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生徒指導【せいとしどう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

生徒指導
せいとしどう
生徒ひとりひとりの人格の,より正常な,より健康な発達を助成するためになされる教育活動。第2次世界大戦後アメリカから紹介されたガイダンス理論をもとに,生徒を理解し,学級など集団場面での指導をはじめ,教育相談職業指導,非行防止と保護育成など,全一的個人の問題について行われている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

せいと‐しどう〔‐シダウ〕【生徒指導】
学校生活を通じて児童・生徒が個性を伸ばし、資質能力を高め、優れた人格をもつ社会人として成長するよう支援する、学習指導生活指導を総合した指導。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

せいとしどう【生徒指導】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

せいとしどう【生徒指導】
学校教育における教科の学習指導以外の訓育的な指導。また、生徒の直面する問題全般について行われる指導。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

生徒指導
せいとしどう
生徒指導という用語は、生活指導という用語と対比して用いられることが多い。アメリカ合衆国のガイダンスの考え方から発展し、多くは教育行政の支持する「生徒指導」と、ソ連の集団主義の考え方にその基盤を置き、集団の力をとくに重視し、主として民間教育団体が支持する「生活指導」とは、対立傾向にある。生徒指導は、人間の尊厳という考え方に基づき、ひとりひとりの生徒をつねに目的自身として扱う。それは、それぞれの内在的価値をもった個人の自己実現を助ける過程であり、人間性の最上の発達を目的とするものであると規定する。そして、生徒の直面する問題を分類して、学業指導(オリエンテーションを含む)、個人的適応指導、社会性・公民性指導、道徳性指導、進路指導保健指導、余暇指導などに分けて計画される。生徒指導の原理をあげると次のようになる。
〔1〕児童・生徒の主体性と独自性とをたいせつにする人間観に立脚する
〔2〕自己指導の能力を育てることをねらいにする
〔3〕問題行動の治療・矯正よりも発達課題の達成に力点を置く
〔4〕すべての児童・生徒を対象とする
〔5〕児童・生徒の人格全体に対する統合的な活動である
〔6〕学校教育のすべての場に作用する機能である
その機能のおもなものは
(1)生徒に自己決定の場を与える
(2)生徒に自己存在感を与える
(3)共感的人間関係を基盤にする
の三つである。
 生徒指導においては、児童・生徒の理解が重視される。その児童・生徒の理解に基づいて個別指導あるいは集団指導のどちらかが活用される。個別指導のなかの主要なものは教育相談(カウンセリング)である。また、集団指導のなかで主要なものは話し合い活動である。学校での教育課程のなかのものとしては、学級会や児童(生徒)会での話し合い活動に生徒指導の機能が大きく作用する。生徒指導における集団指導においては、集団の士気が個人を高め、個人の高まりが集団のまとまりを強めるが、究極的には個人に焦点を置く。[坂本昇一]
『坂本昇一著『「やる気」の生徒指導』(1985・小学館創造選書) ▽吉田辰雄編著『最近の生徒指導と進路指導』(1992・図書文化社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

せいと‐しどう ‥シダウ【生徒指導】
〘名〙 児童・生徒一人一人の人間性の最上の発達を目的とする指導。学業指導、個人的適応指導、社会性・公民性指導、道徳性指導、進路指導、保健指導、余暇指導などに分かれる。

出典:精選版 日本国語大辞典
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最新 心理学事典

せいとしどう
生徒指導
student guidance
2010年に出された文部科学省の生徒指導提要によると,生徒指導とは「一人一人の児童・生徒の人格を尊重し,個性の伸長を図りながら,社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動」をいう。すなわち「生徒指導は,すべての児童・生徒のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに,学校生活がすべての児童・生徒にとって有意義で興味深く,充実したものになること」をめざすものである。それゆえ生徒指導は,「学校の教育目標を達成する上で重要な機能を果たすものであり,学習指導と並んで学校教育において重要な意義を持つもの」であるといえる。こうした指導を実現させるためにも,各学校においては「教育課程の内外において一人一人の児童・生徒の健全な成長を促し,児童・生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すという生徒指導の積極的な意義を踏まえ」てなされるべきである。そして,この指導がどうあるべきかを考えるときに,まず必要であるのが「児童・生徒理解」という観点である。「非行傾向の児童・生徒にはかく対応すべし」「不登校の子どもたちにはかく対応をすべし」と一般化する前に,目の前にいる児童・生徒を理解するのが第一であり,その理解に基づいて一人ひとりに合った指導がどうあるべきかが論じられねばならない。同じ行動を取ったとしても,子どもの発達段階(年齢)によってその意味は異なってくる。その意味からも,生徒理解においては「普段のその子の状態やそれまでの生育歴にかんがみて〝今ここ〞の状況を判断する」という視点と,「発達段階という軸から,子どもの行動の意味を読み取る」という視点の両方が求められる。

【「問題」をメッセージとしてとらえる】 学校現場にかかわっていると問題行動ということばを耳にすることが多い。問題行動とは,教師への暴力や反抗などの反社会的行動,引きこもりや神経質のような非社会的行動などであり,生徒指導の対象となる。さらに最近は,反社会的な要素と非社会的な要素を併せもつ問題行動も増えている。これらは教師から見て望ましくない行動であり学校としては,なくしたい行動であるといえる。しかし,たとえば,教師に甘えたい気持ちをあえて反抗という形で表現していると思われるケースがある。いじめによるストレスを吐き出せずに溜め込んだ結果,円形脱毛症や過敏性大腸症候群などの病気として発現してしまうケースもある。このように,子どもたちが抱えているストレスや悩みの多くは,子ども本人に自覚されないまま,さまざまな問題として発現する。身体面では,筋肉の緊張や手のひらの発汗,下痢や嘔吐などがその例である。また感情面では,いらいらや怒り,不安や不機嫌という不快な状態として発現する。行動面としては,食事や睡眠の変化,チックや爪嚙み,そして反抗や引きこもりという「問題行動」として発現することもある。とりわけ,自分の状態をきちんと言語化して伝えることができない発達段階では,症状という形で身体化したり,問題といわれる形で行動化したり,おとなから見て困った状況,心配な状態となることが多い。問題ということばで切り捨ててしまう前に,「そこにどんなメッセージが隠されているのか」「学校という場で,教育という方法でできることはないのか」などの観点から子どもたちのことばや行動を見直すことが求められているといえる。また,小学校・中学校・高校と生活の場が増えるにつれて,家での顔,先生の前での顔,友だちといるときの顔,塾での顔など,子どもたちが演じ分ける「顔」の数も増えていく。また,時と場,あるいは相手によって見せる顔を変えることができるようにもなっていく。学校は,担任教師,教科担当教員,管理職,養護教諭,司書教諭,部活動の顧問など,さまざまな教師が一人の児童生徒にかかわることになる。どんな時に,どんな相手に対して,どのような顔を出すのか,これらの複数の顔を突き合わせて理解するという方法が必要になる。こうして,子どもにかかわるおとなたちがお互いの情報をもち寄りそれぞれが把握している子どもたちの顔を重ね合わせる作業により,立体的な子ども像を結ぶことができるといえよう。

【アセスメントと児童生徒理解】 アセスメントassessmentとは心理査定,心理診断と訳されるが,学校臨床においては「対象となる児童・生徒が直面している〝問題状況〞についての情報収集と分析により,指導や援助に必要な材料を提供する」というプロセスそのものがアセスメントであると考えられる。一方,「児童・生徒理解」とは,教育を行なうための資料とすべく児童・生徒(児童・生徒一般のこともあれば,特定の児童・生徒のこともある)の個性や行動の特性について理解することを意味している。つまり,学校臨床におけるアセスメントとは,この「児童・生徒理解」を基盤とし,その子どもに必要な指導や援助の方法を判断することまでを含み込む心理・教育的な作業過程であるといえる。とりわけ,近年,学校では発達障害(LDやADHD,高機能自閉症など広汎性発達障害)の子どもたちに対する理解とかかわりが求められることが多くなった。正確な診断をするためには,医療や療育などの専門機関で発達検査などを行なうことが必要であるが,学校では行動観察がまず出発点になる。学校内で収集された情報をもち寄り,校内の委員会で検討したり事例検討会を開いたりという形で,共通理解を図ることが肝要である。このように,児童・生徒の問題を学校現場で理解し判断する際に必要になるのが,生きたアセスメントという視点である。学校現場に求められるのは,その後の児童・生徒理解やより適切な対応(指導や援助の方法)を考えるための有効な資料としての生きたアセスメントである。

 さらに学校臨床においては,児童・生徒個人を理解することに加えて,子どもが生きる生活場面や環境についてのアセスメントも必要になる。なぜなら,子どもが抱える問題は子ども一人の中に原因があるのではなく,家庭や学校,地域や社会との相互作用の中で起こっていると考えられるからである。たとえば,学校の要因としては教師の態度や教育方針,友人関係などがある。また家庭の要因としては,家族構成や家族間の関係,養育態度や養育方針などがかかわってくる。それ以外にも,児童・生徒が生活している地域の要因(地域の環境や近所づきあいのあり方など)をアセスメントする必要も出てくる。これら複眼的な側面からの情報を資料として正確なアセスメントを行なうことが求められよう。

【チームによる支援の大切さ】 生徒指導の第1の条件として,学校全体の指導体制の充実を図ることが挙げられる。直接影響を与えうる教員一人ひとりが児童・生徒に対する共通理解の姿勢をもち指導にあたる体制が求められよう。コーディネーター的な役割を果たす教員や養護教諭の役割を明確に位置づけ,学校全体で情報を共有し連携・協力して指導にあたる体制を作ることが望ましい。必要に応じてスクールカウンセラーなどと教職員が円滑に連携していくためにも,日常的に相互理解を深めておくことも大切となる。このように校内で情報を共有し,共通理解のもとで一貫した指導・援助にあたるチーム支援のあり方が,今,学校現場では非常に重視されている。複数の教師がかかわることで,多面的な理解が進むと同時に,多面的なかかわりも可能となる。校内のチーム支援を一歩広げて,学校外の(心理・医療・福祉・警察など)専門機関とのネットワークを組みつつ,求められる支援を過不足なく行なうことが求められる。

 このようなチーム支援の意義は三つある。一つは,「複数の目」で児童・生徒を見ることによる多面的理解の可能性である。前述のように担任の前での顔,保健室での顔,部活動の中での顔など,子どもたちはいくつかの顔をもっている。それら複数の顔を重ね合わせることにより,等身大の子どもの姿が見えてくる。もう一つは「複数の手」が協力することにより,多様なかかわりや役割分担が可能になる点である。担任教師としては厳しい現実原則を言わねばならないときも,保健室や相談室がケアすることで,なんとか乗り切れることもあるだろう。児童・生徒には担任が接しても,保護者への対応は相談係や養護教諭が分担する方がうまくいく場合もある。それぞれが単独で動くのではなく,互いに接点をもちながら分担することで,一つひとつのかかわりがより大きな意味をもつことになるだろう。そしてもう一つは,支え合いの機能である。難しいケースを一人で抱えていると,行き詰まったり疲れを感じたりすることもある。そして,この機能を十分に果たせるためにも,学校内に「一つのクラスの問題は,学校全体で考えよう」「一人の教師で抱え込むのではなく,みんなで協力・分担して乗り越えよう」という雰囲気づくりも必要になる。

【外部機関とのネットワーク】 学校内だけでは解決できない問題もある。虐待ならば児童相談所,非行・犯罪に絡む事態なら警察の少年課(少年センター)など,専門機関との密な連携が必要となる。普段から,学区域にある専門機関の特徴について情報をプールしておくとともに,学校と専門相談機関との連絡システムを構築し,担当者同士が足を使い,顔と顔を合わせての連携が取れることが望ましい。相談担当者の資質向上とともに,サポートシステム(学校内でのチーム,学校外とのネットワーク)の充実が,これからの教育相談の鍵を握るだろう。以下,学校現場で対応が求められる課題について,個別に概観する。

【不登校】 2011年に文部科学省より報告されたいわゆる「問題行動等調査結果」によると,不登校児童・生徒の人数は,2001年度までの急増傾向を経て,その後は多少の増減を見せながらもほぼ横ばい傾向にある。しかし,学校現場で出会う不登校については,本人が「学校に行けないことに悩み苦しむ」神経症的不登校に対し,表面的には葛藤が見えにくい「明るい不登校」に出会う機会も多くなった。いじめや友だち間のトラブルなど,その過程に本人が絡んでいるケース以外に,保護者による虐待や保護者の精神的病気が背景にあるなど,家庭や社会の側に原因が潜んでいるケースまで質的な多様化が進んでいるのが実態である。また最近では,ADHDやアスペルガー障害など,発達障害が原因となり引き起こされた不登校まで幅広い。前述の生徒指導提要でも,多様化する不登校に対して確実なアセスメントと適切で柔軟な支援体制を構築することの重要性が示された。まず校内では,情報を共有し全体での共通理解を図り,一貫した指導・援助にあたることが求められる。それと同時に,保護者との関係をていねいに構築しつつ,必要に応じてスクールカウンセラーや学校外の専門機関とも連携を深めることが大切である。

 また,学校を超えた校種間の連携も重要である。不登校の人数は中学1年生で急増する。中1ギャップといわれるように,小学校から中学校への移行期にある種の危機的状況が生まれることが指摘される。小学校に比べ中学校では,学習内容が増え生徒指導も厳しくなるというように教育内容や指導方針が変化することに加え,複数の小学校からの進学や部活動などによる人間関係が複雑化することなどがその要因として挙げられる。他方,前年度から不登校を継続している児童・生徒数も学年が進行するとともに増えていく。とりわけ中学2年,中学3年では不登校生徒数に占める継続ケースの比率が高まり,不登校が長期化していく様子がうかがえる。校種間で情報を引き継ぎ,クラス替えに際しては(とくにいじめなどがある場合は)人間関係に配慮するなど,次の年度に不登校を持ち越さないような指導上の工夫も大切である。学校が,すべての子どもたちにとっての安心・安全な居場所となるよう,教科指導や特別活動など教育活動全体をよりいっそう充実させることが肝要であることはいうまでもない。不登校解決の最終目標とされる「社会的自立」(一人一人の個性を生かし社会へと参加しつつ充実した人生を過ごしていく)についても,すべての児童・生徒に対してめざされるべき教育目標である。こうした意味からも,教育活動全体を通しての人間関係の構築や児童・生徒理解の努力は,不登校にとどまらずあらゆる問題の予防策になる。対応にあたっては,学校内で共通理解を図り,関係する教職員がチームを組んで対応に当たるチーム支援体制の確立が求められる。とりわけ,不登校そのものが多様化している現状に対しては,教育・心理・医療・福祉・矯正的な視点を融合させた複合的支援を行なうことが求められよう。

【いじめ】 不登校の背景要因として,大きな要因の一つに友人関係が挙げられる。とりわけいじめは,学校現場において放置できない問題である。いじめは2006年に「いじめられる側の精神的・身体的苦痛の認知」を重視するという観点から,「一定の人間関係のある者から,心理的・物理的な攻撃を受けたことにより,精神的苦痛を感じているもの」と定義が見直された。不登校と同じく「どの学校にも起こりうるもの」であり「だれもが被害者にも加害者にもなりうるもの」であり,「いじめは人間として絶対に許されない」という基本姿勢が求められる。いじめの多くは,教師の目には微妙に隠された状況で生じる。前述の生徒指導提要では,いじめを発生させる原因として,①心理的ストレス,②集団内の異質な者への嫌悪感情,③ねたみや嫉妬感情,④遊び感覚やふざけ意識,⑤いじめの被害者になることへの回避感情が挙げられている。しかも,いじめは「いじめられる側の被害感情」による「主観的世界に基礎をもつ現象」(森田洋司・清永賢二,1992)といわれるように,きわめて曖昧なものである。いじめを厄介なことと扱い,やめさせることだけを最終目標に対応していると,いじめの本質を見過ごしてしまう。とくに,近年の子どもたちを取り巻く環境を見ていると,ストレスフルな状況が多い。悪質な事件の続発に象徴されるように,モラルが崩れきった風潮が社会全体に蔓延しており,やり場のないストレスが子どもたちにのしかかり,それを発散するためにいじめに走る子どもも多い。いじめという行動を通してSOSを発信している子どもが抱える心の闇に目を向けることが求められるゆえんである。いじめを受けた子どもたちのケアはもちろん,いじめる側への指導,またそれを取り巻く学級集団への指導までが,生徒指導として求められる。さらに,見て見ぬふりを特徴とする傍観者への働きかけも重要である。傍観者の心理には複雑な思いが入り込んでいる。いじめを告発することでいじめの矛先が自分に向け変えられることを恐れているというケースも多い。いい子ぶることによる周りからの制裁(非難)を恐れる心理が働いているのかもしれない。お互いに距離を取りながら人間関係を穏便にすませようとしている子ども社会の中で,いじめに真っ向から対決しようという空気を作ることは容易なことではない。こうした現状に対し,グループエンカウンターを使っての人間関係作りやピア・サポートなどを生かした子ども相互による活動まで,子ども同士の心の結びつきを深め,社会性を育む予防・開発的な指導のあり方が重要な課題とされる。

【暴力行為】 いじめの深刻化と軌を一にして,暴力行動の増加も指摘される。前述の「問題行動等調査結果」によると,暴力行為は「故意に有形力(目に見える物理的な力)を加える行為」と定義され,①対教師暴力,②生徒間暴力,③(対教師・生徒間暴力を除く)対人暴力,④器物破損が挙げられる。こうした暴力行為に対しては,「いかなる理由からも認められないし絶対に許されない行為である」という毅然とした対応が求められる。学校内での暴力行為への対応が難しいのは,当事者(加害者・被害者)がともに一つの学校・学級に所属していることが多く,周囲の子どもたち(学級成員)への影響も大きい点にある。教職員だけでなく,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの協力も得つつ,児童・生徒一人ひとりの暴力行為への対応が重要である。

 いじめや暴力行為が増加する背景に,子どもたちから思いやりや規範意識が失われつつあるという現実を指摘する声がある。人に対する思いやりがなくなり,人を人と思わないような言動が世間を騒がせることも少なくない。規範意識は,家庭でのしつけや基本的生活習慣を基盤とし,学校におけるすべての教育活動を通じて養われていくものである。ところが現実社会においては,本人にとって有害なこと,自分を大事にしない行動であっても,それを「人に迷惑をかけなければいい」と割りきる子どもも増えている。規範意識が低下することが自らの行動を規制する力を弱め,脱規範傾向が他者の逸脱や過ちをただそうとする意識を低下させる。こうして,社会の枠からの逸脱を規制する力が弱まり,それを守るかどうかは個人の判断に委ねられることになる。こうした現状に対し,学校では日常的な教育活動全体を通し,健全な規範意識を醸成していくことが求められる。

【発達障害】 2007年に,それまでの特殊教育の内容を見直し,特別支援教育special needs educationが学校教育法に位置づけられた。文部科学省によると,特別支援教育とは「障害のある幼児・児童・生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,幼児・児童・生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,そのもてる力を高め,生活や学習上の困難を改善または克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うもの」とされる。この見直しにより,従来の特殊教育で対象とされていた障害(視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由,病弱・身体虚弱,情緒障害,言語障害)に,発達障害(学習障害=LD,注意欠陥多動性障害=ADHD,高機能自閉症やアスペルガー障害)が加えられ,すべての学校において,すべての教員が特別支援教育にかかわるという方向に視点が転換されたといえる。一方,学級での取り組みにも教師の努力が求められる。発達障害のある子どもたちは,その障害ゆえに多くの生きづらさを抱えている。コミュニケーションが下手であるために周りから孤立したり,クラスメイトとの間でいざこざが絶えなかったりする。何かのきっかけで衝動的にパニックを起こすこともある。障害のある子どもは「困った子」ではなく「困っている子」であるという認識に立ち,教職員が共通理解と協働体制を作ることが必要になる。さらに,その子どもと直接かかわる学級の子どもたちへの配慮と指導も欠かせない。個別の特別支援に対し,「どうしてあの子だけ特別なの?」という不満が出てくることもある。担任教師には,みんなが大切にされる学級づくり・集団づくりに努めることが,なおいっそう求められる。

 以上のように,学校現場では,さまざまな生徒指導上の課題が渦巻いている。校内での共通理解(正しいアセスメントと有効な対応について),チーム・組織としてのかかわり,さらに学校外の専門機関(教育・心理・医療・福祉・警察等)との連携により,それぞれの個に応じた指導の必要性が求められる。そして,前述したような問題を未然防止するためにも教育活動全体を通して全校生徒指導体制のよりいっそうの充実を図ることが重要である。 →学校心理学 →心理アセスメント →スクールカウンセラー →特別支援教育
〔伊藤 美奈子〕

出典:最新 心理学事典
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