●王制【おうせい】
知恵蔵
王制
イスラム世界にはいくつかの種類の君主制が存在し、それぞれの呼称も異なっている。カリフとは後継者を意味し、特に預言者ムハンマドの後継者を指す。イスラムの諸王朝は、しばしばこの称号を使うことで、その支配の正統性を主張してきた。カリフを称した最後の王朝はオスマン帝国の支配者で、1923年のトルコ共和国の成立によってカリフ制度は消滅した。アミールは指揮官を意味し、現在ではペルシア湾岸の一部の君主の称号として使われる。日本語では首長と訳されることが多い。クウェートの支配者などはアミールである。アフガニスタンのタリバーン政権指導者であったムハンマド・オマルは、「アミール・アル・モウメニーン(信者の司令官)」の称号を使った。これは2代目カリフのオマルの称号であった。スルタンは支配者を意味し、宗教的な権威は持たない場合が多い。セルジュク朝、オスマン朝などのトルコ系の諸王朝がよくスルタンを称した。オスマン帝国の支配者は、スルタンとカリフの両方の称号を使ったわけである。スルタンは明治以前の日本史における将軍に、感覚的には近い。イマームは指導者を意味し、大小を問わず集団礼拝の指導者を指す。シーア派では預言者の血統の最高指導者を指す。イランのホメイニはイマームという称号で呼ばれた。シャーはペルシア語で王を意味し、伝統的にイラン、アフガニスタンとインドのムガール帝国の支配者などが称した。マリクはアラビア語で王を意味し、サウジアラビア、モロッコ、ヨルダン、バーレーンで使われている。
(高橋和夫 放送大学助教授 / 2007年)
(高橋和夫 放送大学助教授 / 2007年)
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
精選版 日本国語大辞典
おう‐せい ワウ‥【王制】
〘名〙
① 王者の定める制度。
※浄瑠璃・和田合戦女舞鶴(1736)一「それ天子は天命を稟(う)けて王制(ワウセイ)を正しうし」
② 王が主権をもつ政治体制。君主制。王政。
※学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉一「王制一度新なりしより以来、我日本の政風大に改り」
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デジタル大辞泉
おう‐せい〔ワウ‐〕【王制】
1 王が主権をもつ政治制度。君主制。
2 王の定めた制度。
2 王の定めた制度。
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