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生物多様性条約【せいぶつたようせいじょうやく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

生物多様性条約
せいぶつたようせいじょうやく
Convention on Biological Diversity; CBD
生物多様性の保護を推進し,遺伝資源の持続可能な利用と衡平な配分の実現を目的とする国際条約生物の多様性に関する条約ともいう。1992年5月,ケニアのナイロビで開催された生物多様性条約合意文言採択ナイロビ会議においてナイロビ最終文書が採択され,策定作業が完了した。1992年6月に開催された環境と開発に関する国連会議地球サミット)の期間中に署名が求められ,同 1992年12月に発効した。2010年6月現在 192ヵ国およびヨーロッパ連合 EUが締約している。日本は地球サミット会期中に署名。アメリカ合衆国は未締結。本条約のもと,敏感な生態系の維持,劣化した生態系の立て直し,絶滅危惧種動植物を守る法律の整備によって,遺伝資源を保護することが求められる。加えて,発展途上国が国内の生物資源保護計画の費用を負担できるよう,途上国への資金供与が求められる。本条約の運営機関である締約国会議は,海洋・沿岸域,内陸水路,森林,山間,農地,乾性・半湿潤地といった生態系の主要な形態各種における遺伝資源保護の目標と戦略を定めるために課題別の計画を策定した。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

生物多様性条約
1992年の地球サミットで採択、93年12月に発効した条約。2006年6月現在、188の国・地域が参加。(1)生物多様性の保全と持続的な利用、(2)遺伝子資源から生まれる利益の公平な配分を目的とし締約国が国家戦略を作ることを定めている。生物多様性の保全のために、保護地域の指定と管理、保護種の指定とモニタリング、生息地の回復、環境アセスメントの実施、などを求めている。条約を巡って、遺伝子資源を利用するバイオテクノロジー技術を持つ先進国と遺伝子資源を持つ途上国とが対立、米国はバイオ産業が不利益を被ることを理由に未締約。00年1月、遺伝子組み換え生物(GMO:genetically modified organism)が在来種を脅かしたり、人の健康に影響を与えたりしないための措置を求めるカルタヘナ議定書が採択。日本政府は03年に遺伝子組換生物の使用等の規制による生物多様性確保法を制定し、輸入業者に利用計画や環境アセスメントの報告書を国に提出をすることを義務付けた。
(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

朝日新聞掲載「キーワード」

生物多様性条約
野生生物を生息環境とともに保全し、生物の多様性の維持をはかる国際条約。動植物や微生物の生物資源の持続可能な利用と利益の公正な配分なども目的とする。絶滅危惧種の国際取引を規制するワシントン条約、貴重な湿地を守るラムサール条約とともに、野生生物の保護や多様性維持をめざす。日本を含む約190カ国が条約締結国となっている。
(2013-10-16 朝日新聞 朝刊 北海道総合)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

せいぶつたようせい‐じょうやく〔セイブツタヤウセイデウヤク〕【生物多様性条約】
《「生物の多様性に関する条約」の略称》地球上の多様な生物を生息環境とともに保全し、生物資源を持続可能であるように利用して、遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分することを目的とする国際条約。1992年地球サミットで採択、1993年発効。CBD(Convention on Biological Diversity)。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

せいぶつたようせいじょうやく【生物多様性条約】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

せいぶつたようせいじょうやく【生物多様性条約】
正称、生物の多様性に関する条約。生物の多様性の保全と持続的な利用、遺伝子資源から得られる利益の公正で衡平な配分を目的とする条約。1992年の地球サミットで採択。93年発効。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

生物多様性条約
せいぶつたようせいじょうやく
Convention on Biological Diversity
生物多様性の維持とその構成要素の持続可能な利用を目的とする条約であり、1992年6月に環境と開発に関する国連会議(地球サミット)において採択された。1993年12月に発効。[磯崎博司]

生物多様性の保全

1980年代以降、地球の生命維持能力または生物が周囲の環境に適応し進化する能力は、生物の多様性に根ざしていることが認識されるようになった。とくに、開発途上諸国にはそのような多様性が残されているため、その保全を国際的に図ることが急務とされた。
 この条約において生物多様性とは、生物の変異性を意味し、種内、種間、生態系それぞれの多様性を含むとされている。種や遺伝子の保存のための事業は、原則として自然状態で行うこととされている。生物多様性の観点からとくに重要な区域を国際的に登録し、保全を促進する制度も検討されていたが、最終的には採用されなかった。
 他方で、生物多様性の破壊につながる貧困の撲滅も重視されており、生物資源および遺伝資源の持続可能な利用が求められている。遺伝資源に対しては、領域国の主権的権利が確認されており、その利用は当該国の国内法に従うこととされている。また、それらに関する研究については、できる限りその資源の提供国においてその提供国の参加を認めて実施することと、その成果および利益は伝統的に利用してきた地域住民を含めて衡平に配分することが求められている。
 2010年(平成22)に名古屋で開かれた第10回締約国会議において、条約の戦略計画である「愛知目標」が採択された。それは、自然と共生する世界に向けて生物多様性が主流化されることを目ざしており、五つの分野にわたり20の目標が設定されている。また、それにあわせて、2011年から2020年までは「国連生物多様性の10年」と定められた。[磯崎博司]

名古屋議定書

「遺伝資源の利用とその利益配分Access to genetic resources and Benefit-Sharing(ABS)」に関する名古屋議定書が2010年10月に採択された。それは、第一に、遺伝資源の提供国の国内法の国境を越えた遵守確保制度を樹立しているが、他国の法律の効果を強制することは国家主権に反するために交渉は難航した。その具体的な措置としてはモニタリング制度が定められている。第二に、「遺伝資源の利用」という用語の定義を通じて「遺伝資源の利用から生じる利益」という用語の解釈を提示するとともに、配分すべき利益の対象範囲に派生物が含まれるか否かは、個別契約において定められるべき事項であることを明確にした。第三に、少数民族や地域社会の伝統的知識の取扱いを遺伝資源に準じて国際レベルに引き上げた。第四に、利益配分の遡及(そきゅう)適用を退ける一方で、グローバルな資金メカニズムの必要性と態様について検討することを定めた。第五に、生物多様性の保全が前提的な基本目的であることを再確認するとともに、ABSによる資金(グローバル資金メカニズムを含む)を生物多様性の保全および生物資源の持続可能な利用に振り向けるよう奨励している。[磯崎博司]

カルタヘナ議定書

2000年1月には、カルタヘナ議定書(生物多様性条約のもとの生物安全性に関するカルタヘナ議定書)が採択された。生物多様性の保全および持続可能な利用に対して悪影響を及ぼす可能性のあるすべてのLMO(Living Modified Organism、生きている改変生物)の国境を越える移動、輸送、取扱いおよび利用について適用される。改変生物とは、現代の遺伝子工学技術によって新たな遺伝的形質を有するようになった生物のことである。
 開放環境(野外での栽培など)に意図的に導入されるLMO(種子など)については、その輸出入に先だってAIA(Advance Informed Agreement、情報提供に基づく事前合意)手続が適用される。ただし、食品・飼料・加工用のLMO(食用のダイズなど)については、AIAに準ずる手続が適用される。どちらの手続の場合も、輸入国に対して事前拒否権が認められている。さらに、輸入国は科学的に不確実または科学的知見が不十分であっても潜在的な危険を避けまたは軽減するための決定を行うことができるとされており、予防原則も確認されている。[磯崎博司]

名古屋クアラルンプール議定書

カルタヘナ議定書のもとに、責任と救済に関する名古屋クアラルンプール補足議定書が2010年10月に採択された。そこでは、責任の性格、因果関係、責任限度額、財政保証、時効、免責、また、実施にあたっての具体的な規則や手続については、国内法にゆだねている。
 この補足議定書において、損害とは、生物多様性の保全と持続可能な利用に対する重大な悪影響であって、科学的根拠に基づいて測定・観測可能なものをいうと定義されており、人の健康に対するリスクも考慮される。重大であるか否かは、変化の期間・質・量、生態系サービス(食料、水、木材、気候調節、汚水浄化、レクリエーションなど、人間が生態系から受ける恵み)の提供量の減少などの度合いに基づいて、各締約国の権限ある当局によって認定される。対象とされる損害は、輸入国において補足議定書が発効した後に国際移転されるLMOの、食料・飼料・加工向けの利用、封じ込め利用および開放環境での利用に起因し、その領域内で発生したものである。なお、非締約国からの移転とともに、非意図的な移転および国際不法移転に起因する損害も対象とされる。
 責任を負う事業者はLMOの管理者であり、許可保有者、市場投入者、開発者、生産者、通告者、輸出者、輸入者、運送者、供給者などが例示されている。とるべき対応措置としては、損害の防止・最小化・拡大防止・軽減などが示されており、とくに生物多様性の復原には、原状回復またはもっとも類似した状態の復原が原則とされ、それが不可能な場合には、同一または他の場所での代替回復措置が必要とされる。各締約国の権限ある当局は、責任を負う事業者およびとるべき対応措置を特定する。早急な対応措置が不可欠な場合で事業者が適切な措置をとらないときは、権限ある当局は、代執行し、当該事業者に費用を請求できる。[磯崎博司]

食料農業植物遺伝資源条約

生物多様性条約が対象とする生物遺伝資源は、おもに農業において利用されているため、国連食糧農業機関(FAO)の活動と深くかかわる。FAOは、生物多様性条約との調整を図りつつ、2001年11月3日に食料農業植物遺伝資源条約(食料及び農業に用いられる植物遺伝資源に関する国際条約)を採択した。食料農業植物遺伝資源条約は、共通のルールのもとで、食料農業用植物遺伝資源の利用の促進を図るための多国間制度を構築し、それらの遺伝資源の保全および持続可能な利用、ならびに、その利用から生じる利益の公正かつ公平な配分を通じて、持続可能な農業と食料安全保障を確保することを目的としている。
 その多国間制度は、35作物(アスパラガス、ビート、キャベツ類、ニンジン、イチゴ、柑橘(かんきつ)類、リンゴ、バナナ、イネ、ムギ、ヒエ、インゲンマメ、エンドウ、ササゲ類、カンショ、バレイショ、ナス、トウモロコシなど)および29属の飼料作物(マメ科やイネ科の牧草など)の種子、栄養体およびDNA等を対象としている。それらを利用して開発した成果物により商業上の利益を得た者は、当該成果物の他人による利用を制限している場合に限り、利益の一部をFAO信託基金に支払う。その資金は、開発途上国に還元され、遺伝資源の保全利用に使われる。
 なお、第21条に定められている遵守促進に関する手続とメカニズムについて、第4回管理理事会において枠組みが採択された。遵守委員会は、勧告を含み、一般的事項とともに遵守・不遵守についての個別事項に関する分析の統合報告書を管理理事会に提出することとされ、その報告の頻度は原則5年とされた。遵守委員会は14人以下で構成され、FAOの7地域からそれぞれ2人の推薦リストに基づいて選出される。[磯崎博司]

その後の動き

名古屋議定書は2014年に締約国が50に達し、発効した。2018年1月時点で104か国とヨーロッパ連合(EU)が締結している。日本も2017年5月に締結(同年8月発効)しており、これに伴う国内措置として「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針」(ABS指針)が施行された。
 ABSの手続きには、(1)遺伝資源の取得に際し、提供国の規制に従い、事前の情報に基づく提供国の同意(PIC:Prior Informed Consent)を得て、(2)提供者とのあいだで相互に合意する条件(MAT:Mutually Agreed Terms)を設定し契約を結び、(3)MATに従って、遺伝資源の取得や利益配分を行うというルールがある。ABS関連の情報を統合する機関として、ABSクリアリングハウス(ABSCH。生物多様性条約事務局がウェブ上で運営する国際情報交換センター。後述のABS指針では国際クリアリングハウスと表記)があるが、正式な手続きにより遺伝資源の取得が行われ、提供国政府がABSCHに申請を行った場合、国際遵守証明書(IRCC:Internationally Recognized Certificate of Compliance)が発行される。
 日本のABS指針では、次のような措置を定めている。提供国としては、日本に存在する遺伝資源の取得に際し、事前の情報に基づく同意を日本政府は要求しない。また利用国としては、(1)遺伝資源の取得者は、国際遵守証明書が国際クリアリングハウスのサイトに掲載されたら、その日から6か月以内に、適法取得の旨を環境大臣に報告する、(2)適法取得の国内外への周知として、環境大臣は(1)の報告の内容を、当該者の希望に応じて、環境省のウェブサイトに掲載し、国際クリアリングハウスに情報提供する、(3)環境大臣は(1)の報告からおおむね5年後に遺伝資源利用に関する情報提供を遺伝資源の取得者に求める(モニタリング)、(4)他の締約国から提供国法令違反の申立てがあった場合、環境大臣は、遺伝資源の取扱者に対し情報提供を求め、当該締約国に提供する。[編集部]
『日本自然保護協会編・刊『生物多様性条約資料集』(1993) ▽ウォルター・V・リード、ケントン・R・ミラー著、藤倉良編・訳『生物の保護はなぜ必要か――バイオダイバシティ(生物の多様性)という考え方』(1994・ダイヤモンド社) ▽ヴァンダナ・シヴァ著、高橋由紀・戸田清訳『生物多様性の危機――精神のモノカルチャー』(1997・三一書房/改訳・2003・明石書店) ▽農林水産省農業環境技術研究所編『農業環境研究叢書10 水田生態系における生物多様性』(1998・養賢堂) ▽磯崎博司著『国際環境法――持続可能な地球社会の国際法』(2000・信山社出版) ▽国際法学会編『日本と国際法の100年 第6巻 開発と環境』(2001・三省堂) ▽生物多様性政策研究会編『生物多様性キーワード事典』(2002・中央法規出版) ▽バイオインダストリー協会生物資源総合研究所監修、磯崎博司・炭田精造・渡辺順子・田上麻衣子・安藤勝彦編『生物遺伝資源へのアクセスと利益配分――生物多様性条約の課題』(2011・信山社出版)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
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