●独占資本主義【どくせんしほんしゅぎ】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
独占資本主義
どくせんしほんしゅぎ
monopoly capitalism
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デジタル大辞泉
どくせんしほん‐しゅぎ【独占資本主義】
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世界大百科事典 第2版
どくせんしほんしゅぎ【独占資本主義】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
独占資本主義
どくせんしほんしゅぎ
monopoly capitalism 英語
capitalisme monopole フランス語
Monopolkapitalismus ドイツ語
「独占」が経済の支配的な構造となっている資本主義の歴史的発展段階をいう。先進資本主義諸国では、19世紀末の長期不況を契機に、カルテル、トラストなどの独占的企業結合と、企業の吸収・合併の動きが広がり、少数の巨大企業に生産と資本が集中した。広く社会に分散する遊休資金を動員し、内部利潤の限界を超えた企業規模の拡大を可能とした株式会社制度が、この集中の一大手段であり、融資業務とともに株式発行を担った銀行業がその一大機関であった。生産部門と金融部門との資本的結合に、役員など相互の人的結合が加わり、巨大産業資本と巨大銀行資本との融合が進み、独占的な金融資本つまりコンツェルンが形成された。アメリカのモルガン、ロックフェラーなどの八大金融資本集団、日本の三菱(みつびし)、三井、住友といった財閥などにみられる経済支配と金融寡頭制の体制がこれである。小規模な多数の企業による自由な市場競争が一般的であった19世紀の資本主義から、少数の巨大企業とその独占的な金融資本的結合体が支配する独占資本主義に発展転化したのである。「独占」形成の直接的な動機は、不況の長期化に伴う市場競争の激化、価格と利潤の低下傾向を阻止し、企業収益の安定化を図ることにあった。しかし、独占的な支配構造の確立は、独占価格の形成、したがって独占的超過利潤の獲得を可能にした。独占資本主義のもとでは、独占的企業(群)は、その市場と資本への支配力に比例的に高く設定できる独占価格を通して消費者を搾取し、不平等な取引条件によって中小企業等の非独占的資本を収奪し、一方的な所得の再分配を強制できる。さらに巨大な経済力を基礎に、一方で政治や政策さらに社会や文化面への影響力を行使し、他方で原料と市場、有利な投資機会を求めて世界市場に進出し、その独占的支配を国際化する。
ロシアの革命家レーニンは、独占資本主義を資本主義の最高の発展段階と規定し、独占的金融資本の(軍事、外交と結んだ)世界市場への進出と分割支配を近代帝国主義の経済的基礎と指摘し、帝国主義戦争の必然性をそこに求めた(レーニン『帝国主義論』)。さらに彼は、独占資本主義の支配体制と収奪的体質との必然的結果として、資本主義経済の基本矛盾(巨大企業の生産力の増大と私的資本主義的取得との間の矛盾)が著しく拡大し、経済活動の不安定性と停滞化が促進されると指摘した。その後、マルクス主義者たちは、こうした矛盾の集中的発現を1930年代の大不況にみいだし、この長期不況を克服し資本主義体制の安定化を図るために経済過程への大規模かつ恒常的な国家の政策的介入が必要とされたとして、独占資本主義の国家独占資本主義への発展を説いている。
ところで、独占資本主義のもとでの企業規模の拡大と独占的結合体の発展が、生産力の増大、したがって生産の社会性を拡大し、経済全体のカルテル的な計画化が促され、「組織された資本主義」を導くとする説もある。しかし、独占資本主義のもとでも、(1)少数の巨大独占金融資本間の、(2)巨大企業(群)と中小企業(群)との間の、(3)そしてなによりも外国の大企業(群)との間の、市場と利潤をめぐる厳しい競争は免れえない。また、巨大企業間では、競争がひとたび始まると激しいものとなり大きな犠牲を伴う傾向があるため、宣伝広告、製品差別化、販売経路の系列化といった非価格競争が採用される傾向が強まる。確かに非価格競争には、「資源の浪費」をもたらす面と製品やサービスの向上となる技術革新を促す面との二面があり、この点で独占資本主義を「腐朽と停滞が支配する死滅しつつある資本主義」とみるレーニンらのマルクス主義理論は一面的な分析であったといえよう。同様に独占資本主義では、強大な大企業部門と弱小な中小企業部門との「二重構造」が、産業部門内でも全体経済でも等しく認められている。だからといって中小企業の地位がつねに従属的であるとはいえない。大企業体制の経済空間に位置しつつ安定した経済機会を開拓し成長する中小企業も多数存在する。最後に、大規模株式会社にあっては、資本所有権と離れて、企業経営の実質を担う専門的経営者層が登場し、所有と経営の分離化、つまり経営者革命が進んでおり、その結果、マルクス主義の伝統的な労働者と資本家の階級対立という図式にも、一定の修正が必要となっている。
[吉家清次]
『P・バラン、P・スウィージー著、小原敬士訳『独占資本』(1967・岩波書店)』▽『井汲卓一他著『講座マルクス経済学』全7巻(1974・日本評論社)』▽『レーニン著、副島種典訳『帝国主義論』(大月書店・国民文庫)』
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精選版 日本国語大辞典
どくせんしほん‐しゅぎ【独占資本主義】
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旺文社世界史事典 三訂版
独占資本主義
どくせんしほんしゅぎ
monopolistic capitalism
第2次産業革命といわれる技術革新の結果,電気・石油エネルギーが登場し,重化学工業が発達した。これはちょうど1873〜96年の大不況の時期にあたっており,後進資本主義国のドイツを中心に,企業形態として株式会社が発達し,大経営による必要から,銀行資本が産業資本として機能する金融資本が生まれ,不況対策として自由競争に代わる独占(独占利潤・企業独占)がとられたが,20世紀初頭には,独占資本として一国経済において支配的地位を占めるだけでなく,世界的体制にまで達し,帝国主義の経済的側面をなすに至った。独占資本の実際の存在形態としてはカルテル・トラスト・コンツェルン(財閥)などがあり,国内的・国際的に価格の協定・資本の支配などを行って,市場の独占・生産の集中をはかることを目的としている。
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独占資本主義
どくせんしほんしゅぎ
資本の自由競争の過程または景気変動を通して小企業は競争に敗れ,資本が少数の大企業に集中されていく。そうなると資本の移動も困難になり不況期に利潤が少なくなっても容易に回復しなくなる。そこで大企業はカルテルやトラストを形成して生産量を制限し価格をつり上げる。このような大企業を独占資本と呼ぶ。日本は1910年代にこの段階へ移行し始めたとされている。
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