●滑稽本【こっけいぼん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
滑稽本
こっけいぼん
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デジタル大辞泉
こっけい‐ぼん【滑稽本】
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世界大百科事典 第2版
こっけいぼん【滑稽本】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
滑稽本
こっけいぼん
滑稽を目的とした戯作(げさく)類で、後期江戸小説の一分野。当時は、小本(こほん)(現在の文庫本に近い型)とよばれた書型の洒落本(しゃれぼん)に対して、中本(ちゅうほん)(現在の新書判に近い型)とよばれたが、明治中期以後、近世文学が学問の対象となってから、内容によって、この名称に統一された。源流は、1760年代(宝暦年間)に江戸で流行した談義本(だんぎぼん)類で、これらは、庶民教化を目的として、仏家の説法談義の調子で、平易、滑稽に教訓するという手法をとった。代表作の静観房好阿(じょうかんぼうこうあ)作『当世下手談義(いまようへただんぎ)』(1752、53)は、古人の霊や今人の逸話に託して、滑稽な表現で退廃爛熟(らんじゅく)した江戸文化を批判した教訓書である。そして伊藤単朴(たんぼく)作『教訓雑長持(ぞうながもち)』(1752)をはじめとする多くの類作が生まれたが、この系列のなかでは、風来山人(ふうらいさんじん)こと平賀源内の『根南志具佐(ねなしぐさ)』(1763)や『風流志道軒伝(しどうけんでん)』(1763)が、個人的憤懣(ふんまん)を基調とし、教訓よりも風刺的内容に発展して異彩を放った。しかし、当時の江戸では、洒落本、黄表紙、狂文など、滑稽をもっぱらとする作品が全盛を極めていたので、談義本は短命で終わらざるをえなかった。
1790年(寛政2)松平定信(さだのぶ)の風紀粛正令によって、洒落本、黄表紙などの笑いの文学が壊滅したのち、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)の『東海道中膝栗毛(ひざくりげ)』(初編、1802)を先頭にして、市井(しせい)の滑稽な様相を描く中本時代が始まり、庶民生活のおかしみを綿密に描写する式亭三馬(しきていさんば)の『浮世風呂(ぶろ)』(初編、1808)、『浮世床』(初編、1811)、茶番に明け暮れる庶民の遊興生活を描く滝亭鯉丈(りゅうていりじょう)の『花暦八笑人(はなごよみはっしょうじん)』(初編、1820)、『滑稽和合人(わごうじん)』(初編、1823)も刊行されて全盛期を迎え、梅亭金鵞(ばいていきんが)の『七偏人(しちへんじん)』(初編、1857)や仮名垣魯文(かながきろぶん)の『滑稽冨士詣(ふじもうで)』(初編、1860)などの模倣的作品も出た。明治に入り、魯文の『西洋道中膝栗毛』や『安愚楽鍋(あぐらなべ)』なども刊行されたが、1872年(明治5)、政府の「三条の教則」の宣伝文学『蛸(たこ)之入道魚説教』(魯文)が最後の中本となった。
[興津 要]
『暉峻康隆・郡司正勝著『日本の文学5 江戸市民文学の開花』(1967・至文堂)』▽『中野三敏著『戯作研究』(1981・中央公論社)』▽『興津要著『転換期の文学――江戸から明治へ』(1960・早稲田大学出版部)』
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精選版 日本国語大辞典
こっけい‐ぼん【滑稽本】
(2)天明三年(一七八三)の「洒落本・三教色‐後座」に「青楼(せいろう)で小言をいふのはもろもろの滑稽本(しゃれほん)にも無ひてんだ」などとあるのを見ると、現在の文学史的な定義は別として、当時の意識としては、「洒落本」とはっきり区別していないようである。
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旺文社日本史事典 三訂版
滑稽本
こっけいぼん
中本 (ちゆうほん) ともいう。化政期(1804〜30)が最盛。洒落本弾圧以後派生し,滑稽を要素とした会話中心の江戸の大衆小説。庶民の日常生活・風俗を描き,十返舎一九 (じつぺんしやいつく) の『東海道中膝栗毛』,式亭三馬の『浮世風呂』『浮世床』が著名。江戸末期には低俗に堕し,衰退した。
出典:旺文社日本史事典 三訂版
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