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薬害エイズ問題【やくがいえいずもんだい】

日本大百科全書(ニッポニカ)

薬害エイズ問題
やくがいえいずもんだい
薬害エイズ」は、エイズウイルス(HIV=ヒト免疫不全ウイルス)に汚染された血液製剤で感染したエイズの総称。ウイルス汚染は、薬の副作用による本来の薬害とは異なるが、わかりやすいことから一般に受け入れられた。原因となったのは2000~2万人分の血液から凝固因子を効率的に取り出す血液凝固因子製剤。日本の製剤はHIV感染率の高いアメリカでの売血を原料にし、1985年(昭和60)7月まで加熱製剤化が遅れたため、約5000人の血友病患者の4割、2000人が感染したと想定される。1989年(平成1)国・製薬会社を相手とした民事訴訟は、患者側に理解のあった衆院議員菅直人が厚生大臣に就任したこともあり、1996年3月に和解が成立した。一方、東京・大阪地検は患者の告発をうけ、当時の研究者や官僚が十分な注意を怠り患者を死に導いたとして、元エイズ研究班長の安部英(たけし)、元厚生省生物製剤課長の松村明仁、松下廉蔵らミドリ十字(現、田辺三菱製薬)の歴代3社長を逮捕した。
 前記の5人はいずれも業務上過失致死罪で起訴され、1997年3月から三つの刑事裁判が争われた。「ミドリ十字ルート」の3被告は当時の社長、副社長、専務で、「加熱製剤の販売開始後も非加熱製剤を回収せずに販売、1986年に使った患者を死亡させた」責任を問われた。大阪高裁は松下被告に禁錮1年6か月、須山忠和被告に1年2か月の実刑を言い渡し、2005年6月、最高裁で確定した。元専務の川野武彦は途中で死亡した。「厚生省ルート」の松村被告は「ミドリ十字ルート」の事件にからみ「ウイルスに汚染された非加熱製剤の使用禁止、回収命令を出すなどを怠って患者を死亡させた」として、一、二審で「禁錮1年執行猶予2年」の判決を受け、2008年3月、最高裁で確定した。「官僚の不作為」が初めて罪と認められた。「帝京大ルート」の安部被告は、部下の医師が使用した非加熱製剤を「危険性を知りながら使用を制止せず、注意義務を怠った」責任を問われたが、2001年3月、東京地裁は無罪を言い渡した。安部被告は認知症により控訴審の公判は停止となり、2005年4月、死去した。[田辺 功]
『大阪HIV訴訟弁護団監修『薬害エイズ国際会議』(1998・彩流社) ▽東京HIV訴訟弁護団編『薬害エイズ裁判史1~5』(2002・日本評論社) ▽山崎喜比古・井上洋士編『薬害HIV感染被害者遺族の人生――当事者参加型リサーチから』(2008・東京大学出版会) ▽武藤春光・弘中惇一郎『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実――誤った責任追及の構図』(2008・現代人文社、大学図書発売) ▽桜井よしこ他著『薬害エイズ「無罪判決」、どうしてですか?』(中公新書ラクレ)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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