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禁忌(俗信上の禁止事項)【きんき】

日本大百科全書(ニッポニカ)

禁忌(俗信上の禁止事項)
きんき

俗信上の禁止事項。ポリネシア語のタブー(taboo, tabu)にきわめて近い内容をもつ。別に信仰上の禁止事項を物忌(ものい)みといい、両者をあわせて忌みという。日本語の場合、忌みと物忌みとの区別が明確でなく、禁忌とさえも混同して使われることがあるが、物忌みは宗教的な戒律であり、禁忌は本来、生活の知恵というべきものである。

 柳田国男(やなぎたくにお)は、各地に伝承されている禁忌関係資料を、土地の忌み、物の忌み、忌まれる行為、忌まれる日時、忌まれる方角、忌みことば(忌詞)の六つに分類した。土地の忌みには、そこを耕すとなにかよくないことがあるとか病気になるとかいうケチ田、病(やまい)田、そこで転ぶと3年のうちに死ぬという三年坂などがあり、物の忌みには、触るとおこり(マラリア)になるというおこり石、知らずに小石を投げつけると鼻血が出るという鼻血石などがある。忌まれる行為には、葬式を連想するために忌まれるものが多い。ご飯のおかわりをせず1杯だけ食べるのを忌むのは、枕飯(まくらめし)を連想するためであり、水に湯を入れるのを逆さ水といって忌むのは、死体の湯灌(ゆかん)のときの作法だからである。そのほか正月に餅(もち)を食べない家例(かれい)とか、庭にビワを植えない、ブドウを植えないなどの禁忌がある。忌まれる日時や方角に関しては、陰陽家(おんみょうか)の広めたものが多い。友引の日は友を引くからといって葬式を忌み、仏滅は先祖をたいせつにしないといって婚礼を避けたりするのは、日本風の曲解に基づく。家を建てるときや旅立ちや転居にあたって、方角を気にする人はいまも多い。忌みことばには、狩人(かりゅうど)、山仕事をする人、鉱山で働く人たちが、山で使っていけないとされている山ことば、漁師などが沖で使わない沖ことば、夜は使わない夜ことば、正月に使わない正月ことばなどがある。使わないのでは不便なので、言い換えのことばがある。猿のことを山の人、鰯(いわし)をコマモノ、塩を浪(なみ)の花、鼠(ねずみ)を上の姉様(あねさま)などといったりする。

 以上は形式的な分類であるが、禁忌の本質を見極めるためには、より進んだ分類が必要である。食べてすぐ横になると牛になる、というような直接連想によるもの、シュロの木は鐘つき棒にするものだから庭に植えない、のように寺から葬式を連想する間接連想によるもの、尾根先に家を建てるなというような経験知識によるものがある。八月十五夜と九月十三夜の片方だけ祭るのを片見月といって忌むなどは、完結性がないとか対照的でないとか、心理的な要因によるものである。

[井之口章次]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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