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熱分析【ねつぶんせき】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

熱分析
ねつぶんせき
thermal analysis
高温の物質を自然に冷却すると,時間に対する温度変化 (冷却曲線) はウィーン放射法則により指数曲線になるが (図a) ,途中で潜出入を伴う変化があれば曲線に変化が現れる。水の凝固のとき最後まで一定温度を保つ曲線になるのはその理による (図b) 。これを利用して物質の相の変化を検出するのが熱分析である。純物質の凝固のように潜熱量の大きい場合は検出しやすいが,合金の凝固開始や同素変態のように潜熱量小の場合 (図c) は,微分曲線 dθ/dt または dt/dθ をとるか (図d) ,あるいは示差熱分析による。固体内相変化 (→相転移 ) に関しては膨張測定,比熱測定などのほうが精密で敏感である。加熱冷却には電気抵抗炉が制御容易なのでよく使われ,温度計測には熱電対高温計,白金抵抗温度計が多く使われる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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世界大百科事典 第2版

ねつぶんせき【熱分析 thermal analysis】
物質を加熱あるいは冷却するとき,たとえば熱分解などの化学変化,あるいは相変化が生じると,熱の吸収または放出が起こる。そこで,一定の速度で加熱あるいは冷却しながらその温度変化を連続的に測定すれば,そこに現れる不連続点や変曲点を手がかりとして,物質の化学変化や相変化の存在を検出することができる。このような実験方法を総称して熱分析という。試料を一定速度で加熱しながら,熱分解や結晶水分離などに伴う質量変化を直接熱てんびん(天秤)で測定する熱重量分析thermogravimetric analysisと,脱水,変態など試料の変化に伴う吸熱または発熱を測定する示差熱分析が広く利用される。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

熱分析
ねつぶんせき
thermal analysis

物質の温度を変えてゆくことにより、その物質になんらかの物理的・化学的変化の現れるのを検出して分析を行う方法、および混合することにより熱的変化を生じる液体を混合し、その熱的挙動を分析する温度滴定法の総称。

[成澤芳男]

原理

(1)熱重量測定thermogravimetry(TG) 熱天秤(てんびん)により連続的に温度―試料の質量変化曲線を測定する方法。熱天秤は一般に精密天秤と、時間とともに直線的に温度が上昇するようにつくられた炉および記録計よりなる。

(2)示差熱分析differencial thermal analysis(DTA) 加熱によって異常熱変化をおこさないもの(アルミナ、石英など。これらを熱的中性物質という)を基準物質とし、試料とともに電気炉中で一定速度で加熱しながら、両者間の温度差を測定する方法。

(3)示差走査熱量測定differencial scanning calorimetry(DSC) DTA法を改良したもので、基準物質に比べ試料に温度差が少しでも生じると、補償ヒーターを用いてただちにその温度差を打ち消すようにし、その際ヒーターに供給した電力を記録する方法。

[成澤芳男]

測定

TGとDTAが同時に行える装置を用いたシュウ酸カルシウム1水塩CaC2O4・H2Oの測定例について述べる。横軸に温度、縦軸に重量を示すTG曲線は室温から100℃程度までなんの変化もおこらず第一の平坦(へいたん)部を示すが、150℃程度より徐々に1分子の結晶水を失って、200℃を超えたところで無水塩となる。

  CaC2O4・H2O―→CaC2O4+H2O↑ (1)
 第二の平坦部はこの無水塩に対応するが、500℃付近で質量減少がおこり、炭酸カルシウムCaCO3になる。

  CaC2O4―→CaCO3+CO↑ (2)
 さらに800℃を超えるとまた大幅の減量がおこり、最後に酸化カルシウムCaOとなり、1000℃までその状態で存在する。

  CaCO3―→CaO+CO2↑ (3)
 同時に横軸をTG曲線と共通にし、縦軸上の上を発熱、下を吸熱としたDTA曲線は、第1段目の重量減少に相当するところで吸熱を示し、第2段目の質量減少のところで発熱を示し、第3段目の質量減少のところで吸熱を示す。すなわち1水塩から無水塩になる脱水反応は吸熱反応であり、無水シュウ酸カルシウムから炭酸カルシウムの反応は発熱反応であり、炭酸カルシウムから酸化カルシウムになる反応は吸熱反応であることが示される。炭酸カルシウムのほうが酸化カルシウムより安定であることがわかる。炭酸カルシウムと酸化カルシウムの標準生成エンタルピー(熱含量)ΔH°f(負の生成熱に相当)を比較するとそれぞれ、-1206.92kJmol-1と-635.09kJmol-1である。この値はカルシウム単体を基準0kJmol-1にしており、数値が小さい炭酸カルシウムのほうがより安定であることを示す。負の値のときは絶対値の大きいほうが安定である。

 前記のようにTGとDTAを同時に測定すれば、物質の熱分解のようすがつぶさにわかる。しかし、試料の微量化と定速昇温という点で技術的に改良がなされDSCがDTAにとってかわりつつある。七モリブデン酸六アンモニウム(パラモリブデン酸アンモニウム)4水塩(NH4)6Mo7O24・4H2Oの熱分解過程の研究にTGとDSCが併用された例を示す。




 125℃前後で脱水吸熱ピーク(一次分解)が観測され、225℃および300℃前後に二次分解と三次分解のピークが観測される。(4)式と(5)式の分解方式が考えられるが、TGの減量と(5)式の計算値がよく一致することから、分解過程が明らかになった。またTG‐DSCの測定結果より、脱水のエンタルピー変化量が計算で求められる。

 物質に外部から熱を与えるとき、熱分解などの化学変化や、相転移のような現象がおこる場合には熱の吸収または放出がおこる。このような現象のあるときは、単位時間当り一定の速度で熱量を供給するとき、物質の温度上昇速度に変化がおこり、また相転移のような現象においても吸熱か発熱かの判定ができる。合金の研究においては重要な手段の一つであり、そのほか、示差熱分析とガスクロマトグラフィーを併用したDTA‐GCや、高温X線回折‐DTAなどの技術による有機化合物の同定、確認とか、有機金属化合物や錯体の同定、確認、構造研究といった分野によく利用されるようになった。

[成澤芳男]

『神戸博太郎・小沢丈夫編『新版 熱分析』(1992・講談社)』『日本熱測定学会編『熱量測定・熱分析ハンドブック』(1998・丸善)』『日本化学会編『化学便覧 基礎編』改訂4版(1993・丸善)』『田中誠之・飯田芳男著『基礎化学選書7 機器分析』3訂版(1996・裳華房)』『八田一郎監修、アルバック理工編『最新熱測定――基礎から応用まで』(2003・アグネ技術センター)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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化学辞典 第2版

熱分析
ネツブンセキ
thermal analysis

加熱・冷却による物質の重量変化およびエンタルピー変化(反応熱,潜熱,相変化熱など)を,温度の関数として解析し,物質分析に役立たせる方式の総称.慣習的に,加熱・冷却によるエンタルピー変化を追跡する方式のみを熱分析とよぶことが多い.広義には,物質の加熱・冷却による体積変化(熱膨張),電磁気的性質変化,力学的性質変化など多くの物理的性質の不連続変化を温度の関数として解析する方式を総称することもある.単体,無機物,有機物を問わず,主として固体物質を特定の雰囲気(たとえば空気)中で室温から一定速度で加熱し,その重量変化を追跡する熱重量分析と,これに伴う反応熱の出入り,あるいは相変化(融解蒸発結晶構造転移など)による熱の出入りを追跡する示差熱分析がある.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
東京工業大学名誉教授理博 吉村 壽次(編集代表)
信州大学元教授理博 梅本 喜三郎(編集)
東京大学名誉教授理博 大内 昭(編集)
東京大学名誉教授工博 奥居 徳昌(編集)
東京工業大学名誉教授理博 海津 洋行(編集)
東京工業大学元教授学術博 梶 雅範(編集)
東京大学名誉教授理博 小林 啓二(編集)
東京工業大学名誉教授 工博佐藤 伸(編集)
東京大学名誉教授理博 西川 勝(編集)
東京大学名誉教授理博 野村 祐次郎(編集)
東京工業大学名誉教授理博 橋本 弘信(編集)
東京工業大学教授理博 広瀬 茂久(編集)
東京工業大学名誉教授工博 丸山 俊夫(編集)
東京工業大学名誉教授工博 八嶋 建明(編集)
東京工業大学名誉教授理博 脇原 將孝(編集)

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