●硫黄【いおう】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
硫黄
いおう
sulfur
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デジタル大辞泉
いおう〔いわう〕【硫‐黄】
[補説]古くは「ゆわう」と発音し、「ゆあわ(湯泡)」の音変化したものか。
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ゆおう〔ゆわう〕【硫=黄】
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岩石学辞典
硫黄
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栄養・生化学辞典
硫黄
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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典
いおう【硫黄】
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世界大百科事典 第2版
いおう【硫黄 sulfur】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
硫黄
いおう
sulfur
周期表第16族に属し、酸素族元素の一つ。古くはsulphurの文字も使われたが現在ではsulfurに統一されている。天然に遊離の状態で産出するため古くから知られ、古代でも硫黄を燃やした煙でいぶす消毒法が行われたという。その後も医薬や火薬として用いられた。名称はサンスクリットの「火の元」を意味するsulvereからきたラテン語のsulphuriumに由来する。硫黄を元素として正しく認識したのは18世紀後半フランスのA・L・ラボアジエである。
[守永健一]
存在
地球上に広く多量に存在し、火山地方に遊離の状態で産出するものは土硫黄(どいおう)とよばれる。アメリカのルイジアナ州やテキサス州、イタリアのシチリア島などがおもな産地で、日本では岩手県の松尾鉱山が最大のものであった(1969年廃鉱)。火山ガス、鉱泉、温泉などにも硫化水素H2S、二酸化硫黄SO2および硫酸H2SO4の形で含まれている(
)。そのほか化合物としては、硫化物(黄鉄鉱FeS2、閃(せん)亜鉛鉱ZnSなど多数)や硫酸塩(石膏(せっこう)CaSO4・2H2Oなど)として存在する。また、石油中にも各種化合物として存在し、その量は産地によって異なるが、およそ0.05~5%含まれる。硫黄は生物界においても重要な元素で、ある種のタンパク質やアミノ酸に含まれる。また、植物体中にも存在している。植物の炭化によって生じた石炭には1~1.5%含まれている。[守永健一]
製法
天然に産出する硫黄は、土砂、石膏などが混じって不純である。純粋な硫黄を得るためには、まず混在物から粗硫黄を分離し、これをさらに精製する。現在では天然ガスおよび石油から回収されるものがほとんどである。
[守永健一]
粗硫黄の分離
日本で多く行われているのは焼取法で、鉱石を鉄窯(てつがま)に入れて石炭などで熱し、溶融した硫黄を土質と分けて取り出す。メキシコ湾岸一帯では地下の硫黄鉱床に鉄管を通じ、過熱水蒸気を送って硫黄を溶かし、圧縮空気によってこれを地表に汲(く)み上げるフラッシュ法が行われている。この方法は鉱床と採取規模が大きく、生産額は世界の90%以上を占めており、純度も99.5%以上のものが得られている。またイタリアでは、土硫黄の一部を燃やし、その熱で大部分の硫黄を融解して取り出すカルカローニ法が行われている。
[守永健一]
粗硫黄の精製
室温で二硫化炭素に溶かし、氷冷して再結晶するか、昇華法あるいは蒸留法が用いられる。蒸留法では鉄製のレトルト中で硫黄を溶融し、発生する蒸気を冷却室に導いて冷やし、細粉状の固体とする。これを硫黄華という。冷却室の温度を高くすれば液状のものが捕集され、これを鋳型に入れて棒状硫黄として販売する。
[守永健一]
石油からの硫黄の回収
今日では、石油精製そのほかの副成品からの回収による方法が多くなっている。重油の直接脱硫による方法で、高純度のものが多量に得られるようになった。重油中の硫黄はチオールRSH、チオフェンC4H4Sなどの形で炭素と結合している。触媒を用い水素を吹き込んで400℃、150気圧で反応させ、硫化水素として追い出す(これにより重油中の硫黄含量約4%を0.2%にまで下げることができる)。硫化水素は一部を燃焼させて、二酸化硫黄の気体とし、残りの硫化水素とボーキサイトなどの触媒上で反応させて硫黄を回収するIG‐クラウス法が行われる。
[守永健一]
性質
常温で黄色の非金属性固体で、多くの同素体がある。天然の硫黄は、同位体32S、33S、34S、36Sの混合物で、32Sが95%を占める。95.5℃以下で安定な斜方晶系硫黄はα(アルファ)硫黄(Sα)ともいわれ、硫黄華を二硫化炭素に溶かし、常温で放置するとき得られる結晶。すべての硫黄は放置すると、このα硫黄になる。95.5℃以上で安定な単斜晶系硫黄はβ(ベータ)硫黄(Sβ)といわれる。普通の硫黄を融解してから固化すると得られる針状結晶であり、二硫化炭素に溶ける。どちらも硫黄原子の8員環(S8分子)ができているが、βは配列に乱れがある構造となっている(
)。Sαを徐々に熱すると、Sβを経て119℃で融解し、液状の黄色いλ(ラムダ)硫黄(Sλ)となる。さらに加熱すると160℃以上で褐色のμ(ミュー)硫黄(Sμ)となる( )。液状硫黄は初めのうち温度とともに粘性が増すが、200℃を超すとふたたび流動性を回復する。褐色の液状硫黄を冷水中に注ぐと、濃褐色の弾性を有するゴム状硫黄が得られる。これはμ硫黄の過冷却状態のものである(純度の高い硫黄から得られたゴム状硫黄は常温では黄色となる)。この他150℃以上で融解した硫黄をゆっくりと冷却するか、エタノール、二硫化炭素などの熱濃溶液を冷却するとγ(ガンマ)硫黄(Sγ)が得られる。零下78℃で二硫化炭素から結晶させるとδ(デルタ)硫黄(Sδ)が得られる。Sγは淡黄色結晶で真珠硫黄ともよばれる。Sδは黄色六角板状晶で、比重2.182(零下110℃)。39℃で分解する。その他δよりも多い多員環のcyclo-Snも各種の方法でつくられており、n=10、12、18、20などがよく知られている。いずれも黄色結晶。cyclo-Snの環が切断されて鎖状となったcatena-Snも知られており、Sの鎖が20万を超すものもあるとされている。液体の硫黄をさらに加熱すると444.674℃で気体となるが、その蒸気中には各種のSn分子が存在する。600℃まではS8分子がもっとも多く、ついでS6、S7などであり、蒸気の色は緑である。620~720℃ではS7、S6が多くなり、S2、S3、S4なども増えてくる。720℃以上ではS2が主となる。これらの蒸気は紫色である。この蒸気を液体窒素の温度まで冷やした表面に凝縮させると非晶質の無定形硫黄が得られる。電気の不導体で摩擦すると帯電する。高温になるほど解離して、2000℃では単原子のSとなる。いずれも水には不溶であるが、二硫化炭素、ベンゼンその他の有機溶媒に溶ける。硫黄は化学的にかなり活発な元素で、とくに高温ではきわめて反応性が高い。金、白金以外のたいていの金属と反応し、硫化物をつくる。水素、炭素、塩素などの非金属と反応して、硫化水素、二硫化炭素、二塩化二硫黄などを生じる。酸素とは大きな親和力をもっていて、空気中で熱すると370℃で発火し、青い炎をあげて燃え、二酸化硫黄(俗称亜硫酸ガス)となる。亜硫酸塩に溶けてチオ硫酸塩を生じ、水酸化ナトリウムの熱溶液に溶けると、硫酸塩と硫化物を生じる。このとき硫黄が多いと、ポリ硫化物Na2Sx(x=2~5)となる。化合物中における硫黄の酸化数は、おもに-Ⅱ、+Ⅳ、+Ⅵである。-Ⅱの化合物として重要なのは硫化物、+Ⅳでは二酸化硫黄およびその誘導体、+Ⅵでは三酸化硫黄、硫酸およびその誘導体である。いずれも悪臭を有し毒性がある。
[守永健一]
用途
世界的には、硫酸原料として使用されるものがもっとも多いが、日本では医薬品などの原料である二硫化炭素の製造が多く、紙パルプ工業での用途がこれに次いでいる。無機薬品製造用として亜硫酸塩、酸化クロム、クロロ硫酸、酸化リン、硫化鉄、硫化水素ナトリウムなどがあり、そのほか火薬、マッチ、抜染(ばっせん)剤、ゴム加硫剤、水産食品用など、きわめて広い用途がある。
[守永健一・中原勝儼]
薬用
日本薬局方名のイオウは、純度99.5%以上、淡黄色あるいは黄色の無味無臭の粉末である。温泉場でとれる湯の華(はな)(硫黄華)もこれである。従来、日本薬局方では製法により昇華イオウ、精製イオウ、沈降イオウに分けられていたが、現在はイオウに統一された。寄生虫性皮膚疾患やにきび、脂漏、慢性湿疹(しっしん)に、軟膏(なんこう)、懸濁液(ローション)として3~10%の濃度で使用される。腸内細菌の作用で硫化水素を生成し、またアルカリ性の腸液によって硫化アルカリとなり、腸管の蠕動(ぜんどう)を促進するところから、緩和な下剤として用いられる。イオウを含む薬剤には、複方ダイオウ・センナ散、イオウ・カンフルローション、イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏などがある。
[幸保文治]
人体と硫黄
人体に約112グラム含まれる重要な無機質の一つで、アミノ酸、ビタミン、ホルモンなど各種の化合物の構成元素となっている。とくにタンパク質では、メチオニンをはじめ、シスチン、システインなど、一連の含硫アミノ酸中に含まれる。栄養上、これらは重要なアミノ酸で必須アミノ酸(ひっすあみのさん)とよばれ、食事から一定量とる必要がある。食品中ではネギ類に、その特有の辛味成分、またにおいの成分として、硫黄の化合物が含まれている。これらは、消化器を刺激し、食欲を増すとともに、ビタミンB1の吸収をよくするなどの働きがある。
[河野友美・山口米子]
『糸川嘉則編『ミネラルの事典』(2003・朝倉書店)』
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精選版 日本国語大辞典
いおう いわう【硫黄】
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いおん【硫黄】
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ゆおう ゆわう【硫黄】
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化学辞典 第2版
硫黄
イオウ
sulfur
S.原子番号16の元素.電子配置[Ne]3s23p4の周期表16族非金属元素.原子量32.065(5).天然には質量数32(94.99(26)%),33(0.75(2)%),34(4.25(24)%),36(0.01(1)%)の安定核種元素が存在し,ほかに質量数26~49の放射性同位体がある.硫黄は古くから知られていて,旧約聖書やホメロスのオデュッセイアにも出てくる.英語名はラテン語のsulpurからで,さらにその語源は火の元素を意味するサンスクリット語sulvereといわれている.宇田川榕菴は天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で,須爾扶尓(シュレフュル)としている.「硫黄」は「ゆあわ」から変化した当て字とされる.
火山地方では遊離硫黄,硫化水素,二酸化硫黄として,地殻中では硫化物,硫酸塩として,また原油中では有機硫黄化合物として広く存在する.生体内にも有機化合物の成分として含まれる.融点115.21 ℃,沸点444.72 ℃.資源としては硫化鉱の精錬,天然ガスや石油の脱硫で副産する.精製は二硫化炭素からの再結晶か,固体のまま昇華させる.同素体の数がきわめて多く,主要なものとしては固体では斜方晶系硫黄(α硫黄),単斜晶系硫黄(β硫黄)が知られており,そのほか三方晶系硫黄もある.斜方晶系硫黄は最安定型で,16個の S8 からなる結晶単位格子をもつ黄色の結晶で,95.2 ℃ で単斜晶系硫黄に転移し,119.0 ℃ で融解する.α硫黄の融点は112.8 ℃.液体ではλ硫黄,μ硫黄が知られており,前者は硫黄を加熱融解すると最初にできる黄色の流動性液体で,157 ℃ 以上ではおもに後者を多く含む粘性度の高い濃褐色の液体となる.また気体では,王冠形 S8 分子に S6,S4,S2 などの分子が共存している.その他,γ硫黄,δ硫黄,無定形硫黄も知られている.密度はα 2.07 g cm-3(20 ℃),β 1.957 g cm-3(20 ℃).第一イオン化エネルギー10.360 eV.電気の不導体.水,無機酸に不溶であるが,各種有機無機溶媒に易溶.酸化数-2~6.S-Ⅱ,SⅣ,SⅥ化合物が多い.常温では反応性に乏しいが,高温では多くの非金属および金,白金,イリジウムを除く金属元素と直接反応し硫化物(S-Ⅱ化合物)を与え,その挙動は酸素に似ている.約250 ℃ で空気中で発火する.有機酸,アルコール,アルデヒド,エーテルなどの酸素を硫黄で置換した多数のチオ化合物が知られているが,どれもかなりの悪臭を有し,有毒である.硫黄はとくにカテナ化する傾向が強く,ほかのカルコゲンにはみられない化合物である.ポリ硫化イオン Sn2-,スルファン(sulfane)XSnX(XはH,ハロゲン,-CN,-NR2など),ポリチオン酸HO3S-Sn-SO3Hとその塩などがある.
硫黄はすべての生物に必要で,下等生物では単体硫黄,硫化物,亜硫酸塩,硫酸塩,チオ硫酸塩などの形で利用し,システイン,シスチン,メチオニンなどのアミノ酸をはじめ,そのほか多くの含硫有機化合物がすべての生物に利用されている.硫酸,二硫化炭素をはじめ種々の硫黄化合物の原料,肥料,農薬,医薬品などの製造に,弾性ゴムの加硫に用いられる.[CAS 7704-34-9]
出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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旺文社日本史事典 三訂版
硫黄
いおう
S
古来薬用や烽火 (のろし) などに利用。中世には火薬・付木 (つけぎ) 用として日明・日朝貿易の重要輸出品となる。当時のおもな産地は大隅国(鹿児島県)硫黄島。江戸時代は国内需要も多くなり,各地で生産された。
出典:旺文社日本史事典 三訂版
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金澤利明 竹内秀一 藤野雅己 牧内利之 真中幹夫
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