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矛盾【むじゅん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

矛盾
むじゅん
contradiction
2つの名辞命題間で,同一の要素を同一の観点からみた場合,同時に一方が肯定し他方が否定するとき,この両者の関係をいう。特に伝統的論理学では,全称肯定命題と特称否定命題,全称否定命題と特称肯定命題の関係をと呼んだ。上の定義形式論理学 (→三段論法 ) によるもので,アリストテレスにさかのぼり,伝統論理学も踏襲したものである。なお,現代論理学では要素命題がいかなる値をとってもである命題を矛盾的といっている。弁証法にあっては,矛盾は単に除去されるべき消極的なものではなく,発展の契機克服の対象として積極的にとらえられている。特に唯物弁証法にあっては,この矛盾が客観的事物のなかに存在していると考え,矛盾の発生やその克服を発展に不可欠の要素としている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

む‐じゅん【矛盾/矛×楯】
[名](スル)
ほこたて
《昔、中国のの国で、矛(ほこ)と盾(たて)とを売っていた者が、「この矛はどんなかたい盾をも突き通すことができ、この盾はどんな矛でも突き通すことができない」と誇ったが、「それではお前の矛でお前の盾を突けばどうなるか」と尋ねられて答えることができなかったという「韓非子」難一の故事から》二つの物事がくいちがっていて、つじつまが合わないこと。自家撞着(じかどうちゃく)。「発言の―を突かれる」「二人の話が―する」
論理学用語。
伝統的論理学で、二つの概念または命題が一定の事象を同一の観点から同時に、一方が肯定し他方が否定する場合の両者の関係。
命題論理学で、複合命題からなる論理式の各要素命題にいかなる真理値を与えても必ず偽となる式。
ヘーゲル弁証法で、概念の発展に必要不可欠な契機。

出典:小学館
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とっさの日本語便利帳

矛盾
矛と盾を商う者がいて、この盾の堅牢さは通すものなしと誉め、またこの矛の鋭利さは通さざるものなしと誇った。見物の人が問う「子の矛を以て子の盾を通さば如何?」。商う者には答えがなかった。韓非はここでは賢人権勢とが相容れないという「矛盾の」をなした。

出典:(株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」

世界大百科事典 第2版

むじゅん【矛盾 contradiction】
中国のつぎの故事に由来する語。〈楚の国に矛(ほこ)と盾(たて)を売る商人がいて,“この矛はどんな盾をも貫き,この盾はどんな矛も通さない”といったが,“では,その矛でその盾を突いたならば,どうなるか”と問われて返答に窮した〉(《韓非子》)。それゆえ,元来,つじつまのあわぬこと,筋の通らぬこと,あるいは物事が齟齬(そご)・対立することの意味に用いられてきたが,多くは論理的な意味で,あることを同時に肯定し,かつ否定することとして用いられる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

むじゅん【矛盾】
スル
ほこと盾たて。ぼうじゅん。
つじつまが合わないこと。物事の道理が一貫しないこと。撞着どうちやく論旨の-をつく 前後-した意見 昔、楚の国に矛と盾を売る者がおり、この矛はどんな盾をも貫き、この盾はどんな矛も通さないと言ったところ、それを聞いた人にその矛でその盾を突いてみよと言われ困ったという韓非子難一の故事から
contradiction
論理学で、二つの命題が相互に一方が真であれば他方は偽であり、一方が偽であれば他方は真であるという関係にあること。例えば「 A である」と「 A でない」。また、そうした二命題の連言命題。例えば「 A でありかつ A でない」。「反対(contrary)」とは区別される。
弁証法で、相互に排除し対立しあいながら連関しあう二契機の間の関係。
武器をとって戦うこと。敵対すること。 -ニ及ブ/日葡

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

矛盾
むじゅん
contradiction
矛盾ということばは、いかなる盾(たて)をも突き通す矛(ほこ)と、いかなる矛をも防ぐことができる盾が同時に存在することはありえない、という中国の故事から発している。このように、同時に成り立つことができない二つの命題は互いに矛盾しているといわれる。また、命題「A」と命題「Aでない」が同時に導かれる場合に、矛盾がおきたということもある。
 矛盾は二律背反という形で古代から知られていた論理学上の現象であったが、19世紀末以来発展してきた近代論理学と、それに基づく数学基礎論の出現によって、矛盾という問題は重大化してきた。すなわち、「それ自身をメンバーとして含まない集合の集合」はそれ自身に含まれると同時に含まれない、というラッセルの二律背反の発見によって、数学とくに集合論が本当に矛盾するかどうか、矛盾するとするならば、いかにそれを回避できるかということが、数学基礎論の直面する基本的問題として提起されるに至った。そして、算術、集合論といった公理系が矛盾しない、つまりその無矛盾性の証明が企てられるようになった。
 しかしながら、矛盾は数学その他の証明において絶えず用いられていることを忘れてはならない。たとえば、ある命題から矛盾が導かれるならば、その命題は否定されるという背理法がその例である。[石本 新]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

ぼう‐じゅん【矛盾】
〘名〙 (「ぼう」は「矛」の漢音) ほことたて。転じて、つじつまの合わないこと。むじゅん。
※評判記・色道大鏡(1678)九「師の道をわすれ鳳子をしたはず、彌矛盾(バウジュン)となれり」

出典:精選版 日本国語大辞典
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故事成語を知る辞典

矛盾
事の前後が食い違うことのたとえ。つじつまの合わないことのたとえ。

[使用例] 君なぞはせんだっては刑事巡査を神のごとく敬い、また今日は探偵をスリ泥棒に比し、まるで矛盾の変怪だが[夏目漱石*吾輩は猫である|1905~06]

[使用例] 「昨日のこと、覚えてるわね?」何気ない声でお母さんが言うけど、緊張が感じられた。昨日は忘れろって言ったのに、今日はそう聞いてくる。ムジュンしてる[辻村深月*ぼくのメジャースプーン|2006]

[由来] 「韓非子なん一」に出てくる話から。その昔、中国のの国に、たて(剣や矢を受け止める防具)とほこ(剣の一種)を売っている人がいました。彼は、「私の盾は堅くて、どんな矛も突き破ることはできない」と言う一方で、「私の矛は鋭くて、どんな盾でも突き破ることができる」とも宣伝しています。そこである人が、「の矛をもって子の楯(盾)をとおさば、何如いかん(おまえさんの矛でおまえさんの盾を突いたら、どうなるのか)」と尋ねると、その商人は答えに詰まってしまったということです。

[解説] ❶この話は、「韓非子」では、儒学者を批判するためのたとえとして使われています。儒学者は、ぎょうと、彼の後を継いだしゅんという二人の聖王を崇拝していますが、本当に堯が聖王だったのならば、その直後の舜は何もする必要がなかったはずだし、舜が聖王だとすれば、堯の政治が至らなかったということになる、というわけです。❷現在では、広く「つじつまが合わない」ことを指して使われる、一般語となっています。その一方で、同時には成り立たない二つの命題の関係を指す、論理学の用語にもなっています。応用範囲の広さでは、故事成語の中でも一級でしょう。

出典:故事成語を知る辞典
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