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石油産業【せきゆさんぎょう】

世界大百科事典 第2版

せきゆさんぎょう【石油産業】
原油の探鉱・開発を行い,また採掘,輸送,精製を行って,消費者に石油製品を供給する産業。とくに,探鉱・開発,採掘,輸送を上流部門(アップ・ストリーム),精製を下流部門(ダウン・ストリーム)ということがある。
【国際石油産業の沿革】

起源と展開]
 世界の石油産業の起源は,1859年にアメリカのペンシルベニア州タイタスビルTitusvilleで,石油会社の技師ドレークEdwin Laurentine Drake(1819‐80)が綱式さく井法による石油の生産に成功したことにさかのぼる。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

石油産業
せきゆさんぎょう

石油産業は、地中に埋蔵されている原油を探査・発見し(探鉱)、生産設備やインフラストラクチャーを整備し(開発)、採掘(生産)する上流部門up streamと、採掘された原油をパイプラインやタンカーで消費国(地域)まで輸送し(輸送)、製油所で精製して各種の石油製品をつくり(精製)、消費者の手元まで輸送して販売する(販売)下流部門down streamの二つによって構成されている。

 石油企業は、探鉱、開発、生産、輸送、精製、販売事業のそれぞれを担当する場合もあるが、国際的規模で活躍する巨大企業についてみると探鉱から製品販売までを経営する一貫操業会社の形態をとっているのが一般的である。第二次世界大戦前までは、精製部門すなわち製油所は原油産地または周辺地域に集中し、石油製品が消費地に輸送されるという産地精製方式が主流となっていたが、戦後は、原油を大型タンカーで直接消費地まで輸送し、そこで精製するという消費地精製方式が一般的となった。

 原油は、製油所で蒸留、分解されると、沸点の差によって、LPG、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料、灯油、潤滑油、重油(A・B・C)、アスファルトなど各種の石油製品となる。ガソリン、LPG、軽油(ディーゼル)は自動車用、軽油や重油は船舶用、ジェット燃料は航空機用など、いずれも輸送用燃料となり、重油は工場や火力発電所用の燃料、LPGや灯油は家庭用燃料としてそれぞれ使用される。また、ナフサは石油化学用原料となり、合成樹脂、合成繊維、合成ゴム、肥料、医薬品、化粧品など各種の化学製品に転換される。一般に、アメリカでは自動車用のガソリンなど軽質製品中心の消費構造を示し、日本では工場や発電所用のC重油が需要の中心となり、ヨーロッパでは暖厨房(だんちゅうぼう)用の灯油や軽油の占める比率が高くなっている。しかし、1970年代以降の原油価格の高騰によって、石炭、天然ガス、原子力などの競合エネルギーが主として工場用、発電用、家庭用のエネルギー市場に進出したため、全般的に重油、軽油、灯油需要が停滞し、各国ともガソリンの比率が高まる市場の軽質化傾向を示している。

 いずれにしても、石油産業は20世紀後半の最大のエネルギー産業であり、21世紀初頭のシェール革命を経て歴史的な転機を迎えつつも、今後もその地位を維持するものと考えられる。

[矢田俊文]

石油産業の歴史

急速な発展と独占の形成

石油産業は、1859年にE・L・ドレークがアメリカのペンシルベニア州で石油の採取に成功して以来、本格的に発展した。19世紀後半に照明用や機械の潤滑用として使われていた石油も、20世紀に入って船舶用および自動車用燃料市場の確立とともに、需要が飛躍的に拡大した。19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパ資本によるバクー油田の開発によって、一時ロシアが生産の中心をなしていたが、その後テキサス、東テキサス油田が開発されて、アメリカの生産が急速に伸び、1910年代から1950年代まで約半世紀の間最大の石油産出国としての地位を維持し続けた。

 しかし、1930年代以降のソ連の生産の回復とベネズエラの本格的開発、1940年代に入ってからの中東の急増産などによって、アメリカの地位は漸次低下し、1960年代に中東にトップの座を譲った。さらに、1960年代にアフリカが重要な産地として登場し、1970年代には北海、アラスカ、メキシコ、中国での開発が軌道に乗った。かわって、社会主義が崩壊した旧ソ連諸国と多国籍軍の爆撃で施設を破壊されたイラクは、ともに1990年代に入って生産が激減した。しかし、これらの減産はサウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦など主力産油国の増産によって、1980年代後半以降ふたたび漸増傾向で推移した。

 2017年では、世界の原油生産量は、日産9264万9000バレル(1473万キロリットル)で、そのうち、サウジアラビア、イラン、イラク、アラブ首長国連邦、クウェートなどのペルシア湾岸(中東、34.1%)が最大の生産地域で、アメリカ、カナダ、メキシコの北アメリカ(21.7%)、ロシア、カザフスタンなどのCIS(独立国家共同体)諸国地域(15.4%)、ナイジェリア、アンゴラ、アルジェリア、リビアなどのアフリカ(8.7%)、中国、インドネシア、インド、マレーシア、タイ、ベトナム、オーストラリアなどのアジア太平洋地域(8.5%)、ブラジル、ベネズエラ、コロンビアなどの中南米(7.8%)、ノルウェー、イギリス、デンマークなどのヨーロッパ(3.8%)と続く。国別ではアメリカ(14.1%)がもっとも多く、続いてサウジアラビア(12.9%)、ロシア(12.2%)、イラン(5.4%)、カナダ(5.2%)、イラク(4.9%)、アラブ首長国連邦(4.2%)、中国(4.2%)の順となっている。

 こうした主産地の移動を内包しつつ急速に発展した石油産業の歴史は、他面ではアメリカや西ヨーロッパ諸国に本拠を置く巨大な独占石油資本の形成の過程であり、また、これに対する産油国の側の「資源ナショナリズム」に基づく抵抗の歴史でもあった。

 第二次世界大戦前においては、ベネズエラ、インドネシア、中東などアメリカやソ連を除く重要な石油資源をめぐる資本間の激しい競争と妥協のなかで、資源の共同所有体制が確立し、これを基盤にして生産、市場、価格など全面的な独占体制がつくりあげられた。メソポタミア地方の石油利権に関する1928年のレッド・ライン協定、三大石油会社による1928年のアクナカリー協定、さらには長い間維持されてきた価格形成における基準地点制度basing point systemなどが巨大な国際石油カルテルの存在を示すものであり、エクソン、モービル、ソーカル、ガルフ、テキサコ、シェル、BPのセブン・シスターズとよばれる国際石油資本がこれを支えた(その後7社は統合を繰り返し、2008年現在エクソンモービル、シェブロン、ロイヤル・ダッチ・シェル、BPのスーパー・メジャー4社に集約されている)。

[矢田俊文]

第二次世界大戦後の展開

第二次世界大戦後、中東における相次ぐ大油田の開発とともに生産が急増すると、国際石油カルテルは戦前とは別の形態をとって維持された。それは明確な生産や市場協定の形をとらず、メジャー間の産油会社の共同支配を通じて世界的な需給を調整することであり、ソ連石油の輸出攻勢や独立系資本の進出に対抗して価格を安定的かつゆっくりと引き下げることであった。この過程で、高度成長に伴って急速に拡大しつつあった西ヨーロッパや日本のエネルギー市場に、石油が石炭を駆逐しながら進出し、本格的な「エネルギー革命」をもたらした。

 輸入工業製品価格の上昇と輸出原油価格の低下というギャップの増大、および石油市場の拡大による原油資源の急激な減耗は、産油国の不安と不満を募らせた。産油諸国は、1960年結成のOPEC(オペック)(石油輸出国機構)を通じて価格引上げと事業参加要求を強め、1973年10月の第四次中東戦争の際に大幅な原油価格の引上げを実現するとともに、価格決定権自体を国際石油資本から奪うことに成功した(第一次石油危機)。さらに、1979年のイラン革命を契機にふたたび大幅に原油価格を引き上げ、資源保全の必要から生産の抑制を強めた(第二次石油危機)。この間、産油各国で産油会社への事業参加や国有化が進み、ほとんどの産油国で国営会社による産油部門の掌握が完了した。

 主要産油国での国有化の進展によって、世界の原油生産や価格決定における産油国政府の主導権が確立する一方で、産油量や価格決定をめぐる産油国間の意見の違いもより鮮明となり、OPECのカルテル機能が低下した。その結果、1981年に1バレル当り40ドルもあった基準原油(アラビアン・ライト)価格は15~20ドルと大幅に低下し、1990年代に入ってもそのレベルを維持していた。これに加え、石油危機後の省エネルギーの進展による需要の低迷、原子力や天然ガスなど代替エネルギーの比重の増大、非OPEC原油の増産などもあって、OPECの世界のエネルギー供給に占める地位は低下した。2000年代に入ると、中国、インドなどにおけるエネルギー需要の急増などもあり、世界における石油エネルギー供給量は構造的な不足状況となり、基準原油価格は上昇、2008年には100ドルを超えるケースも出現した。その後リーマン・ショックによる需要の低迷や中国経済停滞などで、おおよそ100ドルを割り込むかたちで推移している。

 OPECの産油部門からの撤退を余儀なくされた国際石油資本は、アラブ首長国連邦、ナイジェリア、インドネシアなどで産油活動を続けるとともに、サウジアラビアなどで技術や管理運営面での支援を行って、原油の確保を行う一方、アラスカや北海など非OPEC地域に投資の重点を移していった。また、精製・販売などの下流部門の掌握を引き続き行うことによって、先進国の石油産業での寡占的地位を保持している。

[矢田俊文]

日本の石油産業

ところで、日本の石油産業は、原油を海外から輸入して精製、販売する下流部門にほとんど限定されており、こうした世界石油産業の変転の影響を強く受けやすい。

 1949年(昭和24)の占領軍による太平洋岸製油所再開許可とともに、日本の主要な石油会社は、資本、資金、技術、原油供給など全面的に国際石油資本と提携し、その傘下に組み込まれた。その後、1950年代後半以降の高度成長と「エネルギー革命」によって石油市場が急速に拡大し、日本の石油産業は著しく成長した。この間、政府の政策的支援もあって、国際石油資本と資本的に結合していない「民族系」企業の地位が上昇し、「外資系」企業とほぼ互角の力をつけるに至った。

 しかし、石油危機以降の需要の停滞によって設備過剰が深刻化し、また、企業間競争もいっそう激化したため、業界の大幅な再編成が進んでいる。国際石油資本系列では、エッソ・モービル系が提携を強めるとともに、シェル系も昭和シェル石油として一本化した。かつて、カルテックス系(ソーカルとテキサコ系)であった日本石油系も国際石油資本系列から離脱し、三菱石油との提携を強め、1999年(平成11)4月に合併、日石三菱(2002年新日本石油に改称)となるとともに、民族系も出光(いでみつ)のほか、ジャパンエナジー系、コスモ石油(かつての大協石油と丸善石油)などに集約化した。産油国からの原油の輸入も、国際石油資本からのものは約4分の1程度と石油危機以降大幅に低下し、商社などを経由した産油国政府国営会社からのものが約3分の2を占めている。

[矢田俊文]

その後の動き

21世紀に入り、国内人口の減少やエコカーの普及などで、日本の石油製品需要は毎年1~2%ずつ減退し、全国の給油所数も約3万2000か所とピーク時の半分程度に減った。国内の過剰な生産設備を再編し、ナフサなど付加価値の高い製品製造を促すため、経済産業省は2009年(平成21)にエネルギー供給構造高度化法(正式名称「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」、平成21年法律第72号)を施行。同法に基づく第1次告示(目標達成期限2014年3月末)、第2次告示(同2017年3月末)、第3次告示(同2022年3月末)で、競争力の低い製油所の閉鎖や精製効率の上昇を促している。これを受け、ガソリンなどの石油製品を精製・販売する石油元売り企業は、激しい安売り競争による低収益体質の改善を目ざし、急速に再編が進んだ。昭和50年代後半に、国内に16社(日本石油、三菱石油、九州石油、日本鉱業、共同石油、出光興産、昭和石油、シェル石油、東燃、ゼネラル石油、エッソ石油、モービル石油、三井石油、大協石油、丸善石油、太陽石油)あった元売り企業は、2017年時点で、(1)日本石油、日本鉱業、東燃、ゼネラル石油、エッソ石油、モービル石油などが統合したJXTGエネルギー、(2)出光興産・昭和シェル石油グループ(2019年4月に経営統合)、(3)大協石油と丸善石油が合併したコスモ石油、(4)太陽石油、の4グループに集約した。また各グループは精製・製造設備の集約・効率化と同時に、電力小売り、ガス小売り、燃料電池車向けの水素事業などの非化石・新エネルギー事業への進出・育成に取り組んでいる。

[矢野 武 2018年12月13日]

『米国連邦取引委員会編、諏訪良二訳『国際石油カルテル』(1959・石油評論社)』『産業学会編『戦後日本産業史』(1995・東洋経済新報社)』『井口祐男編『4極化した石油産業――新体制下の元売販売戦略』(2000・オイル・リポート社)』『石油通信社編・刊『石油50年の歩み』(2005)』『水戸考道著『石油市場の政治経済学――日本とカナダにおける石油産業規制と市場介入』(2006・九州大学出版会)』『資源エネルギー庁長官官房総合政策課編『総合エネルギー統計』平成16年度版(2006・通商産業研究社)』『経済産業省経済産業政策局・資源エネルギー庁編『資源・エネルギー統計年報 石油・コークス・金属鉱物・非金属鉱物』各年版(経済産業調査会)』『『石油資料』各年版(石油通信社)』『重化学工業通信社編・刊『日本の石油化学工業』『アジアの石油化学工業』各年版』『日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編『EDMC/エネルギー・経済統計要覧』各年版(省エネルギーセンター)』

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