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腰痛症【ようつうしょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

腰痛症
ようつうしょう
lumbago
腰部や殿部に感じる限局的な痛みのうち,明確な病変をもたないものに対していう。したがって,慢性虫垂炎,鼠径ヘルニア,女性器障害,慢性腹膜炎などで生じる腰痛は除外される。精神身体医学痛を「仮面をつけたうつ病」としているように,心因反応の一部として腰痛が現れることもある。老化現象による腰痛も多い。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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世界大百科事典 第2版

ようつうしょう【腰痛症 low back pain】
明らかな原因となる病気が発見できず,X線写真でも異常が認められず,筋肉過労や不良姿勢などが原因で生じたと考えられる腰の痛みをいう。したがって病名というよりも一つの疼痛状態であり,かなり広範囲の腰痛が含まれているわけで,個々の場合で痛みの原因が異なっている可能性もある。また,仮に腰痛症としてとらえたとしても,なにか原因の明らかな病気の初期の症状であることもあるので,痛みが続くようなら,さらに精密な検査をして痛みの原因をつきとめる努力がなされねばならない。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

腰痛症
ようつうしょう
low back pain

腰部の傷みは起立するヒトの宿命ともいえるものであり、腰部にかかる負担はきわめて大きく、とくに腰椎(ようつい)下部に力学的負担が集中的に加わる。したがって、腰椎の椎間板ヘルニアや脊椎(せきつい)分離すべり症がおこりやすく、加齢による退行性変化の一つである変形性脊椎症も腰椎下部に好発する。これらの疾患はいずれも腰痛の原因となる代表的なもので、ほかに腰椎を取り巻く筋肉に障害が加わっておこる腰筋痛、姿勢異常である脊柱変形によるものなど整形外科領域の疾患をはじめ、腎盂(じんう)腎炎や尿路結石、胆石などの胆管・胆嚢(たんのう)疾患、子宮筋腫(きんしゅ)などの女性性器疾患、骨盤内臓器の悪性腫瘍(しゅよう)など、腰痛を伴う疾患は多岐にわたって数多くある。しかし、これらは診察や検査によって発見され、いずれも腰痛を一つの症状としているので、各疾患名を診断名とし、一般に腰痛症という診断名は原因不明のものに対して使われる。

 腰痛は前述のような疾患ばかりでなく、さまざまな原因によっておこり、それらが明確に診断されにくい場合も多く、また互いに重複したり、患者の心理的・社会的・経済的因子を含めてきわめて多くの原因が複雑に絡み合って引き起こされる。急に腰をひねったり、重い物を持ち上げようとしたときなどに強い腰痛がおこるのは俗に「ぎっくり腰」とよばれるが、多くは日常生活で思い当たることもないのにおこり、痛む部位や範囲もはっきりせず、晴雨などによって痛みが強くなったり軽くなったりする。診断には、まず発病の状態などを問診し、姿勢や脊椎の動きをチェックしたり、痛む部位を圧迫して痛みがどこに波及するかを調べるほか、腱(けん)反射や下肢のあがりぐあいをみる神経学的検査やX線検査も行われる。治療としては、安静を守るなど保存療法が主で、ときに手術療法も行われる。いずれの場合にも心理療法を併用すると、その効果を高めることが認められている。

 保存療法としては、理学療法と薬物療法(鎮痛消炎剤、筋弛緩(しかん)剤、向精神薬など)、神経ブロック療法が行われる。理学療法の主体をなすのは腹筋や背筋の力を強化する腰痛体操で、ときには持続的・間欠的脊椎の牽引(けんいん)や水治療法、冷・温罨法(あんぽう)などのほか、体幹装具であるコルセットを用いることもある。マッサージも心理効果を含めて有効とされる。運動療法である腰痛体操にもいろいろあるが、たとえば、楽な姿勢であおむけに寝て、両足を伸ばしたまま軽く左右交互にあげたり、両足をそろえて同時にあげ、しばらく留めてからゆっくり下ろす。それぞれ20回ぐらいできるようになったら、胸から上を起こす運動を行い、だんだん回数を増やしていく。さらに、両足を伸ばしたまま上半身を起こし、足先に手の指先を触れたり、膝(ひざ)を軽くそろえて立て、上半身を起こしたり、左右交互に倒すようにして腰椎と骨盤をひねる運動なども行う。

[永井 隆]

『岩倉博光著『腰痛体操』(1980・金原出版)』『荻島秀男著『リハビリテーションシリーズ(1) 腰痛』(1981・小学館)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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六訂版 家庭医学大全科

腰痛症
ようつうしょう
Lumbago
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 下肢痛などの神経症状を伴わない腰痛のうち、とくに原因となる器質的病変が認めないものです。

 一般的に「ぎっくり腰」と呼ばれる急性腰痛症と、痛みは軽いものの強くなったり楽になったりを繰り返す「慢性腰痛症」があります。

原因は何か

 急性腰痛症は不意の動作、とくにひねり動作で急に起きることが多く、慢性的な腰痛症は日常生活での不良姿勢による腰の筋肉の疲労などが原因です。腰椎(ようつい)周囲の筋力が弱く、適切な姿勢が保持できなかったり、腰椎周囲の筋肉に過度の負担がかかることが、腰痛の原因になります。

検査と診断

 問診と診察所見を中心に、X線検査などの画像診断による除外診断になります。ほかに特定すべき疾患がないことを確認し、内臓疾患を含むほかの重大な病気を見逃さないようにして腰痛症という診断がなされます。

治療の方法

 急性腰痛症は、安静や投薬により通常数日で軽快します。

 慢性的な腰痛に対しては、主に、日常生活動作の改善、腰痛体操などの治療が行われます。非ステロイド性消炎鎮痛薬や筋弛緩薬が適宜使用されることもありますが、多くの場合、日常生活動作に注意するだけで腰痛はかなり改善します。腰痛の再発防止のためにも腰痛体操は大切です。

①日常生活の注意点図68

 重いものを持ち上げる際は、できるだけ体に引きつけて持ち上げます。おなかから対象までの距離を短くすることで、腰背部の筋肉にかかる負担は小さくなります。

 椅子に座る場合は、腰椎の前弯(ぜんわん)を減少させるために、膝の高さが臀部(でんぶ)の高さよりやや高くなるようにするか、膝を組んで座るようにします。

 立ち仕事の場合は、腰椎の前弯防止と筋肉の疲労を軽減させるために、足台を使うようにします。骨盤を水平に保つことで腰椎の前弯を減少させ、腰部の筋肉の疲労を減らすことができます。

 いずれにせよ、同じ姿勢を長時間とり続けないようにすることが大切です。

②腰痛体操

 腰痛体操の目的は、①不良姿勢の改善、②腹筋・背筋の強化、③軟部組織の柔軟性の獲得があげられます。図69に示すように4種類の腰痛体操があります。なお、腰痛が強い時は、腰痛体操を行わないのが基本です。

 Aの体操は、腹筋、殿筋(お尻の筋肉)、ハムストリングス(大腿部後面の筋肉)に力を入れるようにします。腰が浮かないようにしながら、十分に力を入れたあとに力を抜きます。この運動による不良姿勢の改善は、腰椎の前弯を減少させ、腰背部の筋肉に対する負荷を小さくさせます。

 Bの体操は、腹筋の強化を目的にしています。これにより腹腔内圧を上昇させ、自らの筋肉によるコルセットを作るようなもので、脊椎の安定性を得ることができます。膝関節と股関節は屈曲して行うようにします。膝関節と股関節をまっすぐに伸ばしてこの運動を行うと、逆に腰椎の前弯が増強してしまうからです。また、腹筋力強化には必ずしも上半身を垂直位まで起こすことはなく、肩が少し浮く程度で5秒ほど姿勢を維持すればよいでしょう。

 Cの体操は、腰背部のストレッチで腰椎周囲の軟部組織の柔軟性を得るために行います。腰痛症では腰背部の筋肉が拘縮を起こしていることが多く、急に体を前かがみさせると腰痛を生じやすいので、このストレッチは大切です。

 Dの体操では、背筋の強化を行います。下腹部に枕を置いて、これを支点に腰背筋の反り返り運動をします。強く反り返る必要はありませんし、枕が大きすぎると腰椎の過度の屈曲が起こり、痛みを誘発させることがあるので注意します。

 A~Dの体操のうち2~3種類を選んで、朝・晩の1日2回それぞれ5~10回程度から開始して、状況に応じて種類と回数を増やしていくことが大切です。

病気に気づいたらどうする

 無理な姿勢や同一姿勢の持続などの腰椎への負荷を減らしたり、体重コントロール、腰背筋・腹筋の筋力訓練などを積極的に行うことで痛みが軽快する可能性の高い病態です。一方、単なる腰痛でも重い病気の初期症状であることもあります。軽い症状でも整形外科を受診し、確実な診断とアドバイスを受けましょう。

久保 紳一郎

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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