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薬疹【やくしん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

薬疹
やくしん
drug eruption
常用量あるいは常用量以下の薬剤の全身的投与により出現する各種の皮膚粘膜病変をいう。急性のものと慢性のものに大別できる。 (1) 急性薬疹 薬剤投与後に急性に現れ,投薬中止により比較的短期間で消失する病変。アレルギーないしは中毒性機序によることが多い。臨床症状中毒疹型で,丘疹,紅斑,膨疹,小水疱,紫斑性皮疹が対側性に多発する。重篤なものは皮膚粘膜眼症候群型の症状を見せる。特殊なものとして,薬剤に起因する光線過敏症と,一定の部位にのみ生じる固定薬疹がある。 (2) 慢性薬疹 長期間の投薬後に徐々に現れ,休薬してもすみやかに軽快しない病変。薬物の慢性毒性機序によることが多い。臨床症状はざ瘡様皮疹,結節性増殖性皮疹,角化症およびボーエン病様病変,扁平苔癬様皮疹,多毛,脱毛,歯肉増殖,色素沈着,白斑黒皮症,全身性紅斑性狼瘡様病変などがあり,個々の薬剤ごとに特有な症状を呈する。 (3) 固定薬疹 特定の部位に限って現れる薬疹で,皮膚粘膜移行部,関節背面など,外的刺激を受けやすい部位に好発する。円形の紅斑浮腫性皮疹あるいは水疱性,びらん性皮疹として現れ,治癒後に紫黒,紫褐色の色素沈着を残す。原因薬剤を再摂取すると,色素沈着の部位が発赤腫脹し,さらに高度の色素沈着を残す。再発を繰返すうちに既存の皮疹が増大し,さらに他部位に新皮疹が現れる。バルビタール系薬剤の使用量減少,ピラゾロン系薬物の使用禁止により,最近,固定薬疹は著しく減少した。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

やく‐しん【薬×疹】
薬物を投与したことが原因となって生じる発疹(ほっしん)。薬物に対してアレルギー中毒を起こしたことによる。→薬物アレルギー

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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家庭医学館

やくしん【薬疹 Drug Eruption】
[どんな病気か]
 内服・注射などで体内に入った薬剤によって生じた皮疹(ひしん)(皮膚に出るさまざまの症状の総称)を薬疹といいます。多くの場合、アレルギー性です。ほとんどの人は薬剤に対してアレルギー反応を示しませんが、一部のかぎられた人ではアレルギー反応がおこり、薬疹ができるのです。その場合でも、薬剤が使われ始めてからそれに対するアレルギー反応をおこすようになるまでには一定の期間(感作(かんさ)期間)がかかります。つまり、それまで何の問題もなく内服していた薬剤に対し、途中からアレルギー反応をおこすようになるわけです。
 原則的に、それまでまったく内服したことのない薬剤で薬疹を生ずることはありません。もし生じたとすれば、その人はすでにその薬剤に類似した構造をもつ薬剤に「感作」されていたと考えられます。感作までに要する期間は一定していませんが、通常1~2週間のことが多く、2~3か月に数回程度しか内服しない薬剤では数年たってから薬疹ができることもあります。
[症状]
 軽いものから死に至るものまで、さまざまな種類の皮疹ができます。ある薬剤がこういう種類の薬疹をおこしやすいということはいえますが、皮疹の性状から原因薬剤を特定することはほぼ不可能です。
 もっとも頻度が高いのは麻疹(ましん)(はしか)、風疹(ふうしん)に類似した皮疹ができるものです。からだじゅう左右対称に細かい(米粒半分大の)赤い斑点(はんてん)ができ、多少かゆみをともないます。進行すると、個々の皮疹が大きさ、赤みを増して浮腫性(ふしゅせい)となり、融合(ゆうごう)していきます。ここまで進行してしまうと、原因薬剤を中止しても、さらに重症化する可能性があり、全身の皮膚がびまん性に赤くなり(からだじゅうに赤みがみなぎり)、水疱(すいほう)ができます。赤くなった皮膚は軽くこするだけで容易に剥(は)がれ落ちるようになります。これは中毒性表皮壊死融解症(ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう)と呼ばれ、全身熱傷(ぜんしんねっしょう)に似た状態となります。またその亜型(あけい)(類似型)として口唇(こうしん)や口の中、陰部などの粘膜(ねんまく)がおかされるスティーブンス・ジョンソン症候群(しょうこうぐん)があります。
 このような重症の薬疹は、発熱、全身倦怠(けんたい)、肝(かん)障害、腎(じん)障害などの全身症状をともなうことが多く、入院して治療しなければなりません。
 もっとも軽い薬疹と考えられているのは、原因薬剤を内服するたびに皮膚の同じ部位(口の周囲、陰部など)に円形の赤い斑(色の変化)ができる固定薬疹(こていやくしん)です。原因となる薬を内服していないときは円形の色素沈着(しきそちんちゃく)だけしかみられませんから、よく「しみ」とまちがわれますが、原因となる薬(短期間不定期に内服している場合が多い)を中止すると軽快します。ただし、多発するものでは重症化することがあります。
 そのほか、慢性の経過をとって紫紅色をした多少隆起した皮疹がたくさんできる苔癬型(たいせんがた)と呼ばれる薬疹もあります。これは脳(のう)の代謝(たいしゃ)を改善したり血圧を下げたりする薬剤を比較的長期間内服している中高年の人にみられます。この場合は、原因薬剤を中止しても軽快するまでに多少時間がかかります。
 光が当たるところに皮疹ができやすくなる光線過敏型(こうせんかびんがた)もあります。これは手背(しゅはい)(手の甲)、前腕伸側(ぜんわんしんそく)(腕の外側)、くびのつけ根の前(Vネックの部分)、顔面などに皮疹ができるもので、春から初夏にかけてみられます。
[検査と診断]
 薬剤がいつから使われ始め、いつ、どのような皮疹が、どこにできたかが診断にはきわめて重要です。数種類の薬剤がさまざまな期間にわたって使われている場合にはとくにそうです。
 一般的に、疑わしい薬剤を中止して皮疹が軽快した場合、それを原因薬剤とみなす場合が多いのですが、もともと皮疹をおこしやすいウイルス性疾患にかかっていれば、薬剤によるかどうかを判断するのは困難です。風疹、麻疹のように必ず皮疹がみられるものから、EBウイルスのようにあまり皮疹を生じないものもありますが、ウイルス性の皮疹と薬疹との区別はつきにくいのです。
 理想的には、健康になってからもう一度薬剤を使ってみて同様の皮疹ができれば原因薬剤が確認できるわけです。でも、この再投与試験を尻込(しりご)みしてしまう人が多いため、原因薬剤を軟膏(なんこう)の形で皮膚に貼付(ちょうふ)するパッチテストを行なったり、血液中のリンパ球を試験管内で薬剤と反応させるテストを行なったりします。しかし、これらの方法はあまり感度が高くなく、信頼性に欠けます。少量から慎重に行なえば、再投与試験は安全で、現在もっとも信頼性が高い検査方法といえます。
[治療]
 原因薬の使用中止がもちろん大事ですが、それでも皮疹が拡大し重症型へ移行する場合もあります。そのときは副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)の内服や注射が必要になります。また、中毒性表皮壊死融解症では熱傷に準じた治療を行ないます。
[予防]
 薬疹ができた直後は原因薬剤をつきとめたいという思いが強い人も、皮疹が消退してしまうとその意欲が薄れるようです。しかし、薬疹でもっともたいせつなのは再発の防止です。そのためにも、診断と検査の項で述べた検査方法を組み合わせて原因薬剤をつきとめておくことです。そして、できれば、中止した薬剤にかえて使用できる薬剤を知っておくことが重要です。
 さらに、このような薬剤についての個人情報を記した薬疹カードを絶えず携帯しておくことが再発予防に欠かせません。
 原因となる薬剤の成分は1つとはかぎらないうえ、薬剤は数種類の有効成分からなっていることが多いため、どの成分に対してアレルギーがあるかを明らかにしておくことも重要です。とくに市販薬の場合は、商品名が異なっていても同じ原因成分を含んでいることも多いので注意が必要です。
 重要なことは、薬疹をおこさない薬剤は存在しないという認識をもつことです。漢方薬といえども例外ではありません。ビタミン剤として市販されていた薬に含まれる微量の不純物が、きわめて特異な薬疹を引きおこした例も報告されています。

出典:小学館
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それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

世界大百科事典 第2版

やくしん【薬疹 drug eruption】
体内に入った薬剤や,薬剤の作用によって体内に産生された物質により,生体が異常な影響を受け,その結果生じた発疹をいう。中毒疹の一つ。発生機序は種々で,薬理作用あるいは中毒,アレルギーなどがあるが,アレルギー性によるものが大部分を占める。症状も多彩で,その程度もいろいろである。固定薬疹fixed drug eruptionは,特定の薬剤が原因となり,原因が加わるごとに同一部位に発疹が生ずるもので,原因となる薬物はピリン剤,サルファ剤,バルビタール剤など。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

やくしん【薬疹】
薬剤によって生じる発疹。薬剤の中毒による中毒疹と、特異体質によるアレルギー疹とがある。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

薬疹
やくしん
中毒疹の一種で、内服、注射、吸入などの経路によって体内に入った薬剤が原因でおこる皮膚病をいう。同じ薬剤でも軟膏(なんこう)類、噴霧、点眼、点鼻などの局所療法によって直接に接触した皮膚面に生じた皮疹は薬物性皮膚炎といい、非アレルギー性の一次性刺激性皮膚炎あるいはアレルギー性の接触湿疹として、薬疹とは別に取り扱われる。
 薬疹は、単なる紅斑(こうはん)から、生命を危険にさらすスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死(えし)融解症(TEN)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)などの重症薬疹に至るまで、多種多様の皮膚症状を現す。その多くに共通してみられることは、そのおこり方が突然であると同時に、広い範囲にわたって生ずる傾向をもっていること、皮疹の赤い色調が鮮明であること、重症例では粘膜に大小の水疱(すいほう)がしばしば生じ、発熱、胃腸障害、腎(じん)障害、肝障害、造血機能障害、中枢神経系統の異常などの全身症状も合併してくることなどである。
 薬疹には次のような諸因子が発生に関係している。(1)薬理学的因子 過量に薬剤を投与すると、だれでもその薬剤特有の中毒症状をおこすなど。(2)患者の薬物代謝的要因 ある薬剤に対して非耐性の患者は、普通おきない少量でも副作用をおこすなど。(3)免疫・アレルギー学的因子 その薬物が抗原・アレルゲンとなり、抗原抗体反応や細胞性免疫などの免疫学的過敏反応を引き起こす。(4)生態学的因子 抗生物質を投与すると、菌交代現象あるいは腸内細菌叢(そう)の変動をきたして、ビタミン欠乏症、血清コレステロール低下などをおこす。(5)その他の因子 薬物相互作用の問題あるいは体内にもっているウイルスの再活性化などの新たな問題。
 薬疹についてさらに重要なことは、病状と薬剤との関係である。薬疹の種類は多種多様であるが、違った薬剤によって同じ病状がおこり、一方、同じ薬剤が患者によって違った病状をおこす。しかし、同一の患者では同一病状がおきるのが普通である。
 薬疹の種類は次のとおりである。(1)固定薬疹型 一定の部位に発生し、円形の赤紫色の斑として現れ、ひりひりした感じを自覚することが多い。(2)播種(はしゅ)状紅斑丘疹(きゅうしん)型(麻疹紅斑型) アワ粒大の紅斑が左右対称性にびっしりできる。かゆみは軽い。(3)紅皮症型 全身あるいは広い範囲にわたって皮膚がびまん性に赤くなって皮膚の表面の角質層がぼろぼろとむける。(4)結節性紅斑型 両下腿(かたい)に有痛性の紅斑を生ずる。(5)多形滲出(しんしゅつ)性紅斑型 爪甲(そうこう)大までの円形で境界明確な紅斑で、中央部と、辺縁部で色調が変わり同心円状となることが多い。軽いかゆみがある。好発部位は前腕と手指背、下腿と足の指の背で、左右対称性に多数生ずる。中心に水疱をつくることもある。(6)スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)(または粘膜皮膚眼症候群型) 目が赤くなって口の中と外陰部に水疱を生じ、皮膚に紅斑を生ずる。発熱、関節痛などの全身症状を有する。(7)中毒性表皮壊死融解症(TEN) 高熱を発し、全身の皮膚が赤くただれる。粘膜症状も強く、スティーブンス・ジョンソン症候群の発展型と考えられる例も多い。しばしば命にかかわる薬疹の中でも最重症型である。(8)薬剤性過敏症症候群(DIHS) いくつかのきまった薬剤で生じることが知られている。発熱と血液異常・リンパ節腫大・体内臓器異常を合併しやすい。体内ウイルスの再活性化が薬剤に対するアレルギーとともにみられるのが特徴とされている。(9)じんま疹型 かゆみの強い皮疹で、中心は白っぽく扁平(へんぺい)に隆起し、その周囲は赤い。ばらばらとあるいは地図状に生じ、2時間くらいで消えて、また新しくできる。しかしこれの重症型は呼吸困難・血圧低下などを合併し、アナフィラキシー・ショックとなる。(10)血管神経性浮腫(ふしゅ)型 じんま疹に似たもので、限局性の浮腫が口唇、眼瞼(がんけん)部(まぶた)などに生ずる。(11)湿疹型 アワ粒大の小さい紅斑、紅色丘疹と漿液(しょうえき)性丘疹が汎発(はんぱつ)性に多数生じ、強いかゆみがある。左右対称性に発生する。(12)紫斑型 出血のため生じた爪甲大までの赤紫色の斑で、ガラス板で押しても消えない。(13)(ざそう)型 いわゆるにきびが多数生ずる。(14)扁平苔癬(たいせん)型 紫褐色の扁平の丘疹が多数生ずる。(15)エリテマトーデス様型 顔面に鼻を中心として両頬(ほお)に広がった蝶(ちょう)形紅斑が生ずる。(16)光線過敏症 日光に当たると皮膚炎をおこす。(17)角化・水疱・色素沈着型 手や足の皮膚が特有の紫褐色となり、硬くなり、水疱・びらん・出血を伴う。(18)色素異常型 黒灰色、黄褐色、青灰色、暗青色あるいは黄色となる。(19)その他 毛髪色素欠乏症型、脱毛症型などがある。[伊崎正勝・伊崎誠一]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

やく‐しん【薬疹】
〘名〙 薬を飲んだり注射したりした後、数分ないし数時間で皮膚上に現われる発疹。薬物に対するアレルギーや中毒などによる。原因となる物質の量や質、あるいは発疹の症候などはまちまちである。ピリン疹、サルファ疹など。

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六訂版 家庭医学大全科

薬疹
やくしん
Drug eruption
(お年寄りの病気)

高齢者での特殊事情

 薬疹は、内服や注射などで体内に入った薬剤によって、皮膚に発疹が生じた状態で、その発症機序(仕組み)としてアレルギー性、中毒性などが知られています。皮膚症状のみならず、発熱や関節痛、各種の臓器障害などの全身症状を伴うことが多くなります。

 薬疹のポイントと高齢者での特徴は次のとおりです。

①薬疹をまったく起こさない薬剤はなく、抗生剤などの汎用(はんよう)薬剤ほど薬疹を起こしやすい。

②異なった薬剤でも薬の構造が似ている場合は、再発を起こす(交叉(こうさ)反応)。

③長期間使用して無事だった薬剤でも、体調の変化などにより薬疹を起こしうる。長期の使用(蓄積(ちくせき)作用)で初めて発症する薬疹もある(金製剤など)。

④高齢者は多剤を内服中のことが多く、原因薬剤を特定しにくいことがある。

⑤造影剤などの検査薬も原因薬剤になりうる。

治療とケアのポイント

 薬疹を治療するうえで最も大切なことは、原因薬剤と推定される薬をただちに中止することです。

 高齢者は使用薬剤が多く、原因となる薬を特定しにくいこともまれではありませんが、最近使い始めた薬剤(感冒薬(かんぼうやく)など)、薬疹を起こすことの多い薬剤(抗生剤、非ステロイド性消炎鎮痛薬、高尿酸血症(こうにょうさんけっしょう)治療薬、抗てんかん薬など)、基礎疾患の予後に影響しない薬剤の順に、可能な範囲で疑いのある薬を中止していくとよいでしょう。ただし、病院で処方された薬を中止する場合は、必ず主治医に相談してください。

 治療は病院での投薬が必須で、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の外用が一般的です。症状の激しい場合は、ステロイド薬や肝庇護薬(かんひごやく)の内服や注射が併用されます。

 各種の臓器障害(消化器官、眼、造血器など)の合併がみられる場合は、入院治療が必要になります。

 治療後は原因薬剤、あるいはその疑いのある薬剤を再び使用しないように注意することが最も大切です。原因薬剤の確定には、疑いのある薬を用いた各種試験(皮膚貼付(ちょうふ)試験、皮内反応試験、リンパ球刺激試験、再投与試験など)の実施が必要ですが、高齢者では基礎疾患の治療を優先するなどの理由で検査が十分に行われず、原因薬剤を特定できないことも少なくありません。

その他の重要事項

 主要病型は次のとおりです。

播種状紅斑丘疹型(はしゅじょうこうはんきゅうしんがた)

 最も普通のタイプの薬疹で、小さな紅斑や丘疹性(少し盛り上がる)紅斑がポツポツと広い範囲に発症し、つながりやすい傾向を示します(図18)。多くは原因薬剤の摂取後7日以内に発症します。

じんま疹

 膨疹(ぼうしん)(蚊に刺された跡に似た、限局性の浮腫)が体の各所に生じます。1個の膨疹は24時間以内に消退し、全体の発疹の分布は少しずつ変化します。

多形紅斑

 滲出性(しんしゅつせい)(水っぽく盛り上がる)紅斑が全身に多発します。口唇や眼などの粘膜にも炎症症状がみられるタイプは、重症型のスティーブンス・ジョンソン症候群中毒性表皮壊死融解症(ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょうがた)に進展する場合があります。

④湿疹型

 治療抵抗性(治療しても治りにくい)の湿疹様変化が発生します。

固定疹型(こていしんがた)

 原因薬剤を摂取するたびに、同じ部位に紅斑が生じます。

紅皮症(こうひしょうがた)

 全身の皮膚に鱗屑(りんせつ)を伴う潮紅(赤み)が生じ、体の表面に近い表在リンパ節のはれを伴います。

光線過敏型(こうせんかびんがた)

 薬剤の摂取後、光線曝露(ばくろ)部(光が当たる部分)に紅斑やむくみ、湿疹様変化が出現します。

扁平苔癬型(へんぺいたいせんがた)

 扁平苔癬様(こけ状の扁平に盛り上がった)紅斑が散らばるように出現、あるいは多発します。

薬剤過敏症症候群(やくざいかびんしょうしょうこうぐん)

 発熱、リンパ節腫脹、肝機能障害、白血球増加、異型リンパ球出現などの症状を伴う重症型薬疹で、ヒトヘルペスウイルス6型などの再活動が関係します。

種井 良二

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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薬疹
やくしん
Drug eruption
(皮膚の病気)

どんな病気か

 薬疹とは薬剤によって引き起こされる皮膚の症状で、出現する症状はさまざまです。

 内服、注射などによって体内に入った薬剤が、皮膚の発疹を引き起こします。アレルギー性と非アレルギー性の原因がありますが、多くの場合はアレルギーによるものです。

 アレルギーによる薬疹は、通常は初めて使用した薬剤では起こることはなく、1~3週間の薬剤の使用後に初めて症状が現れます。しかし一度薬疹を起こすと、その次は同じ薬剤を使用するとすぐに薬疹が現れます。

 また、一度ある薬剤で薬疹を起こした人が、その薬剤の化学構造式に共通部分がある別の薬を初めて使用した場合でも、薬疹が現れることもあります(交差反応)。

 基本的には、漢方やビタミンを含めたどのような薬剤でも起こりますが、抗生剤、鎮痛薬、感冒(かんぼう)薬、循環器用薬、抗けいれん薬などで多く起こります。

症状の現れ方

 薬疹は、薬を内服、注射、点鼻、点眼などにより体内に摂取したあとに現れます。発疹は薬疹のタイプによって異なりますが、じんま疹型、固定薬疹型、播種状紅斑型(はしゅじょうこうはんがた)、紅斑丘疹型(きゅうしんがた)、光線過敏型、湿疹型、紫斑型(しはんがた)多形滲出性(たけいしんしゅつせい)紅斑型などがあります。

 重症型として、眼や口などの粘膜に水疱(すいほう)(水ぶくれ)やびらんが現れるスティーブンス・ジョンソン症候群や、全身の皮膚がやけどのようにむける中毒性表皮融解壊死症(ゆうかいえししょう)(TEN)、高熱とともに全身に紅斑が現れリンパ節もはれる薬剤誘発性過敏症候群(DⅠHS)(コラム)があり、これらの病気では生命に危険を及ぼす場合があります。

検査と診断

 ウイルス性疾患を除外診断する必要がある場合は、ウイルス抗体価の検査を行います。肝機能や白血球の数を調べる場合もあります。

 原因薬剤を検索するための貼付試験は、症状が軽快したあとに行います。薬剤をワセリンなどに混ぜて皮膚に2日間貼付し、その部分が赤く反応するかどうかをみます。光貼付(ひかりちょうふ)試験は薬剤を皮膚に貼付し、同部に光線を照射し、その部分が赤く反応するかどうかをみます。

治療の方法

 軽症の場合は薬剤の中止のみで軽快しますが、中等症ではステロイド薬の内服や外用治療が必要になります。重症の薬疹では入院のうえ、ステロイド薬の内服・点滴治療が必要です。

病気に気づいたらどうする

 すぐに薬剤を中止して、主治医や皮膚科専門医に相談してください。重症型薬疹では入院治療が必要なこともあります。

 また、再び同じ薬剤を使用すると同じ症状が現れたり、以前よりひどい症状が出ることがあるので、薬疹を起こした薬剤を処方しないように医師に知らせます。

堀川 達弥

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薬疹
どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 薬の副作用によって、皮膚に発疹(ほっしん)がおこるものを薬疹(やくしん)といいます。そのほとんどは、アレルギー反応によるものです。
 薬を使い始めてから、10日前後で発症することが多いのですが、数週間や半年以上たってから症状がでることもあります。
 薬疹によってできる皮膚の症状に特徴はなく、いろいろな色(赤色、赤紫色)や形があり、水ぶくれができることもあります。とくに、全身に小さな赤い発疹が多くでるタイプ(紅斑丘疹型薬疹(こうはんきゅうしんがたやくしん))や、赤い円形が平べったく盛り上がるタイプ(多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん))が多くみられます。
 多形滲出性紅斑タイプの発疹では、まれに、生命にかかわる重い合併症がおこります。たとえば、「皮膚粘膜眼(ひふねんまくがん)症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)」では、高熱や全身のだるさ、のどの痛みなどを伴うことがあり、さらに口のなかや目、陰部などの粘膜にも発疹ができます。水疱(すいほう)やびらんなど皮膚がはがれた面積が10パーセント以下のものをさし、それ以上にひろがったものは「中毒性表皮壊死融解症(ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう)(ライエル症候群あるいはTEN型薬疹)」といいます。全身にやけどをしたような灼熱感(しゃくねつかん)とチクチクした痛みを伴う紅斑が発症して全身に広がり、ただれ(びらん)ができます。これらの場合は、早急に医師の診察を受ける必要があります。
 なお、外用薬に対するアレルギー反応は、「かぶれ(接触皮膚炎)」といい、薬疹には含まれません。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 薬に対して、体内の免疫細胞がアレルギー反応を記憶してしまうこと(感作(かんさ))が原因です。ふつう、感作には2週間かかります。その後、再び同じ薬が体内に入ると、早ければ数分(即時型)、遅くとも2~3日(遅延型)のうちに、アレルギー反応が引きおこされます。即時型ではじんましん(赤いみみずばれで、かゆみがある)やショック反応(けいれんをおこし、失神状態になる)、遅延型ではいろいろなタイプの皮膚症状がおこります。
 ある薬で薬疹ができた場合、次に同じ薬を飲んだり、注射を受けたりすると、再発します。また、薬疹をおこした薬と化学構造が似ている場合も、同じようにアレルギー反応をおこす可能性があります。薬疹を引きおこす薬は、人によって異なります。なお、発疹の形によって、原因となる薬を判別することはできません。
 このほか、薬疹のなかには特殊なタイプもあります。同じ薬を飲むたびに同じ場所だけが赤くなって、やがて黒っぽいシミ(色素沈着)に変わるものを「固定薬疹」、日光にあたる部分の皮膚になんらかの症状がでるものを「光線過敏型薬疹」といいます。

●病気の特徴
 薬疹のなかでも重症の「皮膚粘膜眼症候群」の罹患率(りかんりつ)は、人口100万人あたり年間1~6人、「中毒性表皮壊死融解症」は年間0.4~1.2人とされています。
 よくみられる病気ではありませんが、「皮膚粘膜眼症候群」の死亡率は6~10パーセント、「中毒性表皮壊死融解症」は20~30パーセント程度と推定されているため、このような症状がみられた場合には迅速な対応が必要です。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]疑わしい薬剤の使用を中止する
[評価]☆☆
[評価のポイント] 臨床研究は見あたりませんが、薬疹と考えられた場合は、すぐに疑わしい薬剤の使用を中止します。そのまま放置して使いつづけると、症状がひどくなる可能性があります。

[治療とケア]軽症の場合では抗ヒスタミン薬の内服を行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] 抗ヒスタミン薬が発疹を消失させるという臨床研究は見あたりませんが、この薬の効果は専門家の経験や意見によって支持されています。

[治療とケア]軽症の場合では副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬(やく)の外用を行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] 副腎皮質ステロイド薬が発疹を消失させるという臨床研究は見あたりませんが、この薬の効果は専門家の経験や意見によって支持されています。

[治療とケア]重症の場合では原因薬剤以外の薬剤も使用を中止する
[評価]☆☆
[評価のポイント] 臨床研究は見あたりませんが、重症の場合は疑わしい薬のほかにも、薬の使用を控えるべきです。症状がひどくなる可能性があります。

[治療とケア]重症の場合では早期にステロイド大量療法を行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] ステロイド大量療法とは、炎症を早急に抑える必要がある場合に、副腎皮質ステロイド薬を大量に集中的に使って治療する方法です。この治療で効果があがれば、治療期間や入院期間が短くなり、副腎皮質ステロイド薬の副作用を軽減させることができます。
 重症な薬疹の場合に対する副腎皮質ステロイド薬の内服治療は、「効果がある」という臨床研究と「有害である」という臨床研究があります。どちらも信頼性の高い臨床研究の結果ですが、それらの臨床研究より、さらに信頼性の高いランダム化比較試験で認められたものではありません。(1)(2)

[治療とケア]重症の場合では全身状態を改善させるために輸液を行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] 臨床研究は見あたりませんが、この治療の効果は専門家から支持されています。重症の場合では傷ついた皮膚から水分や電解質(細胞が働くために必要なナトリウム、カリウム、カルシウムなど)が失われやすく、生命にかかわるため、適切な輸液は基本として必要な治療です。

[治療とケア]水ぶくれ、ただれが激しい場合は熱傷(やけど)治療に準じた治療を行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] 水ぶくれやただれがひどいような重症の場合では、傷口から細菌が入り合併症をおこす可能性があります。このような場合は、やけどの場合と同じように、医師による治療と管理が必要です。迅速に病院で診察を受けてください。


よく使われている薬をEBMでチェック

抗ヒスタミン薬
[薬名]ゼスラン/ニポラジン(メキタジン)
[評価]☆☆
[薬名]ポララミン(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 薬疹に対して、抗ヒスタミン薬が発疹を消失させるという臨床研究は見あたりませんが、この薬の効果は専門家の経験と意見によって支持されています。

副腎皮質ステロイド外用薬
[薬名]マイザー(ジフルプレドナート)
[評価]☆☆
[薬名]アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)
[評価]☆☆
[薬名]フルメタ(モメタゾンフランカルボン酸エステル)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 薬疹に対して、副腎皮質ステロイド薬が発疹を消失させるという臨床研究は見あたりませんが、この薬の炎症を抑える効果は専門家の経験や意見によって支持されています。

ステロイド大量療法
[薬名]ソル・メドロール(メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム)
[評価]☆☆
[薬名]プレドニン/プレドニゾロン(プレドニゾロン)
[評価]☆☆
[薬名]リンデロン(ベタメタゾン)
[評価]☆☆
[評価のポイント] ステロイド大量療法では、一般的に、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムをゆっくり点滴静脈注射する治療を3日間続けます。効果が出れば、以降はプレドニゾロンやベタメタゾンを服用します。重症の薬疹に対する副腎皮質ステロイド薬の内服薬治療は、「効果がある」という臨床研究と「有害である」という臨床研究があります。どちらも信頼性の高い臨床研究の結果ですが、それらの臨床研究よりさらに信頼性の高いランダム化比較試験で認められたものではありません。

輸液
[薬名]症状に応じて選択する
[評価]☆☆
[評価のポイント] 信頼性の高い臨床研究はありませんが、症状に応じて輸液が必要となることは専門家から支持されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
疑わしい薬剤を中止する
 薬疹と考えられた場合、疑わしい薬剤を早期に中止することが、もっとも重要です。一般的に、発疹が軽度であれば、薬剤を中止するだけで、自然に治癒するのを待ちます。また、薬疹の原因と考えられた薬物は、以後、絶対に使わないように注意することが大切です。

症状がやや強い場合は、抗ヒスタミン薬を
 ヒスタミンは、アレルギーをおこすと体内で放出される物質の一つです。この作用を抑える抗ヒスタミン薬などの内服薬や、炎症を抑える副腎皮質ステロイド外用薬(塗り薬)は、アレルギー反応を抑える働きをします。

症状がひどい場合は、すべての薬剤を中止し、ステロイド大量療法を
 重症の場合は、原因となった薬だけでなく、すべての薬剤の使用を中止します。
 さらに、ステロイド大量療法を行い、炎症を迅速に抑えます。ステロイド大量療法で効果があがれば、その後は、内服の副腎皮質ステロイド薬を用い、医師の指示にしたがって減量していきます。
 副腎皮質ステロイド内服薬は非常に効きめのよい薬ですが、服用が長期間にわたると、副作用がでやすい薬です。このため、症状を確認しながら、医師の判断で少しずつ薬の量を減らしていきます。
 もし、途中で自分勝手に薬の量を変えたり、飲むのをやめたりした場合、副作用だけが表面に強く現れて、急に症状が悪化する可能性が高くなります。
 この薬の使用については絶対に医師の指示を守るよう注意してください。

水ぶくれやただれが現れた場合は、早急に医師の診察を
 水ぶくれ、ただれが重症である場合は、中毒性表皮壊死融解症が疑われ、ただちに熱傷(やけど)治療と同じような治療が必要となり、医師の診察を必要とします。
 脱水・電解質異常・栄養障害がおこりやすいため、輸液を行うこともあります。
 また、高熱やだるさなどの全身症状を伴う場合は皮膚粘膜眼症候群が疑われます。これらのタイプの薬疹は、重症化して生命にかかわることになりかねませんので、一刻も早く受診してください。

(1)Corrick F, Anand G. Question 2: Would systemic steroids be useful in the management of Stevens-Johnson syndrome?. Arch Dis Child. 2013; 98:828.
(2)Sekula P, Dunant A, Mockenhaupt M, et al. Comprehensive survival analysis of a cohort of patients with Stevens-Johnson syndrome and toxic epidermal necrolysis. J Invest Dermatol. 2013; 133:1197.

出典:法研「EBM 正しい治療がわかる本」
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