●無縁【ムエン】
デジタル大辞泉
む‐えん【無縁】
2 地縁・血縁などの縁者がないこと。⇔有縁(うえん)。
3 仏語。
㋐だれのためというような対象の区別がなく、すべて平等であること。絶対の慈悲の境地。
㋑前世に仏・菩薩と因縁を結んでいないこと。救われる機縁のないこと。⇔有縁(うえん)。
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世界大百科事典 第2版
むえん【無縁】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
無縁
むえん
日本中世史学上の学術用語で、人間や場所について、それらが主従関係、親族関係をはじめとする世俗の私的な支配に拘束されない状態にあることを意味することば。元来は仏教用語で、〔1〕原因・条件のないこと、〔2〕対象がないこと、〔3〕対象の区別がないこと、〔4〕存在しないこと、などを意味することばとしても知られる。日本中世史家網野善彦(あみのよしひこ)が、主として戦国時代の「無縁所」とよばれる寺院の法的・社会的性格に関する研究成果をもとに、無縁とは世俗権力の私的支配下にないということを意味することばで、同様の意味内容を有する公界(くがい)とともに日本中世(鎌倉・南北朝・室町・戦国時代)における自由の思想の中核をなす根本概念の一つであったとする学説を発表して以来、この意味での用法が定着しつつある。これまでの研究によれば、無縁の性格を有する場所としては道路、市場、海浜、野山などが、また無縁の人間(集団)としては、遍歴漂泊の職人・芸能民などの非農業的職種の人々があげられている。さらには、農民ではあるが、平民百姓もまた在地領主による私的隷属から自由であろうとする志向を有していたという限りで無縁の原理を共有していたとされる。中世においてこれらの場所あるいは人間は、自らが無縁もしくは公界であることを根拠として世俗の私的権力の支配を拒否しうる権利を有しており、実際、世俗権力の支配に対抗するために当時しばしば無縁(公界)ということばが援用されたというのがこの説の眼目である。
無縁の場所や人間(集団)の具体的属性としては、以下の八つの特徴が指摘されている。〔1〕不入権、すなわち国家警察権の侵入を排除する権利の享受、〔2〕領主の賦課する租税の免除、〔3〕自由通行権の保証、〔4〕周辺地域における戦闘行為や訴訟行為などの紛争から隔絶した平和領域たることの保証、〔5〕私的な主従関係が無縁の場所には及びがたいこと、〔6〕外界において発生した債権債務関係の効力が無縁の場所では否定されること、〔7〕当時、一般には厳しく追及された犯罪責任に関する連座制の不適用、〔8〕未開社会の年齢階梯(かいてい)的な秩序原理を受け継いだ、「老若(ろうにゃく)」とよばれる平等原理に基づく組織形態の採用。
以上のような、無縁を日本中世における自由を意味することばとして理解する学説に対しては、近年、中世史史料上の無縁の用例研究による限り、上記の八つの特徴についてこれを無縁ということばで表現している例はほとんどなく、また無縁であることを理由になんらかの積極的な権利主張がなされている例もほとんど検出されないので、再検討を要するという有力な批判も提起されている。
[植田信広]
『網野善彦著『無縁・公界・楽』(1978・平凡社)』▽『勝俣鎮夫著『戦国法成立史論』(1979・東京大学出版会)』▽『阿部謹也他著『中世の風景』上下(中公新書)』▽『植田信広「中世前期の『無縁』について――日本における『自由と保護』の問題によせて」(『国家学会雑誌』第96巻第3、4号所収・1983)』
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精選版 日本国語大辞典
む‐えん【無縁】
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