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管理社会【かんりしゃかい】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

管理社会
かんりしゃかい
19世紀末から 20世紀初めにかけてのテクノロジー発達 (第2次産業革命) によって出現した高度産業社会のこと。高度産業社会は,石油,電気エネルギーの技術開発に基づいた技術革新の結果,工場における生産過程のみならず交通,運輸,通信体系全般にわたって機械的組織化が行われた社会である。大量生産,大量輸送,大量伝達,大量消費の巨大な社会体系が,資本の集中,集積を促す一方,社会,経済,政治機構の巨大化と複雑化をも促進し,それぞれの分野における官僚制的な管理部門の独立化と生産,組織の管理技術の能率化を要請するにいたった。こうして,技術的,形式的合理性をにした官僚制的ヒエラルヒーがあらゆる社会領で貫徹されていく。しかし非合理的要素の徹底的排除による能率化や機械化は形式的合理性に基づく画一化と没個性化とを助長するだけであり,かえって情緒的不安定を招き,疎外を深化させる原因となる。こうして管理社会は治的にも不安の要素を多分にはらんでいるといえる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

かんり‐しゃかい〔クワンリシヤクワイ〕【管理社会】
管理機構の巨大化、社会の組織化、高度情報化などによって、人間が生活のあらゆるにわたって管理されるようになった社会。人間疎外が深刻化している現代社会を批判的にとらえた概念

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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世界大百科事典 第2版

かんりしゃかい【管理社会】
各種の技術,とくに情報に関する技術の発達によって,さまざまな形態の管理が社会のすみずみにまで及び,人間的な欲望心情思想などがたえず抑圧の危険にさらされる社会。この言葉自体は1960年代後半から日本のマスコミ学会で用いられるようになった。これと似た意味をもち,この言葉誕生の背景となった用語としては大衆社会mass society,全体主義社会totalitarian society,一次元社会one‐dimensional societyなどが考えられる。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

管理社会
かんりしゃかい

資本主義あるいは不完全な社会主義のような、もともと搾取や抑圧の機構を内包している社会において、技術、とくに管理や支配の技術、さらに最近ではこれらと関連して情報に関する技術あるいは知的技術が高度に発達し、その結果として少数の人間あるいはシステムそのものによる多数の人間の管理、とくに後者の欲望や感情や知識や意志など内面に至るまでの管理が徹底する社会をいう。このことば自体は1960年代後半から日本で独自に用いられるようになったものであるが、これに先行し影響を与えた外国産の用語としては「大衆社会」「全体主義社会」「一次元社会」「プログラム化社会」などがある。

[庄司興吉]

ファシズムとスターリニズム

1920~30年代にヨーロッパと日本に成立したファシズムは、ドイツのナチズムがもっとも徹底して示したように、Gleichschaltung(ドイツ語、均制化)という形であらゆる集団や制度を上から強制的に一元化し、独裁者とその集団による全社会の徹底した管理を図るものであった。他方、ほぼ同じころに旧ソ連では、レーニン亡きあとの共産党と国家をめぐって主導権争いが続き、反対派の指導者や党員などを粛清などの手段で次々に排除していったスターリンの手で、管理の徹底した事実上の独裁体制がつくられていった。これらのうち、ナチズムをはじめとするファシズムは、第二次世界大戦で連合軍に敗れて崩壊し、スターリニズムも、50年代に入ると内外の批判の対象となってある程度の自己改革を要求される。しかし、これと相前後して、アメリカのような自由主義と民主主義をたてまえとする社会においても、少数エリートによる大衆の管理を特色とする大衆社会の傾向が現れ、たとえばC・W・ミルズなどが、軍部と産業と政府のエリートからなる「パワー・エリート」がアメリカの大衆社会を支配している、と主張するような事態になった。とくにアメリカの大衆社会では、ナチズムのもとでもすでに巧妙に利用されていた新聞、ラジオ、映画などのマス・メディアが、戦後急速に普及したテレビジョンを加えてますます巧妙に用いられ、大衆の意見すなわち世論の操作を通じて、意図的な大衆操作を行うという傾向が急速に強まっていったことが重要である。

[庄司興吉]

一次元化された社会

1950年代から60年代にかけて、アメリカを中心とする先進資本主義社会では、技術革新を踏まえた高度経済成長がみられ、現代的産業社会さらには脱工業化社会の様相が現れた。こうした事態を踏まえて、現代社会はその隅々まで技術合理性によって一次元化され、芸術や思想に表現される人間の内面性までが、戦争と福祉を同時に追求する国家あるいはそれを含むシステムそのものによって管理されている、という一次元社会の理論を展開したのが、H・マルクーゼである。彼の理論はミルズの理論などとともに、高度産業社会のもとにおける管理体制の強化に不満を抱き始めていた青年・学生層に影響を与え、権威主義を批判するフランクフルト学派一般の理論と相まって、60年代末の学生反乱や新左翼運動あるいは新しいラディカリズムの高揚に寄与した。

[庄司興吉]

現代の管理社会

現代の管理社会は、こうした歴史的経過を踏まえて、社会主義社会よりはむしろ発達した資本主義社会を中心に、しだいに技術革新の焦点となってきたコンピュータ化を基軸としつつ現れている。コンピュータは情報処理を主目的とする機械であるから、その導入は、社会の各所で物質やエネルギーに対して情報の重要度を高めるという意味での情報化を進め、情報化はさらに社会の各部分を緊密に結び付けて、社会全体のシステム化を推進する。経営では経営情報システム(BIS)が発達し、自治体や政府ではそれぞれにコンピュータが導入され、システム化が試みられたあげく、それらがさらにシステム化されて国民情報システム(NIS)が現れる。この後者がときに「国民総背番号制」とよばれるもので、もし国民のすべてが番号化され、それぞれの職業や収入から思想・信条に至るまでの基本情報がコード化されているとしたら、国民の大多数が、国家やそれと結び付きやすい資本に徹底的に管理される可能性が生まれるであろう。

 これに加えて、コンピュータの相次ぐ技術革新、およびその素材である集積回路や記憶装置の開発と改良は、それらの利用範囲と効率を飛躍的に高める各種ソフトウェアの開発、改良と相まって、コンピュータの小型化と低価格化をいっそう進めて普及を加速し、これを利用した事務所のオートメーション(OA)や工場のオートメーション(FA)に改めて脚光を浴びせることになった。いわゆるマイクロ・エレクトロニクス(ME)革命である。そして、労働者にとっての労働の場におけるこうした動きは、市場においては付加価値通信網(VAN(バン))などの形成の動きとして現れ、地域社会や市民社会一般においても高度情報システム(INS)の形成などの動きとして現れた。これらはその後、各種の情報機器をコンピュータを中心に統合するマルチメディア化や、各種のコンピュータ・ネットワークを世界的に接続して、あらゆる場所(サイト)からあらゆる場所(サイト)への双方向通信を可能にしたインターネットの普及などを通じて、まさに世界社会そのものの情報化とシステム化の動きにまで進展してきている。

[庄司興吉]

大衆的自主管理の実践

現代の先進資本主義社会が、資本主義に固有な機構をいまなお残している以上、こうした情報化やシステム化は、エリートによる大衆の支配や、システムの技術合理性への一次元化をさらに徹底して進める可能性が大きい。さらに、国民総背番号制の推進や各種情報ネットワークへの企業などの侵入にみられる個人のプライバシーの侵害は、われわれの内面の奥深いところまでを市場化したり管理化したりし、J・ハバーマスのいう生活世界の植民地化あるいは内面的植民地化をさえ進める可能性がある。

 ファシズムや不完全な社会主義の管理社会に対してはいうまでもなく、こうした一見柔らかそうにみえる現代資本主義の管理社会にも抗して人間性の再活性化を図るためには、今日改めて大衆が大衆的自主管理を実践することによって、本当の意味で社会の主人公となる必要があるであろう。管理社会は、古い機構や過度のシステム化ゆえに疎外された計画社会なのであり、大衆が持続的に主体性を発揮してこの機構や過度のシステム化を抑止するならば、知的技術をはじめとする基本的生産手段および生活手段の共同所有に基づいた、人間的で自主的な計画社会へと蘇生(そせい)させうるのである。

[庄司興吉]

『C・W・ミルズ著、鵜飼信成・綿貫譲治訳『パワー・エリート』上下(1958・東京大学出版会)』『H・マルクーゼ著、生松敬三・三沢謙一訳『一次元的人間』(1974・河出書房新社)』『庄司興吉著『現代社会学叢書3 現代化と現代社会の理論』(1977・東京大学出版会)』『栗原彬著『管理社会と民衆理性』(1982・新曜社)』『庄司興吉著『管理社会と世界社会』(1989・東京大学出版会)』『庄司興吉著『世界社会と社会運動』(1999・梓出版社)』

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精選版 日本国語大辞典

かんり‐しゃかい クヮンリシャクヮイ【管理社会】
〘名〙 組織が巨大化し、人間が組織の体系・秩序に組み込まれ、合理的に制御されるようになった現代社会。
※がらくた博物館(1975)〈大庭みな子〉よろず修繕屋の妻「身動き出来ないように組みこまれた管理社会の中で」

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