●葉緑体【ようりょくたい】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
葉緑体
ようりょくたい
chloroplast
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デジタル大辞泉
ようりょく‐たい〔エフリヨク‐〕【葉緑体】
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世界大百科事典 第2版
ようりょくたい【葉緑体 chloroplast】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
葉緑体
ようりょくたい
chloroplast
緑色植物の緑色部分の細胞に特有の構造体。大きさが光学顕微鏡で見える水準にあるうえ、クロロフィル(葉緑素)を含んで緑色をなしているのでよく目だつ。陸上植物では直径5マイクロメートル、厚さ1~3マイクロメートルぐらいの凸レンズ形(円盤状)をしているのが普通であるが、緑藻の仲間ではベル形、螺旋(らせん)形、星形、網状のものがあり、分類の目安となる。褐藻類、紅藻類の葉緑体はそれぞれ褐色、紅色にみえるが、これはクロロフィル以外にフコキサンチン、フィコエリスリンなどの色素を含んでいるためである。葉緑体の一細胞当りの数は、種子植物では一定していない場合が多く、だいたい数十個から数百個に及ぶ。原始的な体制の植物ほど一細胞当りの数は少なく、また一定している例が多い。なかには1細胞当りに1個という例もある。
もやしのように、光の当たらない条件下で育った植物では、葉緑体にクロロフィルが形成されず、淡黄色を呈している。これはエチオプラストとよばれる黄色の色素体のためであるが、光の照射を受けると速やかにクロロフィルが合成されて緑化する。
種子植物の根や茎の内部、あるいは斑(ふ)入りの葉の白色部には、エチオプラストのように緑色を欠き、しかも光を与えても緑化しない色素体がある。これを白色(はくしょく)体とよぶ。デンプンを貯蔵する器官の細胞では盛んにデンプンの合成が行われる。このような貯蔵デンプンの大きな粒を含む色素体をアミロプラストまたはデンプン形成体とよぶ。ある種の植物の花弁や黄葉では、濃い黄色ないし橙(だいだい)色を呈し、クロモプラストまたは有色体とよばれる色素体がみられるが、これはクロロフィルが失われ、そのかわり黄色、橙色などのカロチノイドが蓄積されたものである。また形成層のように、盛んに分裂を繰り返している未分化の細胞には、白色体に似ているが小形で、分裂によって増殖するものが含まれている。これはプロプラスチド(原色素体、前色素体)とよばれるもので、細胞の分化に伴って葉緑体、白色体、アミロプラスト、クロモプラストなどに分化してゆく能力をもっている(これら全体を総称してプラスチドとよぶ)。
[佐藤七郎]
葉緑体の構造
葉緑体の構造をみると、外表面には二枚の薄い膜(単位膜)からなる包膜がある。包膜に囲まれた内部には、同じ単位膜でできたチラコイドとよばれる扁平(へんぺい)な袋があり、葉緑体の全長にわたって、ほぼ平行に並んでいる。陸上植物の葉緑体では、この大きなチラコイドのところどころに小さいチラコイドが何枚も重なって付着している(これをグラナとよぶ)。藻類などでは、グラナ部分のチラコイドの大きさが不ぞろいであったり、グラナがなく、チラコイドが2~3枚ずつ全面にわたって接着して重層チラコイドをつくっていたりする。このチラコイドの配列の様式は系統と関連があり、分類の指標となる。
チラコイドの周囲を埋めている物質はストロマとよばれ、比較的構造に乏しいが、リボゾーム(RNA‐タンパク質複合体)があり、いろいろの脂質が液滴となって散在している。ストロマには、太さ2.5ナノメートルぐらいのDNAの分子がみられることもある。種子植物と緑藻植物では同化デンプンがこのストロマの中に形成される。
[佐藤七郎]
葉緑体と光合成
葉緑体の生理的機能は光合成である。光合成の前段階は、光エネルギーでATP(アデノシン三リン酸)と還元力としてのNADPH(還元型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を生成する反応で、これを明反応とよぶ。明反応はもっぱらチラコイドで行われる。生成されたATPとNADPHはストロマ中に放出される。ストロマ中には二酸化炭素をリブロース二リン酸に結合させたうえで、これを二分子のホスホグリセリン酸にする酵素がある。これが炭酸同化作用であり、このときに明反応でつくられたATPとNADPHが消費される。ホスホグリセリン酸はその後やや複雑な経路をたどって六炭糖となり、一部はショ糖として細胞質中に送り出される。他の六炭糖はいったん同化デンプンとなって蓄積され、夜間になって明反応が進行しなくなるとショ糖に変えられて細胞質中に放出される。二酸化炭素が固定されて糖がつくられる一連の反応を暗反応とよぶ。
葉緑体内では、炭酸同化だけではなく、窒素の同化も行われる。根から吸収された硝酸イオンは、葉の細胞の細胞質内で亜硝酸イオンに変えられて葉緑体内に入り、ここで明反応で生成されたATPと還元型フェレドキシンを使ってアンモニアを経てグルタミン酸などのアミノ酸が合成される。このようなアミノ酸合成は白色体やプロプラスチドでも盛んに行われている。この場合はATPとNADPHは明反応以外で生成される。
このように、葉緑体は無機の炭素と窒素を有機化合物に変える役割を果たして、地球上の生命へのエネルギーおよび必要元素供給の元締めをなしている。葉緑体にはDNAがあり、分裂によって増殖し、単細胞の藍(らん)藻に類似した性質があるので、葉緑体は、藍藻が共生して遺伝的に定着したものではないかという「細胞共生進化説」が注目を集めている。
[佐藤七郎]
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典
ようりょく‐たい エフリョク‥【葉緑体】
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化学辞典 第2版
葉緑体
ヨウリョクタイ
chloroplast
クロロプラストともいう.高等植物および藻類の細胞中に存在する光合成器官であって,その形は星状,環状,板状などの特殊なものもあるが,球状のものでは直径は約数 μm である.内部は光合成サイクルの酵素類を含むストロマ(stroma)の部分と,光合成色素タンパク質および電子伝達系を含む膜状のラメラ(lamella,またはシラコイド,thylakoid)を積層したグラナ(grana)の部分よりなっている.ラメラは厚さが約10 nm,直径約500 nm の袋状のもので,そのなかで光合成の初期光化学反応が行われている.
出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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栄養・生化学辞典
葉緑体
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