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現象学【げんしょうがく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

現象学
げんしょうがく
phenomenology
現象学という言葉はすでに J.ランベルトの『新オルガノン』 (1764) に見出され,またカントにも phaenomenologia generalisという言葉が見出されるが (79年の書簡) ,哲学的方法論の核心をなすものとして特別な意味が与えられたのは最初ヘーゲル,次いで E.フッサールにおいてである。ヘーゲルは『精神現象学』 (1807) を意識の経験の学とし,感覚的経験から絶対知への意識の発展を絶対精神の弁証法的展開として記述した。フッサールは F.ブレンターノの影響を受けながら,「事象そのものへ!」を哲学の標語とし,純粋意識の本質記述学を現象学とし,超越論的還元と形相的還元による純粋意識の本質構造をノエシスノエマの相関関係として分析記述した。彼によって創始された現象学はその後,直接間接に多くの影響を与え,ドイツを中心としては M.シェーラー,A.プフェンダー,M.ガイガー,A.ライナハ,R.インガルデン,コンラート=マルチウス,シヤップ,ヘーリング,E.シュタイン,さらには M.ハイデガー,O.ベッカー,L.ラントグレーベ,O.フィンク,ガーダマー,フランスではサルトル,M.メルロー=ポンティ,P.リクール,M.デュフレンヌ,G.マルセル,ベルギーではファン・ブレダ,バーレン,アメリカではファーバー,シュピーゲルベルク,日本では池上鎌三らが現象学に学び現象学を発展させた。また現象学は他の諸学問へも方法論的に影響を与えたことが注目されよう。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

現象学
フッサールは、諸学問に根拠を与える「基礎づけ」の学として現象学を構想した。真・・美という意味や価値の本質、また広く精神や文化に関する問いは、自然科学を中心とした実証的な学問では扱えない。それゆえフッサールは、実証的な学問についても、意味や価値を扱う学問についても、それぞれの成立根拠と範囲を明確にしようとしたのである。現象学はあらゆる学問・認識の根拠を個々人の主観における妥当(確信)に求める。これは、客観的な世界の存在を当然視する素朴な見方を根本から変更するものだった。この態度変更を自覚的に行うことが「現象学的還元」と呼ばれる。客観的な世界がある、とする私たちの素朴な態度をいったん停止して、そのような妥当が生じる条件や理由を自分の意識の内側に探っていくのである。現象学的還元を通じて、フッサールが主に行ったのは、事物知覚の本質構造の記述であり、自然科学が土台とする客観的世界の妥当が成立する普遍的な(誰にも共通するような)条件を探ることであった。普遍的な構造や条件を取り出し記述することを現象学では「本質観取」という。この方法は、自分の経験を見つめ、そこから善、美、自由、正義といった人間的な諸価値の普遍的な意味あいを取り出す試みでもあり、その方法的意義は現在も失われていない。
(石川伸晃 京都精華大学講師 / 2007年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

デジタル大辞泉

げんしょう‐がく〔ゲンシヤウ‐〕【現象学】
ヘーゲルの精神現象学。最も単純な感覚的確信から最高の絶対知へ至るまでの精神の弁証法的発展の叙述
フッサールによって創唱された哲学。純粋意識の本質を記述し、その志向的体験をノエシスノエマ的な相関関係において究明する。

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

げんしょうがく【現象学】
18世紀に,ギリシア語のphainomenonとlogosの2語を結びつけて造語されたドイツ語Phänomenologieの訳語。この語ははじめ物理学の領域で,運動論の一部門――われわれの外感に現れるかぎりでの物質の運動を扱う部門――を指すために使われ,その後も19世紀末のマッハにいたるまで〈記述的物理学〉という意味合いで用いられていた。マッハの提唱した〈現象学的物理学〉は,原子とか原因・結果といった形而上学的な概念を排除し,感覚的経験に与えられる運動の直接的記述から出発して,それらの記述を相互に比較しながらしだいに抽象度の高い概念を構成してゆくというしかたで,物理学理論を根本的に組みかえることを企てるものであった。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

げんしょうがく【現象学】
現象界や現象する知についての哲学的理説。ランベルト・カント・ヘーゲルらに見られる。
意識に直接的に与えられる現象を記述・分析するフッサールの哲学。現象そのものの本質に至るために、自然的態度では無反省に確信されている内界・外界の実在性を括弧に入れ(エポケー)、そこに残る純粋意識を志向性においてとらえた。実存哲学などにも影響を与え、サルトルによるイマージュの現象学、メルロ=ポンティによる知覚の現象学などが生まれた。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

現象学
げんしょうがく
Phänomenologie ドイツ語

現象を開示する学をいう。しかし現象をどう理解するかによって、現象学はさまざまな意味をもつ。現象学ということばを用いた最初の哲学者はランベルトであり、仮象論の意味であった。カントは『自然科学の形而上(けいじじょう)学的基礎』において、運動を外官の現象として扱う第四部を現象学と名づけた。現象学に決定的な意味を与えたのはヘーゲルである。『精神の現象学』は、感覚的確信から絶対知へ至る意識の経験を叙述している。しかし今日現象学といわれているのは、フッサールに始まる現象学のことである。フッサールは現象学ということばをカント、ヘーゲルから継承したのではない。当時の自然科学、心理学において、直観とかけ離れた概念構成に対する批判として現象学が語られていたが、そうした現象学的方法を徹底するものとして、フッサールは自らの哲学を現象学と名づけたと考えられる。

[細川亮一]

フッサール現象学

フッサールの現象学は『論理学研究』によって開始された。『論理学研究』はその第1巻(1900)において、レアール(実在的)な心的作用とイデアール(理念的)な思惟(しい)内容とを区別することによって、心理学で論理学を基礎づけようとする心理主義を批判した。にもかかわらず、心的作用はイデアールな思惟内容と関係している。それゆえ『論理学研究』第2巻(1901)はこの相関関係を主題とし、そこで志向性、意味充実としての直観(とくにカテゴリー的直観)という現象学にとって基本的な概念が展開された。フッサールは『純粋現象学と現象学的哲学のための諸考想』第1巻(『イデーンⅠ』1913)において、『論理学研究』での記述的現象学を構成的、超越論的現象学へと発展させた。フッサールは、自然的態度の本質である「世界があり、私がその世界のうちにある」という一般定立を作用の外に置き、エポケー(判断中止)を行う。それは現象学的還元であり、そのことによって不可疑な純粋意識の領域が得られる。そこにおいてノエシス―ノエマ(志向的作用―志向的相関者)の相関関係が取り出され、この相関関係に基づいて構成的現象学が可能となる。『イデーンⅠ』に続いて構想された『イデーンⅡ』は、領域的存在論(自然的世界、生命的世界、精神的世界)に即した構成的現象学の展開である。フッサール現象学は、超越論的主観性における世界構成と自己構成の探究であり、現象学が体系的に完全に展開されれば、真の普遍的存在論となる。晩年の『ヨーロッパ諸科学の危機と超越論的現象学』において、科学的世界から、客観的科学によって隠蔽(いんぺい)されていた生活世界への還帰が強調されるが、しかしさらに生活世界から超越論的主観性へと還帰しなければならないとする。フッサール現象学は一貫して超越論的主観性の現象学であった。

[細川亮一]

現象学の展開

フッサールを中心に『哲学および現象学的研究年報』(1913~30)が刊行され、それはフッサールに始まる現象学運動の明確な表現となった。『イデーンⅠ』は『年報』第1巻に掲載された。『年報』にはさらにシェラーの主著『倫理学における形式主義と実質的価値倫理学』、ハイデッガーの主著『存在と時間』が発表された。シェラーはフッサールの本質直観の説に影響を受け、感情によってア・プリオリな実質的価値が直観されることを主張した。実質的価値倫理学は、快適価値―生命価値―精神的価値―聖価値という価値の序列として展開された。そのことによってシェラーは、形式主義としてのカント倫理学をその根底から乗り越えようとした。ハイデッガーは、フッサール現象学における志向性、カテゴリー的直観、ア・プリオリの説を発展させることによって、独自の現象学を構想した。『存在と時間』は、フッサール現象学の批判的摂取と、ギリシア哲学、とくにアリストテレスの存在論の批判的継承によって成立した。『存在と時間』において、哲学は現象学的存在論であり、それは現存在が時間から存在を了解しているという洞察によって可能となった。ハイデッガーにおいて現象学は自覚的に西欧哲学の伝統のうちに置かれたのである。

 フランスにおいて現象学を展開したのはサルトルとメルロ・ポンティである。サルトルは意識の志向性に基づき、想像や情緒に関する優れた論文を発表した。「現象学的存在論の試み」という副題をもつサルトルの主著『存在と無』は、『存在と時間』における現存在の分析論との対決のうちで構想された。しかしサルトルは『存在と時間』を実存主義として理解しているにすぎない。メルロ・ポンティは後期フッサールの影響のもとで、現象学を、生きられた世界への還帰としてとらえた。『知覚の現象学』はゲシュタルト心理学を批判的に乗り越えることによって、生きられた世界、知覚の主体としての身体を現象学的に分析している。

 現象学は現代哲学の一つの運動として、実存哲学、さらに諸科学に大きな影響を与えた。『フッサール全集』『ハイデッガー全集』の刊行により、現象学の再検討とその新たな展開がみられ、さらには現象学と他の哲学との対話が容易となっている。

[細川亮一]

『ハイデッガー著、細谷貞雄訳『ヘーゲルの「経験」概念』(1963・理想社)』『メルロ・ポンティ著、竹内芳郎・小木貞孝・木田元他訳『知覚の現象学』(1967、74・みすず書房)』『フッサール著、立松弘孝訳『論理学研究』全4巻(1968~76・みすず書房)』『フッサール著、池上鎌三訳『純粋現象学及現象学的哲学考案』(岩波文庫)』『フッサール著、細谷恒夫訳「ヨーロッパの学問の危機と先験的現象学」(『世界の名著51』所収・1970・中央公論社)』『辻村公一他編『ハイデッガー全集』全102巻(1985~ ・創文社)』『木田元著『現象学』(岩波新書)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

げんしょう‐がく ゲンシャウ‥【現象学】
〘名〙
① 事物の本質そのものを問うのでなく、それがわれわれの経験にとって現われてくる状態を扱う学問。〔哲学字彙(1881)〕
② 特にヘーゲルでは、精神の現象形態としての意識の発展段階を叙述する学問。
③ 現代では、一般に、事実として存在する対象とは区別された純粋意識の体験としての現象について、その本質構造を記述する哲学的立場をさす。フッサールがその代表者。ハイデガーの現存在分析やサルトルの実存主義的存在論、メルロ=ポンティーの知覚の現象学等を生み、哲学のみならず美学、社会学、法学等にも大きな影響を与えた。

出典:精選版 日本国語大辞典
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