●管理通貨制度【かんりつうかせいど】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
管理通貨制度
かんりつうかせいど
managed currency system
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デジタル大辞泉
かんりつうか‐せいど〔クワンリツウクワ‐〕【管理通貨制度】
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世界大百科事典 第2版
かんりつうかせいど【管理通貨制度】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
管理通貨制度
かんりつうかせいど
managed currency system 英語
manipulierte Währung ドイツ語
système de la monnaie dirigée フランス語
国内通貨量と中央銀行の金準備との関係を断つ、すなわち、銀行券の兌換(だかん)を停止し、不換紙幣化することを制度的前提に、国内通貨・信用量の裁量的な操作を通じて景気変動に対処し、資本主義体制の安定と経済成長の促進を図ろうとする政策体系・制度をいう。
1929年の大恐慌を契機に国家の経済過程への大規模な介入が開始されるが、その主要なてことなるのが管理通貨制度である。すなわち、資本主義経済が自律的な均衡の回復機能を喪失したことから、政府の有効需要創出を通じて過剰資本と過剰労働力を結合させ、完全雇用を達成し、景気の回復を図ろうとする政策の制度的支柱として位置づけられる。その際とられる財政・金融政策は、総じて追加的信用による投資資金の供給、完全雇用の達成を通じて経済の安定を目ざそうとするものであるが、兌換停止下では必然的にインフレーションを随伴することになる。しかし、過度のインフレーションは不公平な所得の再配分により逆に経済の不安定性を激化させることから、通貨価値の維持が要請されることとなる。一方における追加的信用の供給と他方における通貨価値の維持、この両者の矛盾を緩和することが中央銀行による金融政策運営の基本となるのである。
このように、通貨供給が正貨準備に結び付けられ、対内的には法定平価での金兌換、対外的には法定為替(かわせ)相場の維持を目的として行われた金本位制度下の通貨管理とは違い、管理通貨制度下では国内の景気対策上の要請による有効需要の管理を目的として通貨管理が行われることになる。金本位制度が対外均衡優先であるのに対し、管理通貨制度が国内均衡優先であるといわれるゆえんである。
[齊藤 正]
成立
1929年の世界的大恐慌とそれに続く1930年代の金融恐慌のなかで、各国は銀行券の兌換停止、金の自由輸出入の禁止という緊急措置をとり、いわゆる再建金本位制度は短命に終わる。これ以後、銀行券の発行高は金準備に制約されることなく、通貨当局の裁量にゆだねられることになるが、金本位制度への復帰に強く反対し、それにかわる通貨制度として管理通貨制度の採用を主張した代表的論者がJ・M・ケインズであった。ケインズは「供給は自ら需要を創(つく)る」という、それまでの支配的見解(セーの法則)を否定し、不況、したがって失業の原因を需要の不足に求めた。そして、需要の不足は、貨幣の供給を金という増加させにくい自然物に結び付けているためだとして、金を事実上、入手が困難な「月」になぞらえ、人々が「月」を欲するから失業が生じると述べている。そこで、潜在的な生産能力を稼働させるためには、増加可能な財生産の供給に見合うように通貨の発行量を人間の知性によってコントロールすべきだと主張して、一国の好景気、失業の減少が近隣窮乏化政策のうえでのみ実現される金本位制度にかわる、国内均衡を重視した伸縮的な財政金融政策の必要性を説いたのである。ケインズの主張は、自律的な均衡回復機能を失った資本主義経済に、国家の経済過程への介入という活路を提供することとなった。
1930年代にとられた不況対策は、各国の実態に応じて多様であった(たとえば、アメリカのニューディール政策、ドイツのナチズム経済政策、日本の高橋財政など)。しかし総じてそれらは、ブロック経済を指向するなかで国内経済の再建を図るというものであり、戦争経済との関連において生産が拡大し、景気が回復するというものであり、それ自体として成功したのではなかった。
世界経済の再建を前提とする管理通貨制度は、第二次世界大戦後のIMF(国際通貨基金)体制をもって確立する。すなわち、各国における管理通貨制度の採用を基礎に、アメリカ財務省によるドルに対する金兌換規定と、IMF加盟国の対ドル・レートを維持するための公的介入のルールの創出によって整備された世界的な規模での管理通貨制度が完成する。このようなアメリカの主導による世界的規模での管理通貨体制=IMF体制の下で、各国は財政政策と金融政策を一体化した財政金融政策を採用することになるのである。
[齊藤 正]
管理通貨制度の展開と新たな問題
管理通貨制度は第二次世界大戦後の高度経済成長を実現するのに寄与した一方、新たな問題を生み出すことになった。その一つは、ドルに対する国際的信認の低下による国際通貨不安の頻発であり、いま一つは、スタグフレーションといわれる不況とインフレーションの同時進行状況であった。管理通貨制度は、国際的な通貨協力体制を前提としてその機能を十全に発揮しうるものであり、かつ、そもそも不況からの脱出(=経済成長)を目的として金準備と国内通貨量との連関を断ったのである。この二つの基本前提自体が深刻な動揺をきたしているなかで、1971年8月のニクソン声明によってドルと金との兌換が停止され(ニクソン・ショック、ドル・ショック)、1973年国際通貨制度は固定為替相場制から変動為替相場制へ移行した。また、国内的にも政治的プレッシャーによる「大きな政府」への志向がインフレーションの高進や財政赤字の深刻化をもたらし、1980年代以後、アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権、日本の中曽根(なかそね)内閣など、新自由主義的な「小さな政府」を掲げる保守的政権の登場を促すこととなった。
[齊藤 正]
『大内力著『国家独占資本主義』(1970・東京大学出版会)』▽『川合一郎著『管理通貨と金融資本』(1974・有斐閣)』▽『侘美光彦著『国際通貨体制』(1976・東京大学出版会)』▽『中内恒夫訳『ケインズ全集4 貨幣改革論』、塩野谷祐一訳『ケインズ全集7 雇用・利子および貨幣の一般理論』(1978、1983・東洋経済新報社)』▽『建部正義著『管理通貨制度と現代』(1980・新評論)』▽『深町郁弥著『現代資本主義と国際通貨』(1981・岩波書店)』
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精選版 日本国語大辞典
かんりつうか‐せいど クヮンリツウクヮ‥【管理通貨制度】
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旺文社日本史事典 三訂版
管理通貨制度
かんりつうかせいど
1929年の世界恐慌を契機に各国が金本位制度から離脱すると,通貨が不換紙幣となり価値が不安定となったため,通貨を政策的に管理する制度が望ましいとされ,管理通貨制度へ移行した。戦後はIMF(国際通貨基金)が設立されて,ドルを基軸とする国際的な管理通貨制度が確立した。
出典:旺文社日本史事典 三訂版
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