●溶岩【ようがん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
溶岩
ようがん
lava
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知恵蔵
溶岩
(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
デジタル大辞泉
よう‐がん【溶岩/×熔岩】
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版
ようがん【溶岩 lava】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
溶岩
ようがん
lava
「熔岩」とも表記される。(1)地下から上昇してきたマグマが地表にあふれ出て溶融状態にあるもの、(2)前記(1)が固まってできた岩石、のどちらも溶岩とよばれる。マグマも溶融状態の溶岩もほとんどがケイ酸塩の溶融体で、多少の揮発性成分を含んでいる。圧力の高い地球内部から地表へとマグマが上昇してくると、マグマに含まれていた揮発性成分は気化して膨張し、一部分はマグマから抜け出し、一部分は溶融状態の溶岩の中で気泡をつくる。この溶岩が急速に固まると多孔質の岩石としての溶岩になる。溶融状態の溶岩の温度は1200℃以下である。これが地表上を重力の作用で流れ下ると溶岩流とよばれる。またこの溶岩が火口などの凹地にたまっていると溶岩湖とよばれる。溶融状態の溶岩の粘性は温度、化学組成、揮発性成分の含有量に左右される。二酸化ケイ素SiO2(シリカ)の含有量が低い玄武岩質の高温の溶岩、あるいは揮発性成分の多い溶岩ほど粘性が低く、流動しやすい。溶岩流の流れる速さは粘性と地表面の傾斜によって異なるが、溶岩流の流下する速度は、緩やかな斜面上なら小さいが、急斜面上なら大きく、ときには時速60キロメートルにも達する。
[千葉とき子]
陸上の溶岩流
陸上を流下する溶岩流の形態はパホイホイ溶岩pahoehoe lava、アア溶岩aa lava、塊状溶岩(かいじょうようがん)block lavaの3種に区別される。
パホイホイ(ハワイ語)溶岩とは、表面が滑らかで丸みを帯び、さざ波状やよじれた縄状の表面になって、舌状の先端部をもつものをいう。溶岩流の表面が固まっても(ガラス質)、内部がまだ溶融状態になっていると、表面にできた殻を突き破って中の溶融状態の溶岩が流れ出し、新しい先端部をつくって前進する。パホイホイ溶岩は厚さ20~30センチメートルから数メートルで、表面積の大きいわりに薄いのが特徴である。パホイホイ溶岩は粘性の低い玄武岩質溶岩流(たとえばハワイのキラウエア火山)にみられる。
アア(ハワイ語)溶岩とは、がさがさあるいはとげとげした、凹凸の激しい表面(ガラス質であるが多孔質)をもつものをいう。溶岩流の底面と上面には直径数センチメートルのクリンカーclinkerとよばれる団塊が集合している。溶岩流は厚さ数メートルから数十メートルで、パホイホイ溶岩より厚い。玄武岩質あるいは安山岩質溶岩に多くみられる。
アア溶岩よりさらに粘性の高い溶岩流では、固まった厚い殻が、内部で流動し続ける溶岩に引きずられて砕け、直径数十センチメートルの滑らかな破断面をもつ多面体状の岩塊となって、溶岩流の表面や先端部分にたまる。このような溶岩流を塊状溶岩という。塊状溶岩は厚さ数メートル~数十メートルで、玄武岩質溶岩流の先端部分、安山岩質、デイサイト質、流紋岩質溶岩流にみられる。
一つの溶岩流でも、火口付近ではパホイホイ溶岩、下流部でアア溶岩や塊状溶岩に移り変わる。粘性が高くなると溶岩流は厚く、短くなり、ついにはほとんど流動しないで溶岩円頂丘となる。溶岩流の内部が流下してしまって、表面の殻部分だけが残ったものを溶岩トンネル(大型)あるいは溶岩チューブ(小型)という。溶岩トンネルの天井部分からは円錐(えんすい)状や紐(ひも)状の溶岩鍾乳石(しょうにゅうせき)が垂れ下がり、その下には溶岩鍾乳石から滴り落ちた溶岩の滴が固まってできた溶岩石筍(せきじゅん)がみられることがある。溶岩流が樹木を取り囲むと、幹が燃えて溶岩の中に円筒状の空洞が残る。これを溶岩樹型という。溶岩樹型の内側には炭化木片が残ることもあるし、樹皮の型や木目が残ることもある。また樹木を取り囲んだ溶岩の一部分が還元されて金属鉄を生じていることがある。
[千葉とき子]
水中の溶岩流
溶岩は水の底を流れると、表面が水と接して急冷し、ガラス質になる。粘性が低い(陸上だとパホイホイ溶岩あるいはアア溶岩となる高温の)溶岩は、水底では枕状溶岩(まくらじょうようがん)になる。枕状溶岩とは直径数十センチメートルの枕のような形をした溶岩の塊(ピローpillowという)が積み重なったもので、陸上でできるパホイホイ溶岩の舌状の先端部分が重なった場合と似ている。水底では溶岩の先端部分の殻が割れて中からまだ固まっていない溶岩が流れ出し、枕状の溶岩塊が次々にできていく。大西洋中央海嶺(かいれい)では中軸谷の火口付近で、斜面沿いにピローが数珠(じゅず)つなぎになっているのが観察された。このようなピローでは、長く伸びた方向に平行な筋(すじ)と、それに直交する割れ目がみられる。ハワイのマウナ・ロアが1971~1973年に噴火したとき、パホイホイ溶岩が陸上から海中に流れ込んで枕状溶岩になるようすが目撃された。ピローの表面は水冷されているためガラス質であるが、内部はそれほど急には固まらないので結晶質になる。ピローの断面を見ると、内部ほど結晶が大きく、同心状の成層構造をもつことがわかる。またピローには放射状の割れ目、気泡、空隙(くうげき)がみられる。ピローがそれぞれ独立した岩塊としてきっちり重なっているときには、ピローの上面は凸の球面で、下面は下に並んだピローの凸の球面の間に垂れ下がった形になっている。これは、ピローが重なったときにはまだすっかり固まっていなかったことを示すと同時に、重なったときの上下方向を判定する目安になる。ピローの間には、ピローの破片や水底にあった堆積(たいせき)物のかけらが詰まっていることがある。
水底を流下する溶岩の前面や下面には、水冷で生じたガラス質殻の破片の集合体(ハイアロクラスタイトhyaloclastiteという)がみられる。枕状溶岩は海洋底で火山活動が続いていた海嶺付近に広く分布していて、海洋地殻の上部をつくっている。海洋の中の火山島(ハワイ諸島など)も基底部分は、枕状溶岩からなる山体をつくった海底火山である。粘性の高い(安山岩質、デイサイト質あるいは流紋岩質)溶岩が水底を流れると、はっきりした枕状溶岩になることはまれである。溶岩の表面が水で急冷されて砕け、ガラス質岩片の集合体として固まるため、火砕岩のような外観を呈する。
[千葉とき子]
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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化学辞典 第2版
溶岩
ヨウガン
lava
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