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糖脂質【とうししつ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

糖脂質
とうししつ
glycolipid
複合脂質一種グリコリピドともいう。リンを含まず,ガラクトースアミノ糖成分としている。加水分解によって,脂肪酸,グリセリンを与えるグリコ糖脂質と,脂肪酸,スフィンゴシン (または類似の塩基) ,糖を与えるスフィンゴ糖脂質 (セレブロンド) などがある。グリコ糖脂質の糖部分にスルホン酸基が結合したり,硫酸エステルになったりしたスルホリピドもこれに属する。いずれもエーテルに可溶,アセトンに不溶。また水にコロイド状に溶けて界面活性を示し,生理的意義が重要視されているものが多い。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

とう‐ししつ〔タウ‐〕【糖脂質】
糖を含む複合脂質総称細胞膜構造の成分で、生体の機能に重要なものが多い。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

糖脂質
 分子内に糖と脂溶性の基の両方を含む物質の総称.主なものでは,スフィンゴ糖脂質は脂溶性基がセラミドであるもの,グリセロ糖脂質はアシルもしくはアルキルグリセロールであるもの.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

とうししつ【糖脂質 glycolipid】
糖と脂質が共有結合した物質の総称で,グリコリピドともいう。その代表例はスフィンゴ糖脂質であり,これはスフィンゴシン(図1)と脂肪酸が結合したものにさらに糖が結合したものである。スフィンゴ糖脂質は動物細胞の細胞膜に組み込まれて存在し,糖鎖は細胞の外側へと配向している。スフィンゴ糖脂質の構成糖としては,ガラクトース,グルコース,N‐アセチルガラクトサミン,N‐アセチルグルコサミンフコース,シアル酸が知られている。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

とうししつ【糖脂質】
広く動植物組織中に存在する複合脂質の一種。脂肪酸または脂肪族アルコールと糖が結合した構造を基本構造とする化合物。グリコリピド。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

糖脂質
とうししつ
glycolipid
生体の脂質のうち構成成分として糖が結合し、かつリン酸基のない複合脂質の総称で、グリコリピドともいう。糖の種類や数、アシル基(脂肪酸残基)の種類、硫酸基の有無などにより多くの分子種があるが、疎水性部分の構造によりグリセロ糖脂質とスフィンゴ糖脂質とに大別される。
 糖脂質の研究は、1874年ツディクムJ. L. W. Thudichum(1829―1901)による脳のセレブロシド(代表的スフィンゴ糖脂質)分離に始まった。その後、多様な糖脂質が脳に限らず少量ながら動物の各臓器や植物にも存在することがわかり、それらの分子構造や代謝経路が解明される過程で、山川民夫(1921―2018)をはじめとする日本の生化学者の貢献も大きかった。
 糖脂質は生体組織中の微量成分で、その役割は核酸やタンパク質のようには判然とせず生化学研究の対象物質としては脇役であった。しかし1980年代からの分析技術の向上、モノクローナル抗体の利用、糖鎖の合成技術の開発などにより、微量な糖脂質の構造や生体組織・細胞での分布が詳細に解明されるようになり、細胞と細胞の識別、接着、外来物質の認識と応答(シグナル伝達)、増殖と組織の分化の制御など、生命現象に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。糖分子がつながったもの(糖鎖)の構造は核酸の塩基とタンパク質のアミノ酸に次いで第三の情報配列といわれるようになった。[大川いづみ]

グリセロ糖脂質

グリセロ糖脂質は、ジアシルグリセリドの一端に1~4個の糖がつながったもので、2個のアシル基は一般中性脂肪のものと同類で、糖はガラクトース、フコースが多く、硫酸化したものもある。1930年代より研究され、植物や微生物に広く分布するほか、動物でも精巣などに存在し、がん細胞だけがつくる抗原のなかにグリセロ糖脂質もあることがわかってきた。セミノリピドとよばれる硫酸化したグリセロ糖脂質の一種は精母細胞で合成され、それ以降の胚(はい)細胞に発現しているが、これらの物質の生物学的役割は今後の研究課題である。[大川いづみ]

スフィンゴ糖脂質

スフィンゴ糖脂質の構造はさらに複雑、多様であるが、脂肪酸と同様の疎水性長鎖で一端にヒドロキシ基とアミノ基をもつスフィンゴシン塩基1分子に炭素数24などの特殊な長い脂肪酸がアミド結合したセラミドに、さらに1ないし数個の糖が結合したものと要約できる。代表例は脳に多いセレブロシドやガングリオシド(神経節ガングリオンより命名)である。
 スフィンゴ糖脂質にグリコシド結合している糖はガラクトース、グルコース、シアル酸などの7種類が知られているが、その配列はさまざまで、長いものは数十個の糖分子がつながったものもあり、2000年時点で400種類以上のスフィンゴ糖脂質が知られている。神経繊維の鞘(さや)の部分に多く存在するスルファチドなど糖に硫酸が付いたものもあり、シアル酸をもつ一群はとくにガングリオシドまたはムコ脂質とよばれる。
 スフィンゴ糖脂質はすべての脊椎(せきつい)動物の細胞の表層や細胞内の膜構造に疎水性部分を埋め込み、糖鎖は外側に向いて存在する。細菌性毒素やウイルス、インターフェロンの受容体(作用部位)ともなる。疎水性のセラミドが小胞体で合成され、ゴルジ体で糖転位酵素がこれに一つずつ糖を結合する。糖脂質は細胞内と表面の細胞膜の間で循環移動し、リソゾーム内で糖分子をはずす酵素によって分解される。細胞表層でも一様に漂っているのでなく、外界を認識し反応する機能が集中したラフト(いかだの意)とよばれる部分に集中して存在すると考えられるようになった。特定の糖鎖を検出するモノクローナル抗体を用いるなどして、ガングリオシドが脳組織の特定の部位に特定の時期に発現することなどが示され、生理的機能に関心がもたれている。癌の転移にガングリオシドが必要であるとか、ニューロンが脱落する変性疾患の代表としてのアルツハイマー病に、ガングリオシドが有効に作用するのではないかとの研究も行われている。
 なお、ヒトのスフィンゴ糖脂質代謝異常症という疾患がある。代表例のゴーシェGaucher病はグルコシルセラミド蓄積症(グルコセレブロシド蓄積症)ともいい、分解酵素の欠損により各臓器にグルコシルセラミドが蓄積する常染色体性劣性遺伝疾患で、リピドーシス(脂質蓄積症)のうちもっとも頻度が高い。テイ‐ザックスTay-Sachs病も遺伝性脂質代謝異常症で、分解酵素の異常によってガングリオシドが主として脳神経に蓄積する。[大川いづみ]
『池北雅彦他著『糖鎖学概論』(1997・丸善) ▽小倉治夫監修『複合糖質の化学』(2000・シーエムシー) ▽日本化学会編『糖鎖分子の設計と生理機能』(2001・学会出版センター)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

とう‐ししつ タウ‥【糖脂質】
〘名〙 生体組織中の微量成分。主として分子内にガラクトースを含む複合脂質の一群。脳の白質部に多く含まれる。フレノシン、ケラシン、ネルボンなどの類。

出典:精選版 日本国語大辞典
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化学辞典 第2版

糖脂質
トウシシツ
glycolipid

グリセリンまたはスフィンゴシンと,脂肪酸および糖質とから構成された複合脂質細胞膜の構成成分.構成脂肪酸のほとんどは,炭素数20以上の高級脂肪酸である.グリセリン含有糖脂質はグリセロ糖脂質とよばれ,植物および微生物に存在する.スフィンゴシン含有糖脂質はスフィンゴ糖脂質とよばれ,動物においては,とくに脳・神経系細胞に多く存在する.スフィンゴシンのアミノ基に脂肪酸がアミド結合したものはセラミドとよばれる.スフィンゴ糖脂質は,結合する糖質の種類により,さらに中性スフィンゴ糖脂質と酸性スフィンゴ糖脂質とに分類される.ガラクトースとセラミドからなる中性スフィンゴ糖脂質は,ガラクトシルセラミドまたはセレブロシド,そのガラクトースの3位ヒドロキシ基が硫酸化された酸性スフィンゴ糖脂質は,スルファチドとよばれる.糖質としてシアル酸を含む酸性スフィンゴ糖脂質は,ガングリオシドとよばれる.スフィンゴ糖脂質は,神経細胞などの発生や分化に伴い,その量や糖質の構造に特定の変化がみられることから,細胞内シグナル伝達を制御することによって,細胞の増殖や分化を調節していると推定されている.スフィンゴ糖脂質は,別名グリコリピドともよばれる.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
東京工業大学名誉教授理博 吉村 壽次(編集代表)
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