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熱(物体の温度変化)【ねつ】

日本大百科全書(ニッポニカ)

熱(物体の温度変化)
ねつ
heat

物体の温度変化の原因になるものを熱という。たとえば、やかんに水を入れて熱すると、しだいに水の温度は上昇する。これは、やかんの水に熱が加わったためである。また、40℃の水1000グラムと60℃の水1000グラムを混ぜると50℃の水2000グラムになる。このように熱に関する量というものが考えられ、その量を熱量という。熱量の単位として、よくカロリー(cal)が使われる。1カロリーは、水1グラムの温度を1Kだけ(正確には 14.5℃から15.5℃まで1℃だけ)上げるのに必要な熱量である(温度差を表すとき℃のかわりにKの記号を用いる)。そのため、熱の粒子のようなものがあって、その密度が温度であると考えられたこともあり、その粒子は熱素(カロリック)とよばれた。この考え方は熱素説という。

 しかし、熱は高温から低温に移動するだけでなく摩擦などによって発生し、力学的な仕事が熱に変わる現象は、多くの人により注目されていた。なかでも、19世紀のなかばごろ、イギリスの物理学者ジュールは、後述のような方法で、仕事と熱との関係を詳しく研究した。その結果、熱はエネルギーの一種であることがしだいに明らかになってきた。今日では、熱は物質の一種ではなく、エネルギーの一種であるという考えが確立している。また、熱に関連したエネルギーは熱エネルギーとよばれている。そのため、熱量は仕事の単位であるジュール(J)でも表される。

[宮下精二]

熱の仕事当量

大砲などをつくる際に金属を削ると非常に熱くなることから、摩擦によって熱が発生することは早くから認識されていた。ジュールはのような装置を用いて摩擦によって発生する熱と、そのとき用いられたエネルギー(仕事)の関係を明確にした。この装置では仕事をおもりの位置のエネルギーで測っている。つまり、左右のおもりの重さをm[kg]、移動の距離をh[m]とすると位置のエネルギーの量はmgh[J]である。ここでgは重力加速度である。このエネルギーは羽根車の回転エネルギーとなり、水との間の摩擦によって熱に変わる。どのくらいの熱が発生したかは水の温度変化からわかる。それらを比較することで、熱と仕事の変換公式、つまり熱の仕事当量
1cal=4.18605J
が求められた。

 この実験では仕事を位置のエネルギーで測っている。電気的な仕事である電線に電流が流れるときに発生するいわゆるジュール熱を用いると実験はもっと簡単なように思えるが、その当時は電気的な仕事への理解が十分でなかったため、より直観的な位置のエネルギーを用いたといわれている。

 また逆に、熱から仕事への変換も考えられ、熱を仕事に転化するような装置は熱機関とよばれる。しかし、その場合、熱源からとり出した熱はすべての熱を仕事に変えられない。どのくらいの割合が仕事に変えられるかは熱機関で用いる熱源の温度によって決まっており、その比は変換効率(熱機関の仕事効率)とよばれている。熱機関の研究が熱力学の研究の基であった。

[宮下精二]

熱に関する法則

熱はエネルギーの一形態であるが、通常の仕事として表されるエネルギーとは異なる性質をもつ。熱湯を入れたやかんを洗面器中の水に浸し放置しておくと、湯(高温部)の温度は下がり、逆に水(低温部)の温度は上がる。しかし、決して逆の現象は起きない。通常の粒子の運動では、勢い、つまり運動エネルギーがあるが、熱の移動の場合はこれに相当するものがない。この性質は熱力学第二法則とよばれる。ちなみに、仕事と熱の和が保存される(変化しない)ことが熱力学第一法則である。

[宮下精二]

熱とはなにか

熱力学では物質の巨視的性質だけに注目し、それが多数の原子、分子などから構成されているという微視的な立場はとらない。微視的観点からみた熱とはなんであろうか。熱とは、仕事として表せないエネルギー、つまり運動形態を把握できないエネルギーである。しかし、把握できるかどうかは恣意(しい)的なものであり、その運動がどのようなものであるかがわかった瞬間、それは熱でなくなる。気体の運動エネルギーが熱であるといわれるが、それは運動が見えないことを前提としている。ミクロな識別能力をもつ人にとって熱は存在せず、力学的運動がすべてである。そのため、ミクロな識別能力をもつものをマクスウェルの魔物と称し、それによって熱力学の法則を破ることができることが議論されている。ミクロな立場から熱現象を扱う統計力学においては、認識レベル(通常エネルギーが同じ状態は区別できないとする)を規定し、それによって区別できない状態の数をエントロピーとすることでこの問題を解決している。

[宮下精二]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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