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糖尿病性腎症【とうにょうびょうせいじんしょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

糖尿病性腎症
とうにょうびょうせいじんしょう
diabetic nephropathy
糖尿病に特異な毛細血管病変の現れとして,血液をろ過し尿を作る装置である糸球体に硬化性の病変を生じるもの。糖尿病腎症がひとたび発症すると,多くの場合は進行性に増悪して,数年のうちに腎不全に陥り尿毒症となる。したがって,糖尿病を良好なコントロール状態に保って,腎症の発症を予防することが大切になる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

とうにょうびょうせい‐じんしょう〔タウネウビヤウジンシヤウ〕【糖尿病性腎症】
糖尿病の三大合併症の一つ。高血糖の状態が長く続くことにより、腎臓糸球体の毛細血管が損傷し、腎機能が低下した状態。初期には微量のアルブミンが尿に排泄される。進行すると、蛋白尿からネフローゼ症候群を経て、腎不全に至る。糖尿病性ネフロパシー糖尿病性腎硬化症糖尿病腎症。→糖尿病網膜症糖尿病性神経障害

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

糖尿病性腎症
 糖尿病性腎障害ともいう.糖尿病に合併する腎疾患

出典:朝倉書店
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生活習慣病用語辞典

糖尿病性腎症
糖尿病の合併症の 1 つで、腎臓の機能 (主に糸球体と呼ばれる、老廃物排泄機構部分) に障害が起きます。

出典:あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)
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家庭医学館

とうにょうびょうせいじんしょう【糖尿病性腎症 Diabetic Nephropathy】
[どんな病気か]
 糖尿病(「糖尿病」)は、日本では高血圧、高脂血症(こうしけっしょう)とならんで代表的な成人病(生活習慣病)です。1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)と、2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)に分けられますが、患者数が多く、成人病として問題となるのは、2型糖尿病です。
 糖尿病には、網膜症(もうまくしょう)、神経症、腎症という三大合併症がともない、とくに最近は、糖尿病性腎症から回復不可能な末期の腎不全(じんふぜん)(「腎不全」)におちいる患者さんが増えています。
[原因]
 糖尿病性腎症は、糖尿病によって毛細血管(もうさいけっかん)・細小血管(さいしょうけっかん)に病変がおこり(糖尿病性細小血管症(とうにょうびょうせいさいしょうけっかんしょう))、網膜と同じように多数の毛細・細小血管が集まった糸球体(しきゅうたい)も障害されると考えられますが、根本的な原因ははっきりしません。
 しかし、インスリンの不足、あるいは作用がうまく現われないことによる高血糖が、腎症のおもな原因と考えられています。その結果、糸球体は血液中の過剰な糖を濾過(ろか)せねばならず、糸球体にかかる血液の圧力が高まります。この状態が長く続くと、糸球体がしだいにかたくなると考えられます。
 糸球体の過剰な濾過がおこる時期には、わずかですが、アルブミンのまじった尿(たんぱく尿の一種)がみられます。
[検査と診断]
 表「糖尿病性腎症の病期分類」は、日本に多い2型糖尿病を主にして、糖尿病性腎症の病期を示したものです。わずかなアルブミン尿がみられる第2期(早期腎症の時期)までに適切な治療を行なわないと、たんぱく尿が悪化して、第3期(顕性(けんせい)腎症の時期)へと進んでしまいます。
 第3期‐Bではネフローゼ症候群(「ネフローゼ症候群」)を示すこともあり、この時期になると腎症は回復できないものになってしまい、さらに、第4期(腎不全期)、第5期(透析(とうせき)療法期)の末期へと進行します。
 糖尿病性腎症は、発病の早くから高い割合で高血圧をともないます。腎症が進んだ患者さんでは、高血圧となることがさらに増え、血圧のコントロールも困難になります。
[治療]
 糖尿病性腎症の治療でもっとも大事なことは、早期腎症の時期までに発見し、適切な治療を行なって、顕性腎症以降の病期に進ませないようにすることです。
 そのためには、とにかく厳格な血糖値(けっとうち)のコントロールをすることが重要です。血糖のコントロールは、低カロリー食、運動療法が基本ですが、糖尿病薬の服用、およびインスリンの注射も行なわれます。
 顕性腎症の前期も、やはり厳格な血糖のコントロールが必要です。以前は顕性腎症後期までは、食事でとるたんぱく質を制限する必要はないといわれていましたが、最近では、前期から、ある程度たんぱく質を制限することがよいと考えられています。
 後期になると、厳密な低たんぱく食にする必要があります。
 腎不全期には、やはり食事療法として、たんぱく質の摂取の制限を行ないますが、血液中のクレアチニン(糸球体の濾過能力の目安になる物質)の量の増え方によっては、透析療法(「人工透析」)の準備をします。
 糖尿病性腎症には高血圧がともなうことが多いので、降圧薬の使用も重要です。降圧薬のうち、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(へんかんこうそそがいやく)は、糸球体内の圧力を減らす作用もある有効な薬です。

出典:小学館
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

世界大百科事典 第2版

とうにょうびょうせいじんしょう【糖尿病性腎症】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

内科学 第10版

糖尿病性腎症(全身疾患と腎障害)
定義・概念
 糖尿病性腎症とは,持続する高血糖により腎臓の糸球体および間質の障害が生じ,蛋白尿の出現や腎機能低下が認められる疾患である.最終的には末期腎不全にまで進行し,血液浄化療法が必要となる.わが国における慢性透析療法導入の原因疾患第1位を占める重要な疾患である.
原因・病因
 糖尿病性腎症の成因としては,高血糖に伴う細胞内代謝異常や,糸球体高血圧,糸球体過剰濾過などの機能的異常が生じ,その結果として細胞外基質の増加・蓄積,メサンギウム領域の増生・拡大などの器質的異常がもたらされると考えられている.その進展機序には複数の経路が想定されており,①グリケーション,②酸化ストレス,③ポリオール代謝異常,④プロテインキナーゼC(PKC)の活性化,⑤レニン-アンジオテンシン系の活性化,⑥炎症(マクロファージの浸潤や接着分子,ケモカイン,炎症性サイトカインの発現増強)などに,遺伝的素因などが相互に作用し腎臓に機能的および組織学的異常を惹起すると考えられている(図11-6-1).
疫学
 糖尿病性腎症は1998年以降のわが国における透析導入原因疾患の第1位を占めている.日本透析医学会の統計によると,2010年の新規透析導入患者3万5555人の約43%(1万6271人)が糖尿病性腎症である.これまで2型糖尿病の増加に伴って糖尿病性腎症は増加の一途を辿っていたが,2010年にはじめて減少傾向に転じた.また,糖尿病患者における腎症の合併率は,Parvingらが世界33カ国の2型糖尿病患者約2万4000人を対象に行った横断的調査DEMAND studyの結果によると,微量アルブミン尿が39%,顕性アルブミン尿が約10%であり,おおよそ半数の患者が腎症を合併していた(Parvingら,2006).一方,わが国の2型糖尿病患者約8900例を横断的に調査したJDDM10の結果によると,微量アルブミン尿を呈する早期腎症(第2期)が32%,顕性腎症(第3期)が7%,腎不全(第4期)が2.6%であり,日本人2型糖尿病患者の40%以上がアルブミン尿陽性であることが明らかになっている(Yokoyamaら,2007).
病態生理・病理
 糖尿病性腎症の成因として,高血糖により引き起こされる細胞内代謝異常や酸化ストレス,レニン-アンジオテンシン系の活性化,糸球体内血行動態の異常などが相互に作用しながら腎臓の機能的および構造的変化を引き起こし,発症・進展すると考えられている(図11-6-1).血行動態異常による糸球体過剰濾過は,機能ネフロン数の低下や濾過係数が低下する病態において,単一ネフロンあたりの濾過率を増加させて腎全体の糸球体濾過量(GFR)を維持しようとする機構である.糖尿病性腎症の初期において,糸球体過剰濾過の状態が持続すると,糸球体高血圧により糸球体内皮細胞,メサンギウム細胞,糸球体上皮細胞などの糸球体を構築する細胞が傷害を受け,糸球体硬化に至ると考えられている.また高血糖や終末糖化産物,酸化ストレスなどにより,腎内のレニン-アンジオテンシン系の活性化やTGF-βなどの炎症性サイトカイン発現が亢進し,これらが細胞外基質蛋白(ECM)の持続的な蓄積を引き起こすと考えられる.病理組織学的には糸球体病変,尿細管・間質病変,血管病変に大別されるが,糖尿病性腎症の特異的かつ重要な病理学的所見として糖尿病性糸球体硬化症がある.初期には糸球体の肥大のみ認められるが,進行するに伴い糸球体硬化症が進行し,びまん性病変,結節性病変,滲出性病変などの病変が認められるようになる(図11-6-2A).また,糖尿病性腎症の病理所見にはECMの蓄積と並んで,単球・マクロファージに代表される炎症細胞の浸潤が認められる(図11-6-2B).腎臓の糸球体および間質において,接着分子・ケモカインの発現や炎症性サイトカインの増加が糖尿病性腎症の進展に関与すると考えられている.
臨床症状
1)自覚症状:
早期の糖尿病性腎症,および顕性腎症でも蛋白尿が軽度の場合には症状はない.したがって,検尿を行い微量アルブミン尿の有無を確認することが重要である.蛋白尿が高度となり,血清蛋白濃度が低下すると下腿浮腫,胸腹水貯留といった溢水症状が出現する.特に糖尿病性腎症による腎不全患者では,しばしばネフローゼとなり体内の水分貯留傾向をきたしやすい.また腎不全が高度となると,悪心や食欲低下などの尿毒症症状が出現する.
2)他覚症状:
検査所見では,腎不全が進行すると血清Crのほか,尿素窒素,尿酸,カリウムが上昇する.また,腎機能の低下に伴い貧血(腎性貧血)を認める.腎性貧血では,鉄欠乏性貧血と異なりエリスロポエチンの上昇が認められないという特徴がある.
診断・分類
 糖尿病性腎症の診断は,臨床経過と検尿所見,腎機能検査の結果を総合的に判断して行うが,最も重要なものはアルブミン尿および蛋白尿である.臨床的には表11-6-1に示すように糖尿病性腎症は5つの病期に分類される.第1期では正常アルブミン尿であるが,第2期になると微量アルブミン尿が出現する.この時期までは通常症状がない.第3期になって持続する蛋白尿を認めるようになり,その後次第に高血圧,浮腫,ネフローゼ症候群,貧血などを呈しながら第4期の腎不全に進行する.透析療法を開始されたら第5期である. 早期の糖尿病性腎症の診断のためには尿中微量アルブミンを測定することが重要である.尿中微量アルブミン値が30〜299μg/mgCrで,3回の測定中2回以上該当すれば早期腎症と診断する.また,尿中微量アルブミンが300μg/mgCrをこえて,試験紙法による検尿で蛋白尿が持続して陽性となると顕性腎症期と診断する.
鑑別診断
 2型糖尿病では正確な糖尿病発症時期が不明であることが多いが,顕性蛋白尿出現までの罹病期間は少なくとも5年以上であるのが一般的である.また顕性腎症が発症する時期には網膜症や神経障害がすでに発症していることが多い.したがって,①糖尿病発症から蛋白尿出現までの期間が短い,②蛋白尿の増加や腎機能低下の進行が非常に急速である,③高度の血尿を伴う,④網膜症や神経障害がない場合には,糖尿病性腎症ではなくほかの糸球体腎炎の合併を考慮し,積極的に腎生検を行う必要がある.
経過・予後
 はじめはまったく無症状で,検尿および血液検査では異常を認めないが,早期の糖尿病性腎症では通常の検尿では検出されない程度の微量のアルブミン尿を呈するようになる.さらに進行すると蛋白尿が出現し,徐々に腎機能は低下する.また糖尿病性腎症の進展とともにネフローゼ症候群が出現することもある.最終的には末期腎不全にまで進行し,血液浄化療法が必要となる(図11-6-3).
 糖尿病性腎症の進行と死亡率の関連を調べたUKPDSのサブ解析によれば,糖尿病性腎症の病期の進行とともに死亡率も増加しており,死因の多くは心血管疾患であった(図11-6-4)(Adlerら,2003).糖尿病は心血管死のリスクが高い疾患であるが,アルブミン尿と腎機能低下が心血管死の危険因子となることが明らかになり,「心腎連関」という概念が提唱されるようになった.したがって,糖尿病患者において,腎症の合併は心血管死の強い危険因子であり,末期腎不全への進行と心血管死を予防するためには,早期から強い介入を行うことが重要である.
治療・予防
 糖尿病性腎症の成因の最も上流に位置するのが高血糖であるため,血糖のコントロールを良好に保つことが重要である.また高血圧を合併する場合は,レニン-アンジオテンシン系阻害薬を基本とし,130/80 mmHg未満を目標に血圧のコントロールも行う.血糖および血圧コントロールのほかに,脂質管理,低用量アスピリン,禁煙,生活習慣の改善なども集約的に強化療法を行うことにより,糖尿病性腎症の進行の抑制が可能であることが示されている.[小川大輔・槇野博史]
■文献
Adler A, et al: Development and progression of nephropathy in type 2 diabetes: the United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS 64). Kidney Int, 63: 225-232, 2003.
Parving HH, et al: Prevalence and risk factors for microalbuminuria in a referred cohort of typeⅡdiabetic patients: a global perspective. Kidney Int, 69: 2057-2063, 2006.
Yokoyama H, et al: Microalbuminuria is common in Japanese type 2 diabetic patients: a nationwide survey from the Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group (JDDM 10). Diabetes Care, 30: 989-992, 2007.

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

糖尿病性腎症
とうにょうびょうせいじんしょう
Diabetic renal disease
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 糖尿病性腎症は、糖尿病性末梢(まっしょう)神経障害および糖尿病網膜症(もうまくしょう)とともに、糖尿病の3大合併症のひとつです。

 本症が進行すると腎機能が悪化し(腎不全(じんふぜん))、現在では透析療法を受ける患者さんの原因疾患の第1位を占めています。糖尿病になって10年以上経過してから徐々に蛋白尿(たんぱくにょう)が現れ、やがてネフローゼ症候群となって浮腫(むくみ)を来し、腎機能が悪化してくるのが典型的な経過です。

 3大合併症はいずれも細い血管障害が主体となっているので、「糖尿病性細小血管症(さいしょうけっかんしょう)」と総称されることもあります。ちなみに糖尿病の他の合併症では、「糖尿病性大血管症(だいけっかんしょう)」としての動脈硬化症が重要です。

 動脈硬化症が進行すると脳血管障害虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)壊疽(えそ)などの重症の疾患に結びつきます。

原因は何か

 糖尿病による高血糖と高血圧が根本的な原因です。血管の内側にある内皮細胞が障害されたり、腎臓内の蛋白質(たんぱくしつ)に非酵素的糖化反応を来したりします。また腎臓内の高血圧の影響も重要です。

症状の現れ方

 糖尿病性腎症は、かなり進行してからでないと自覚症状は現れません。したがって、むくみなどの自覚症状が出現した場合は、かなり進行していることになります。

 腎機能が悪化し腎不全になると、体内への尿毒症(にょうどくしょう)物質の蓄積による尿毒症(頭痛、吐き気、立ちくらみなど)が出現してきます。

検査と診断

 糖尿病性腎症の診断は、尿中アルブミン排泄量で行います。アルブミンは蛋白質のひとつですが、試験紙法(一般的に汎用されている検査法)で尿蛋白が陰性であっても、精密に測定すると尿中にアルブミンが出てきていることがあります。

 具体的には、尿のアルブミン(㎎/㎗)とクレアチニン(g/㎗)の測定を行い、その比(アルブミン/クレアチニン:㎎/g・Cr)が30~300㎎/g・Crの範囲にあることを「微量アルブミン尿」と呼び、本症の最初の変化です。

 また、腎機能の測定は従来は血液検査と蓄尿検査(一定時間の尿をためる方法)が必要でしたが、最近では血清クレアチニン値を測定し、年齢と性別を考慮した計算式により算出できるようになってきました。

病期分類

 本症の病期分類は、表11のように5期に分かれています。蛋白尿と腎機能が指標になっており、微量アルブミン尿のみられる第2期以降を糖尿病性腎症と呼んでいます。

治療の方法

 基本的な治療法は、血糖値の正常化(血糖コントロール)と血圧の正常化(血圧コントロール)です。この両者は、どの病期でも行われる治療法です。

●血糖コントロール

 食事療法と運動療法が基本となり、必要に応じて糖尿病薬を使用します。第4期以降では、原則として経口薬は使用せず、インスリン注射を使用します。また運動療法は、第3期B以降は制限が必要です。

 血糖コントロールの目標は、食前血糖値120㎎/㎗未満、食後2時間血糖値180㎎/㎗未満、HbA1C6.5%未満です。

●血圧コントロール

 とくに、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を用いることが推奨されています。必要に応じてカルシウム拮抗薬や利尿薬などを併用します。

 血圧コントロールの目標は130/80㎜Hg未満ですが、可能ならば120/70㎜Hg未満を目標にします。

●蛋白質摂取

 食事中の蛋白質摂取量に関しては、第3期~第4期にかけては制限したほうがよいと考えられています。

 具体的には、標準体重1㎏あたり通常は1.0~1.2g/日のところを0.8~1.0g/日あるいは0.6~0.8g/日まで段階的に制限していく方法が一般的です。

●塩分摂取

 塩分に関しては、高血圧が存在する場合は第1期から7~8g/日の制限が必要ですが、第3期以降は高血圧の有無にかかわらず5~6g/日の制限が推奨されています。

病気に気づいたらどうする

 血糖値が高くても糖尿病自体の自覚症状はないことが多いため、なかなか治療に専念しない患者さんも多いようです。しかし、高血糖や高血圧を放置しておくと、いつの間にか糖尿病性腎症をはじめとする糖尿病合併症にかかっていることもあり、治療に苦慮する場合も少なくありません。

 つまり、糖尿病合併症にならないような予防的な考え方で、糖尿病自体を治療する必要があります。

 もし糖尿病性腎症になったとしても、やはり血糖値を安定させ血圧も安定させることが大切になります。そしてできる限りの早期発見、早期治療が腎機能の悪化を防ぎます。前述のように、各種の治療を併用し、継続的な治療が必要になります。

関連項目

 慢性腎不全尿毒症糖尿病

谷亀 光則

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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EBM 正しい治療がわかる本

糖尿病性腎症
どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 糖尿病の患者さんで、血糖値を適切な範囲でコントロールできず、高血糖の状態が長く続くと、腎臓(じんぞう)の働きが損なわれていきます。これが糖尿病の三大合併症の一つ、糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)です。
 日本の糖尿病患者さんの多くは2型糖尿病で、自覚症状に乏しいのが特徴です。自分が糖尿病であることに気づかないまま長期間過ごし、その結果、腎症を合併し、たんぱく尿などの異常から、はじめて糖尿病と診断されることになるケースも少なくありません。
 腎症がおこっても、はじめのうちはなんの症状もでません。腎性の高血圧や腎不全状態になるのは、ある程度進行してからです。たんぱく尿のみの時点で糖尿病の管理を厳しく行い、血圧も適切な値を保てば、進行をくいとめることができます。しかし放置すれば、やがてネフローゼ症候群、さらに腎不全、尿毒症に至ります。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 高血糖の状態になると、初期には腎臓への血流量が多くなり、腎臓自体が少し大きくなります。こうした状態が続くと、やがて腎臓の中で老廃物をろ過する糸球体(しきゅうたい)の働きが徐々に損なわれていきます。
 腎臓の異常をもっとも早く知るには、尿中の“微量(ミクロ)アルブミン”検出検査を行うことですが、これは特殊な検査方法でなければ検出できません。この検査をせずに腎症を知らないまま高血糖状態が長期間続くと、やがて普通の検査方法でもたんぱく尿が検出されるようになります。この状態がさらに長期間続くと、体の老廃物を排泄(はいせつ)する糸球体の働きがよりいっそう低下し、腎不全に至ります。最終的に人工透析(とうせき)などの代替え療法が必要となります。

●病気の特徴
 現在、わが国で人工透析を新たに必要とする患者さんの原因となる病気の第1位(2011年の時点で新規透析導入患者の44.2パーセントを占める)が糖尿病性腎症で、医療上の大きな問題となっています。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]血糖値を厳格にコントロールする
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 血糖値をできるだけ正常に近い値までコントロールすれば早期の糖尿病性腎症の発症、進行を抑制できるということが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(1)

[治療とケア]血圧をコントロールする
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 血圧を正常レベルにコントロールすることで、糖尿病性腎症の進行が抑制されることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(2)

[治療とケア]腎臓を保護する効果のある降圧薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] レニンアンジオテンシン系阻害薬は、ほかの降圧薬に比べて腎臓を保護する効果が高いうえ、腎臓以外の臓器の合併症を予防する効果も高いので、降圧薬のなかでは第一選択となります。これは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(3)~(5)

[治療とケア]たんぱく質を制限する
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] たんぱく質制限食が糖尿病性腎症の進行を抑制する可能性があることが臨床研究によって確認されています。(6)

[治療とケア]利尿薬を用いる
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 腎症が進行して腎不全になると、体内の水分が尿として排泄されにくくなり、体内に余分な水分がたまってきます。利尿薬は、余分な水分を排泄するのに有効です。(7)

[治療とケア]エリスロポエチンを用いる
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 腎性貧血をおこした場合、その治療薬に、エリスロポエチンを使用することで、QOL(生活の質)が上がり、脳卒中、心疾患などの頻度(ひんど)が低下したという非常に信頼性の高い臨床研究があります。しかし、貧血を過度に補正することによって、かえって脳血管障害をきたすという報告もあり注意が必要です。(8)(9)


よく使われている薬をEBMでチェック

 血糖値のコントロールについては糖尿病の項を参照してください。

血圧をコントロールする(レニンアンジオテンシン系阻害薬)
[薬用途]ACE阻害薬
[薬名]カプトリル(カプトプリル)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]レニベース(エナラプリルマレイン酸塩)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]タナトリル(イミダプリル塩酸塩)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]オドリック/プレラン(トランドラプリル)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]ゼストリル/ロンゲス(リシノプリル水和物)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] ACE阻害薬は、糖尿病性腎症の微量アルブミン尿や尿たんぱく増加を抑制し、腎機能障害の進行を抑制することが非常に信頼性の高い臨床研究によって示されています。

[薬用途]AⅡ受容体拮抗薬
[薬名]ニューロタン(ロサルタンカリウム)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]ブロプレス(カンデサルタンシレキセチル)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]オルメテック(オルメサルタンメドキソミル)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]アバプロ/イルベタン(イルベサルタン)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]ミカルディス(テルミサルタン)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] AⅡ受容体拮抗薬は、糖尿病性腎症の微量アルブミン尿や尿たんぱく増加を抑制し、腎機能障害の進行を抑制することが非常に信頼性の高い臨床研究によって示されています。AⅡ受容体拮抗薬とACE阻害薬との比較ではあまり差がないと考えられています。

[薬用途]レニン阻害薬
[薬名]ラジレス(アリスキレンフマル酸塩)(10)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] レニン阻害薬には腎機能障害進行抑制効果があることが信頼性の高い臨床研究によって証明されています。他剤との併用では副作用に注意が必要です。

[薬用途]カルシウム拮抗薬
[薬名]ノルバスク/アムロジン(アムロジピンベシル酸塩)(11)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] カルシウム拮抗薬はレニンアンジオテンシン系阻害薬と同程度に糖尿病性腎症の進展を抑制することが比較的信頼性の高い臨床研究によって明らかになっています。しかし、レニンアンジオテンシン系阻害薬と比べて腎臓の保護効果は弱いという報告も多く、レニンアンジオテンシン系阻害薬を優先させます。

排尿を促す
[薬用途]利尿薬
[薬名]ラシックス(フロセミド)(7)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 糖尿病性腎症のうち、ネフローゼ症候群を示した患者さんに、利尿薬を使用することで尿量が増加したという臨床研究があります。

腎性貧血に対して
[薬用途]エリスロポエチン製剤
[薬名]エスポー(エポエチンアルファ)(8)(9)
[評価]☆☆☆
[薬名]エポジン(エポエチンベータ)(8)(9)
[評価]☆☆
[薬名]ネスプ(ダルベポエチンアルファ)(6)
[評価]☆☆☆
[薬名]ミルセラ(エポエチンベータペゴル)(6)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 腎性貧血の治療にエリスロポエチン製剤を使用することで、QOL(生活の質)を高めたり、脳卒中や心筋梗塞の発生頻度を低下させたりすることを示した信頼性の高い臨床研究がありますが、貧血を過度に補正することによってかえって脳血管障害をきたすという報告もあります。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
まずは血糖値のコントロールを
 糖尿病と診断されたら、糖尿病性腎症の発症にかかわらず、血糖値をできるだけ正常値までコントロールすることが重要です。それが腎症だけでなくあらゆる合併症を予防し、生活の質を保つことにつながります。

尿中“微量(ミクロ)アルブミン”検出検査が必要
 糖尿病性腎症を早く知るには、尿中“微量(ミクロ)アルブミン”検出検査が必要になります。しかし、検査を行わずにいたり、検査が陽性であったにもかかわらずその状態を放置していたりすると、遅かれ早かれ、高度のたんぱく尿が出て、血清クレアチニンが上昇し、腎不全へと進みます。
 したがって、まずは検査を行い、“微量(ミクロ)アルブミン”が検出されたら、これまで以上に厳格な血糖値のコントロールをします。レニンアンジオテンシン系阻害薬はしばしば合併する高血圧を下げる作用だけでなく、腎臓を保護する作用もあるため、高血圧の有無にかかわらず、使用されます。

血圧の目標値は130/80mmHg
 とくに高血圧については、通常の治療目標値140/90mmHgよりさらに低い130/80mmHg以下を目標とします。このレベルまで落とすと、糖尿病性腎症の進展を予防できる可能性が高まるということが確認されています。降圧薬の種類と量をきめ細かく調整する必要があります。
 たんぱく質制限食も糖尿病性腎症の進行を抑えることが確認されています。日常生活において積極的にこれらを行うことが重要です。

(1)Boussageon R, Bejan-Angoulvant T, et al. Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomaised controlled trials. BMJ 2011; 343: d4169.
(2)Adler AI, Stratton IM, et al. Association of systolic blood pressure with macrovascular and microvascular complications of type 2 diabetes (UKPDS 36): prospective observational study.BMJ. 2000;321(7258):412.
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出典:法研「EBM 正しい治療がわかる本」
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