役若ハ禁錮ニ処シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ二年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
〔2〕私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者、結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
〔3〕前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二条中「前条第一項」ヲ「前条第一項又ハ第二項」ニ改ム
第三条第四条中「第一条第一項」ヲ「第一条第一項又ハ第二項」ニ改ム
第五条中「第一条第一項及」ヲ「第一条第一項第二項又ハ」ニ改ム
   (『旧法令集』による)

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

ちあんいじ‐ほう チアンヰヂハフ【治安維持法】
〘名〙 旧憲法のもとで、国体の変革と私有財産制度を否認する結社活動、個人的行動を処罰するために定められた法律。大正一四年(一九二五)制定され、昭和一六年(一九四一)全面的に改正。主として共産主義活動を抑圧するために適用。違反者に対しては死刑を含む重刑が科せられ、思想の弾圧に重要な役割を演じたが、昭和二〇年一一月、連合国最高司令部の覚書によって廃止。

出典:精選版 日本国語大辞典
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旺文社日本史事典 三訂版

治安維持法
ちあんいじほう
1925(大正14)年に成立した代表的弾圧法規
第1次加藤高明内閣が立案し,1925年3月普通選挙法とともに成立。社会運動の発展に対処し,国体変革や私有財産制の否認を目的とする結社・運動を厳禁した。'28年田中義一内閣は勅令で死刑を付加,さらに '41年の改正で予防拘禁制を採用。特高警察と結合し,いっさいの反政府・反軍部的言動に拡大解釈で適用されるに至った。'45年10月廃止。

出典:旺文社日本史事典 三訂版
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