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空間知覚【くうかんちかく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

空間知覚
くうかんちかく
space perception
一般的には,上下,左右,前後の広がりに関する体験をもつことをさす。こうした体験のうちには,事物の形,大きさ,長さ,あるいはそれらの存在する方向,場所,ないしは事物までの距離や事物相互間のへだたりなどの知覚が含まれる。こうした広がりに関する体験が,おもにどの感覚系に依存して現れるかに応じて,視空間聴空間触空間などが区別される。通常,視覚系による空間把握が優位となることが多い。しかし,各種感覚系と運動系とは多かれ少なかれ相互に関連し合い,組織化されて,統合的に空間把握が行われていると考えられる。1つあるいはそれ以上の感覚系に障害がある場合,その空間知覚は特殊なものとなる。空間知覚がいかにして成立するかという問題に関しては,先天説と経験説との間に長い論争の歴史があり,現在でも未知の部分を多く残している。 (→奥行知覚 , 形の知覚 )  

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デジタル大辞泉

くうかん‐ちかく【空間知覚】
視覚聴覚触覚などによって空間的広がりを認識する作用。形・大小・方向・位置・距離がその対象となる。空間認知空間覚

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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日本大百科全書(ニッポニカ)

空間知覚
くうかんちかく
space perception

対象の位置、方向、大きさ、形、距離についての知覚。つまり、空間的特性の知覚をいう。空間知覚に関係する受容器は、視覚、聴覚、触覚、運動および平衡感覚、嗅覚(きゅうかく)などで、これらに対応する知覚空間として、視空間、聴空間、触空間などがあるが、実際には、いろいろな感覚器官が協働して空間知覚を成立させている。たとえば、垂直線の知覚では視覚的要因のほかに、重力方向による要因や身体の位置の要因などが協働している。知覚空間は有限で非均等、非等方であり、これを知覚空間の異方性という。正方形はやや縦に長く見え、垂直方向の線分の長さは、水平方向の同じ線分よりも過大視される。

 知覚空間では一般に水平方向、垂直方向、前後方向などの主要方向は、いろいろな点で他の方向と異なり特殊な重みをもっているので、これらの主要方向のいずれかと対象の主軸とが一致するとき、その対象の知覚は安定し、知覚の誤差も小さい。たとえば錯視図形の主線が空間の垂直・水平方向と一致する場合、錯視量は減少する。対象あるいは自己を、空間に位置づけて知覚することを「定位」という。知覚空間の形状はまた自己を基準として成立し、対象は自己を基準とする空間に定位される。これを自己中心的定位という。自己中心的な空間知覚が生じやすいのは、一つの対象だけが提示され自己と対象との間の関係が問題となる場合や、空間がきわめて広く未分化、一様で不安定な場合である。多くの対象が同時に知覚される空間、狭い安定した空間では、空間は自己と独立した外界として知覚される。この場合の定位の基準は自己ではなく、空間の座標である。このような座標を空間的枠組みという。

[今井省吾]

奥行知覚

観察者から対象までの距離、および対象間の知覚をいう。平面図形や絵などが立体的に見えることも奥行知覚であるが、この場合はとくに実体鏡視という。視覚による奥行知覚の規定要因には、生理的要因と経験的要因とがある。生理的要因としては、(1)眼球の水晶体の調節、(2)両眼の輻輳(ふくそう)、(3)両眼の視差、(4)観察者または対象の運動によって生じる運動視差がある。また、経験的要因としては、(1)対象の重なり、(2)対象の相対的大きさの違い、(3)対象の遠近法による空間的配置、(4)対象の明瞭(めいりょう)さ、色調の違い、(5)陰影、明暗、(6)肌理(きめ)の密度の勾配(こうばい)がある。

 奥行知覚は生得的なものか経験的なものか論議されてきたが、現在、妥当な説明は得られていない。アメリカの心理学者ギブソンJ. J. Gibson(1904―79)の勾配説によれば、網膜に与えられる遠近の刺激の配置によって生じる粗密の勾配が、奥行知覚の基礎をなすという。ギブソンらは奥行知覚の実験装置として、直接身体に触れる1枚のガラスの半分の側では、市松模様の床とガラス板が接するようにし、ガラス板の他方の半分側では、同じ模様の床がガラス板から深く落ち込んでいるような装置をくふうし、これを視覚的断崖(だんがい)と名づけた。この装置のガラス板は触覚的には同一の知覚を生じるが、視覚的には肌理の密度の勾配と運動視差によって異なる二つの部分となる。彼らはこの装置を使って、這(は)い這いを始めた乳児や歩き始めの動物が、図柄模様の視覚的変化の手掛り(運動視差)によって人工的な崖(がけ)を知覚し、警戒し、避ける行動をりっぱにやってのけることを確かめた。

[今井省吾]

音源定位

聴空間知覚の一つ。定位は音刺激の受容器である耳が、左右両方にあることが関係している。音の左右定位の規定要因には、両耳に与えられる音波の強度差、パルス状の短音が両耳に到達するまでの時間差、音波の波形の両耳における位相の差などがある。音源の方向の知覚は、左右の方向がかなり正確である。音源が左右に偏る場合、音波の両耳への到着の距離が異なり、両耳への音圧と時間も異なり、さらに、耳の陰影効果も加わり、両耳に位相差が生じ、音源の方向と距離の手がかりとなる。前後、上下方向に対する音源の定位には、頭の動きが影響する。

[今井省吾]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

くうかん‐ちかく【空間知覚】
〘名〙 環境の空間的関係を知覚することで、位置、方向、大きさ、形、距離などの因子が含まれる。また、知覚される空間は視空間、聴空間、触空間などに分けられる。〔現代文化百科事典(1937)〕

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最新 心理学事典

くうかんちかく
空間知覚
space perception(英),perception de l'espace(仏),Raumwahrnehmung(独)
空間知覚とは,さまざまな感覚情報を基にして,身の回りの空間(外界)を認識する機能をいう。人間をはじめとする生活体は,つねに外界と相互作用をしながら生活している。そのため,われわれを取り巻く外界の様子について,あらゆる感覚運動情報を駆使して可能な限り精密に把握する作業は,生きるために必須といってよい。そのような空間知覚は,複数対象の位置や向きの関係の認知だけでなく,環境における自己・他者・対象一般の定位localizationすることを伴い,また針の穴のような非常に局所的関係から全方位的な大局的関係に至るまで,幅広い解像度があり,処理メカニズムも多様であると想定される。

【空間の把握のための情報】 空間を把握するためには,多様な感覚モダリティの情報が総合的に利用される。動物によっては嗅覚の情報が空間知覚に必須であるが,ヒトにおける主な外的手がかりexternal cueは視覚,聴覚,触覚の情報である。それぞれ単一モダリティによる空間表現を視空間visual space,聴空間auditory space,触空間tactile spaceと便宜的に区分することがあるが,複数の感覚情報が入手可能なときには,整合的な単一の空間表現を作るためにそれらが統合される。内的手がかりinternal cueは運動指令,自己受容感覚,前庭器官の情報であり,知覚される空間表現の中に構成された自己の身体像body imageの向きや移動方向を知るために用いられる。

 外的手がかりと内的手がかりは単独でも空間知覚に利用されるが,日常的な場面を考えると,それらが互いに変化する様子から外界の構造を推定する能動的知覚active perceptionがより重要である。すなわち,頭部を環境の中で動かすのに応じて視覚と聴覚の情報が系統的に変化し,また能動的触知覚active touchでは触覚対象の触り方に伴い返ってくる触覚情報が系統的に変化することこそが重要な手がかりである。動物によっては自己の発した音波の反響から外界の探知をするエコロケーションecholocationのしくみもある。こうした,能動的な行為に伴って変化する感覚入力を再求心性信号re-afference signalといい,その原因となった自己運動などの遠心性信号efference signalと統合することで,精緻な空間表現が作り出される。

【座標系】 外的手がかりによって空間の知覚を把握するまでには,さまざまな座標系での空間表現の計算がかかわっている。視覚情報を例に挙げれば,網膜上の特定の位置に光が落ちることが位置のコード化の第一歩であることから,網膜中心座標系retinocentric coordinatesを参照枠frame of referenceとして視覚信号が定位されているといえる。しかしこの第一歩だけでは空間知覚に不十分なことは自明であり,その位置に光が落ちているという事実を生体情報の形でシステム側が入手できなければならない。

 19世紀の哲学者ロッツェLotze,R.H.が局所徴験Lokalzeichenということばで示した概念の原義は,網膜上の各点を担当する各々の生体メカニズムが,その位置を表わすなんらかの特質をも運んでいるということである。局所徴験に当たる情報が,神経連絡というハードウェア上に実装されているという見方である。生後数ヵ月の発達過程における視覚神経系の様子を見ると,眼から脳へ至る神経連絡で競合と細胞死という生理現象が顕著に見られる。眼から出る視神経は成体の約3倍の本数で外側膝状体に軸索を伸ばして軸索終末の場所を競い合う。同様の競合が大脳皮質の一次視覚野での神経連絡でも見られる。競合に敗れたニューロンが細胞死によって大幅に間引かれるため,外側膝状体の層構造や一次視覚野入力層の眼優位性コラムocular dominance column,網膜部位再現retinotopyが発達途上で徐々に自己組織化する。できあがった神経結合を微視的に見るならば,各ニューロンが1段階前のニューロンからの収斂的結合によるシナプス入力を受けて,自分自身が発散的結合を1段階後のニューロンに対して送る構造になっている。隣り合う段階のニューロン同士の神経結合強度ないしシナプス伝達効率synaptic efficacyは,限られた組み合わせの間で値をもち,それ以外は伝達効率がゼロであるような数万次元のベクトルとして表現することができる。このコードが位置表現の役割を担うのかもしれない。とにかく,これらの結合強度の連鎖に由来して,視覚神経系の初期段階のニューロンは視野のごく限られた空間範囲に落ちた光に対してのみ応答するようになっている。この範囲のことを,そのニューロンにとっての受容野receptive fieldという。これらの受容野は,網膜中心座標系に貼りついた記述概念である。

 われわれが日常生活において対象の位置を把握するためには,網膜中心座標系上の受容野があるだけでは不足である。外界にまったく変更がなくても,眼球運動によって網膜像がたやすく位置を変えてしまうからである。そのため,脳はなんらかの方法で現在の眼球位置(回転角)の情報を取得してその影響を取り除くことにより,眼球位置に依存しない空間表現に変換する必要がある。このために用いられる眼球位置情報の可能性には3通りある。第1に,眼球運動指令の遠心性コピーefference copyまたは随伴発射corollary dischargeとよばれる情報で,眼を動かそうとする中央指令を視覚系で利用可能とするものである。第2に,外眼筋の自己受容感覚フィードバックproprioceptive feedbackにより,現に向いている方向をモニターする。第3に,特定の眼球運動を原因として特徴的に生じる網膜像の運動パターンを再求心性信号として抽出して,眼球運動を逆算する。これらのいずれかを用いて眼球位置を取得してその影響を完全に取り除いたならば,理論的には,参照枠はもはや網膜ではなく眼を取り囲む頭蓋骨の眼窩となり,空間表現は眼窩に相対的になる。これを眼窩中心座標系orbitocentric coordinates,あるいは単に頭部中心座標系head-centric coordinatesという。神経生理学的には,網膜中心座標系から頭部中心座標系への変換が脳のMST野において行なわれているという証拠を河野憲二ら(2007)が出している。

 頭部中心座標系の空間表現は,身体に対して頭部が運動することに連動して変わってしまう。頭部の向きによらない空間表現としては,体幹中心を参照枠とする表現が想定され,これを指して自己中心的座標系egocentric coordinatesということがある。あるいは,ここまで述べたすべての空間表現を指して広義の自己中心的座標系とよぶこともある。

 空間知覚を解明することの究極的な目標は,静止観測点を基準として外界の対象の位置を把握することではなく,動きうる観測点である自分自身を含めて環境中の複数対象同士を網羅的に定位することであろう。観察者(自分自身)から独立している座標軸を静止参照枠としたときの空間表現を環境中心座標系environmental coordinatesといい,あるいは自己の位置がもはや特権的でないことから,自己中心との対置で他者中心座標系allocentric coordinatesという言い方をする。

【空間定位と認知地図】 自分が今どこにいてどの方向へ向かっているかを認識するには,外的手がかりと内的手がかりのいずれもが用いられる。視覚・聴覚・触覚あるいは嗅覚によって環境中の目立った標識であるランドマークlandmarkの方位情報が与えられるので,複数のランドマークをモニターしながら移動すれば,三角測量の原理より自己の空間定位が理論的には可能である。このような求心性信号afference signalが使える一方,自己の進行速度あるいは加速度の情報を内的手がかりによってモニターしつづければ,理論的には経路積分path integrationにより自己の現在位置がわかる。齧歯類などの動物が経路積分を得意とするのに対し,ヒトはむしろランドマークを参照した空間定位に優れている。

 直前の状態を参照枠とし,ランドマーク位置変化や進行速度によって空間定位を時々刻々更新する方略を,進行方向の空間的更新spatial updatingという。これに対し,より大局的な環境把握と先行経験による可塑性を含んだ概念として,他者中心座標系における空間内の対象位置関係を心的表象としたものを,認知地図cognitive map という。トールマンTolman,A.C.(1932)はラットの迷路学習において,報酬を与えずに迷路を自由探索させるだけで迷路の構造が潜在学習できることを見いだし,認知地図が心的に形成されると唱えた。その後,ラットはじめ各種動物の海馬で,環境中の限られた場所に対して選択的に発火活動をする,いわゆる場所細胞place cellが発見され,他者中心座標系の空間レイアウトに関するなんらかの記憶が脳内に保持されている証拠が上がっている。 →眼球運動 →空間認知 →視空間 →視野 →身体感覚 →聴空間
〔村上 郁也〕

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