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肺炎球菌性肺炎

EBM 正しい治療がわかる本

肺炎球菌性肺炎
どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 肺炎球菌による肺炎では、まず最初に鼻水、のどの痛み、せきなどの症状が現れることがあります。その数日後、急激に悪寒(おかん)やふるえとともに39度以上の熱が出ます。胸痛(きょうつう)を覚えることも多く、汗がでて、脱力や筋肉痛、食欲低下、意識低下をおこすこともあります。せきは強く、最初は、痰(たん)は少ないのですが、徐々に肺出血による鉄さび色の痰がでます。聴診器では特有の水疱性(すいほうせい)ラ音(ぜろぜろという音)が聞かれ、レントゲン写真では気管支肺炎に特徴的な所見がみられます。痰の培養検査で、感染の原因菌をつきとめると同時に抗菌薬による治療を行います。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 肺炎球菌は一般の健康な人の50~60パーセントの上気道に見いだされる細菌です。通常の免疫力をもっている場合には問題となりません。ただし、免疫力が低下した場合などは肺炎や敗血症、心内膜炎(しんないまくえん)(心臓の内腔(ないくう)側の膜や弁におこる炎症)、化膿性髄膜炎(かのうせいずいまくえん)(脳のくも膜に炎症がおこる)の原因菌になります。感染力は強くないので隔離(かくり)などの必要はありません。
 上気道に存在する肺炎球菌が、分泌物(ぶんぴつぶつ)とともに肺のなかへ吸いこまれ、肺の奥(肺胞腔(はいほうくう))で増殖すると肺胞毛細血管(はいほうもうさいけっかん)から滲出液(しんしゅつえき)と赤血球がにじみでて肺胞腔内に充満します。これが鉄さび色の痰の元です。肺炎球菌の感染によって多くの痰が排出されると同時に、血管からの滲出液などにより呼吸が苦しくなります。

●病気の特徴
 肺炎のなかではもっとも多くみられます。免疫力が低下した高齢者などでは重症化する可能性もあり、ワクチンの接種が勧められます。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]抗菌薬による薬物療法を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 肺炎球菌性肺炎に代表される市中肺炎(病院に入院しているときに発病したものでない肺炎)のガイドラインでは、外来治療の場合、基本的に高用量のペニシリン系抗菌薬の内服で治療すべきであるとされています。わが国ではマクロライド系抗菌薬耐性の肺炎球菌がほとんどであるため、マクロライド系抗菌薬は第一選択としては推奨されません。ただし、高齢者や、閉塞性肺疾患など呼吸器系に基礎疾患をもつ患者に対しては、ペニシリン耐性肺炎球菌の存在を考慮してレスピラトリーキノロン系抗菌薬の使用が検討されます。(1)~(4)


よく使われている薬をEBMでチェック

外来で治療を行う場合
[薬用途]ペニシリン系もしくはレスピラトリーキノロン系の抗菌薬
[薬名]オーグメンチン(アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム)(1)(2)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]クラビット(レボフロキサシン水和物)(4)(5)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] これらの薬の効果は信頼性の高い臨床研究によって確認されています。

入院治療の場合
[薬名]ユナシン-S(アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム)(1)~(4)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]セフォタックス(セフォタキシムナトリウム)(1)~(4)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]クラビット(レボフロキサシン水和物)(1)~(5)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] これらの薬の効果は信頼性の高い臨床研究によって確認されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
鉄さび色の痰が特徴
 悪寒、発熱、せき、痰、胸痛といった症状は、原因となる菌にかかわらず肺炎にみられる一般的な症状ですが、肺炎球菌性肺炎の場合は鉄さび色の痰がでることが特徴です。
 肺炎球菌はもともと上気道に存在していて、通常の免疫力がある場合は問題にならないのですが、とくにお年寄りや免疫力の低下している場合などに、分泌物とともに肺のなかへ吸引され、肺の奥(肺胞腔)で増殖すると、肺胞毛細血管から滲出液と赤血球がにじみでて肺胞腔内に充満します。これが鉄さび色の痰がでる原因です。

外来の治療ではペニシリン系抗菌薬が基本
 一般に感染症の患者さんでは、原因となる菌の存在する可能性の高い場所の体液を培養し、原因となる菌の種類を確かめて、感受性試験によって有効な抗菌薬を選ぶのが理想です。したがって、肺炎患者さんでは、痰の培養により肺炎球菌によるものとの診断がつきさえすれば、ペニシリン系抗菌薬を用いて治療することができます。
 ただし、高齢者や、閉塞性肺疾患など呼吸器系の持病がある患者さんに対しては、ペニシリン耐性肺炎球菌の存在を考慮してレスピラトリーキノロン系抗菌薬が用いられることがあります。

必要に応じて対症療法を
 肺炎に伴う発熱、せき、痰には、それぞれ解熱薬、鎮咳薬(ちんがいやく)、去痰薬(きょたんやく)などを、必要に応じて対症的に用います。

(1)Donowitz GR. Acute pneumonia. In:Mandell GL, Bennett JE, Dolin R, ed. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases, 7th edition, Churchill Livingstone Elsevier, Philadelphia, 2010; 891-916.
(2)Mandell LA, Wunderink RG, Anzueto A, et al.Infectious DiseasesSociety of America/American Thoracic Society Consensus Guidelines on the Management of Community-Acquired Pneumonia in Adults. Clin Infect Dis. 2007;44:S27-72.
(3)Watanabe A,Goto H, Kohno S, et al. Nationwide survey on the 2005 Guidelinesfor the Management of Community-Acquired Adult Pneumonia: Validation of differentiation betweenbacterial pneumonia and atypical pneumonia. RespirInvestig. 2012;50:23-32.
(4)Saito A, Kohno S, Matsushima T, et al. Prospective multicenter studyof the causative organisms of community-acquired pneumonia in adults in Japan. J Infect Chemother. 2006; 2:63-69.
(5)東山康仁,渡辺 彰,青木信樹,二木芳人,他. 慢性閉塞性肺疾患症例の急性増悪に対するニューキノロン系抗菌薬とβ-ラクタム系抗菌薬の有用性.日化療会誌.2009;56:33-48.

出典:法研「EBM 正しい治療がわかる本」
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