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美術療法【びじゅつりょうほう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

美術療法
びじゅつりょうほう
art therapy

絵画や造形、あるいはフィンガー・ペインティングfinger paintingなどを含む作業を行わせる心理療法の一つ。絵画その他の造形作品を通じて、統合失調症(精神分裂病)やうつ病などの精神病や各種神経症ばかりでなく、身体障害者や各種慢性病療養者などを含むさまざまな患者の病症をより深く理解し、診断や治療に役だてる点が注目されるようになった。精神疾患による絵画表現の特徴をみると統合失調症患者は精神病のなかでもっとも創造性に富む傾向がある。これは、病気による退行のために言語表現がうまくできず、そのかわりに絵画表現を求めるためと考えられているが、その絵は、線の断続、対象のゆがみ、空間配置の異常など統合性に欠け、幼児的な攻撃性がみられる。それに対してうつ病者は、より現実的でそれほど奇異ではない。攻撃性は自己へ向けられ、人物は非難され、打ちのめされたように描かれる。神経症患者の絵は、内容や空間関係にゆがみはなく、ストレス、強迫、衝動、不安、恐怖などが象徴的な方法で、かなり明確に表される場合が多い。

 また、優れた素質をもっていた芸術家が、絵画療法をきっかけにしていっそうその才能を開花させる場合もある。たとえば、アルコール依存症であったジャクソン・ポロックは、精神分析と絵画療法を受けるなかで、シュルレアリスムの限界を知り、アクション・ペインティングaction paintingという独自の境地を開拓した。

[村山久美子]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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