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波動【ハドウ】

デジタル大辞泉

は‐どう【波動】
波のうねるような動き。
空間の一部に生じた状態の変化が、次々に周囲に伝わっていく現象。水の波・音波などの弾性波や、光・X線などの電磁波などにみられる。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

はどう【波動 wave motion】
水面の波は,だれもが見慣れた波動現象の一例である。このほか音,光,電波などの波動にわれわれはつねに取り囲まれている。水面の波は,ある場所で起きた水面の上下振動が次々に周囲に伝わっていく現象である。その際に水そのものは,もとあった場所の付近で運動するだけで,全体として一定方向に動いていかない点が特徴である。水面を波が伝わるとき,高くなった場所を波の山,低くなった所を波のという。山の部分は山脈のように連なっているが,これを波面という。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

はどう【波動】
物質のある点での振動がそれに隣接する部分の運動を引き起こし、その振動が次々に伝えられてゆく現象。その振動する物質を媒質という。例えば、水面に起こる水波や、音波・地震波などの弾性波など。また、電磁波は電場および磁場の振動が空間を伝わる現象。なみ。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

波動
はどう
wave motion
空間や物体の一部に加えられた状態の変化が、次々に周囲の部分にある速さで伝わっていく現象(図A)。海や池の水面にたつ波は親しみ深い現象であるが、これは物理的には複雑な現象である。これらについては「波浪」の項で述べる。
 取り扱いやすく、簡単で基本的な波として、弦を伝わる横波(図B)、つるまきばねを伝わる粗密の縦波(図C)、流体中を進む音波、弾性体の振動の波(縦波および横波)の弾性波、真空中や誘電体(絶縁体)中を伝わる電磁波(光波を含む)などがある。いくらか性質が違うが、きわめて重要な波に、電子波のような物質波もある。これらの波には、それぞれの個性・独自性があるが、波として互いに類似した性質を共有する。それで、ある波の性質の理解は、しばしば他の波の性質の納得にも役だつことになる。以下では、主として弦の横波について述べる。[飼沼芳郎]

波動方程式と波動関数

一様でしなやかな弦をぴんと水平に張り、その一端を急に横に振ると、振動が横波として弦を伝わっていく。弦のある場所(位置座標x)の微小部分に働く力は、右および左に隣接する弦の及ぼす二つの張力の合力である。二つの張力は、同じ大きさ、わずかに異なる方向、逆の向きをもつので、二つの張力の合力は、この微小部分を弦がぴんと張って静止しているときの位置、(平衡位置)に引き戻す復元力となる。弦の微小部分の運動方程式、「質量掛ける加速度は力に等しい」から、(一次元空間の)波動方程式とよばれる二階の偏微分方程式が導かれる。すなわち、「(波の伝播(でんぱ)速度cの逆数の二乗)と(弦の変位uの時刻tによる二階偏微分係数)との積は、(弦の変位uの位置xによる二階偏微分係数)に等しい」。この波動方程式の解uはtとxの関数で波動関数とよばれる。波動関数uの一般的な形は、(t-x/c)の任意の関数と(t+x/c)の任意の関数の和である。前者はプラスx方向に、後者はマイナスx方向に、いずれも速度cで伝わる波を表す。弦の横波では、伝播速度cは弦の張力と線密度(弦の単位長さ当りの質量)との比の平方根に等しい。[飼沼芳郎]

正弦波

正弦波(図D)はもっとも基本的な波である。波動関数uが
  u=asin((2π/T)・(t-x/c)+δ)
すなわち、振幅aと位相の正弦関数の積で表される場合には、この波はプラスx方向に速度cで進行する正弦波である。(2π/T)の2πラジアンは360度、Tは周期で、(2π/T)は角振動数である。角振動数は振動数(1/T)の2π倍である。時刻tがTの整数倍だけ移っても、位置xがλ=cTの整数倍だけ変わっても、波動関数は同じ値をとる。λは波長である。速度cで伝わる一般の進行波は、同じ速度をもち、振動数がある範囲にわたって分布する無数の正弦波の重ね合わせ(フーリエ積分)として表すことができる。また波長λ、周期Tの周期的な関数であるような進行波は、基本振動数(1/T)およびその整数倍の振動数(倍振動数)の正弦波の重ね合わせ(フーリエ級数)として表される。正弦波は単色波ともよばれる。[飼沼芳郎]

波のエネルギー

ある物質中を波が伝わっていくとき、その物質を波の媒質という。進行波が伝わっていくとき、媒質はその平衡位置を中心にして振動するだけで、進行波とともに伝わっていくのは波のエネルギー流である。弦の横波においては、弦の微小部分は、その振動の運動エネルギーと、変位が場所によって変化していることに基づく弦の伸び変形のひずみのエネルギーとをもつ。弦の微小部分に蓄えられたエネルギーの単位時間当りの増加量(増加率)は、この微小部分の両端から流れ込むエネルギー流の代数和に等しい。弦の微小部分の一端を通して隣接する弦の部分から流れ込むエネルギー流は、隣接する弦がこの部分に及ぼしている力の仕事率(単位時間にする仕事)に等しい。したがって、張力の横方向成分と弦の速度との積に等しくなる。[飼沼芳郎]

2種の媒質の境界における波の反射と透過

弦の横波において、張力の横方向成分と弦の速度の比は、張力と線密度(単位長さ当りの質量)との積の平方根に等しい。この比は弦の特性インピーダンスとよばれる。線密度の異なる2種類の弦を1点でつなぐ。第1の弦を横波が伝わっていくと、二つの弦の境界で波の反射がおき、第二の弦には透過波が伝わる。反射波、透過波の強度と入射波の強度の比、すなわち強度反射率、強度透過率は
  (強度反射率)
   =(z1-z2)2/(z1+z2)2
  (強度透過率)
   =4z1z2/(z1+z2)2
   =1-(強度反射率)
と書ける。z1、z2は二つの弦のインピーダンスである。[飼沼芳郎]
定常波
一端が固定されている弦に正弦波が伝わっていき固定端に到達すると、振幅反射率マイナス1で反射する。すなわち、反射波、入射波の振幅は等しく、位相にはπ(180度)の跳びを生ずる。この場合には、二つの波の重ね合わせによって定常波が生ずる。定常波では弦の各点が入射正弦波の振動数で振動する。固定端からの距離が半波長の整数倍になる位置に節(ふし)、すなわち振動の振幅がつねにゼロになる場所が生ずる。隣り合った節と節の中間に腹(はら)、すなわち振幅最大の場所が生ずる。定常波の節および腹ではエネルギー流がつねにゼロであり、もっとも近接した節と腹の間にある弦の上で波のエネルギー流が往復している(図E)。[飼沼芳郎]
合成波
2種類の弦がつながれているとき、第二の弦の線密度が非常に大きい場合は、弦の接続点を固定端とする定常波が生ずる。第二の弦の線密度が非常に小さい場合にも、第二の弦に透過する波の強度はゼロに近く、弦の接続点を腹とする定常波が生ずる(図F)。これは、接続点を開放端(自由端)とする場合の定常波に近いものである。なお入射正弦波と反射正弦波の振幅の大きさが異なる場合には、定常波の節における振動の振幅は最小にはなるが、ゼロにはならない。[飼沼芳郎]
平面波・球面波
三次元空間を伝わる波においては、波の位相が一定値をとる平面が伝わっていく。この曲面を波面という。波面が平面であれば、波は平面波である。波面が1点を中心とする球面であれば、波は球面波である。球面波の振幅は球面の半径に逆比例して減少し、強度は半径の二乗に逆比例して減少する。したがって、球面を通して流れるエネルギー流の総量の時間平均は球面の半径によらぬことになる。[飼沼芳郎]

波の干渉

一つの波源から出た波が異なる経路をたどって同一の場所に到達すると、二つの波は強め合ったり相殺したりして波の強弱の縞(しま)が空間的に生ずる。この現象が波の干渉で、この縞は干渉縞である。一般に、二つの波の波動関数の和に等しい波動関数で表される波が存在する。したがって、二つの波をそのまま重ね合わせて考えてもよいことになる。これが、波の重ね合わせの原理である(図G)。この原理は波動光学の基礎を与える(最近は、重ね合わせの原理から外れた非線形光学現象も研究されている)。二つの波の重ね合わせ、干渉は、二つの波の進行方向の向きがちょうど逆のときには既述のように定常波の腹と節を生ずる。以下に、光波の干渉縞の例をあげる。平凸レンズの凸面にガラス板を押し付けて、単色光で照らすと、レンズとガラス板の間隙(かんげき)の上面・下面からの反射光の干渉により、ニュートン環が観察される。一枚の遮光板に互いに接近した二つの狭いスリットを並べてつくり、これを通して単色光源の前に置かれた平行なスリットを見ると、ヤングの干渉縞が観察される。短冊形のガラス板を水平に置き、その向こう側の端のガラス板の表面近くにこれに平行なスリットを置き、単色光で照らし、そしてガラス板の手前側の端を拡大鏡で観察すると、ロイドの鏡による干渉縞が見られる。
 マイケルソン、モーリーは、マイケルソン干渉計を用いて、光の媒質、静止エーテルに対する地球の公転運動から期待できる干渉縞のずれの観測をしたが、期待されたずれは観察されなかった。これは、アインシュタインの特殊相対性理論の光速不変の原理と一致する結果であった。マイケルソン干渉計、ファブリ‐ペロー干渉計は、原子スペクトル光の波長によるメートル原器の較正(こうせい)(測定器の補正の値を決定すること)にも利用された。
 波が媒質中を伝わっていく現象は、波面の各点を源とする二次波の重ね合わせがおき、これらの二次波が互いに干渉するとして説明できる。これをホイヘンス‐フレネルの原理という(オランダのC・ホイヘンスが発表した原理をフランスのフレネルが拡張したので、このようによばれる)。一様な媒質中における波の直進、二つの媒質の境界面における波の反射・屈折は、みなホイヘンス‐フレネルの原理から理解できる。[飼沼芳郎]

波の回折

光波が開口した遮光板にぶつかると、光波は幾何光学的な影の空間へ回り込み、また直射光の照らすところには、開口のへりに平行な回折縞が生ずる。光波の波長に比して開口の寸法が十分に大きければ、遮光板の開口に到達した光波の波面から出る二次波の干渉をホイヘンス‐フレネルの原理に基づいて計算することにより、光波の回折現象を定量的に説明することができる。一つのスリットによる回折、遮光板上に並んだ二つのスリットによる回折、回折格子による回折、三次元の結晶格子上に規則正しく並んだ原子による回折などの光波の回折現象はよく知られている。フレネル帯板のレンズ作用、ホログラフィーの原理、顕微鏡の分解能、位相差顕微鏡の原理なども、光波の回折の応用例である。[飼沼芳郎]

管の中を伝わる波

音波・電磁波・光波を伝送するために管を利用することがしばしばある。これに用いる管は、音波・電磁波の場合には導波管、光波の場合には光学繊維または光ファイバーとよばれる。狭い管の中を伝わる音波は縦波の平面波だけであるが、長い廊下やトンネルや地下の連絡道のような太い筒の中を音波が伝わるときには、平面波だけでなく、筒の内壁で繰り返し反射を受けてジグザグに進む複雑な波が伝わっていく。金属の導波管を伝わるマイクロ波領域の電磁波は管壁で繰り返し反射を受けてジグザグに進む波だけである。管の中をジグザグに進むこのような波は、管の形状と寸法によって定まる遮断波長よりも短い波長の波だけが伝わる。光ファイバーは特殊な構造をもつ一種のグラスファイバーであり、その内壁の繰り返し反射で光波が伝わる。光ファイバーは胃その他の内臓の医学的検査に用いる内視鏡の改良に用いられている。グラスファイバーの材質を選べば、吸収による光波の減衰をきわめて小さくすることができる。その特性のため、光ファイバーは長距離間の通信に広く用いられる。[飼沼芳郎]
『紀本和男・飼沼芳郎・杉山旭著『基礎物理学講座 電磁気・波動』(1979・学術図書)』

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精選版 日本国語大辞典

は‐どう【波動】
〘名〙
① 波の動くこと。また、ある事象・事件などの影響が、波のように伝わっていくこと。〔医語類聚(1872)〕
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「悪寒のような小刻みな身ぶるいが絶えず足の方から頭へと波動のやうに伝はった」 〔蔡邕‐弾棊賦〕
② 媒質の一点に生じた物理的な状態の変化が、媒質中を次々に伝わっていく現象。水の波、音波、地震波などの弾性波、光やX線などの電磁波のほか、電子や陽子などのもつ物質波があり、回折や干渉など共通な現象を呈する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

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