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物忌み【ものいみ】

日本大百科全書(ニッポニカ)

物忌み
ものいみ

公事、神事などにあたって、一定期間飲食や行動を慎み、不浄を避けることをいう。潔斎、斎戒。平安時代には陰陽道(おんみょうどう)により物忌みが多く行われ、貴族などは物忌み中はだいじな用務があっても外出することを控えた。物忌み中の人は家門を閉ざして、訪客がきても会わず、行事にも出席しない。家にあっても冠や髪に「物忌」の札をつけていた。夢見なども陰陽師がよくないというと物忌みをした。当時における公家(くげ)などの物忌み日数は1年間に1か月ぐらいに及んだ。また物忌みのため自家に忌み籠(こも)りするだけでなく、他の特定の場所に出かけることもあった。

 また、伊勢(いせ)神宮などの大社で、神事に参与する童男・童女を「物忌」とよんだ。鹿島(かしま)神宮では、7、8歳から12、3歳までの経水のない女子のうち、「物忌」役は亀甲(きっこう)を灼(や)いて亀卜(きぼく)により定めたという。伊勢神宮や出雲(いずも)大社はもちろん、山形県の鳥海(ちょうかい)山大物忌神社などは厳重な物忌みで知られている。富士山麓(さんろく)「吉田の火祭り」は北口本宮冨士浅間(せんげん)神社の祭礼であるが、忌中の氏子は自家を離れて一定の場所に外泊し、祭りの主要行事の済むのを待つという不文律がある。沖縄県宮古(みやこ)島に「ンナフカ」という豊作をもたらす神を迎える神事があるが、その物忌みは厳しく、かつては祭りの日には人も牛馬も外出せず、明りもつけず声もたてなかった。祭りを行う巫女(みこ)は以前は断食して神を迎えたといわれている。「ンナフカ」とは仮死の意で、人間の活力が一時停止した状態をいう。

[大藤時彦]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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