●片頭痛【へんずつう】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
片頭痛
へんずつう
migraine
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栄養・生化学辞典
片頭痛
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家庭医学館
へんずつう【片頭痛 Migraine】
初め、脳の中や周辺にある血管が収縮し、そのあと過度に拡張するためにおこる血管性の頭痛(ずつう)です。
この片頭痛には、前兆をともなう片頭痛と前兆をともなわない片頭痛の2つのタイプがあります。
■前兆をともなう片頭痛
頭痛の始まる前に目の前がちかちかする、視野の中心部や片側が見えない、半身にしびれや脱力感を感じるなどの前駆(ぜんく)症状があります。
この前駆症状は60分以内におさまり、頭痛が始まります。
痛みは、ズキズキと拍動性(はくどうせい)で、頭の片側に感じるのがふつうです。
痛みは、前頭部、側頭部を中心に1~2時間でピークに達し、数時間~2日間くらい続きます。痛みのピーク時には吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)をともないます。このような頭痛が反復しておこり、1か月に数回におよぶこともあります。
疲労、不眠、ストレスなどがきっかけとなって頭痛が誘発されてきます。姿勢を変えたり、運動をすると痛みが強くなります。
患者さんは女性が多く、10~20歳代に最初の頭痛がおこり、以後、くり返しおこるようになって、いわゆる頭痛もちになります。血のつながった家族のなかにも、同じ頭痛もちの人がいることが少なくありません。
■前兆をともなわない片頭痛
痛み方、痛む部位、好発年齢のほか、女性に多いこと、家族のなかに同じ頭痛もちの人がいるなどの点は前兆をともなう片頭痛と同じですが、前駆症状がなく、頭痛の持続時間がやや長い点が異なります。
[治療]
トリプタン系の血管収縮薬(けっかんしゅうしゅくやく)を用い、過度に拡張した血管を縮ませます。
頭痛が頻繁(ひんぱん)におこる場合は、精神安定剤、血管の拡張を抑えるβ受容体遮断薬(ベータじゅようたいしゃだんやく)、鎮痛薬(ちんつうやく)などをいっしょに用います。頭痛がひどくなる前に血管収縮薬を服用すると、頭痛がおこらなくなるか、おこっても軽くすみます。
[予防]
頻繁におこる場合は、薬を随時服用すると、頭痛に悩まされることなく、快適な生活を送ることが可能です。
しかし、これは、片頭痛に対する本人の理解が深まった段階で行なう予防法です。したがって、薬の服用にあたっては、自分かってに行なわず、必ず医師に相談し、その許可を得てから行なうようにしてください。
出典:小学館
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世界大百科事典 第2版
へんずつう【片頭痛 migraine】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
片頭痛
へんずつう
migraine
ずきんずきんと脈打つような強い頭痛が発作性に片側の側頭部、ときには両側性、あるいは後頭部などに現れる病気で、頭痛は反復し、慢性に経過する。男性よりも女性に多くみられ、若年期に発症するものが多く、更年期以降は減少の傾向がある。頭痛は通常2、3時間続いて軽快し、発作と発作の間には現れない。これを普通型片頭痛という。これに対して典型的片頭痛では、頭痛がおこる前に前駆症状として目がちかちかしたり、視野が狭くなったりするほか、視力低下、めまい、吐き気、嘔吐(おうと)などがみられる。まれであるが長い経過をとる片頭痛患者では、頭痛発作のかわりに腹痛発作、胸部・骨盤・四肢に限局する疼痛(とうつう)発作、一過性の精神症状を認めることもある。これを片頭痛代理症という。
片頭痛は血管性頭痛の代表的なものとされており、その成因については、脳血管の収縮に引き続いておこる頭蓋(とうがい)内外血管の拡張を重視する頭部血管の異常反応説が有力である。片頭痛発作の治療には、頭部血管の拡張を抑制するトリプタン系薬剤やエルゴタミン製剤を用いることが多い。予防には、カルシウム拮抗(きっこう)薬の塩酸ロメリジン、β(ベータ)遮断薬、精神安定剤などが用いられる。
[海老原進一郎]
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精選版 日本国語大辞典
かた‐ずつう ‥ヅツウ【片頭痛】
出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版
片頭痛(頭痛)
概念
片側性,拍動性の頭痛で,随伴症状として悪心や光過敏・音過敏を伴う症例が多い.発作急性期の治療には,セロトニン受容体アゴニストであるトリプタンを用いることが多い.
分類
さまざまなタイプがあるが大きく「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」に二分される.
疫学
わが国における15歳以上の片頭痛の有病率は約8.4%(男性3.6%,女性13.0%)であり,その傾向は欧米諸国でも同様で女性が男性に対し約3倍多いと報告されている.
病因・病態生理
片頭痛の病因および病態はいまだに明らかにされていない.片頭痛における前兆には,cortical spreading depression(皮質拡延性抑制)とよばれる現象が関与していると考えられている.頭痛は三叉神経血管系の活性化による脳血管および脳硬膜動脈の拡張や脳硬膜の神経原性炎症に起因するとされている(図15-17-5).
臨床症状
片頭痛は,片側性・拍動性で,中等度から重度の強さをもち,4~72時間持続する頭痛である.また動作による増悪を認め,随伴症状として悪心や光過敏・音過敏を有する.
前兆は5~20分にわたり徐々に進展し,かつ持続時間が60分未満の可逆性脳局在神経症状と定義される.前兆のある片頭痛のなかで視覚症状,感覚症状あるいは言語症状のいずれか1つ以上からなる片頭痛は「典型的前兆に片頭痛を伴うもの」に分類される.視覚性の前兆は最も一般的な前兆で,閃輝暗点として出現する場合が多く,患者は「眼前のチカチカ」と表現することが多い.なお片頭痛に特徴的な他覚症状はない.
診断・鑑別診断
前兆のない片頭痛のICHD-Ⅱの診断基準を表15-17-3に記す.項目B〜Dには発作時間,頭痛の性状および随伴症状などが列挙され,項目Eには二次性頭痛の可能性を鑑別することが記載されている.その他の片頭痛の診断基準についてはICHD-Ⅱ(日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会,2007)を参照されたい.
経過・予後
片頭痛発作頻度の多い症例では,慢性片頭痛への移行が報告されている.慢性片頭痛は,片頭痛の特徴とされる光・音過敏や悪心・嘔吐などが減少し,拍動性の要素はあるがその他は緊張型頭痛に類似した性質の頭痛が月の半分以上かつ3カ月以上の頻度で出現するものである.
治療
片頭痛の薬物療法は,急性期治療と予防療法に分けられる.急性期治療薬としてセロトニン受容体アゴニストであるトリプタン,エルゴタミン製剤および鎮痛薬などが用いられる(日本頭痛学会,2006).わが国で使用可能なトリプタンはスマトリプタン,ゾルミトリプタン,エレトリプタン,リザトリプタンおよびナラトリプタンの5種類である.スマトリプタンは錠剤のほか皮下注射薬(在宅自己注射が可能)および点鼻薬としての投与も可能である.なお「前兆のない片頭痛」および「典型的前兆に片頭痛を伴うもの」では通常トリプタンが第一選択薬となるが,片麻痺性片頭痛や脳底型片頭痛では,トリプタンは禁忌とされている.
予防療法としてカルシウム拮抗薬であるロメリジンおよび抗てんかん薬のバルプロ酸が保険適用となっているが, β遮断薬,抗うつ薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬なども投与されることがある.[清水利彦・鈴木則宏]
■文献
日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳:国際頭痛分類第2版 新訂増補日本語版,医学書院,東京,2007.
日本頭痛学会編:慢性頭痛の診療ガイドライン,医学書院,東京,2006.
出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科
片頭痛
へんずつう
Migraine
(脳・神経・筋の病気)
どんな病気か
慢性の頭痛で機能性のもの、すなわち明らかな脳の器質的病変を伴わない頭痛には、片頭痛、緊張型(きんちょうがた)頭痛、群発(ぐんぱつ)頭痛があります。片頭痛は人口の約8%、緊張型頭痛は約20~30%にみられ、群発頭痛はまれです。
片頭痛は一般に発作性にみられる片側性の脈拍に一致した拍動性の頭痛で、
片頭痛には前ぶれ(「前兆」と呼ぶ)を伴うタイプと前兆を伴わないタイプがあります。前兆としては、視野の中心付近から始まりキラキラ光る境界をもつ暗点(見えない部分:
この前兆は一般に1時間以内に消え、その後頭痛が続いて起こります。この前兆より前に、食欲亢進、あくび、感覚過敏、むくみ、興奮、疲労感、空腹感などの気分の変調が1~2日間にわたってみられることもあります。
原因は何か
片頭痛の痛みは、従来、血管の拡張によるものと考えられてきました。すなわち、片頭痛の前兆期には、血管が収縮することにより脳血流が低下するため前兆の症状が現れ、頭痛期には血管が拡張に転じ頭痛が生じるとの説で、血管説といわれてきました。
しかし、脳血流が低下している時期にすでに頭痛が始まることが明らかになり、痛みの原因として脳血管の周囲に分布する三叉神経が注目されました。この血管の周囲にはサブスタンスPやCGRPという神経伝達物質であるニューロペプチドがあり、これが遊離し、血管拡張や血管周囲の炎症が起こり痛みを発するとの説で、
最近の新しい片頭痛治療薬であるスマトリプタン(イミグラン)が有効であることは、この三叉神経血管説を裏づけるものといえます。
症状の現れ方
片頭痛の2~3日前から食欲
頭痛は脈拍に一致した拍動性のことが多いのですが、拍動性でなく持続性のこともあります。また、頭痛は片側性のことも、両側性のこともあります。しかし、痛みの程度は一般に強く、少し動くだけで痛みが強くなることもみられます。頭痛の持続時間は長くとも3日以内で、一般には睡眠により軽くなります。
検査と診断
片頭痛は機能性の頭痛で、片頭痛の診断は主に頭痛の性質や随伴症状などについての患者さんからの情報によってなされます。しかし、脳の器質的疾患を除外して、初めて診断が可能になります。そのため、診断をする際にはCTやMRIなどの脳の画像診断も行う必要があることもあります。
また、1回目の頭痛で片頭痛と診断をすることは危険と考えられており、前兆のないタイプでは少なくとも5回、前兆のあるタイプでは少なくとも2回、同様な頭痛を認めた場合に片頭痛という診断がつけられることになっています。これは、軽症のくも膜下出血などの器質的疾患を見逃さないようにするために重要であると考えられます。
治療の方法
片頭痛の治療には、頭痛時の急性期治療と予防的治療があります。
①頭痛時の急性期治療
欧米では1990年ごろからスマトリプタンというセロトニン受容体に作用する薬が第一選択薬として片頭痛に用いられて効果をあげてきました。日本でも、2000年にスマトリプタンの注射薬が認可され、01年にはスマトリプタンとゾルミトリプタン(ゾーミッグ)が経口薬として認可されました。
これらはトリプタン製剤と呼ばれますが、頭痛が始まってからでも効果がある点で使用しやすく、約60~70%の患者さんに有効で、片頭痛の発作に伴う悪心、嘔吐、光過敏・音過敏などの随伴症状に対しても有効であることが示されてきました。また、ひとつのトリプタン製剤が無効でも他のトリプタン製剤が有効であることもしばしば認められます。現在、日本では5種類のトリプタン製剤が使用可能です。
従来から使用されていた酒石酸エルゴタミンなどのエルゴタミン製剤は、前兆の時期に投与すると効果があることが知られています。しかし、エルゴタミン製剤はこの時期を逃して頭痛期になってから投与したのでは効果が出ません。現在では、大多数の片頭痛の患者さんに対しては、効果・副作用の観点からトリプタン製剤のほうがよく、エルゴタミン製剤は片頭痛の発作回数の少ない場合、あるいは発作の持続時間が長い場合のみに用いるという点で専門家の意見が一致しています。
また、頭痛の程度が軽い場合には、まず消炎鎮痛薬から試み、これが有効でない場合にトリプタン製剤を試みるという、段階的な治療法も行われます。
頭痛発作時に悪心・嘔吐が強い場合には、通常の内服錠剤では十分な効果が得られないことが少なくありません。このような場合には、ドーパミン拮抗薬であるメトクロプラミド(プリンペラン)やドンペリドン(ナウゼリン)などの制吐薬を併用すると効果的です。
②予防的治療
片頭痛の発作がしばしばあり、急性期治療だけでは十分に治療ができない場合や、急性期の治療が薬の
従来から、予防的治療として
予防薬を使う基準としては、まず発作の頻度があげられます。最近は、1カ月に3~4回以上、支障度の強い頭痛発作がある場合には、原則として予防薬を使用することが推奨されています。
病気に気づいたらどうする
トリプタン製剤が開発されて以来、片頭痛に対して有効な治療を行うことができるようになってきたので、早い時期に神経内科や脳外科の専門医の診断を受け、治療を受けることが大切です。最近は、有効な治療法としてトリプタン製剤がありますが、頭痛の程度によっては、消炎鎮痛剤が有効であることも多いので、治療に関しては専門医とよく相談してください。
また、従来使用されてきたエルゴタミン製剤やトリプタン製剤、消炎鎮痛剤などの過剰投与により、薬物乱用頭痛(コラム)が生じることが知られているので、薬剤の服用量に関しても専門医とよく相談してください。
荒木 信夫
出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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EBM 正しい治療がわかる本
片頭痛
●おもな症状と経過
片頭痛(へんずつう)は体にとくに病気や外傷がないにもかかわらず、慢性的におこる頭痛です。なにか特別な病気が原因となる頭痛と区別することが重要となります。
片頭痛の多くは、片側の額(ひたい)やこめかみにおこりますが、おこる側は一定していません。いつも同じ側とは限らず、発作がおこるたびに違う側になったり、頭のうしろや頸部(けいぶ)(首)まで痛みが広がっていったり、逆に後頭部から前頭部に向けて痛みが広がっていく場合、あるいは両側に痛みを感じる場合もあります。
ほとんどが脈にあわせてズキンズキンと痛む拍動性(はくどうせい)の痛みで始まり、その後、持続性の鈍痛に変わります。吐き気や嘔吐(おうと)を伴うことも少なくありません。
片頭痛がおこる前には、妙に興奮が高まって高揚(こうよう)したり、反対に憂うつになったり、いらいらしたり、さらに甘いものが欲しくなる、食欲が通常より進むといった、さまざまな気分や体調の変化がおこることもあります。
これらの変調のほか、前兆となる視覚の異常や神経症状が現れる場合もあります。
代表的な前兆症状は、目の前がちらちらする、ぎざぎざの光が現れて視野が狭くなる、体の左右どちらかにしびれがでたり脱力したりする、などです。このような前兆は頭痛が始まると徐々に消えていきます。
頭痛がおこる回数は年に1~2回というものから、ほとんど毎日おこる場合もあり、持続時間も短いものから数日続くものまで患者さんによってさまざまです。
●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
片頭痛の発症のメカニズムについて、くわしいことは解明されていません。脳内の血管や血流、三叉神経(さんさしんけい)などが関係しているのではないかと考えられています。
とくに、セロトニンという脳内の神経伝達物質の役割が注目され、最近になって治療に応用されはじめています。
セロトニンは動脈を引き締め収縮させる物質ですが、片頭痛の患者さんでは、このセロトニンが一時的に減ってしまうことがわかっています。そのため、脳内の血管が一気にゆるんで拡張すると、動脈の周囲をとり囲んでいる神経が引っぱられ、拍動にあわせて痛むことになります。このとき、痛みを感じやすくする物質が放出されるのではないかとも推測されています。
また、脳内でなんらかの物質によって三叉神経が刺激され、三叉神経を支配している血管に炎症反応がおきるため、血管が拡張し、痛みがおこるという仮説もあります。
このような脳内の血管の反応をおこすきっかけには、次のようなものが考えられています。食事を抜いている、睡眠時間がふだんより多い、または少ない、特定の食品、ストレス、過激な運動、天候の急激な変化、光のまぶしさ、たばこ、香水、化学薬品の匂いなどです。
●病気の特徴
頭痛は一般的に5歳~55歳までの幅広い年齢層に多くみられ、女性と男性では3対1の割合で女性に多くみられます。とくに女性の場合は、月経の前後に症状が現れることが多く、これは女性ホルモンの変化が引きがねとなっているからだと考えられています。
よく行われている治療とケアをEBMでチェック
[治療とケア]ストレスを取り除きリラックスするようにする
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 片頭痛はストレスと強い関連があります。リラックスすることで発作の頻度が減り、症状が改善することが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(1)(2)
[治療とケア]適度な睡眠をとる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 睡眠不足は片頭痛を引きおこす原因となります。規則的な生活を送り、適度な睡眠をとることで症状が改善するという、非常に信頼性の高い臨床研究があります。(3)
[治療とケア]片頭痛をおこす可能性のある食品は避ける
[評価]☆☆
[評価のポイント] 臨床研究で、チーズなどチラミンを含む食品と片頭痛との関連性が示唆されていますが、ある特定の食事を避けると片頭痛が改善するかどうかはまだはっきりとしていません。ただし、明らかな関連が疑われる場合には避けるようにしましょう。(4)(5)
[治療とケア]騒音や強い光が引きがねになる場合には、それらを避ける
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 臨床研究によって、騒音や強い光が片頭痛を引きおこすケースが知られています。騒音や強い光が引きがねになる場合には、それらを避けるようにしましょう。(6)(7)
[治療とケア]頭痛発作がくり返しおこる場合には発作予防薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 片頭痛の発作がくり返しおこり、月に2回以上日常生活の活動に著しい影響があり、急性発作時の治療薬が無効または副作用で利用できない場合には、片頭痛を予防する目的の薬を服用することで頭痛の頻度を減らすことができます。これは、非常に信頼性の高い臨床研究によって勧められています。 (8)(9)
[治療とケア]痛みが激しく、日常生活に支障をきたす場合には鎮痛薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 片頭痛の急性発作時に、いくつかの薬剤が有効であることがわかっています。副作用や使用制限などに注意しながら用いることで、症状を緩和(かんわ)することができます。これは非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。(8)(9)
よく使われている薬をEBMでチェック
片頭痛の予防薬
[薬名]デパケン/セレニカR(バルプロ酸ナトリウム)(10)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 抗てんかん薬であるバルプロ酸ナトリウムは、片頭痛を予防する効果があることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。しかし、妊娠中、および妊娠の可能性の高い女性には禁忌です。
[薬名]トリプタノール(アミトリプチリン塩酸塩)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 抗うつ薬であるアミトリプチリン塩酸塩は、片頭痛を予防する効果があることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。
[薬名]インデラル(プロプラノロール塩酸塩)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]テノーミン(アテノロール)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ロプレソール/セロケン(メトプロロール酒石酸塩)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ナディック(ナドロール)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ワソラン(ベラパミル塩酸塩)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 降圧薬としても用いられるβ遮断薬のプロプラノロール塩酸塩、アテノロール、メトプロロール酒石酸塩、ナドロールやカルシウム拮抗薬(きっこうやく)のベラパミル塩酸塩は、片頭痛を予防する効果があることが非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。
[薬名]ミグシス/テラナス(塩酸ロメリジン)
[評価]☆☆
[薬名]ミグリステン(ジメトチアジンメシル酸塩)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 新しいタイプのカルシウム拮抗薬である塩酸ロメリジン、抗セロトニン薬であるジメトチアジンメシル酸塩は、片頭痛の原因に深く関連している薬であるため、ほかの予防に用いられる薬と同等の効果があると考えられ、専門家によって経験的に支持されています。
片頭痛急性発作の治療薬
[薬名]イミグラン錠/イミグラン点鼻液/イミグラン注(スマトリプタンコハク酸塩)(8)(11)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] スマトリプタンコハク酸塩などのトリプタン系薬剤は、頭部の血管の拡張を抑えることによって、片頭痛の症状をやわらげる効果があることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。
[薬名]クリアミン配合錠(イソプロピルアンチピリン配合剤)(8)(9)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] イソプロピルアンチピリン配合剤は、頭部の血管の拡張を抑えることによって、片頭痛の症状をやわらげる効果があることが臨床研究によって確認されていますが、有効性が一定でなく、トリプタン系薬剤の発売後は第一選択薬としてはあまり用いられていません。妊娠中・授乳中の使用は禁忌です。
[薬名]アセトアミノフェン/カロナール(アセトアミノフェン)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]非ステロイド抗炎症薬(8)(9)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] アセトアミノフェンや非ステロイド抗炎症薬は、一般的に鎮痛薬として用いられていますが、片頭痛についても効果があることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。
吐き気が強い場合の治療薬
[薬名]プリンペラン(メトクロプラミド)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]コントミン/ウインタミン(クロルプロマジン塩酸塩)(8)(9)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 一般的に制吐薬(せいとやく)として用いられるこれらの薬は、片頭痛の際の吐き気についても効果があることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。
総合的に見て現在もっとも確かな治療法
発作の誘因になるものを避ける
片頭痛をもっている患者さんの多くは、それまでの経験から、どんなことがきっかけとなって頭痛がおこるか、発作を引きおこす要因に気づいています。たとえば、仕事上や家庭内のストレス、睡眠不足、騒音、強い光などです。そのような場合は、できるだけ、片頭痛のきっかけとなるそれらのできごとを避けたり予防したりすることができれば理想的でしょう。
発作がおきた場合には、アセトアミノフェン/カロナール(アセトアミノフェン)などの一般的な鎮痛薬、あるいはトリプタン系薬剤を中心に、クリアミン配合錠(イソプロピルアンチピリン配合剤)などを用い、吐き気を伴う場合には制吐薬も対症的に用います。
予防用の薬と規則正しい生活を
頻繁に発作をおこして日常生活に支障をきたす場合には、予防薬を服用します。
予防効果のあることが実証されている薬は比較的多いため、使ってみてもっとも副作用の少ないものを見つけるとよいでしょう。
随時服用する薬については医師とよく相談のうえ、用いるようにすることが大切です。
片頭痛は一生つきあっていかなければならない慢性の病気ですが、生活習慣に気をつけたり、適切な薬を使ったりすることによって、症状を十分にコントロールすることができます。
予防するには、運動の習慣を身につけること、忙しいからといって食事を抜いたりせず規則正しい食事をすること、ストレスをためないようリラックスする方法を見つけることなどが大切です。
(1)Marcus DA, Scharff L, Mercer S, et al. Nonpharmacological treatment for migraine: incremental utility of physical therapy with relaxation and thermal biofeedback. Cephalalgia. 1998;18:266-272.
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デジタル大辞泉
かた‐ずつう〔‐ヅツウ〕【片頭痛】
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監修:松村明
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編集協力:田中牧郎、曽根脩
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