●腸チフス【ちょうチフス】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
腸チフス
ちょうチフス
typhoid fever
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デジタル大辞泉
ちょう‐チフス〔チヤウ‐〕【腸チフス】
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監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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栄養・生化学辞典
腸チフス
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家庭医学館
ちょうちふす【腸チフス Typhoid Fever】
腸チフス菌という細菌が感染しておこる病気です。病人や保菌者(ほきんしゃ)の大小便にまじって出た腸チフス菌が、飲食物に入って経口感染(けいこうかんせん)します。
全身衰弱をおこす重い病気で、感染症予防法の2類感染症に指定されています。
都会では、年間を通じてときどき発生をみます。とくに、胃腸の弱る夏から秋にかけて、小流行することがあります。
近年、日本での発生は少なくなりましたが、近隣のアジア諸国には相変わらず多い病気で、輸入感染症として日本にもち込まれる危険があります。
好発年齢は、はたらき盛りの青壮年が海外旅行で感染し、帰国後に発病するケースが、近年目立ちます。
元来、子どもやお年寄りには少ない病気で、かかっても、子どもは軽症ですみます。
[症状]
感染して発病するまでの潜伏期間は1~2週間です。
病気は約1か月間続きますが、その間、1週間ずつ特徴のある症状がおこります。
●第1週
初め食欲不振、倦怠感(けんたいかん)、軽い頭痛、腹痛がおこり、寒けとともに発熱します。熱は、日ごとに上昇して5~6日で40℃前後になります。ちょうどかぜをひいた感じですが、のども痛まず、鼻水も出ず、熱が高くても汗をかきません。
●第2週
腸チフス菌がそこで増殖(ぞうしょく)するために、肝臓(かんぞう)や脾臓(ひぞう)がやや大きくなってきます。
胸や背中などに、直径2~4mmのバラ疹(しん)という赤い発疹(ほっしん)がまばらに現われますが、医師でないと発見しにくい症状です。
高熱が続き、腸チフス菌が小腸(しょうちょう)のリンパ節をおかすために下痢(げり)がちとなり、食欲がなくなり、衰弱(すいじゃく)します。重症になると難聴(なんちょう)になり、意識が混濁(こんだく)したり、肺炎を併発(へいはつ)したりします。
●第3週
熱の朝夕の高低差が大きくなり、食欲が出てきて、病気の回復の徴候がみえ始めますが、この時期は、危険な合併症の腸出血や腸穿孔(ちょうせんこう)のおこりやすい時期です。
●第4週
大きく上下しながら熱が下がり、数日で平熱にもどります。
[治療]
感染症予防法の2類感染症なので、感染力が高いなど、状況に応じて入院します。
治療は、医療保険と公費で行なわれ、自己負担はないのが原則です。
有効な化学療法薬や抗生物質の内服を始めてから5~6日で解熱しますが、2週間は服薬を続けないと再発することが多いものです。
輸液療法や合併症の予防・治療も行なわれ、約1か月半の入院が必要なこともあります。保菌者には胆嚢(たんのう)を切除する治療が行なわれることがあります。
●家族に患者が出たら
消毒や家族の検便など、保健所の指導を受けてください。
[予防]
有効な予防注射があって、必要に応じて受けることができます。
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世界大百科事典 第2版
ちょうちふす【腸チフス】
出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)
腸チフス
ちょうちふす
typhoid fever
腸チフス菌を病原体とする重症の急性熱性全身性感染症。感染症予防・医療法(感染症法)では3類感染症に分類されている。これといった特別の症状もないのに高熱が4週間くらい続いて全身が衰弱する疾患である。日本では、1946年(昭和21)ごろまでは年間数万人の発生がみられる代表的な伝染病であったが、その後は年を追って減少し、68年以後は年間数百人程度で欧米なみとなった。一方、韓国や東南アジアなど諸外国との交流が激増するにつれ輸入伝染病として注目を浴び、とくに耐性菌の持ち込みが心配されている。20~40歳代の罹患(りかん)率が高く、男女差はほとんどない。小児や高齢者の患者は少なく、小児では症状も軽いことが知られている。流行期は昔は夏や秋に多い傾向があったが、患者数の減少とともに季節的な変動が少なくなり、都市部では年間を通じてときどき発生し、海外旅行者が外国で感染して帰国後に発病する例が主となっている。
[柳下徳雄]
症状
1~2週間の潜伏期を経て全身の倦怠(けんたい)感、頭重感、食欲不振、腰痛や四肢の関節痛などがおこり、悪寒を伴って発熱する。熱は日増しに0.5~1℃の差で階段状に上昇し、5~6日で40℃前後となる。下痢便をみることは少なく、便秘に傾くのが普通である。
発病第2週には40℃前後の稽留(けいりゅう)熱が続き、脾臓(ひぞう)や肝臓が腫(は)れてやや大きくなる。脈は高熱のわりには少ない(比較的徐脈)のが特徴である。胸、腹、背中などにバラ疹(しん)という直径2~4ミリメートルくらいの淡紅色の発疹(ほっしん)が5~30個くらい散在性に発現するが、小さいため見逃されやすい。舌は黄褐色の厚い舌苔(ぜったい)に覆われ、食欲がなくなって衰弱する。合併症として気管支炎や肺炎をおこすこともあり、重症の場合は難聴や意識障害などがみられる。
発病第3週には熱が弛張(しちょう)熱となり、朝夕の差がしだいに大きくなる。食欲が出て回復の傾向がみられるが、危険な合併症である腸出血をおこしやすい。
発病第4週になると、熱は朝夕大きく上下しながらしだいに下がり、1週間くらいで平熱となって全快する。以上は特効薬のクロラムフェニコール(CP)を使用しない場合の定型的な経過である。CPを使うと、有熱期間の短縮をはじめ臨床経過に種々の良い変化がみられる。
[柳下徳雄]
検査
早期には血液から、その後は糞便(ふんべん)や尿からも菌が培養検出される。また、発病第2週以後にはウィダール反応(血清中の凝集素による特異的凝集反応)を調べ診断の参考とする。
[柳下徳雄]
治療
長年の間、腸チフスには前述のCPが特効薬で第一選択薬とされ、チフス菌がCPに対して耐性菌であることがわかってからはアンピシリン(アミノベンジルペニシリン)が用いられてきた。しかし、20世紀末には両薬剤が効かない薬剤耐性チフス菌が多数出現し、効果が期待できなくなったため、ニューキノロン(ピリドンカルボン酸)系の化学療法薬のトシル酸トスフロキサシン(オゼックス)やレボフロキサシン(クラビット)が第一選択薬となった。服薬開始後5~6日で平熱となり回復するが、その後も2~3週間は投薬を続けないと再発することがある。また、輸液を含む栄養補給、安静療法、合併症の予防処置なども行われる。
予後はCP療法以後、合併症も少なくなり死亡することはほとんどなくなった。しかし、早期診断が困難なために手遅れとなり、腸出血などをおこして危険な経過をとることもある。なお、保菌者に対しても前記の化学療法薬の大量長期内服が有効であるが、胆石の保有者は外科的に保菌病巣の胆嚢(たんのう)切除術を必要とすることもある。
[柳下徳雄]
感染と予防
腸チフス菌は患者や保菌者の糞便中に排出され、食物や飲料水に混入したり、手指に付着して経口感染する。予防には、患者や保菌者を発見し、都道府県知事が指定した感染症指定医療機関に入院させ確実に治療する。また患者のいた場所や使用した便所、衣類、物品などを消毒する。予防注射(腸チフスパラチフス混合ワクチン)も有効とされるが、国内では患者の発生もまれなため、定期的な実施は中止され、東南アジアなどの海外旅行の際に必要に応じて受けることになっている。
なお、似た病名の疾患にパラチフスと発疹(はっしん)チフスがある。パラチフスparatyphoid feverは腸チフスに類似した軽症の疾患であるが、発疹チフスはまったく異なり、シラミによって媒介される発疹チフスリケッチアの感染による疾患である。
[柳下徳雄]
パラチフス
腸チフス菌と同じサルモネラ菌属に属するパラチフス菌による消化器系の急性伝染病で、好発年齢、流行季節、感染型式などは腸チフスと同様である。
パラチフスは、パラチフス菌の種類により、パラチフスA、B、C、Kの4種に分けられる。多くはAかBで、Cは欧米で多少みられるが日本ではきわめてまれであり、Kもまれである。パラチフスAは軽症の腸チフスと同じ経過をとることがほとんどで、胃腸型をとることはまれであり、感染症予防・医療法では3類感染症に分類される。パラチフスA以外はサルモネラ症として取り扱われる。パラチフスBは腸チフス型か急性胃腸炎型か、いずれかの病像を呈する。急性胃腸炎型の場合は嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などがみられ、食中毒に準じた手当てをする。そのほか、腸チフスとほぼ同様である。予後は腸チフスに比べて良好で、パラチフスBはパラチフスAよりも予後がよい。
[柳下徳雄]
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精選版 日本国語大辞典
ちょう‐チフス チャウ‥【腸チフス】
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